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2026年6月 1日 (月)

キース・トムスン「海賊たちは黄金を目指す 日誌から見る海賊たちのリアルな生活、航海、そして戦闘」東京創元社 杉田七重訳

大航海時代も終わりに近い17世紀後半に、バッカニアと呼ばれる海賊たちがいた。カリブ海でスペインの植民地や商船を襲撃した、イングランド、フランス、オランダの海賊である。(略)本書は、ある海賊団に属していた七人の海賊のしたためていた日誌をもとに、彼らのリアルな生活、航海、戦闘の模様を冒険物語風に明らかにするノンフィクションである。
  ――訳者まえがき

【どんな本?】

 大航海時代も終わりに近い1680年。中米から南米を支配するスペインの船を、イングランド・フランス・オランダ等の無法者が一獲千金を狙い私掠船として襲っていた。いわゆるカリブの海賊である。

 場所はパナマ地峡のダリエン地峡(→Wikipedia)。先住民クナ族の王が、カリブのイングランド海賊に話を持ち掛ける。曰く、孫娘がスペイン人に攫われた。スペイン要塞を襲い孫娘を取り戻したい。要塞は南海(太平洋)沿いにある。力を貸してくれ。

 海賊には美味しい話だ。南海で暴れた海賊はフランシス・ドレイクぐらい。カリブと異なりスペインの守りは薄い。町を襲えば濡れ手に粟の荒稼ぎだ。しかし、問題もある。ダリエン地峡だ。

 ここは地形が複雑な密林で気候も厳しく、アナコンダやクロコダイルが潜む秘境だ。21世紀の今もなお、南北アメリカ大陸を縦断するアメリカン・ハイウェイはこの地域で途絶えている。当時の海賊に、この地峡を越えるのは不可能だ。

 だが、地元民の案内があるなら話は変わってくる。

 クナ族の王は、スペインと通じているのかもしれない。それでも、地峡を越えれば手つかずのブルーオーシャンだ。疑念を抱きつつも、海賊たちは王の誘いを受ける。ここから、荒くれどもの大冒険が始まった。

 海賊のなかには、几帳面に航海日誌を付けている者が複数いた。その何人かは、手記を著しベストセラーをモノにしている。ただし、当時の書物だけに、信頼性はアレだが。立場の危うい海賊だけに、自らの無法や悪事は誤魔化してるし。

 本書の著者キース・トムスンは、彼らの航海日誌を突き合わせ、また裁判記録なども漁り、海賊たちの冒険の足跡を辿るとともに、海賊たちの食事や雇用条件などの日常生活をも再現してゆく。

 「短くとも楽しい人生」をモットーに、「吊るされるために産まれた」とうそぶく荒くれたちの生き方を描き出す。少し変わった歴史本。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は Born to be Hanged: The Epic Story of the Gentlemen Pirates Who Raided the South Seas, Rescued a Princess, and Stole a Fortune, Keith Thomson, 2022。日本語版は2023年7月28日初版。単行本ハードカバー縦一段組み本文約350頁に加え訳者まえがき5頁+「参考にした資料について」3頁。9ポイント44字×19行×350頁=約292,600字、400字詰め原稿用紙で約732枚。文庫なら厚い一冊分。

 文章は比較的にこなれている。内容も特に難しくない。ただ、単位がマイルやポンドなのが、ちとキツいかも。

【構成は?】

 物語風に進むので、素直に頭から読もう。

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  • 訳者まえがき
  • 第1部 黄金への渇望
  • 1 プリンセス
  • 2 黄金の剣士
  • 3 地峡
  • 4 ゴールデン・キャップ
  • 5 決死隊
  • 6 西半球で二番目に大きい都市
  • 7 根っからの海賊
  • 8 気楽なカヌーの旅
  • 9 漂流者たち
  • 10 奇襲
  • 11 ドラゴン
  • 12 運任せの勝負
  • 13 甲板を流れる奔流のような血潮
  • 14 叛乱
  • 第2部 南海
  • 15 我らが銃の銃口
  • 16 海に呑み込まれる
  • 17 高潔であっぱれな勇者
  • 18 ヘビの髪を持つ姉妹
  • 19 浮かれ野郎ども
  • 20 水、水
  • 21 代償金
  • 22 85人の屈強な仲間たち
  • 23 ロビンソン・クルーソー
  • 24 非常に美しく堂々とした町、セント・マーク・オブ・アリカ
  • 25 うずき
  • 第3部 苦境
  • 26 射殺を覚悟する
  • 27 積み薪
  • 28 瀉血
  • 29 温められた甲板
  • 30 ホーン岬
  • 31 陸地初認
  • 32 銀のオール
  • 33 続編
  •  謝辞/参考にした資料について/図版クレジット/参考文献

