カテゴリー「書評:SF:海外」の164件の記事

2017年3月20日 (月)

M・R・ケアリー「パンドラの少女」東京創元社 茂木健訳

すべてのものには、ふたつの面がある。だけどそれを確かめるには、匣を開けるしかない。

兵隊であるパークスが最も得意としているのは、解決策がひとつしかない問題を迅速に処理することだ。

【どんな本?】

 イギリス生まれでアメコミの原作を書いていたマイク・ケアリーが、M・R・ケアリー名義で発表した長編ゾンビ小説。SFマガジン編集部編「SFが読みたい! 2017年版」のベストSF2016海外篇でも、17位に食い込んだ。

 近未来のイギリス、ロンドン郊外。謎の奇病により人類の大半は知性を失いゾンビと化すが、郊外の街ビーコンに立てこもり生き延びた者もいた。奇妙な事にゾンビとなりながらも知性を持つ子供たちが見つかり、ビーコンの北120kmほどの<基地>に集め研究していた。

 しかし<基地>は襲われ、脱出できたのは五人だけ。優秀な軍曹パークス、ヒヨッコ一等兵ギャラガー、熱心な研究者ドクター・コールドウェル、熱血教師ジャスティノー、そしてゾンビ少女のメラニー。ゾンビがうろつくイングランド南部を、120km南のビーコンを目指し五人は進む。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は The Girl With All The Gifts, M. R. Carey, 2014。日本語版は2016年4月28日初版。単行本ソフトカバー縦二段組みで本文約383頁に加え、訳者あとがき4頁。9ポイント24字×20行×2段×383頁=約367,680字、400字詰め原稿用紙で約912枚。文庫本なら上下巻でもいい分量。

 文章はこなれている。内容も特に難しくない。ゾンビ化の真相がちと専門的だが、まあハッタリです。

【どんな話?】

 近未来。<大崩壊>をもたらしたのは、謎の奇病だった。罹患した者は知性を失って<飢えた奴ら>=ハングリーズとなり、他の者に噛みつく。噛みつかれた者もハングリーズとなり、人を襲い始める。しかも、ハングリーズは百キロ以上遠くからでも人の臭いを嗅ぎつけ、凄まじい勢いで追いかけてくるのである。

 世界規模で同時に発生した奇病により人類の文明は崩壊、運良く助かった少数の者が郊外の街に立てこもり、対策を練っていた。

 その研究は、ロンドンの北50kmほどにある<基地>で行われている。ハングリーズとなりながらも、なぜか知性を失わない者が見つかったのだ。全て幼い子供ばかり。<基地>では、そんな子供たちを狩り集め、教育を施し、またハングリーズに対抗するための研究が続いていた。

 メラニーは10歳。基地で暮らすハングリーズの一人だ。楽しみはミス・ジャスティノーの授業。授業中は車椅子に縛りつけられ、頭すら動かせない。それでも、ミス・ジャスティノーが教えてくれるお話が大好きだった。いつか、多くの人が住むというビーコンに行きたいと思っている。

 ときどき、何の前触れもなく子供が消える事がある。最初はヴェロニカだった。次にリアムとマルシア。そして、メラニーの番が来た。

【感想は?】

 まず発想がおかしい←ほめてます。なんたって、視点がゾンビだ。

 主人公はゾンビ少女のメラニー10歳。いやゾンビではなく作中では<飢えた奴ら>=ハングリーズとなってるけど。にも関わらず、なぜかメラニーは人としての意識は保ち続けている。

 ゾンビの性質も、俗説とは少し違う。タフでなかなか死なず、人を襲い、噛まれて伝染するのは同じなんだが、イザとなった時の運動能力はチーター並み。幸いお馬鹿なのも俗説と同じなんだが、稀にメラニーのような子供ゾンビもいる。

 で、ゾンビ少女のメラニー視点で始まるあたりが、とってもおかしい。

 このメラニー、なかなか賢い子なんだけど、<基地>以外の世界を全く知らない。かなり酷い扱いを受けてるんだが、そこしか知らないから恨みもへったくれもなく、素直にミス・ジャスティノーを慕うあたりが、実に泣かせます。

