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2026年5月25日 (月)

岩宮眞一郎「音と音楽の科学」技術評論社

本書は音と音楽を科学的に考察するための入門書です。音および音楽を人間が理解する過程について体系的に解説し、音と音楽に関するテクノロジーや文化について論じています。
  ――はじめに

【どんな本?】

 音とは何か。ヒトがどうやって音を聴き、そこから情報を得るのか。私たちが親しんでいる音楽には、どんな構造があるのか。コンサート・ホールには、どんな性質が求められるのか。オーディオ機器が音を再現する原理は? 世の中にはどんな楽器があるのか。 映画やドラマで音楽や効果音が果たす役割は?

 音と音楽にまつわる話題を、物理学的な基礎から音楽そしてJIS規格に至るまで、あらゆる側面から総合的に説明する、一般向けの解説書。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2020年3月17日初版第1刷発行。単行本ソフトカバー横一段組み本文約340頁。9ポイント32字×29行×340頁=約315,520字、400字詰め原稿用紙で約789枚…なのだが、グラフやイラストを多く収録し、またレイアウト上の工夫のあるので、実際の文字数は7割ほどだろう。文庫なら厚い一冊分。

 文章は比較的にこなれている。ただし、冒頭から数式も容赦なく出てくる。それも微分や指数を含む高度なもの。いや私は数式を読み飛ばしたけど。それを除けば、内容は特に難しくない。完全な理解を求めるならともかく、「だいたいのところがわかればいいや」な態度なら、高校生でも楽しく読めるだろう。

【構成は?】

 各章は比較的に独立しているが、第1章と第2章は基礎となる部分なので、最初に読もう。もっとも、その第1章が数式まみれなのが辛い所だけど。繰り返すが私は数式を読み飛ばした。てへ。

