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2024年10月15日 (火)

アンドルー・ペティグリー「印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活」白水社 桑木野幸司訳

我々はここにいたって初めて、書物と印刷の歴史についての首尾一貫した物語を、1450年代の揺籃期から近代の情報化社会の入り口に至るまで、綴ることができるようになったのである。
  ――序

印刷術の第一世代に生まれた数々の傑作文学作品には、一つの驚くべき共通点があった。ほぼ例外なく、俗語で書かれていたのだ。
  ――第8章 上品な娯楽

最も安価な書物を購入していた人々は同時に、最も高価な部類の書籍も買っていた
  ――第9章 学校にて

【どんな本?】

 15世紀にグーテンベルクが送り出した印刷術は、印刷・出版業界を爆発的に発展させ、それに伴いギリシャ・ローマ時代の古典を復活させ、ヨーロッパの人々を中世の暗闇から引き出し、ルネサンスを勢いづけた

 …というのが一般的な印象だが、実際にはそれほど単純ではない。例えば、残っている資料には偏りがあり、従来はその偏った資料に依って研究されてきた。残りやすい物は…

ある種の書物が、他と比べて高い生存確率を示すことになる。つまり真面目な内容のものやページ数のあるもの、大判のものなど、町の名士と呼ばれるような市民が、自宅を訪れる者に所有していることを自慢したくなる類の本が生き残ったのである。
  ――第16章 言葉と街角

 対して、残りにくい物も多い。

学校の教科書、教理問答集、ニュース冊子などは、出版されたと分かっている部数が丸ごと消えてしまっていることもある。これらの書物は使い捨てられるものだからだ。
  ――第16章 言葉と街角

 まして数頁のパンフレットや一枚物のビラやチラシが残るのは、よほどの幸運に恵まれた時のみである。だが、当時の印刷業者にとっては、枚数の少ないパンフレットやビラは、事業を続ける際の貴重な運転資金の獲得手段だった。グーテンベルクにしても、42行聖書は有名だが、その前に学生向け参考書の「ドナトゥス」で堅実に事業資金を稼いでいる。

 以降も印刷業界は長期的には発展しつつも山あり谷ありで、出版される書籍の傾向も変化は少しづつだった。

 インターネットの普及により、各地に分散していた古い書物の資料の公開が進み、研究者たちは新規に大量の資料が手に入るようになった。これにより、著者が得意とする16世紀の出版・印刷の研究も、新しい展開を見せた。

 16世紀の印刷術は、どのように普及し発展していったのか。印刷業者は、どうやって事業を続け発展させたのか。主にドイツ・イタリア・フランスそして低地諸国を舞台に、出版・印刷業界の変転と発展そして社会への影響を描く、一般向けの歴史解説書。

 なお、本書で言う「印刷業者」は、現代日本の印刷業者とは大きく異なる。当時は分業されておらず、出版社と印刷会社と取次に運送会社を足したような業態だ。さすがに書店は別…の場合もある。私たちの感覚だと、印刷所を備えた出版社、が近いだろう。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は The Book in the Renaissance, by Andrew Pettegree, 2010。日本語版は2015年8月30日発行。単行本ハードカバー縦一段組み本文約553頁に加え「書記近代印刷文化の興亡と万有書誌の夢 訳者あとがきに代えた文献案内」13頁。9ポイント46字×20行×553頁=約508,760字、400字詰め原稿用紙で約1,272枚。文庫なら厚めの上下巻ぐらいの大容量。

 文章は比較的に親しみやすい。内容も特に難しくないが、時おり解説なしにフォリオ版(→コトバンク)などの専門用語が出てくる、

【構成は?】

 第1部はほぼ時系列順だが、第2部以降はテーマごとに時代を行き来するので、気になった所を拾い読みしてもいい。

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  • 第1部 はじまり
  • 第1章 印刷時代以前の書物
  • 第2章 印刷術の発明
  • 第3章 ルネサンスとの危険な出会い 印刷術の危機
  • 第2部 根づいてゆく印刷文化
  • 第4章 書籍市場の形成
  • 第5章 本の町ヴィッテンベルク
  • 第6章 ルターの遺産
  • 第7章 ニュース速報のはじまり
  • 第8章 上品な娯楽
  • 第9章 学校にて
  • 第3部 論争
  • 第10章 論争文学
  • 第11章 秩序を求めて
  • 第12章 市場原理
  • 第4部 新世界
  • 第13章 自然科学と探検
  • 第14章 治療
  • 第15章 図書館をつくる
  • 第16章 言葉と街角
  • 資料についての覚え書き 印刷の地理学
  • 付録1 1450-1600年にヨーロッパ全域で生産された印刷物の概要
  • 謝辞
  • 書記近代印刷文化の興亡と万有書誌の夢 訳者あとがきに代えた文献案内
  • 図版一覧/参考文献/原注/原注のための略語一覧/索引