【感想は?】

 とりあえず、本書の海賊は麦わらの一党のように綺麗な連中ではない。日本のヤクザの方がよほどマシだ。強盗はもちろん、強姦・殺人なんでもアリの無法者である。そこは覚悟しよう。もっとも、対するスペインも似たようなモンだが。

 それでも一応の大義名分は欲しかったらしい。彼らはバッカニア(→Wikipedia)を名乗っている。海賊にもイロイロあるのだ。

バッカニアたちは、(略)大義名分が欲しかった。でないと、いざ裁判になったとき、(略)古代ギリシャ時代から海でのさばり続ける Peirates(ラテン語で pirata)と同じだと見なされる。
  ――1 プリンセス

 連中の立場はスペインとイングランドの外交関係で変わる。この頃は緊張緩和に傾いており、イングランドじゃバッカニアの立場は弱かった。海賊王ヘンリー・モーガン(→Wikipedia)も、容赦なくバッカニアを取り締まってたし。なので、ソレナリの立場が必要だったのだ。

 こんな風に、無法者のわりに法的立場を考える記述は幾つかある。まあ現代のヤクザも法の抜け道に詳しいしね。

ふたつの船が出会って最初に手を出したのはどちらであるか、この言葉は海賊行為を働いたとして裁判にかけられたときに運命を決することになる。
  ――29 温められた甲板

 とまれ、この裁判もけっこういい加減で。

貿易船を予定どおり運行させるため、海事裁判所では驚くほどスピーディに事が進められる。(略)審理は、はじめから終わりまで一時間以内に終わることもざらだった、
  ――32 銀のオール

 まあ、そういう時代だったんです。

 とかもあって、本書のネタ元の手記も、自分に都合が悪い事柄は省いたり誤魔化したり。強姦を「奉仕に励んだ」とするとか。

 その航海日誌なんだが、実は数人が残している。だもんで、著者のキース・トムスンは、それらを突き合わせて整合性を取ったり、省かれた都合の悪い事柄を補ったりしてる。書き手の一人ウィリアム・ダンビア(→Wikipedia)は後に博物学者として名を上げる。

進化論の父は、(ウィリアム・ダンビアが著した)「最新世界周航機」を携えてビーグル号に乗ったのだ。
  ――33 続編

 なんでそんなインテリが海賊になったのか不思議だが、性分なんだろうなあ。

 さて奉仕活動(というか強姦)、これもバレたら大変で、先住民の掟じゃ…

「相手が処女だった場合、ペニスの導管にイバラのようなものを突っ込まれ、十回から十二回ほど回転させられる」
  ――4 ゴールデン・キャップ

 素蔵したら縮み上がってきた。

 そんなバッカニアたちがタムロしていたのがジャマイカのポート・ロイヤル。荒くれどもの巣窟に相応しく、なかなかの魔窟だ。

ポート・ロイヤルの建物の四軒に一軒が、酒を飲ませる店か娼館なのだ。
  ――7 根っからの海賊

 そのくせ、バッカニア同士の社会は意外と民主的なのが可笑しい。例えば、ボスは投票で決める。解任も……

バッカニアにとって叛乱は、(略)不信任案を投票で決するのである。
  ――14 叛乱

 と、血は流れない。解任されたホスも、次のボスが決まるまでは拘束されるが、決まれば元の仕事に戻るのだ。

(1681年)1月6日、投票によりシャープは(司令官を)退任となり、後継者の投票が終わるまで手かせをはめられて監禁された。
  ――23 ロビンソン・クルーソー

 また、船内の生活も意外と平等で。

スペイン船では通常、将校の船室に、マットレス、ベッドリネン、尿瓶が備わっている。(略)バッカニアたちは、みんないっしょにハンモックをつかって雑魚寝するのである。
  ――14 叛乱

