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2025年7月18日 (金)

ヤン・ルカセン「仕事と人間 70万年のグローバル労働史」NHK出版 塩原通緒/桃井緑美子訳

本書は学問としては労働史の分野のものだが、最近までこの分野が手がけていた範囲をはるかに超えるものである。
  ――はじめに

水平な協力と垂直な従属の両方が包括的な労働史の重要な要素であり、本書の主要なテーマになる。
  ――序章

従属関係だけでなく、協力関係からものを見るのが必須だ
  ――第1章 動物と人間それぞれにとっての仕事

【どんな本?】

 「あなたは何者か」と訊ねられたとき、「銀行員」「飲食店経営」「プログラマー」など職業で答える人は多い。犯罪の容疑者も、「会社員」「教員」などと職業で紹介される。ゲームですら職業がプレイスタイルに大きく関わってくる。現代人にとって、仕事は自らの存在を規定する重要な要素なのだ。

 では。どんな経緯で今の職に就いたのだろうか。親の職を継ぐ人は、ぐっと減った。企業の採用試験を受けたり、転職エージェントを利用する人も多いし、知人の紹介なんて人もいるだろう。

 いずれにせよ、いわゆる「労働市場」で仕事を見つけた人が、現代では大半ではないか。

 だが、人類の歴史を眺めると、このような状況は特異だ。そも市場経済が「世界の各地に何度も出現し、多くはまた消滅した」のだ。

 人間と仕事の関わりを、人類史/世界史レベルの視点で俯瞰し、そのバリエーションと変転を綴る、一般向けの歴史解説書。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は The Story of Work: : A New History of Humankind, Jan Lucassen, 2021。日本語版は2024年3月25日第1刷発行。単行本ハードカバー上下巻で縦一段組み本文約417頁+324頁=741頁。9.5ポイント41字×18行×(417頁+324頁)=約546,858字、400字詰め原稿用紙で約1,368枚。文庫なら厚めの上下巻か薄めの上中下巻ぐらいの大容量。

 文章はやや硬い。が、内容は意外と難しくない。中学卒業程度の世界史の知識があれば充分。

【構成は?】

 ほぼ時系列順に進むので、素直に頭から読もう。

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  •   上巻
  • はじめに
  • 労働史の系譜と研究成果、そして本書のスタンスについて
  • 序章
  • 第1部 人間と仕事 70万年前から1万2000年前まで
  • 第1章 動物と人間それぞれにとっての仕事
  • 第2章 狩猟採集民の仕事
  • 第3章 狩猟採集以外の活動
  • 第2部 農業と分業 紀元前1万年から前5000年まで
  • 第4章 新石器革命
  • 第5章 農民の仕事
  • 第6章 男女間の分業
  • 第7章 世帯間の分業とそこから生じうる影響
  • 第3部 あたらしい労働関係の出現 紀元前5000年から前500年まで
  • 第8章 「複合」農業社会における労働 不平等の拡大
  • 第9章 最初期の都市の労働 職業の文化と再分配
  • 第10章 国家における労働 多様な労働関係
  • 第4部 市場に向けての労働 紀元前500年から紀元後1500年まで
  • 第11章 貨幣化と労働報酬 ユーラシア
  • 第12章 労働市場と通貨と社会 紀元前500年から紀元後400年の中国、ギリシャ・ローマ、インド
  • 第13章 市場の消滅と再出現 紀元後400年から1000年のヨーロッパとインド
  • 第14章 労働市場をもたない異例の国家の成立 アメリカ大陸
  • 第15章 労働市場の復活 1000年から1500年のヨーロッパとインド
  • 第5部 労働市場のグローバル化 1500年から1800年まで
  • 第16章 労働集約型発展経路 近代初期のアジア
  • 第17章 労働集約型発展経路から資本集約型発展経路へ 近代初期の西ヨーロッパ
  • 原注
  •   下巻
  • 第18章 ヨーロッパの影響下で移り変わる世界の労働関係
  • 第19章 東ヨーロッパの労働粗放型発展経路の道
  • 第6部 労働関係の収斂 1800年から現在まで
  • 第20章 産業革命
  • 第21章 非自由労働の衰退
  • 第22章 自営労働の相対的な減少
  • 第23章 家庭内労働の割合の減少
  • 第24章 自由賃金労働の増加
  • 第7部 変わりゆく仕事の意義 1800年から現在まで
  • 第25章 仕事と余暇
  • 第26章 利益の拡大 個人戦略と集団戦略
  • 第27章 仕事と国家
  • 終章 今後の展望
  • 解説 木下順 大原社会問題研究所嘱託研究員
  • 訳者あとがき/原注/参考文献/図版リスト

