SFマガジン2007年4月号
チャールズ・ストロスの「ローグ・ファーム」がいい。シンギュラリティ後、人口が激減した地球に残った人々を描く。主人公は老夫婦ジョーとマディ。所有者がいなくなった農場に勝手に住み着いて半農半畜の生活をしている。そこに「ファーム」と呼ばれる邪魔者が現れ…
なにせストロスの描く世界だから、少し、いやかなり今の農家とはズレている。主人公の二人が最初にファームと対峙するシーンや、ジョーと牧羊(?)犬ボブのやりとりとか、とことんおバカなモンティ・パイソン風で楽しい。
小川一水「千歳の坂も」は、今までの彼の作風とはだいぶ味わいが違う。従来得意としてきた、骨太でありながら細かい設定や構成に拘った本格的な作品じゃない。情緒的な余韻を狙った感じがする。
不老不死が実現した未来。政府は「健康である事」を義務として国民に課した。しかし、延命措置を拒否して自然な老化に身を任せる者がいた。役人の羽村は、延命拒否者の老女に延命措置を勧めるが…
不老不死が実現する経過が実もふたもなくて小川一水らしい。エンディングも、ある意味この作者が一貫して書き続けているテーマに沿っているように思う。
林譲司「大使の孤独」はAADD シリーズの密室殺人ミステリ。異性人ストリンガーとのコミュニケーションは遅々として進まない。人類と異星人は、宇宙ステーションで少人数の共同生活を通して意思疎通を図る実験を始める。しかし、エアロック内で人類のペロシが外傷を負って死亡する。現場にいたのは異性人の使者「大使」のみ。ペロシは殺されたのか?だとすれば異性人の動機は?
ラストでセイバーヘーゲンのバーサーカー・シリースを思い出した。
椎名誠のエッセイは…おっさん、なんじゃそりゃ。いや好きですけどね。あまりにSFマガジンのイメージと違うテーマなんで。
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