 この辺のヤクザやマフィアとの違いは、バッカニアは組織が流動的でメンバーの離合集散が激しい点だろうか。ついでに、契約書があるのも違いだろう。さすが年季の入った契約社会。

お宝を頂戴したあと、まずは船医や大工といった技術職にその職能に見合った報酬を渡し、(略)労働災害への補償も定められていて、左腕を失った者は五百ピース・オブ・エイトか奴隷五人を…
  ――6 西半球で二番目に大きい都市

 と、労災への補償もちゃんとあるのだ。実は人材不足だったのか? それと技術職を大事にしてたのは、上層部が現場をよく知ってるから、なのかな。その上層部も投票で入れ変わったりするし。

 特に医師は貴重だったようで、敵に捕らえられても…

(捕虜になった)三人の外科医は間違いなく処罰されていない。スペイン人が彼らの医療技術を無駄にするわけはなく…
  ――25 うずき

 医師が貴重なのは時代も洋の東西も問わない、人類普遍の性質なのかも。つか医師の技術があるのに海賊船に乗るって人も、かなり珍しいんだろう。

 もっとも、当時の医療技術なんて推して知るべしで…

(外科医のいない)船では医者の仕事を船大工が肩代わりする(略)。医者の技術と道具は、大工のそれと重なる部分がある。少なくとも料理人より大工のほうが医者に近い。四肢の切断手術には、船体からフナクイムシにやられた部分を切り取るのにつかったのこぎりをそのまま流用する。
  ――27 積み薪

 その外科医の能力も、四肢の切断をいかに手早く済ませるか、で測られてた時代だし。本書にも脚を切断する場面があるんだが、ホラーが苦手な人には厳しい描写だろう。

 そんな医師でも貴重なのは、本書に出てくる契約書の条項に戦闘に関する事柄が多い点でもうかがえる。

バッカニアの船員雇用契約書は(略)補償を定めている。たとえばヘンリー・モーガンのそれでは、「いかなる戦闘でも、敵の要塞に真っ先に飛び込んでいくといった目覚ましい活躍を見せた人間には……50ピース・オブ・エイトを与える」と約束している。
  ――5 決死隊

 危険で、かつ重要な役割には、相応の見返りもあるし、ハッキリと明文化している。現代の軍でも勲章やポイント制の昇進とかがあるけど、ここまで即物的じゃないだろう。これも離合集散の激しく、短期契約が基本の社会だから、だろうか。

 そして事前準備に関する条項もある。

毎回の遠征でバッカニアたちが同意する船員雇用契約書(略)にはよく、このマスケット銃の扱いに関する規定が記されている。武器をつねにきれいに保ち、いつでも戦闘に臨む用意をととのえていないものは、捕獲物の取り分を失うとともに、船長や仲間が決める懲罰を受けることになる。
  ――3 地峡

 本書にはスペイン兵 vs バッカニアの銃撃戦の場面が多くあるが、銃の扱いはバッカニアの方が巧みだった模様。やはり実践で鍛えているからだろうか。ちなみに当時の銃は先込め式です。

 なお本書じゃ海上に加え陸上の戦いも多い。だってそもそもの目的がスペイン人の町を襲ってお宝を奪う事だし。ってんで、戦術的なネタも出てくる。

スペインの都市では、教会は基地にするのに最適だった。町の中心地にあって大量の捕虜を収容できるうえに、信心深いスペイン人は神の家を攻撃するのは抵抗があるからだ。
  ――22 85人の屈強な仲間たち

 今も昔も宗教施設は戦術的に大きな意味があるんですね。

 また、手榴弾もあった模様。とはいえ、爆薬の周囲に金属片などを固めた程度の手製のシロモノだったようだが。

手榴弾を投げる人間は、このうえない危険に身をさらすことになるため、モーガンがパナマを襲撃する際に作成した契約事項には、敵に手榴弾を一個投げた者には五ピース・オブ・エイトが支払われると定めてあった
  ――24 非常に美しく堂々とした町、セント・マーク・オブ・アリカ