【感想は?】

 今さらながら気づいたのだが、出版・印刷は民間、それも営利企業の領分なのだ。

 学問は「王立○○」などが率いるし、造船所は軍が仕切る。日本じゃ鉄道や製鉄所も政府が関わった。だが、本書の出版・印刷業は、みな民間の営利企業だ。政府や教会は、検閲などで制御を目論むが、自ら手を出そうとはしない。

 当時の時代背景を考えると、少し奇妙な気がする。当時は政府が力をつけ始めた時代だからだ。

社会組織のあらゆるレベルにおいて、国家の権威が拡張し、かつてないほどの広範な責任を担うようになっていった。そしてヨーロッパ各地で、権力側がこのような野心を表明する際に、印刷術が重要な役割を演じていたのである。
  ――第11章 秩序を求めて

 というのも、当時の出版・印刷業は、けっこう資本力が必要で、浮き沈みの大きい業種だったのだ。

 その前に。印刷が登場した頃、書籍の読者は増え、市場は熟しつつあった。事業を始めるには好機ではあったのだ。

写本取引の北方の中心地であった低地諸国では、15世紀を通じて写本の生産量はうなぎのぼりに上昇し、1490年から1500年にかけてピークに達した。すでに時は印刷時代に入っていたのだが。
  ――第1章 印刷時代以前の書物

 だが、商売として考えると、色々と難しい。現代日本は出版社→取次→書店→読者って流通網がある。いや密林もあるけどさ。だが、当時はそういう仕組みはない。

いまや300部、400部、場合によっては1000部という単位で印刷される本を、いったいどうやって個々の購買者のもとまで届ければよいのか。しかもこの時点では、いったい誰が本を買ってくれるのかはわからないのである。
  ――第3章 ルネサンスとの危険な出会い 印刷術の危機

 写本の頃は、注文生産だった。だから先行投資は要らない。だが、印刷本は違う。まず紙や生産設備や職人を雇い本を作る。その間、金は出て行く一方だ。読者に売れてやっと収入になる。それまで、売り上げのないまま人を雇い印刷機を動かし続けられる資本力が要る。

 ちなみに当時の印刷本の価格は「グーテンベルクの時代」によるとウィリアム・ティンダルの聖書が労働者の月収ぐらい。

 と、当時の印刷・出版はかなり厳しい事業だったのだが、それでも所によっては爆発的に発展・普及した。それだけ市場は熟していたのだ。もっとも、当時は著作権なんて考え方はないので、売れた本はすぐにパクられ市場を荒らされ…と、すぐに過当競争に陥り多くの業者が淘汰された模様。生まれたばかりの業界で業界のギルドもなく、良くも悪くも自由競争の世界だったのだ。現代日本よりはるかに資本主義してる。

 となれば、業者としちゃ少しでも実績があり安定した売り上げが見込める本に頼りたくなる。それはどういうものか、というと。

ドイツで印刷された最初期の書物は、圧倒的に宗教がらみのものであったこと、
そして同時代の作家より過去の著者のものが中心であったこと。
さらには、それら初期印刷本の大半の著者がドイツ人ではなかったこと
  ――第2章 印刷術の発明

 やはり42行聖書の成功が大きいのか、修道院が写本を作っていたからなのか、宗教関係が多い。「過去の著者」は、ギリシャ・ローマ時代の著作だ。妙にキケロの人気が高い。ドイツ人以外ってのは少し意外だが、日本でも初期のSFは矢野徹や浅倉久志や伊藤典夫による米英の古典の翻訳が多かったから、そんなモンなんだろう。

 もう一つ、業者に有難い仕事がある。頁数が少ないチラシや小冊子だ。少ない資本で作れるし、たいていは地元で配るので現金化も早い。

新たに生み出されたテクストの多くが短い作品であった事実が、さほど経験がない業者にこの好景気の市場に参入をうながす、さらなる刺激となったのである。その結果が新たな書物の大洪水であった。
  ――第6章 ルターの遺産

 ルターの宗教改革で印刷は大きく貢献したのには、そういう理由もあるんじゃなかろか。印刷業者には嬉しい仕事だし。

宗教改革期の論争には、ドイツの印刷産業全体を変容させてしまうほどの強烈な影響力があった。信頼のおける概算によれば、宗教改革勃発後の最初の十年間に市場に出回った福音主義関連の小冊子は、ざっと600万部から700万部に達するという。
  ――第5章 本の町ヴィッテンベルク