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  • はじめに
  • 第1章 音と聴覚のしくみ
  • 1.1 音を聴いて音楽を味わうまで
  • 1.2 物理的には音は空気の疎密波である
  • 1.3 音を運ぶ媒質
  • 1.4 純音(正弦波)は楽器の音や人間の声の最小要素
  • 1.5 純音は三角関数を使って表現できる
  • 1.6 波長は一つの波が伝わる距離
  • 1.7 周期的複合音は倍音が組み合わさってできる音
  • 1.8 弦楽器の弦の振動から倍音が出るしくみ
  • 1.9 管楽器の管の共鳴で倍音が出るしくみ
  • 1.10 スペクトルは各周波数成分のパワーを表す
  • 1.11 ノイズは連続スペクトルで表現される
  • 1.12 広帯域ノイズと狭帯域ノイズ
  • 1.13 うなり;周波数がわずかにずれた2つの純音はうなる
  • 1.14 聴覚のしくみ:空気の振動を電気信号に変えて脳に伝える
  • 1.15 音はまず耳に入ってくる
  • 1.16 音を効率よく伝える鼓膜と耳小骨のコンビネーション
  • 1.17 基底膜の進行波が周波数の情報を伝える
  • 1.18 蝸牛の有毛細胞が神経インパルスを脳に伝える
  • 1.19 神経インパルスが発火する様子
  • 1.20 聴覚フィルタが周波数分析をしてくれる
  • 1.21 難聴は音楽を聴きすぎても生じる
  • 1.22 高齢社会で注目される老化に伴う聴力低下
  • 1.23 補聴器と人口内耳が聴覚の衰えを補ってくれる
  • 第2章 音の物理と心理
  • 2.1 音の大きさとデシベル
  • 2.2 デシベルのメリット
  • 2.3 等ラウドネス曲線は聴覚の感度の周波数依存性を表す
  • 2.4 騒音レベルは聴覚補正特性で補正した音圧レベル
  • 2.5 男と女のラウドネス(ラブソングではなく?)
  • 2.6 ラウドネスは音の大きさの比率関係を示す
  • 2.7 マスキングとは妨害して聞こえなくすること
  • 2.8 音の高さ(ピッチ)の2面性:トーン・ハイトとトーン・クロマ
  • 2.9 周期的複合音のピッチは、基本音がなくても基本音のピッチ
  • 2.10 絶対音感者は、周りの音をドレミで認識する
  • 2.11 ピッチが上昇(下降)し続ける無限音階
  • 2.12 音色は複雑な性質
  • 2.13 音色の印象的側面は3次元
  • 2.14 音色の識別的側面は聞き分ける力
  • 2.15 ものまね名人は「らしさ」解析の達人
  • 2.16 音色とスペクトルの対応関係
  • 2.17 パワー・スペクトルの重心が音の鋭さ(明るさ、固さ)に影響する
  • 2.18 ホルマントが母音の識別の手がかりになる
  • 2.19 音の立ち上がり、減衰部が音色の違いに及ぼす影響
  • 2.20 位相スペクトル(倍音間の位相差)が音色に及ぼす影響
  • 2.21 ビブラートは音色を豊かにする
  • 2.22 楽器音の偶発的なノイズや変動が楽器音の「らしさ」を作る
  • 2.23 擬音語は都の感性を伝える言葉
  • 第3章 音楽のしくみ
  • 3.1 メロディはピッチの変化の理解に基づく
  • 3.2 音階のしくみ;音の連なりが調性感をつくる
  • 3.3 音名は階名の周波数を決める
  • 3.4 ペンタトニック・スケール:世界に広がる5音音階
  • 3.5 12音技法:調性感を否定した音階
  • 3.6 音律は、音階の構成音の周波数を定める
  • 3.7 完全5度の美しい響きを基本にしたピタゴラス音律
  • 3.8 単純な整数比にこだわり、3度の音程も美しく響かせるようにした純正律
  • 3.9 平方根の導入で転調に耐えうるようにしたミーン・トーン、ウェル・テンペラメント
  • 3.10 単純な整数比の理想は捨てたが自由な転調を可能にした平均律
  • 3.11 メロディのゲシュタルト:メロディを感じる枠組み
  • 3.12 まとまり(ゲシュタルト)を形成するピッチのパターン
  • 3.13 音脈分凝:メロディが分離して聞こえるしくみ
  • 3.14 存在しない音が聞こえる
  • 3.15 ハーモニーの科学:協和を感じるしくみ
  • 3.16 協和感を決めるのは音と音の干渉
  • 3.17 倍音の干渉が協和音と不協和音を決める
  • 3.18 手陰部では完全5度でも協和しない
  • 3.19 協和と不協和の絶妙なバランスが名曲をつくる
  • 3.20 リズムは音列のまとまり、テンポは音列の速さ
  • 3.21 リズムとテンポのしくみと表現
  • 3.22 リズムの心理学:時間間隔がリズムになる
  • 3.23 ちょうといい加減のテンポ
  • 3.24 リズムのゲシュタルト:リズムを感じるしくみ
  • 3.25 リズムのゆらぎ:グルーブ感を出すために
  • 第4章 音の空間性
  • 4.1 耳が二つある生態学的理由:眼鏡をかけるためではない
  • 4.2 水平面の音の定位:音の方向は両耳間の差から聞き分ける
  • 4.3 時間差の影響:左右の耳への到達時間差が音像定位に影響する
  • 4.4 位相差の影響:波の進みあるいは遅れが音像定位に影響する
  • 4.5 強度差の影響:音の大きい側に引きつけられる
  • 4.6 正中面の音の定位
  • 4.7 方向感覚の弁別限は音源の方向に依存する
  • 4.8 音の定位に及ぼす視覚の影響
  • 4.9 腹話術効果
  • 4.10 音の距離感:大きな音は近くに聞こえるけれど
  • 4.11 両耳聴取が音の空間性を感じさせる
  • 4.12 コンサート・ホールに求められるもの
  • 4.13 直接音,反射音,残響:適度なバランスが演奏音を豊かにする
  • 4.14 音楽の邪魔をする反射音
  • 4.15 残響時間:コンサート・ホールの特徴を表すモノサシ
  • 4.16 ホールに広がり感をもたらす横からの反射音
  • 4.17 遮音と吸音:音を遮断することと音を吸い込むこと