 つまり手榴弾を使う状況とは、遮蔽物の陰から盛んに銃撃してくる敵に肉薄して投げる、そんな場面なんですね。もっとも、本書内の手榴弾は、みんな不発だったりするんだが。所詮は素人の手製だし。

 などと戦闘は危険な状況なワケで、中にはビビる奴もいる。その対策もあって…

海賊船のなかには、弾が飛び交いはじめたところで、乗員が持ち場を捨てて甲板下で怠けるのを防ぐため、かんぬきをかけるか、紐で縛るなどして、あらゆるハッチを大工が閉鎖するものもある。
  ――19 浮かれ野郎ども

 もちろん、海賊船と軍艦の戦いもある。この場合、最初は砲撃戦で始まる。当時の艦載砲は左右の両舷に沿って配置する。だから戦い方も、敵に対し、いかに側面を向けるかがキモだったりする。

巨大な大砲が設置されているのは各船舶の側面だけであり、船首にも船尾にもない。当時の海戦では、側面を航行する敵を片舷斉射で討ち取るというのが慣例で、あらゆる大砲は船の側面から一斉に発射されるのである。
  ――11 ドラゴン

 もっとも、効果があるのは砲弾そのものより…

当時の海戦では、発射体そのものより榴散弾の破片によって死傷することが多かった
  ――12 運任せの勝負

 「榴散弾の破片」とあるが、Wikipediaによると榴散弾の開発は1784年とあるんで、ぶどう弾か、または砲弾の着弾の衝撃で飛び散った木片などの事を言ってる気がする。

 困ったことに、当時の銃や砲の火薬は黒色火薬で、これは火がつくと爆発する。だもんで、火薬庫に火がつくと大変で。

海戦において、火薬の爆発事故による死傷者数は全死傷者数の1/4を占める。
  ――13 甲板を流れる奔流のような血潮

 なお現代の無煙火薬も燃えるけど爆発はしないそうです。この火がつくってのは戦闘に限らないのが怖い。例えば雷。

電流が船のマスト群へ引きよせられ――そこが海で、一番高い場所となる――貯蔵している火薬を爆発させるのである。
  ――17 高潔であっぱれな勇者

 おまけに当時はGPSはもちろん経度を知る手段もなきゃロクな海図もないし、緯度だって天測で調べるんで晴れてないとわかんない。そんな環境で一攫千金を狙う連中なんで、皆さん人生アドリブでやってる感が強い。そういう奴だからこそ海賊になるんだろうけど。

 そんな連中だからか、衛生概念もお察しで。

海の男たちが身体を洗うのは数か月に一度がいいところ(略)船内には、腐った木材や帆布、乾いた小便やカビの生えた嘔吐物、ニワトリやブタやそのほかの家畜(ペット、あるいは将来の食材となる)、船底でポチャポチャと音を立てる汚水の中で腐敗している有機堆積物など、悪臭の源はいくらでもあった。
  ――16 海に呑み込まれる

 現代の軍でも潜水艦はキツいようだが、これほどじゃないと思う。よく病気にならなかったな? いや、ちゃんと?病人も出ました。

壊血病に侵された乗員たちは甲板下の睡眠室で回復を待つしかなかった。そこはゴキブリが這いまわる不潔極まりない場所であるうえに、木造船の宿命といえる水もれもある。(略)何日ものあいだ衣類は濡れたままで、寒くなっても暖を取る手段はなく、下甲板の悪臭を放つ闇のなかにぶら下がる濡れたハンモックに、溺死した――あるいはまだ生きている――ネズミといっしょに寝ているしかないのである。
  ――22 85人の屈強な仲間たち

 もちろん、壊血病の原因や治療法は知られていない時代です、はい。医師も役に立ってないじゃん。そんな船上生活の描写も、本書の嬉しいところ。例えば…

海賊船はとりわけ転覆しやすい。船荷は空っぽで、高いマストで何トンという重量の帆布がはためいているというのは、極度な頭でっかちと同じだからだ。
  ――16 海に呑み込まれる