 などとカトリックとプロテスタントの争いでは印刷が大きな役割を担ったが、メディア上の戦いはプロテスタントの方が優勢だった。これはルターの戦略もあるんだろう。あの人、賛美歌を親しみやすくするため民謡を採り入れるとか、人気取りは巧みだったし。

ルターその人の著作の絶大な人気を基盤としつつ、福音主義陣営は出版量の点でカトリック側を実に9対1の差で、圧倒的にリードしていた
  ――第10章 論争文学

 激しくなるカトリック・プロテスタントの争いは、人々を地理的にも情報的にも分断してゆく。やがて印刷はニュースも扱い始めるが、、現代のようにロイターやCNNはない。両陣営は、自分に都合のいいニュースだけを流すのだ。

16世紀末の両極化した宗教闘争においては、プロテスタントとカトリックのニュース網は別個の場合が大半であった。
  ――第16章 言葉と街角

 まあ朝日と読売の違いとかは現代も残ってるし、その方が健全な気もする。もっとも、それは私が双方にアクセスできるからで、当時は地理的にも分離が進んだのだ。

16世紀の宗教対立は、人々の大規模な移住をうながした。(略)追放された者たちは、異国の地でその思想を過激化させ、宗教論争のなかでも最も過激なものの熱心な購入者となった
  ――第10章 論争文学

 さすがに現代のドイツじゃカトリックとプロテスタントが暴力的に争うことはない。現代で宗教がらみの大規模移住だと、インドとパキスタンが思い浮かぶ。インド・バングラデシュ(東パキスタン)国境はガンジーが抑えたが、インド・(西)パキスタン国境付近は双方で大規模な虐殺があった。現代でも敵意を煽っているのは移住者の関係者が多いんだろうか。

 話がヨレた。印刷はニュースも扱ったが、現代の新聞や電波のような速報性も信頼性も持たなかった模様。

印刷された言葉は、キリスト教徒勝利の解釈を形成するのにたしかに重要な役割を果たしたが、事件の第一報を伝える手段となることはほとんどなかった(略)。人々は口コミで情報をキャッチし、あるいは街角の噂話に耳をそばだて、鳴り響く鐘の音や祝砲などを聞くことで、速報を手に入れたのである。
  ――第7章 ニュース速報のはじまり

 口コミの方が早いし、信用もあったのだ。でも、印刷業者にとっては有り難い仕事だったろう。量が少なく現金化が早いので、当面の資金を手っ取り早く手に入れるには都合のいい仕事だったはず。

 もう一つ、印刷業者には重要な商売のルートがあった。見本市だ。最も大きいのはフランクフルトの見本市で、今日のフランクフルト・ブックフェア(→Wikipedia)のルーツ

(15世紀の)ヨーロッパの市場をめぐる書物の動き、すなわち本のビジネス全体は、見本市を中心に展開していたのである。
  ――第4章 書籍市場の形成

 業者は見本市で半分近くを売り上げ、また他の(主に遠方の)同業者から本を仕入れるのだ。そうやって、本は国際的な取引品目となってゆく。お陰でイングランドのような小国は、特にラテン語の市場を低地諸国の業者に奪われ、自国の印刷業はパッとしないまま。

 そんなこんなで、誕生間もない出版・印刷業界も、資本力による淘汰がなされてゆく。特に色濃く差が出るのが…

16世紀には経済力学の鉄則が作用して、巨大で立地のよい印刷拠点の支配、十分な資本をもつ業者の支配が強まった。ある種の書物は、豊富な資本を持ち、十分に信頼のおける資金運用が可能な出版業者のみが生産できた。浩瀚な学術書や技術書の類は、こうした条件をそなえた工房の独占ジャンルとなっていった。
  ――第12章 市場原理

 現代日本でも、辞書は大きな出版社の独壇場だったり。あれは大出版社の矜持みたいなモンなんだろう。中でも資金力が必要なのが…

16世紀に出版された自然科学系の学術書の大多数は、すでに書籍業界のヒエラルキーの頂点にあって市場を支配していた、ごくひとにぎりの出版社から刊行されていた。この分野は、(略)資金と知性の両面で、莫大な資本投下を必要としたからだ。
  ――第13章 自然科学と探検

 これには下世話な理由もあって、活字の他に版画による挿絵が重要だからだ。そのため、費用もかさむ。動物や植物の図鑑ともなれば、やはり図が主役だし。

数百という図版を必要とする自然関係の大百科全書ともなれば、そのコストはおそろしくはねあがった。複雑な書物の企画では、図版の制作費用が総費用の実に3/4近くになることもままあり…
  ――第13章 自然科学と探検

