山本周五郎「おごそかな渇き」新潮文庫 続き
うはは。馬鹿だ俺。最後の疑問の解は付記を見ればわかる。
「浮かれてんじゃねーよ、武士は馬の良し悪しじゃない、戦で勝ってナンボだろ、既に関ヶ原で大勝したとはいえ豊臣は健在、いつ戦があるかわかんないんだぞ」と暗に主君を戒めた、って所かな。つまりあの演説はまんざら嘘でもなく、平和ボケしていたずらに華美を誇る風潮への批判でもあるわけで。
山本氏は好戦的な人ではないけど、慶長という時代背景と半之丞の身分を考えれば戦の備えを優先するのは仕方ないやね。
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コメント
恥ずかしながら樅ノ木は未読でして。
老後の楽しみに取っておこうかな、と思ってましたけど、
話題を振られると、つい読みたくなっちゃいますね。
投稿: ちくわぶ | 2010年12月31日 (金) 10時44分
>浮かれてんじゃねーよ、武士は馬の良し悪しじゃない、戦で勝ってナンボだろ
そもそも、この人は戦に勝つということにすら大してこだわっていないと思うのですが
いかがでしょう。そういう世間(当時の)で立派であるとされる価値観にすら興味がない
浮世離れした変人(ほめ言葉)なんですよ。
でしゃばりはしなくとも謙虚でもない。
(自分で自分に投票するような神経の持ち主ですから)
駿馬で勝つのは当たり前でつまらない、俺なら、この馬でもそこそこの成績は出せる、それを周りの者に見せつけてやりたい
そんな気持ちもあったでしょう。
周囲にどう思われようが自分は自分の生きたいように生きる、ただそれだけだったと思います。周五郎の描いた原田甲斐にも通じるようです。
投稿: | 2010年12月31日 (金) 02時50分