 そんなメラニーに嫌われるドクター・コールドウェルが、これまた見事なマッド・サイエンティストで。過去の因縁もあってか、世界で最も大切なのは己の研究と信じて疑わず、一切の感情を排して研究に向き合う姿は、まさしく研究者の鑑。当然、実験動物の気持なんか全く斟酌しません、はい。

 そんなわけで、メラニー視点で描かれる彼女の姿は、コールドを含む名前もあって、あまし芳しいもんじゃないけど、終盤で彼女が見せるプロ意識は、なかなか感動的だったりする。

 やはりプロに徹しているのが、基地を守る兵をまとめるパークス軍曹。なぜか将校が来なくなった基地を、指揮官としての優れた手腕でまとめあげ、また若く頼りない部下たちに対しても、厳しいながら加減を心得えた的確なもの。失敗した部下に対しても、無駄な叱責はせず実用的なアドバイスを教えるあたり、理想的な下士官でもある。

 そんなパークスも、前半じゃ謹厳実直で脳筋な石頭に見えるんだが、旅を続けるに従い次第に印象が変わってくるのが、ちょっとした読みどころ。

 この印象を変える役割を受け持つのが、ヘタレ一等兵のギャラガー。軍に入ったいきさつもあり、パークスを心の芯から敬う若者。いろいろと頼りない所もあるけど、煩悩を持て余す年頃でありながら、なんとかパークスに認められようと頑張るあたりは、ちょっと可愛かったり。

 そしてメラニーに慕われる教師のミス・ジャスティノーは、主人公の補佐役に相応しいホスタビリティあふれるいい人。著者も教職の前歴があるためか、教え子を思いやる教師の気持ちがしみじみと伝わってくる。それが行き過ぎて困ったことになる時もあるんだけど。

 などの五人組が、ゾンビだらけのイングランド南部を突っ切る旅が、このお話の中心。

 なんだが、怖いのはゾンビだけじゃないあたりが、ヒネリの効いた所。<廃品漁り>=ジャンカーズと呼ばれる連中だ。人間でありながらビーコンへは移らず、群れをなし弱肉強食の世界で生きている。つまりはヒャッハーな連中です。彼らが単なる敵役だけじゃないのも、この作品の巧妙な所。

 基地での日々を描く冒頭はややモタつくけど、五人が旅に出てからの中盤以降は緊張と驚きの連続で飽きさせない上に、旅の中でそれぞれの人物像が次第に変わってゆくのも面白い。そしてもちろん、アッと驚くエンディングも。

 ゾンビ物だけあって、肉体が蹂躙されるエグい場面も多いけど、ゾンビの真相はよく考えられてるし、なんたってゾンビ視点ってのがユニークな上に、エンディングもセンス・オブ・ワンダーを感じさせる優れもの。なお、既に映画化されていて、Youtube で予告が見られます。

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2017年3月 8日 (水)

アン・レッキー「星群艦隊」創元SF文庫 赤尾秀子訳

ほかの星系を武力で制圧・植民地化することを体よく表現すると“併呑”になる。

「わたしたちこそ、彼女に都合よくつくられた武器です」

「いまは歌わないでくれ、同期。その歌に関しては、まだあなたを心から許しきれていないのだ」

【どんな本?】

 SF関係の賞を総ナメにしたデビュー作から始まる、遠未来スペースオペラ三部作の完結編。

 人類が多くの恒星間世界に広がった遠未来。

 数千の肉体を持つ支配者アナーンダ・ミアナーイが統べるラドチは、周囲の星系を呑み込み大きな版図を保っていたが、アナーンダ同士で戦いが始まってしまう。ラドチが誇る強力な武器は属体。ヒトの遺体をAIが操るゾンビ兵であり、優れた協調行動と肉体能力を持つ、使い捨ての兵士である。