【感想は?】

 「労働史」と言うと偉そうだが、つまりは「ヒトはどうやって生きてきたか」だろう。

 そういう点では、本書は世界史の本でもある。歴史というと王や将軍を主役に配し国の興亡を語るもの、と思われがちだが、本書は違う。本書の主人公は働いて糧を得る、私やあなたのような普通の人々だ。歴史書には名を記されない、だがその時代の人間の多くを占める人々の暮らしの変転を綴ったのが、本書なのだ。

 本書の特徴は、その視野の広さだ。なにせ石器時代の狩猟採集生活から始まる。ったって、書類で資料が残ってるワケじゃなく、現代の狩猟採集民の暮らしや考古学的資料から類推するんだが、どうも「バンド」が重要な単位らしい。これは「家族」より大きく「部族/民族」より小さい。「部族/民族」が集まる時期を除き、共に移動する単位だ。

平等主義、互酬、共有、寛容は、無差別に発揮されるのではなく、おもにバンドの内部だけで発揮される。
  ――第2章 狩猟採集民の仕事

狩猟採集民のバンドはたいていそれ自体で一つの労働単位を形成し、同じ集団に属する別のバンドの成員とは接触しない。
  ――第3章 狩猟採集以外の活動

 バンド内部の仕事の分担は、できる人ができることをする、本書では「互酬」と呼ぶ形態だ。他の形態は「独立生産」「賃金労働」「奴隷労働」「貢納-再配分」「雇用」が出てくる。

 やがて農業が始まり、人類の暮らしは大きく変わってくる。

「新石器革命」とは、広範囲を移動して食料をとってくる(「大地を糧にする」)経済から、集約的に食料を生産する経済へと、人間の生活手段が根本的に変化したことを指している。
  ――第4章 新石器革命

北半球の農民は夏のあいだにとんでもなく長期間働き、冬のあいだにたっぷり暇をとることになった。
  ――第5章 農民の仕事

 それで楽になるのかと思ったら、困ったことに…

農作業をするということは、世帯全員の労働が増えるということだった。
  ――第6章 男女間の分業

 …なんか、農業に騙されてね? もっとも、皆が似たような仕事をこなすって暮らし自体は大きく変わらなかったようだ。

考古学的データから推察されるのは、土器職人と織物職人を別にすれば、全般に新石器革命から最初の数千年のあいだは専門職の分化は起こっておらず、この期間の最後になってようやく中国に例外的な分化がぽつぽつ生じていたらしい
  ――第7章 世帯間の分業とそこから生じうる影響

 逆に土器職人と織物職人は特別な「専門家」だったのか。織物が大変なのは感覚的にわかるけど、土器を作るのも専門の技術や知識が要るんだろう。火炎土器とか、やたら凝った形だし。

 そんな農業とは別に、牛や羊を飼って暮らす人たちもいた。そして、考古学者や歴史家は彼らを冷遇してきたらしい。

牧畜社会が他の社会から独立を保って営まれたこと、そして国家形成の先駆的な道を開いたことは、長いあいだ――不当に――歴史の禁忌とされてきた。
  ――第8章 「複合」農業社会における労働 不平等の拡大

 とはいえ、農業も時代が下るに従い分業が増えてゆく。名前ばかりが有名で謎が多いインダス文明も…

(インダス文明では)収穫した穀物は農家自身で脱穀しなかった。このことは生産が共同体に、ことによると中央組織に管理されていたことを物語っていると考えてよい。
  ――第9章 最初期の都市の労働 職業の文化と再分配