  • 4.18 コンサート・ホールの誕生と発展
  • 4.19 コンサート・ホールの形状
  • 第5章 オーディオ機器の歴史と原理
  • 5.1 レコード:音を記録・再生する初のメディア
  • 5.2 録音テープ:磁石の性質を使って音を録音・再生する
  • 5.3 放送メディアは世界的ヒット曲を生み出した
  • 5.4 オーディオ機器:さまざまな音楽メディアを再生する装置
  • 5.5 アンプ:スピーカを鳴らすパワーを供給する
  • 5.6 スピーカ:電気信号を音に変換する
  • 5.7 ヘッドホンとイヤホン:自分だけで音楽を楽しむ機器
  • 5.8 オーディオ機器の音響特性
  • 5.9 音楽メディアに革命をもたらしたデジタル技術
  • 5.10 CDによってデジタル・オーディオの時代が訪れた
  • 5.11 デジタル化することの利点
  • 5.12 1ビット量子化方式(デジタルシグマ変調方式)
  • 5.13 圧縮技術と音楽メディア:音楽を持ち歩く生活
  • 5.14 携帯型プレーヤはさらに進化を遂げた
  • 5.15 高臨場感を実現する音楽メディア
  • 5.16 忠実な3次元再生を目指すバイノーラル方式,トランスオーラル方式
  • 第6章 楽器の分類とそのしくみ
  • 6.1 各種の楽器と音が出るしくみ:楽器の分類とその系統
  • 6.2 楽器がカバーする音域と音量
  • 6.3 打楽器:叩いて音を出す楽器
  • 6.4 木管楽器のなかま:吹いて音を出す楽器のいろいろ
  • 6.5 管の共鳴でメロディを奏でるエア・リード楽器
  • 6.6 リードの振動で音を発生させるリード楽器
  • 6.7 金管楽器のなかま:きらびやかなファンファーレの秘密
  • 6.8 弦楽器のなかま:弦の振動がメロディを奏でる
  • 6.9 撥弦楽器では弦を弾いて音を出す
  • 6.10 摩弦楽器では弦を擦って音を出す
  • 6.11 弦を叩いて演奏する打弦楽器
  • 6.12 鍵盤楽器のなかま:高度な音楽を奏でる工夫
  • 6.13 多彩な表現力を備えた鍵盤楽器の王者ピアノ
  • 6.14 オーケストラに匹敵する多彩な音色を備えたパイプ・オルガン
  • 6.15 歌:人の声も楽器である
  • 6.16 オーケストラに打ち勝つベルカント唱法の秘密
  • 第7章 電子楽器からDTMへ
  • 7.1 電気楽器の原理
  • 7.2 電子楽器:電気のチカラで音を作る
  • 7.3 ユニークな電子楽器
  • 7.4 デジタル技術が電子楽器にも恩恵をもたらした
  • 7.5 エフェクタ:音楽表現に彩りを添えるツール
  • 7.6 空間系エフェクタ:響きを人工的に作る
  • 7.7 モジュレーション系エフェクタ:ここちよい「ゆらぎ」を作る
  • 7.8 ひずみ系エフェクタ:わざとひずませてカッコいいサウンドを作る
  • 7.9 ひずみに美的価値を与えたエレキギターは反骨の楽器だった
  • 7.10 インサート系エフェクタ:過大入力を防ぐ
  • 7.11 イコライザ:スペクトルを変化させる
  • 7.12 MIDI:コンピュータとつながるインターフェース
  • 7.13 デスクトップ・ミュージック:コンピュータ1台で音楽制作
  • 7.14 ボーカロイド:ついに歌声もコンピュータで合成
  • 7.15 DAW(Digital Audio Workstation):一人でレコーディング
  • 7.16 音楽制作の質向上にはオーディオ・インターフェースは必須
  • 7.17 マイクロホン:ダイナミック型とコンデンサ型
  • 7.18 テクノロジイーの発展は音楽も変えた:現代音楽からメディア・アートへ
  • 第8章 映像メディアにおける音の役割
  • 8.1 映像エディアに活かす音のチカラ
  • 8.2 映像作品に世界では音も演出されている
  • 8.3 演出効果のある環境音
  • 8.4 しずけさの音:無音のテクニック
  • 8.5 リアリティを演出する効果音
  • 8.6 チャンネルはそのまま:テレビで多用される効果音
  • 8.7 ナマオトの効果:本物の音よりも本物らしい音
  • 8.8 笑いの神を降臨させる音:音で笑わされている
  • 8.9 音と映像の同期の効果:シンクロのチカラ
  • 8.10 音楽のムードの利用:寄り添う、ずらす
  • 8.11 音と映像の対位法
  • 8.12 定番曲で状況を伝える
  • 8.13 テーマ曲の利用
  • 8.14 ヴァルキューレのライトモチーフ
  • 8.15 映像の世界で鳴っている音楽
  • 8.16 音楽をテーマにしたドラマ
  • 第9章 サウンドスケープ
  • 9.1 サウンドスケープの意味するところ
  • 9.2 サウンドスケープは環境、社会、文化と関わる
  • 9.3 サウンドスケープは人間が意味づけ、構成した音環境
  • 9.4 音響生態学はサウンドスケープの学問分野
  • 9.5 マリー・シェーファーの提唱する音の分類法
  • 9.6 歳時記に詠まれた四季折々の日本の音風景
  • 9.7 おもてなし精神が生んだ日本の音分化
  • 9.8 紀行文に残された明治の音風景
  • 9.9 音の環境教育
  • 9.10 シェーファーのめざすサウンドスケープ・デザイン
  • 9.11 音名所、残したい音風景:地域の音文化の掘り起こし
  • 9.12 音楽と環境:「楽音」対「騒音」の二項対立の解消
  • 第10章 音のデザイン
  • 10.1 音のデザインは芸術と工学のあいだにある
  • 10.2 デザインのいろいろ:音のデザインのいろいろ
  • 10.3 製品に快音化の時代が到来した
  • 10.4 音が魅力のモノづくり
  • 10.5 サイン音のあり方を探る
  • 10.6 音楽的表現を用いたサイン音
  • 10.7 音のユニバーサル・デザイン
  • 10.8 音環境デザイン
  • 10.9 音楽における音のデザイン的側面
  • 10.10 失われたリアリティを再現する音のデザイン
  • 参考文献/索引