 兵員母艦<トーレンの正義>のAIだったブレクは、戦いの中で艦も乗員も失い、たった一体の属体となりながらも、愛した副官オーンの仇として、アナーンダへの復讐を誓う。艦隊司令官として<カルルの慈(めぐみ)>を指揮するブレクはアソエク星系へ赴くが、ここにもアナーンダ同士の内乱の戦火が及んできた上に、謎の異種族プレスジャーまでもが姿を現し…

 なお、同じ世界が舞台の短編「主の命に我従はん」も収録。

 2016年ローカス賞SF長編部門を受賞。

なお、SFマガジン編集部編「SFが読みたい! 2017年版」のベストSF2016海外篇では、開幕編「叛逆航路」が三位に輝いているほか、三部作として16位に入ってて、票を合わせると一位の「死の鳥」を越えてるんだけど、グレッグ・イーガンの直交三部作も票が割れてるんで、シリーズで集計してみた。

  1. 267点 グレッグ・イーガン クロックワーク・ロケット172点(5位)+エターナル・フレイム95点(10位)
  2. 264点 アン・レッキー 叛逆航路186点+三部作78点(16位)
  3. 256点 ハーラン・エリスン 死の鳥256点(1位)

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は Ancillary Mercy and She Commands Me and I Obey, by Ann Leckie, 2014, 2015。日本語版は2016年10月28日初版発行。文庫本で縦一段組み、本文約432頁に加え、訳者あとがき7頁+アンシラリーー用語解説第3集3頁。8ポイント42字×18行×432頁=326,592字、400字詰め原稿用紙で約817枚。文庫本としては厚め。

 正直、かなり読みにくい。

 このシリーズの特徴は、人称が混乱してること。三人称はみんな「彼女」で、兵はボー3のように小隊名+番号で呼ばれる。他にも格式ばったラドチ文化の微妙なしきたりがあって、ちょっとした言葉の選び方や動きに深い気持ちがこもってたりするので、注意深く読む必要がある。

 また、お話が前の「叛逆航路」「亡霊星域」から直につながっており、ややこしい設定や登場人?物の背景事情がてんこもりなので、できでば最初の「叛逆航路」から読もう。

【感想は?】

 などと書いてて気が付いたんだが、人称の特徴は三人称が彼女ってだけに限らず、兵員が番号なのも大きく効いてたり。

 なにせ番号なんで、人格がないように感じるけど、ちゃんと読むとそれぞれに性格やこだわりがあるのだ。特に<カルルの滋>の場合は。分かり易いのがカルル5で、主人公ブレクの身の回りの世話をする役目。当番兵とか従卒とか言われる立場。

 単に職務熱心で忠実であるだけでなく、身だしなみや茶器など優雅さへのこだわりが強く、ブレクが身につける物にも最善を尽くす。従卒としてはとても優秀なんだが、どうも職務への情熱は単なる職業意識だけでなく、本人の趣味がだいぶ入っている様子。

 と、性格から見るとメイド長とか女官って感じなんだけど、従卒って立場と「カルル5」って呼び方で、読者はそういう個性が掴みにくい。属体ってガジェットも合わせて考えると、これもまた著者が仕掛けたトラップなんだろう。人を番号で呼ぶのは、人を物扱いしてるって事なのだ。映像化の話もあったそうだが、この辺はどう表現するんだろう?

 などと兵員は物扱いなのに対し、この巻ではAIの個性が輝いてるのが楽しい。

 なんといっても可愛いのが<カルルの慈>。もともと主人公ブレクからしてAI(の残り滓)で、復讐に燃える心中を計算づくの表情で隠してるあたり、一見クールで感情があまり表に出ない。

 対して<カルルの慈>は軍艦とは思えぬ細やかな心の持ち主で、この巻ではなんと痴話喧嘩の仲裁までやってる。このあたりは Yahoo!知恵袋で鬼女たちに袋叩きにされる相談者を見ているようで、ちょっと可哀そうになっちゃたりw