 と、かなり組織化されていた様子。

 文書だけでなく、遺跡も多く残っているのがエジプト。そう、かの有名なピラミッドやスフィンクスなどだ。あんな豪勢なシロモノを作るには、相当に分業が進んだ社会が必要だ。そこで働く者も、奴隷ってワケじゃなく…

世界初のストライキはデイル・アル=メディーナ(→コトバンク)の労働者によるものだった
  ――第10章 国家における労働 多様な労働関係

 古代エジプトには様々な職業があったらしいことは「エジプト神話集成」で見当がついていたが、雇用主に組合で対抗する場合もあったのだ。

 その雇用だが、やはり色々な形態があったようで。

「直接労働契約が多く見られるのは、家事労働や家畜(馬、家禽、犬)の世話などにおいてで、同様に、官でも民でも書記の仕事や管理の仕事のような、生産に直接かかわらない仕事全般においては直接雇用が主流となるが……生産にかかわる活動全般、とくに大人数の(「組」にして使う)労働者を必要とする仕事では、下請形式のほうが好まれた」
  ――第11章 貨幣化と労働報酬 ユーラシア

 こういう、直接雇用と下請けの違いは、現代でも似ているなあ。

 現代に生きる私たちは、仕事といえばまず雇用が思い浮かぶが、労働市場が不要な社会もあった。

極論をいえば、完全なカースト社会には――とくに村落レベルでは確実に――市場など必要なく、ましてや硬貨のような交換手段もまったく必要でない。
  ――第12章 労働市場と通貨と社会 紀元前500年から紀元後400年の中国、ギリシャ・ローマ、インド

 どのカーストが何をやるかが決まっていて、必要なカーストが揃っているなら、社会は維持できるのだ。そこで生きる人の幸不幸は別として。そして、市場が不要なら、貨幣も不要となる。逆の言い方をすると、貨幣がないと労働市場も成立しない。

ローマ支配の終焉は、すなわち小銭の終焉だった。(略)信頼できる硬貨が豊富に鋳造されていないと賃金労働が日常的に存在できないのである。
  ――第13章 市場の消滅と再出現 紀元後400年から1000年のヨーロッパとインド

 「小銭」である点に留意しよう。その小銭、素材は銅などだが、中には変わった素材もあった。

(アステカでは)カカオ豆が最少額「硬貨」の役を果たし、ケープとして使われる「クアチトリ」よ呼ばれる綿布が中程度の価格の交換手段、斧を模したT字型の青銅器や、その他の貴重品(ガチョウの羽軸に詰めた砂金や、錫の小さな破片など)が最も価値の高い交換手段だった。
  ――第14章 労働市場をもたない異例の国家の成立 アメリカ大陸

 「チョコレートの歴史」にも少し出てきたが、やはりカカオは特別なシロモノだったのか。布を貨幣とするのも、言われてみれば合理的かも。産業革命前は織った布って、すんげえ手間かかってるし。

 さて、やがて近世になると、特に欧州じゃ都市化もジワジワと進み、ギルド=職業組合もできてくる。

ギルドが出現し、繁栄するのに重要だった四つの要因は、都市化、政治経済、人的資本、社会関係である。
  ――第15章 労働市場の復活 1000年から1500年のヨーロッパとインド

 日本でも江戸時代に入ると各藩で地場産業が発達してくる。ただ、その担い手は都市に住む職人じゃない。

地方における非農業生産の重要性は、藩の人口の約90%が「農民」だったにもかかわらず、地域生産物の40~50%を非農業生産物が占めていた
  ――第16章 労働集約型発展経路 近代初期のアジア

 改めて考えると、この「農民」は、農業従事者というより身分としての農民だろうなあ。で、農民といっても、田んぼで米を作るだけでなく、野菜や果物、または綿や胡麻などの商用作物を育てる農家もあるワケで。

