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2020年2月14日 (金)

塩之入洋「高血圧の医学 あなたの薬と自己管理」中公新書

本書は、成人の最大疾患群「高血圧」がもついろいろな問題点の解説、危険な合併症を防ぐための対策、高血圧の持続的な治療の必要性、高血圧治療薬の適応と副作用、「快適な生活を過ごす」ために知っておくべき知識などを記述しました。
  ――はじめに

安静時の成人の正常な動脈血圧は、収縮期(最大)血圧が100-130mmHg、拡張期(最小)血圧が50-85mmHgにあります。
  ――第1章 高血圧と血圧測定

【どんな本?】

 30歳以上の日本人のうち、約3300万人、つまり三人に一人が高血圧と思われる。もはや日本の国民病と言ってもいいだろう。

 その高血圧とは、どんな状態か。高血圧の何が悪いのか。高血圧か否かは、どうやって調べるのか。なぜ高血圧になるのか。高血圧を防ぐには、どうすればいいのか。どんな治療法があるのか。高血圧の薬には、どんなものがあるのか。それぞれの薬には、どんな特徴があるのか。薬を服用する際には、どんな事に気を付ければいいのか。

 老化に伴う宿命ともいえる高血圧について、その危険と対策、そして主な薬を中心に語る、医学解説書。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2002年1月25日発行。新書版で縦一段組み本文約237頁に加え、あとがき2頁。9ポイント41字×16行×237頁=約155,472字、400字詰め原稿用紙で約389枚。文庫なら薄めの一冊分ぐらいの文字量。

 文章の読みやすさと、内容のわかりやすさは、読者による。というか、対象読者を絞り込めていない。

 素人向けだとしたら、文章は硬すぎるし、専門用語を説明抜きで使いすぎる。細かいところでは、「増大する」「減少する」より「増える」「減る」の方が親しみやすい。「過剰な食塩を摂取」を「塩の摂りすぎ」にするなど、工夫してほしい。また「レニン-アンジオテンシン系」とか言われても、素人には見当がつかない。

 特に第4章~第8章は、医師や厚生省の役人など専門家向けの内容だろう。これが本書の半分近くを占めてたりする。

 かと思えば、高血圧の説明に水まき用のホースで例えるなど、素人向けに工夫している所もあるから、評価に困ってしまう。

 日頃から論文や報告書などの専門家向けの文書を書きなれた人が、同じ勢いで書き下ろした、そんな雰囲気の本だ。

【構成は?】

 素人なら、第1章と第2章は、ちゃんと読もう。第3章は軽く流し読みでいい。第4章~第8章は、読み飛ばしてもいいし、自分が当てはまる所だけをつまみ食いしいてもいい。第9章と第10章はちゃんと読もう。

  • はじめに
  • 第1章 高血圧と血圧測定
  • 第2章 高血圧の診断と危険因子
  • 第3章 高血圧治療と降圧剤
  • 第4章 第一選択薬の特性と選択
  • 第5章 高血圧治療薬の薬物相互作用
  • 第6章 合併症を持つ場合の高血圧治療薬の選択と注意
  • 第7章 女性と小児の高血圧
  • 第8章 特殊な高血圧 二次性高血圧など
  • 第9章 高血圧治療 ちょっと気になる疑問
  • 第10章 飲酒と喫煙
  • 付章 低血圧
  • あとがき

【感想は?】

 最近の健康診断で高血圧と言われた。まあ歳だし、とは思うが、やっぱり怖い。何ができるかを知りたくて読んだんだが、これが実にみもフタもない。要は食事と生活習慣を変えろ、だ。

…ライフスタイル改善の共通点は、過剰なカロリー(エネルギー)摂取制限と、適切な運動にあります。
  ――第2章 高血圧の診断と危険因子

 思い当たるフシは、確かにある。体を動かすのは嫌いだし、食事は偏ってる。あまり塩分は摂らないが、甘いものは大好きだ。酒は飲まないが、煙草は吸う。ダメじゃん。

 せめて少しは体を動かすようにしよう。でも走るのは嫌だなあ。筋トレなんて冗談じゃない。なんて思っていたら、実はそれでも構わないのだ。

運動ではとくに有酸素運動(エアロビクス)が勧められ、全身の大きな筋肉を繰り返し時間をかけて動かすものがよいとされます。具体的には、散歩、早歩き、球技、水泳、サイクリング、ダンスなどです。
  ――第9章 高血圧治療 ちょっと気になる疑問

 うん、それならできる。ヲタクの例に漏れず、歩くスピードは速い方だ。なら早歩きで散歩すりゃいいか。

 …で記事が終わっちゃったらアレなので、後は野次馬根性で面白かった所を。まずは、高血圧の原因について。

高血圧は大別して、本態性高血圧(原発性高血圧、体質性高血圧)と二次高血圧にわけられます。本態性高血圧は、現在のところ、真の原因が不明な高血圧で、全体の90%を占めています。
  ――第2章 高血圧の診断と危険因子

 同じ高血圧でも、内臓疾患などによる場合もあるのだ。もっとも大半は「真の原因が不明」の方だけど。つか、わかってないのか。とはいえ、医者の言う「わかってない」は、素人が考える「わかってない」とは違うようだが。たぶん、原因と結果は見当がついているけど、途中でどんなホルモンや酵素がどう関わっているのか、そのメカニズムの一部が明らかになっていない、みたいな意味なんだろう。

 ちなみに子供も高血圧になるとか。ただし、二次高血圧の疑いもあるので、尿タンパクなど他の検査も併せて考えましょう、と。パタリロはコレかな?

 本質的な解決にはなってないんだが、ある程度は医者を誤魔化す方法も書いてあったり。曰く、血圧を測る前の30分はコーヒーを飲まず煙草も吸わない。冬より春や秋の快適な季節は血圧が低くなりやすい。そうか、次の健康診断では←をい

 ゴマカシじゃないけど、喪男にありがちなのが、白衣高血圧。要は血圧を測る時に緊張しちゃって、普段より高い値になっちゃう。うん、きっと俺はコレだわ←をい。まあ、それだけじゃなくて、日頃から仕事や睡眠不足でストレスが溜まってると、血圧も高くなるわけで、健康診断の前日は早く寝ましょう。

 いわゆる代替医療への警告もチラホラと。特に著者が気にしているのが、セイヨウオトギリソウ俗称セント・ジョーンズ・ワート(→Wikipedia)。他の薬との飲み合わせによっては、「深刻な病状の悪化」もあり得るので、「厚生労働省からも警告」が出ている。きっと当時は流行ってたんだろうなあ。

 というか、第5章を流し読みした限り、日頃から飲んでる薬などは、ハッキリと医師に告げておく方が無難だよね、と感じる。薬どうしで効果を強めたり弱めたり、または思わぬ副作用をもたらしたり、イロイロあるのだ。素人が全貌を掴むのはまず無理なので、医師に正確な情報を伝えて判断を任せた方がいい。

 2001年と医学系の本の中だと最新とは言い難いが、基本的な対策は今も大きく変わっちゃいない。つまり酒・煙草・暴飲暴食・塩分を控え、長時間の軽い運動をしましょう、医師には隠さず正直に相談しよう、そんなあたりだろう。とはいえ、わかっちゃいるけどやめられない、なんだよなあ。困ったもんです。

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