 加えてアソエクのステーションも、エレベーターの扉の開け閉めなど微妙な方法で気持ちを表していたが、この巻では更に過激になって…

 こういう細かい動きや、その場で使う小道具で心中を表すのは人間も同じで、どんな飲み物をどんな茶器で出すかで相手の評価を示したりと、読者にも相当の集中と注意力が要求される。

 とかの微妙な読みで疲れたあたりで登場するのが、異種族プレスジャーの通訳士ゼイアト。

 この人?、言うこともやる事も見事なまでの非常識ぶりを発揮し、繊細な懐の読みあいを粉々にフッ飛ばしてくれるから、いっそ爽快だったりする。それでもプレスジャーの使いとあっては丁寧にもてなさにゃならず、目玉を白黒させながら応対するあたりは、この巻ならではのドタバタ・ギャグで、和食にタバスコをブッかけたようなミスマッチが心地いい。

 特に意味不明なのが飲み食いで、なぜそんなモンにこだわるw でも考えようによっては、この先、人類の輸出品として使えるかもしれないw

 終盤は三部作の最終巻に相応しく、緊張感あふれる場面が続く。戦力的には圧倒的に不利であり、また敵の情勢も全く分からぬブレクに、形勢逆転の目はあるのか。

 ブレクの視点で描かれる物語なだけに、読み終えた時には、どうしてもブレクの目指す世界を望みたくなる。モノのインターネットやAI技術など、今の調子で情報技術が進んだとすると、近い将来に同じような選択が必要となるかもしれない。その時、私はどっちを選ぶんだろうか。

 ってな事を考えられるのも、読み終えて幾らか時間が経ったからで、読み終えた直後には選択肢は決まっていた。それぐらい熱中させてくれる作品だ。

 世界観も人間?関係も凝りに凝った、濃いSF小説。できれば三部作を一気に読もう。

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2017年3月 5日 (日)

ジョン・スラデック「ロデリック または若き機械の教育」河出書房新社 柳下毅一郎訳

「ねえパー、これっておっきなお話があるみたいだよね。小さなお話がたくさんある裏にさ」

【どんな本?】

 広く深い知見に裏打ちされた珍妙な発想を、しょうもないギャグを散りばめて凝った言葉遊びで綴る、独特の芸風で知られたジョン・スラデックによる、長編SF小説。

 NASA の秘密支援を受け、ミネトンカ大学で進んでいた、学習するロボットの開発プロジェクト。その実態は、優れたエンジニアのダン・ゾンネンシャインがほとんど一人で創り上げたものだった。だが、学内の派閥争いや殺人事件などのトラブルに加え、NASA からの資金が途絶えた上に、主導していたダンも姿を消し、成果物のロデリックは、ロボットの体を得たものの、学校を放り出されてしまう。

 悪ガキども・ジプシーの一家・ニューエイジ思想の闘志・スポーツ狂いの神父・クイズ番組マニアの保安官など奇矯な連中との交際やテレビから、世界を学習しつつ自らの存在について考えるロデリックと、彼を中心に巻起こる騒動を、ヒネくれきったユーモアたっぷりに綴る、マニア向けの作品。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は RODERICK : or The Education of a Young Machine, by John Sladek, 1980。日本語版は2016年2月28日初版発行。単行本ハードカバー縦一段組みで本文約496頁に加え、訳者あとがき「ロデリックのゆくえ」8頁+円城塔の解説6頁。9ポイント44字×20行×496頁=約436,480字、400字詰め原稿用紙で約1,092枚。文庫本なら上下巻ぐらいの分量。

 実は、かなり読みにくい。

 訳文からも伝わってくるんだが、どうも原書からして、韻を踏んだり地口をかましたりワザと意味を取り違えたりと、かなり凝った言葉遊びが多い文章な上に、哲学的に突っ込んだ理屈が下ネタにまぶしてあったりするんで、真面目な話と悪ふざけを区別するには、注意深く考えながら読む必要がある。

 加えて登場人物が多く、大半の人物が言ってることとやってる事が違うばかりでなく、明らかに目的と正体を隠している者もいて、お話が相当にややこしい。できれば登場人物一覧をつけて欲しかった。