 特に、亜麻や綿などの繊維関係は、産業革命のキッカケとなるぐらい、労働市場では大きなシェアを占めていた模様。

繊維産業はヨーロッパの大半の都市で最大の経済部門を占めていた。
  ――第17章 労働集約型発展経路から資本集約型発展経路へ 近代初期の西ヨーロッパ

 そりゃねえ。布を織るにしたって、まず糸を紡ぐところから始めるワケで。当時の女たちにとっても、糸紡ぎは重要な仕事だった模様。ちなみに産業革命の前では、綿織物はインドの名産だったとか。

 さて、本書では、少なくとも近世までは欧州だけでなく、インドなどの南アジアや中国・日本など東アジアも労働市場が発達していた、としている。対してパッとしないのがアフリカ。それには理由があって。

アフリカの人口密度は他大陸よりもずっと低く、1750年で1km2あたり約4人と、西ヨーロッパの1/6である
  ――第18章 ヨーロッパの影響下で移り変わる世界の労働関係

 その人口密度が低い原因は、土地がやせている上に乾季は土地が使えず、ツェツェバエが媒介する睡眠病(→Wikipedia)に人も牛もやられるから。当時の基幹産業である農業がこれじゃなあ。

 対して北のロシア。「穀物の世界史」によれば、産業化が進む西欧に向け、黒海やバルト海を介して小麦を輸出し存在感を示していた。が、意外なことに…

(ロシアの)最も重要な輸出品である穀物に関して注目すべき点は、面積当たりの収穫量が非常に少ないことである。
  ――第19章 東ヨーロッパの労働粗放型発展経路の道

 と、優れた農地チェルノーゼムを擁しながらも、悪名高い農奴制で生産性は悪かったのだ。そのため多くの濃度は東つまりシベリアに逃げ、帝国の東への拡張に一役買っていたとか。

 などと少しづつ産業化が進んで近代にはいると、やってきました産業革命。それまで農民の代表的な副業だった糸の紡績が…

1750年から1800年までのあいだに綿紡績の労働生産性は200倍に上がり…
  ――第20章 産業革命

 と、桁違いの高効率を誇る機械に奪われてしまう。そりゃガンジーも糸車を回すよね。

 その綿を供給していたのが米国南部のプランテーションで、生産を支えていたのが奴隷だ。かの悪名高い三角貿易ですね。ただ、様々な理由から少しづつ世界全体で奴隷制度は減っていく。が、働かせる側にとっては安い賃金で逆らわず働く労働力は都合がいいワケで、体裁を変えて残そうとする。その一つが年季奉公人。

…年季奉公人(略)と同様に、これらの人々も斡旋人に船賃を払ってもらったうえでプランテーション所有者に引き渡され、その債務を返済するために労働に服した。
  ――第21章 非自由労働の衰退

 似たような話を「アウトロー・オーシャン」が外洋漁船の船員で生々しく描いていたし、現代日本でも外国人技能実習生制度を悪用した例が時おりニュースになったり。

 それはともかく、奴隷と共に自営も減っているのが近代から現代の特徴。とくに変化が大きいのが農家だ。日本でも昭和あたりから農家はガックリと減った。米国や豪州の飛行機で農薬をまくような広大な農場を見ると、ちんまい家族経営の農家には生き残る術がなさそうに思えるけど…

全世界の5憶7千万の農場のうち85%は耕地面積が2ヘクタール以下なので、当然ながら小農と定義される。しかしながら、全世界の食糧供給の大半を担っているのがその小農なのである。
  ――第22章 自営労働の相対的な減少

 日本でも農家の大半は兼業だ。が、本書を読むと、昔から農家は糸紡ぎなどの現金収入を得る副業を兼ねていたのが見えてくる。

 その糸紡ぎは女の仕事とされることが多かった。やがて科学や工学が発達し、男が工場などへ働きに出かけるようになると、女の立場や環境も変わってくる。

19世紀に入ると、(略)医学分野での新しい知見を受けて、(略)命を落とさずにすむ子供の数が大幅に増え、それにともなって家事労働が増大したのである。
  ――第23章 家庭内労働の割合の減少

 インフラなどが整備され医療が普及すると、乳幼児の死亡率が下がる。が、従来の多産の習慣は暫く残るので、子だくさんになり人口は増える。国家には嬉しいかもしれんが、女にとっちゃ子育ての手間が増えるのだ。次の世代あたりじゃ子供の数は減るので、女の仕事は減りそうなモンだが…