【感想は?】

 音と音楽を総合的に語る本だ。それだけに、話題は多方面に渡る。特に後半では、章ごとに内容が全く違う。という事で、ここでは章ごとに記事を書いていこう。

●第1章 音と聴覚のしくみ

老化による聴力低下の特徴は、高い周波数の音が著しく聞こえにくくなっている
  ――第1章 音と聴覚のしくみ

 「音」を物理学的に解説し楽器が音を出す原理を説明すると共に、ヒトが耳で音を聴き脳で解釈するまでの医学的な仕組みを解説する章。倍音構成や閉管と開管の違いなど、かなり突っ込んだ話も出てくる。

●第2章 音の物理と心理

母音「i」が用いられる「キー」などの擬音語表現で表される音は、一般に「明るい」「鋭い」といった印象が持たれます。「i」の音は、日本語の5母音の中でスペクトルの重心(あるいはシャープネス)が最も高い音で…(略)
逆に、「鈍い」「暗い」といった印象を喚起し、低い周波数帯域に主要なエネルギーを有する音には、(略)スペクトル重心が最も低い母音「o」が擬音語に用いられます。
  ――第2章 音の物理と心理

 ヒトが音をどう感じるか、どんな音がどんな印象を与えるかなどを、音の大きさ・周波数分布・音量の変化具合などを用い、物理的・数学的に説明してゆく。数式に加え、デシベル・スペクトル・ホルマントなどの専門用語も容赦なく出てくる。数式はともかく、専門用語は後の章のために理解しておいた方がいい。

●第3章 音楽のしくみ

演奏者は、楽譜そのものではなく、楽譜から解釈された音楽イメージを演奏するのです。
  ――第3章 音楽のしくみ

 音階・和音・メロディからリズムそしてグルーブ感まで、音楽の理論を駆け足で語ってゆく。話題としては西洋音楽が中心ながら、世界中の民謡で床われるペンタトニック・スケールも少し触れている。ビートルズのエリナー・リグビーから感じる不思議さの秘密が分かったのが私には嬉しかった。

●第4章 音の空間性

(左右に)少しでも時間差があると音像は早く提示された側に定位します。
  ――第4章 音の空間性

 ひとつの音から、ヒトは多くの情報を得る。音源の方向、音源までの距離、周辺の環境など。なぜ・どうやって・それらを聞き分けるのか、といったヒトの聴覚の仕組みから、それを応用したコンサート・ホールや映画館の音響設計までを、総合的に解説してゆく。左右の定位は音の大きさだけで決まると思っていたが、時間差も関係あるとは知らなかった。

