田中啓文「UMAハンター馬子 完全版2」ハヤカ文庫JA
そこのけそこのけ大阪のオバハンが通る。
曾我家馬子。年齢不詳。ケバい化粧にド派手なシャツ、山道だろうとヘップ(サンダル)で通す。気まぐれで身勝手、口は減らない反省しない、問い詰められりゃ可哀相なアテクシを気取る。お肉大好きお魚嫌い、金に汚いが後先考えず浪費しまくり。迷惑極まりないオバハンだが、独特の芸「おんびき祭文」は全ての聴衆を魅了する。
その弟子、蘇我家イルカ。年齢は…えっと、いくつだっけ?15ぐらいにしとこ。馬子の「おんびき祭文」に心酔している。馬子の無茶な注文にコキ使われ、文句は腹の中で押し殺す。けなげです。
そんな二人のドサ回り珍道中。馬子は金に汚いわりに、全く儲からない仕事を時折引き受ける。どうも不老不死に関係あるらしい。書名の通り、各章では未確認生物が登場する。二巻ではヒバゴン・グロブスター・チュパカブラ・クラーケン、最終章では…
大阪らしいベタなタッチが田中啓文の魅力。いかにもオバハンな馬子が、旅館の女将や土地の村長などにつけるイチャモンや厚かましい要求などの会話は実に楽しい。バトル・シーンなどでのグロ描写も特徴で、生暖かい粘液のしたたるシーンをとことん下品に描ききる。忘れちゃいけないのが地口で、これはもう作者の病気。私は最近、快感になってきた。もうダメかも。
最終章は完結編。馬子の正体など、キチンとケリをつけ見事に風呂敷をたたんでいる。しかも田中節全開で、某ドラマの感動の名シーンも、田中啓文にかかると凄まじいシロモノに変わってしまう。いやこれ2ちゃんの某板でネタ元と比較したら、祭り間違いなしのヒドさ。どうヒドいかというと、つまり田中啓文です。彼の芸風と会わない人は、やめといた方がいいです。お互いの心の平和のためにも。まあなんというか、とにかく知的でも上品でもありません、はい。
| 固定リンク
「書評:ライトノベル」カテゴリの記事
- 小野不由美「白銀の墟 玄の月 1~4」新潮文庫(2019.11.12)
- 森岡浩之「星界の戦旗Ⅵ 帝国の雷鳴」ハヤカワ文庫JA(2018.10.14)
- オキシタケヒコ「おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱」講談社タイガ(2018.08.05)
- エドワード・ケアリー「アイアマンガー三部作3 肺都」東京創元社 古屋美登里訳(2018.06.25)
- エドワード・ケアリー「アイアマンガー三部作2 穢れの町」東京創元社 古屋美登里訳(2018.06.24)
コメント