北村薫「冬のオペラ」C★NOVELS BIBLIOTHEQUE 中央公論社
北村薫「冬のオペラ」C★NOVELS BIBLIOTHEQUE 中央公論社
叔父の不動産屋に勤める姫宮あゆみ19歳は、奇妙な入居者にであう。
巫(かんなぎ)弓彦、たぶん40代の中年男。
自ら「名探偵」を名乗るが繁盛せず、新聞配達やビアホールのウェイターで
日々の糧を得ているらしい。
妙に現実味のある名探偵とワトソンのコンビが出会う3つの事件の短編集。
といってもあまり派手な事件は…ごにょごにょ。
ミステリはあまり読まないのでトリック云々の出来はよく分からない。
けど、彼の文章は好きだ。
円紫さんシリーズ同様、主人公の姫宮あゆみの視点がいい。
枯山水に日光と砂の駆け引きを見る。
藻の繁殖した池を抹茶羊羹色と語る。
金閣寺を見て金箔の剥げかかった金閣寺を妄想する。
なんとまぁ豊穣な世界に生きていることか。
同じ世界でも、見る目が違えば途端に意味深く彩り豊かな世界になる。
そういえば近所に梅の木があったな。ちょっと様子を観察してみよう。
| 固定リンク
「書評:フィクション」カテゴリの記事
- ドナルド・E・ウェストレイク「さらば、シェヘラザード」国書刊行会 矢口誠訳(2020.10.29)
- 上田岳弘「ニムロッド」講談社(2020.08.16)
- イタロ・カルヴィーノ「最後に鴉がやってくる」国書刊行会 関口英子訳(2019.12.06)
- ウィリアム・ギャディス「JR」国書刊行会 木原善彦訳(2019.10.14)
- 高木彬光「成吉思汗の秘密」ハルキ文庫(2019.06.19)
コメント