 ドイツは幸運にも、優れた版画家に恵まれた。

植物図譜の発展は、アルブレヒト・デューラー(→Wikipedia)の革新的な作品に深く依拠していた。
  ――第13章 自然科学と探検

 もう一つ、図版が重要な出版物がある。地図だ。新大陸が注目を集めた時代だけに、世界の形への興味は強かった。

新世界の探検がもたらした衝撃がもっとも大きかったのが、地図製作術の分野であった。
  ――第13章 自然科学と探検

 こういった状況からか、印刷本も世間から信用を得てゆく。もっとも、学者たちは誤植の多い植字工に文句たらたらだが。

15世紀後半の聖書は、グーテンベルク版か、それを底本とした聖書を活用した。こうして知らぬ間にグーテンベルクは、ウルガタ版を聖書の権威ある標準テクストへと仕立て上げるのに大きな役割を果たしたのである。
  ――第2章 印刷術の発明

 現代日本と同様、怪しげな医学書や健康法も売れ筋だった。当時は床屋が外科医を兼ねていたが、大学で医学を学んだインテリの医師もいた。

(医学)市場が発展してゆく過程で、印刷術が果たした役割は大きかった。とりわけ、入念に構築されていた医学界のヒエラルキーを浸食しあるいは無視するのに、印刷本が大きく関与したのである。
  ――第14章 治療

 もっとも、当時の医学はローマ帝国時代のガレノス(→Wikipedia)を頂点と崇めるような状況だったので、良かったのか悪かったのか。

当時の医学知識などたかが知れたレベルであり、治療のしようがない病気が多かった
  ――第14章 治療

 とまれ、本の流通量が増え価格が安くなったため、社会的な弱者にも御利益はもたらされた。

教理学校はまた、慣習的な教育の制度からはじきだされてしまった子供たち、すなわち貧しい労働者の子弟や少女たちに、重要な教育の機会を提供していたのである。
  ――第9章 学校にて

 ゲームや「小説家になろう」の転生物などでは、教会が貧しい者に初等教育を授ける話が多い。いわゆる「ナーロッパ」が歴史的な事実に沿っている珍しい例だろう。

 そんな印刷を、商売で戦略的に使う者もいる。

印刷版のシェイクスピア(ならびにベン・ジョンソン(→Wikipedia))の戯曲は、当時の舞台で一般的であった二時間という上演時間にうまくおさめるには、あまりに長すぎる。ということはつまり、印刷版の戯曲には、舞台で通常使われないことを著者が承知の箇所が含まれていた可能性があるのだ。
  ――第16章 言葉と街角

 私はシェイクスピアを芸術家というより巧みな興業家つまり商売上手だと思っているんだが、それを裏付けるような逸話だ。なお、第二回の公演に合わせたタイミングで出版された模様。つまり初回の公演の評判がよく再演が決まった演目を出版したのだ。しかも書籍用にアレンジを施して。

 などとヨーロッパでは出版・印刷業者が激しい生存競争を繰り広げていたが、イスラム世界は平穏なもので。なにせ印刷は禁じていたのだ。これは当時のインテリであるイスラム法学者たちが自分たちの利権を侵されるのを嫌ったためだ。だからか、イスタンブールにはヘブライ語の印刷業者がいた。

ヘブライ語の活版印刷は、オスマン帝国においては他に類のない現象であった。というのもこの国では17世紀にいたるまで、この言語以外の印刷活動はほとんど知られていなかったからである。
  ――第12章 市場原理

 この業者、実はスペインから異端審問を逃れてきたユダヤ人だったりする。金融業とか、規範が面倒臭い社会だからこそ、異物が必要になるってのも、面白い現象だよなあ。

 などとダラダラと書いてきたが、やはり私にとっては、印刷業界の営利企業としての側面の印象が強く残った。自由競争といえば聞こえはいいが、ギルドもなくパクり上等の仁義なき業界だったとは。しかも本格的な書籍となれば現金化は年単位で先になる。それでも多くの業者が参入したのは、それだけ商業資本も集約されつつあったんだろう。

 ルターの宗教改革が絡むため、どうしても自由の象徴のような印象になりがちな出版・印刷業界だし、実際にそういう面もあったんだろうが、生き延びたのは資本力や立地やコネに恵まれた業者だったのは、ビジネスの厳しさを感じさせる。他にもエラスムスが意外と面倒くさい奴だったりと、面白い逸話も多い。歴史と出版に興味がある人向け、かな。

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