家庭における母親の務めという点では、重視されることがそれまでの家事から、子育てに移った。
  ――第23章 家庭内労働の割合の減少

 と、忙しさはあまり変わらなかったりする。そういや白物家電が普及しても、なぜか家事の量は減らないんだよね。

 これは雇われ仕事も似たような傾向があって、例えばパソコンが普及すれば経理や事務の仕事は減りそうな気がするが、なぜか現実には逆に就業時間が増えてたりする。

 働かせる方も、一人当たりの仕事量を増やすために、色々と手を尽くす。その一つが出来高制だ。悪くない案のような気もするが、困った影響が出る時もある。

出来高賃金制で誰か一人が過剰に効率を上げると管理者に生産ノルマを厳しくされるのである。
  ――第24章 自由賃金労働の増加

 効率が上がると最初は儲かるけど、やがて単価が安くなっちゃうんだな。書籍も写本の時代は庶民の家ぐらいの価値があったけど、今じゃ1時間のバイト代ぐらいで手に入るようになった。本好きにはありがたいけど、書生は書写で稼げなくなってしまった。それでも、企業は価格競争を続けるから、社会全体としては単価を下げる圧力が働き消費者には嬉しい世界になっている…はずなんだが、同時に企業は人件費削減の努力もしてるからブツブツ。

 とまれ、前世紀までは労働運動などもあって、例えば先進国じゃ1日の労働時間は12時間から8時間になるなど、少しづつ労働条件はよくなってきた…と思ったら。

日本は残業が非常に多いせいで労働時間が突出して多く、長時間労働によるさまざまな健康上の弊害が生じている。
  ――第25章 仕事と余暇

 日本じゃ組合が業界単位や職種単位ではなく企業単位なためか、労働者同士の仲間意識みたいのが薄いんだよなあ。長時間働くって事は、他の人の仕事を奪ってるって事でもあるんだが。

 まあ、それでも、世界全体で見れば日本はマな方で。

労働組合がとくに発達し成果を挙げた国では、さまざまな理由から組合ができなかった国にくらべて、賃金労働者の待遇ははるかに恵まれている。
  ――第26章 利益の拡大 個人戦略と集団戦略

 これは皮肉な話で、労働者の味方であるはずの共産党が支配する国では、なぜか労働者の暮らしはあまし良くならなず、結局ソ連は潰れ中国は資本主義を取り入れた。そしてカンボジアは…

 そんな現代史を反映してか、先進国じゃ左派の人気はさえない。なにせ、本来は左派の支持層であるはずの労働階級からソッポ向かれてるんだから。

「低学歴層は、いまでは左派政党が高等教育を受けた新しい層とその子供を学歴の低い者よりも優遇していると考えるようになった」
  ――第27章 仕事と国家

 そしてなぜか極右が議席を増やしてるんだよなあ。日本共産党も、裏金疑惑を暴いて与党に大打撃を与えたのに、なぜか議席を減らしてるし。

 特に最近はロボットやAIの進歩に加え、インドなどへの外注で先進国の「仕事」は減りつつある。もっとも、AI技術者は引く手あまたでもあるんだが。かつては「21世紀になれば就業時間は減り余暇が増える」なんて明るい展望もあったが、ふたを開けてみればご存知の通り。今のところ、先進国には閉塞感が漂っているが…

「われわれ」の仕事の報酬が公正になればなるほど、これを民主的に他者とも分かちあおうという機運が高まってくる。そしてそれがいっそう公正さの重要性を知らしめるのである。
  ――終章 今後の展望

 と、著者は希望を捨てていない。

 現代の日本に生きる私たちは、「仕事は労働市場で見つけるもの」と思い込んでいる。だが、人類史レベルの視野・視点で見ると、労働市場が幅を利かした時代や国は比較的に稀なのだ、と思い知らされる。権力者や軍人の歴史ではなく、「働く人びと」の歴史に興味がある人にお薦め。

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