フィリップ・ボック「現代文化人類学入門 1~4」講談社学術文庫 江渕一公訳 1
本書の中心テーマは、文化現象というものはすべて類似した構造をもっているということ、すなわち、文化の構成要素をなす言語、社会、技術、思想などの各体系は、それぞれ、学習によって獲得された「経験の範疇」から成っており、それらの範疇は、慣習によって、一定の「行動準則」と結合しているということである。
――日本語版への序文
【どんな本?】
文化人類学とは何だろう? それは何を扱い、どんなことを調べるんだろう? 社会学や言語学とは、何が違うんだろう? 文化人類学者は、どこに行って何を見て何をしているんだろう? どんな根拠からどんな理屈でどんな結論を引き出すんだろう? そして、今までの研究で、何が分かって何が分かっていないんだろう?
アメリカの文化人類学者による、文化人類学を学ぶ大学生のための教科書であり、また文化人類学に興味がある一般人向けの入門書。
ただ原書は1974年といささか古いので、書名の「現代」は割り引いて考えた方がいいかも。また今は手に入れるのが難しいので、読みたい人は図書館で借りよう。
【いつ出たの?分量は?読みやすい?】
原書は Modern Cultural Anthropology : an introduction : Second Edition, by Philip Karl Bock, 1974。なお原書の初版は1969年。日本語版は1巻&2巻1977年1月10日第1刷発行、3巻&4巻1977年2月10日第1刷発行。文庫本で縦一段組み、本文約(195頁+299頁+297頁+135頁=926頁)に加え、訳者解説13頁+訳者あとがき2頁。8.5ポイント41字×18行×926頁=約683,388字、400字詰め原稿用紙で約1,709枚。3巻か4巻が妥当な分量。
文章は教科書的で、やや硬い。二重否定などの持って回った表現は少ないものの、学術書らしく正確であるよう心掛けているので、小難しい雰囲気の文になる。が、内容はそれほど難しくない。硬い文章に怖気づかなければ、高校生でも読めるだろう。特に諸星大二郎やジャック・ヴァンスが好きな人にお薦め。
【構成は?】
「第一版への序文」で「本書は概念的に一貫した構成をとっている」とあるので、できれば素直に頭から読もう。
|
|
|
|
【感想は?】
本書の特徴は、次の三つだろうか。
- 「範疇」と「準則」
- 文化的相対主義
- ときどき皮肉なユーモア
それぞれについては、次の記事から。
【関連記事】
| 固定リンク
「書評:歴史/地理」カテゴリの記事
- ダニエル・ヤーギン「新しい世界の資源地図 エネルギー・気候変動・国家の衝突」東洋経済新報社 黒輪篤嗣訳(2024.12.02)
- アンドルー・ペティグリー「印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活」白水社 桑木野幸司訳(2024.10.15)
- ジョン・マン「グーテンベルクの時代 印刷術が変えた世界」原書房 田村勝省訳(2024.10.09)
- クリストファー・デ・ハメル「中世の写本ができるまで」白水社 加藤麿珠枝監修 立石光子訳(2024.09.27)
- クラウディア・ブリンカー・フォン・デア・ハイデ「写本の文化誌 ヨーロッパ中世の文学とメディア」白水社 一条麻美子訳(2024.09.30)
コメント