●第5章 オーディオ機器の歴史と原理

1ビット量子化方式では、(略)信号が0か1のみで量子化します。ただし、非常に高速なサンプリング周波数で(略)標準的なスーパー・オーディオCDという方式では、サンプリング周波数は2.8224MHz(2,822,400Hz)となっています。
  ――第5章 オーディオ機器の歴史と原理

 エジソンの蓄音機からオーディオ機器を経て最近のバイノーラル録音まで、録音・再生技術の歴史と原理を駆け足で解説する。「デジタルになればオーディオ機器の優劣が関係するのはスピーカーぐらいだろう」と思っていたが、実はデジタルをアナログに変換する所でも工夫が必要なのだった。

●第6章 楽器の分類とそのしくみ

ザックス=ホルンボルテス分類法(略)によると、楽器は、体鳴楽器,膜鳴楽器,弦鳴楽器,気鳴楽器,電鳴楽器に分類されます。
  ――第6章 楽器の分類とそのしくみ

 この引用で分かるように、「音を出す仕組み」に注目すると、鍵盤楽器は存在しない。また、多くの楽器では、「いかに音を反響させて大きくするか」がキモなのだ、とわかる。私はギターが好きなのだが、バイオリンと異なり交響楽の主役になれないのは、やはり音の大きさ故なんだろう。にしてもパイプオルガンの音程の広さと音量の大きさは、つくづくチートだ。まあ、あれは楽器というより建物だし。

●第7章 電子楽器からDTMへ

シアトルで開催された国際音響学会(1998年)では、ジミ・ヘンドリクスを偲んで「ひずみ」特別セッションが行われました。
  ――第7章 電子楽器からDTMへ

 エレキギター,シンセサイザ,エフェクタ,MIDI,DTMからマイクロホンまで、電気楽器・電子楽器そのものはもちろん、電気楽器だから・電子楽器だからこそ可能な表現や、それが切り拓いた音楽の可能性を語る。最近のロックのギターはメタルじゃなくてもひずみ系エフェクタ大流行りだよなあ。

●第8章 映像メディアにおける音の役割

骨を折る音も、(略)べニア板,割り箸などを薄めの布で巻いて折った音が使われています。セロリをねじるという技もあります。
  ――第8章 映像メディアにおける音の役割

 映画やドラマの音楽から効果音まで、映像メディアで音をどう使い、どんな効果を狙っているかを、豊富なサンプルを挙げながら基本的な技術から常識を逆手に取った手法まで紹介してゆく。視聴者の慣れを利用し、敢えて無音にするなどの演出も興味深いが、私は効果音の作り方が楽しかった。

●第9章 サウンドスケープ

(ジョン・ケージの)『4分33秒』では、すべての環境音が聴取の対象となります。
  ――第9章 サウンドスケープ<

 マリー・シェーファー(→Wikipedia)が提唱したサウンドスケープの概念を中心に、私たちが日頃から聴いている(がたいていは意識していない)身の回りの音を紹介する。そういえば、私の住む地域を象徴する音って、何だろう?

●第10章 音のデザイン

家電製品のサイン音に対しては、日本工業規格「高齢者・障碍者配慮設計指針 消費生活製品の報知音」(JIS S 0013)として(略)設計指針では、サイン音を操作確認音,終了音,注意音に分類し、それぞれにふさわしい音が定められています。この規格では、高齢者の聴覚特性にも配慮して「報知音の周波数は2.5kHzを超えないことが望ましい」との条項を盛り込んでいます。
  ――第10章 音のデザイン<

 ポスターや工業製品にデザインがなるなら、音だってデザインがある筈だ、そういう主張の章。スマートフォンやデジタルカメラは、ワザとシャッター音を出している。最近の自動車はカーナビが喋る。そういやパソコンも起動時にピコッと鳴るなあ。これらの音も、実はデザインされているのだ。ジミ・ヘンドリクスやエディ・ヴァンヘイレンが代表すように、エレキギターを弾く人は、自分の音をデザインしてきたんだよね。

 一冊の本で音と音楽のすべてを説明しよう、などどいう欲張ったテーマの本だ。それだけに話題の幅は広い反面、全体的に駆け足の感が強く、中身も異様に濃い。入門書というより、音の世界を紹介する本が近いと思う。それに相応しく、巻末の参考文献も充実しているし。ということで、音と音楽に興味がある人にお薦め。

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