畑村洋二郎 畑村式「わかる」技術 講談社現代新書
知人に勧められて読んだ。書名に「わかる」が入っているだけあって、サクサク読めるし、著者の具体的な体験談も多く、まあ面白い。ただ、書名に著者の名前が入っているせいか、少し自慢話めいた雰囲気のエピソードが多いのはご愛嬌か。
理解の方法を説いているのではなく、理解力を高める訓練方法を説いている。だから、これを読んだからといって突然物事が理解できるようになるわけではない。では、この本に書かれていることを実践すれば本当に理解力が高まるのかというと、うーん、やってみなくちゃわからないね。
いくつかは納得できる、というより元々の自分の考え方に近い記述もあった。例えば数学の習得方法で、「身近な例から学ぶ」のくだり。著者は常磐線の例を出しているが、私は通学路の近道で理解していた。逆演算のあたりは、プログラマならおなじみの思考法だろう。うまくいく論理をまず考えて、次にそれを破綻させる要素を検討し、検証する。まあ最近はテスト・ファーストなんてのも出てきてるけど。
手の平をいっぱいに広げた際の、親指の先から小指の先までの距離を覚えておけば、大雑把なモノサシの代わりになる、なんてあたりはさすが工学部。自分のを図ってみたら21cmだった。覚えておこう。
ひとつ、著者が書いていない、けど無意識にやっている事がある。それは図を書くコツ。この人の図の多くは簡略化した「人」が入っている。最近、気がついたんだが、図に「人」が入ってると、「わかりやすさ」が増すんだ。たぶん、著者は長年「わかりやすさ」を追求していて、若い頃に図に人を書く入れるというコツを身につけたんだろう。もう習慣になっていて、無意識にやっていることだから気がつかないんじゃないかな。なんか一本取ったって気分。
| 固定リンク
「書評:科学/技術」カテゴリの記事
- 村上柾勝「シェークスピアは誰ですか? 計量文献学の世界」文春新書(2025.11.07)
- 関根慶太郎監著 瀧澤美奈子著「読んで納得!図解で理解!『ものをはかる』しくみ」新星出版社(2025.10.21)
- ジョセフ・メイザー「数学記号の誕生」河出書房新社 松浦俊輔訳(2025.09.29)
- リー・アラン・ダガトキン+リュドミラ・トルート「キツネを飼いならす 知られざる生物学者と驚くべき家畜化実験の物語」青土社 高里ひろ訳(2025.08.31)
- トム・ジャクソン「冷蔵と人間の歴史 古代ペルシアの地下水路から、物流革命、エアコン、人体冷凍保存まで」築地書館 片岡夏実訳(2025.08.22)


コメント