徳田雄洋「離散数学 ものを分ける理論 問題解決のアリゴリズムをつくる」講談社ブルーバックス
本書では参加者全員が好きな対象物、あるいは参加者全員が嫌いな対象物で、分割可能な場合、参加者全員から全く文句が出ないように分割する不思議な方法を扱います。
――はじめにようかんを3人で分けたいのですが、もめないようにするにはどうしたらよいでしょうか
――第1章 ようかん問題大きな長方形と小さな長方形を少し離して置きます。1本の長い直線でどちらの長方形の面積も2等分できるでしょうか
――第8章 結婚式のケーキカット
【どんな本?】
2人でようかんを分けるの際に、どちらも文句が言えない分け方は有名だ。
- 片方が等分に2つに切る。
- もう片方が好きな方を選ぶ。
では、3人の場合は?
とんちクイズのようだが、数学者が挑み論文を仕上げるに足る、立派な数学の問題である。
本書では、「好みが異なる2人が数種類のくだものを公平に分ける」「三つの居室がある家の家賃を3人で分ける」「嫌いな料理を3人で分ける」など、様々な状況で参加者全員が公平だと感じる分け方を紹介する。
【いつ出たの?分量は?読みやすい?】
2018年5月20日第1刷発行。新書版で横一段組み本文約218頁。9.5ポイント24字×27行×218頁=約141,264字、400字詰め原稿用紙で約354枚だが、イラストやグラフが多いので文字数は7~8割程度。文庫なら薄め。
文章はこなれていて親しみやすい。が、内容はかなり歯ごたえがある。数式も容赦なくバリバリ出てくる。ただし大半は加減算と分数ぐらい。と書くと楽そうだが、 f(x)=うんたら、みたいな形が多い。数式が苦手な人はここで放り出すだろう。
基本的に「数人でものを分ける」手順を説明するのだが、この手順の中身がややこしいく面倒くさい。冴えた頭で落ち着いてじっくり読まないと、なかなか頭に入ってこないし、時おり反則技もかましてくる。
ということで、充分に覚悟して挑もう。私は途中でギブアップしました。
【構成は?】
前の章を踏まえて後の章を積み上げてゆく構成だ。しかも、数学の本なので、一歩づつ着実に進める必要がある。まだるっこしくても、充分に理解威できるまでじっくり時間を掛けて挑もう。
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- はじめに/登場人物紹介
- 第1章 ようかん問題
- 第2章 トリミング調整法
- 第3章 くだもの問題
- 第4章 最大化問題
- 第5章 三角形の建物定理
- 第6章 家賃問題
- 第7章 赤道の気温定理
- 第8章 結婚式のケーキカット
- 第9章 料理問題
- 第10章 人数増加法
- 第11章 絶対的優位法
- 第12章 存在定理
- 歴史まとめ
- 付録
- 参考文献/索引
【感想は?】
と、いいながら、私は途中で諦めたんだけど。ごめんなさい。
最初の3人でようかんを分ける問題は、どうにか理解できた。説明しろ、と言われたら怪しいけど。遺産分割などで揉めたら使えるか?と言われると、まず無理です。数学ってのは、そういうモンだよねw
この問題には前提条件がある。ようかんは中身が均等で、どこをとっても質は同じ、という条件だ。つまり単なる量の問題に単純化している。しかも、最初の解はちと酷いw
これを、中身は様々で、かつ参加者の好みも様々、としたのが「第3章 くだもの問題」。
何種類かのくだものを1個ずつ頂いたので、2人で分けたい
――第3章 くだもの問題
ようかん問題との違いは、分けるべきモノの種類が様々って点だ。それともう一つ、2人の好みも異なる。片方はメロンが一番好きで、もう一方はモモが一番好き。
面倒なようだが、ここでは両者の好みの違いが幸いして、双方ともに「半分より多くを手に入れた」と満足する結果に。いやしまいにゃ線形計画法なんて重砲をブッぱなしてるんだけど。普通は線形計画法アプリなんかスマートフォンに入ってないってw
まあ小学校の算数の応用問題も、この手の理不尽に文句を言ったらキリないんで、「数学とはそういうもの」と割り切るしかないね。
と、ここまではどうにか納得できたんだけど、「これは反則だろ」と思ったのが、「第7章 赤道の気温定理」。
赤道上の180度正反対の2地点で、同一時刻に気温が同じところが1個存在することが知られている。この1組の場所を探す方法を作れ。
――第7章 赤道の気温定理
現実問題として考えると、標高の高低や天気の違いなどがあって、「そうはならんやろ」となる。そこから何を選び何を捨てるか、みたいなモデル化の能力まで問われる書き方だよね、これ。たぶん、こんな前提なんだと思う。
気温の高低は日照のみで決まる。つまり昼は暑く夜は冷える。
…と思ったら、解説の途中で気圧が出てきた。なんで問題文にない気圧が出てくる?
恐らくは、親しみやすくするための工夫なんだろう。つまり、直接に数式を出すのではなく、とっつきやすい文章で語ろうとしたのだ。ただ、モデル化の際に必要な前提条件を入れ忘れたり、読者が余計な条件を思い浮かべてしまったりで、著者の思惑と異なった形で読者に問題が伝わってしまったのだ。
と、まあ、そんな具合に、分かりやすくしようとする努力はしているのだが、色々と残念な結果になってしまった本だと思う。もっとも、終盤になると著者も開き直ったのか、容赦なく数式が出てくるんだけど。
20世紀に生まれ発達した、新しい数学の一分野を紹介する本として貴重だが、読み解くには相応の覚悟が要る。同じ段落を何度も読み返す、どころか何段落か前に戻って読み直す、それぐらいの覚悟でじっくり挑もう。
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