 これは海賊船に限らず、船倉が空の帆船の全般に言える事なんだろう。そんな船は保守・管理も大事で。

船体に付着した海草はまさにジャングルといってよく、(略)3ノットほども減速する。
  ――18 ヘビの髪を持つ姉妹

 これは現代の船乗りたちも相変わらず悩んでる問題だよね。あとフジツボとか。それに帆船ならではの苦労もあって。

帆布は雨のなかでおろすことはできない。濡れたまま保管すると腐りやすいからだ。
  ――18 ヘビの髪を持つ姉妹

 帆布の素材は麻かと思ったけど、Wikipediaを見ると綿みたいだ。

 本書には長い航海で飢えや渇きに苦しむ場面が幾つかある。飢えたなら魚を釣ればいいいじゃん、と思ったら、やっぱり釣ってた。

1日で30リーグという快速で海を進み、120ポンドのビンナガマグロが獲れるなど釣果も上々で…
  ――31 陸地初認

 西洋人も魚を食べるのだ。薪は貴重だから、マリネかな? 水の補給も…

雨が降った(略)「パンプキン(船体から張り出した棒に張った帆)に飲料水が集まった」
  ――31 陸地初認

 と、雨水で補給する工夫があるのだ。そりゃそうだよね。

 モノに加え情報の補給も海賊の命綱。だから…

海賊は、捕虜にした人間すべてにかたっぱしから質問をぶつけるのが習いだった。生まれ故郷のこと、都心のこと、地方のこと。その結果、各地の製造業、資産、防衛施設、軍事力、弱点といった情報が、いかなる諜報組織がまとめる調書にもひけを取らないほど充実する。
  ――8 気楽なカヌーの旅

 そんな話をしてるうちに仲良くなる捕虜もいたり。

 捕虜ばかりでなく、奴隷にする場合もある。たいていは先住民なんだけど。これも油断大敵で…

夜のあいだは「つねに見張りをふたりたてることにした。でないと奴隷にいつ寝首を掻かれるかわからないからだ」
  ――26 射殺を覚悟する

 まあ当然だよね。この奴隷が後の裁判で重要な証言をする場合もあったり。

 かと思えば、商人とは異なった関係を築いてたりする。例えばスペインの要塞を襲いお宝を奪った後、スペイン商人が訪ねてくる場面がある。

彼ら(スペイン人商人)の目的は、(略)バッカニアがペリコ島から略奪してきた品を買い取ることだった。
  ――15 我らが銃の銃口

 海賊がうじゃうじゃいる海域に出張る商人だけあって、根性が座っているというか商魂たくましいというか。

 そんな海賊の目印といえば旗なんだが、当然ながら偽装もする。

身元を隠すために、バッカニアはしばしば自分たちの船にブルゴーニュの十字架を染めた旗を掲げて、敵の目を欺くことがあった。
  ――20 水、水

 なお「ブルゴーニュの十字架」はスペインの印です。旗に関しては他にも…

リングローズが休戦の白旗を持って…
  ――21 代償金

 と、「戦意の無い印」と認識されていた模様。Wikipediaを見ると「西暦25-205年の中国」「西暦69年の第二次クレモナの戦い」なんて例もあって、これまた人類共通の感覚なのかも。

 逆に海賊同士の戦い…というか喧嘩の描写も少しだけある。つまりは決闘だ。これもマナーが決まってて。

おそらく「剣かピストル」を持って決闘者ふたりは背中合わせに立ち、立会人の声でふりかえって攻撃する。それでもまだふたりとも立っていたなら、次はカトラスをつかって引き続き戦い、最初に相手に血を流させた方が勝者となる。
  ――30 ホーン岬

 ちなみに本書じゃ戦った両者ともに次の日にはアッサリと生きてるんで、別に必ずしも命がけってワケじゃないようだ。

 と、そんな無法者たちが、一攫千金を狙いながらもいきあたりばったり出たとこ勝負の破天荒な生き方を、冒険物語風に生々しく描いたのが本書だ。カリブの海賊に興味がある人はもちろん、当時の船上生活が知りたい人にもお薦め。

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