 現代アメリカの風俗をたっぷり取り込んだ作品だけに、テレビ番組の説明などの訳注が、巻末ではなく本文中にあるのは嬉しい配慮。

【感想は?】

 油断ならない作家の油断ならない作品。

 出てくる人物の大半は、やたらとおしゃべりな上に人の話を聞かない。登場人物全部がエディ・マーフィーばりに俗語たっぷりでしゃべくりまくる、騒がしくユーモラスなソープオペラ風の雰囲気だ。お陰で話はなかなか進まないが、これもスラデックの仕掛けの一つだとか。

 1980年の作品だが、基本的な発想はかなり真面目。いわゆるロボットをテーマとした作品だ。

 このテーマについては、作品中でゴーレムやフランケンシュタインの怪物やカート・ヴォネガットのプレーヤー・ピアノなどの定番ばかりか、賀陽親王(→Wikipedia)なんてマニアックなネタまで出てくる。ソープオペラ風の饒舌なノリとドタバタ・ギャグの合間に、マニアックなネタをコッソリと仕込む、そういう困った芸風の人なのだ。

 もちろん、アジモフの三原則も槍玉にあがる。これをネタにした神父とのやりとりは、スラデックならではの意地の悪さ。実際、あんなシロモノが要求仕様に紛れ込んでいたら、大半のプログラマは尻に帆かけて逃げ出すに違いない。

 そう、この作品、プログラマはニタニタしながら読めるようになっている。

 どうもロボットというと陽電子脳とか十万馬力とか、ハードウェアが大事なように思われがちだが、ソフトウェアも難しい問題をいっぱい孕んでいる。

 この作品のマニアックな点の一つは、主人公ロデリックが、最初は体を持っていない点。単なるソフトウェアなのだ。つまり人工知能…と言いたくなるが、むしろ人工意識の方が近いかも。しかも、自ら学習する能力を持っている。

 長年、多くのSF小説はロボットと人工知能の切り分けが出来てなかった。ハードウェアとソフトウェアの違いが分かっていない、と言ってもいい。その辺を、この作品はかなり巧く切り分けている。ロデリックも、作中でボディが変わったりするし。

 など、半分ほど哲学の領域に足を突っ込んだ話もあれば、「くりかえし」や「組み合わせの数」、そして決定木とか、プログラマにはお馴染みの下世話なネタもコッソリ仕込んであるから憎い。

 私はよく分からないんだが、言葉遊びも、自然言語処理をやってる人にはわかるネタが混じってるのかも。

 Java にせよ HTML にせよ、機械言語は文脈自由文法(→Wikipedia)に従ってて、比較的に単純なプログラムで扱えるんだが、ヒトが話す言語はもっと複雑かつ曖昧で、同じ文でも状況によって意味が全く違ってくる。

 話し手と聴き手が同じ状況を想定していれば問題ないんだが、この話の登場人物はたいてい強烈なクセを持っていて、相手の立場なんか考えない自己中ばかりなため、次から次へと勘違いが続いていく。加えてロデリックもテレビドラマから変な世界観を植え付けられてるんで…

 など計算機科学のネタがあるかと思えば、占いや心理学などの社会風刺から始まり、果ては宗教まで扱った危なっかしいネタもチラホラ。ほとんど全方面に喧嘩売ってます。占いのプログラムなんてシロモノまであって、それに客がつくんだから、世の中ってのはわかんないもんで。

 そんな複雑怪奇な人間社会を、機械人形のロデリックがどのように解釈し、学んでいくか。そんなロデリックに触れた人々は、どんな反応を示すのか。

 強烈なキャラクターが引き起こすドタバタ・ギャグに考えオチ、マニアックな知識や様々なパズル、社会風刺にブラック・ジョークなど、仕掛けタップリで展開するトラップに満ちた濃いSF小説。心身ともに充実した時にじっくり挑もう。

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2017年2月21日 (火)

バリントン・J・ベイリー「ゴッド・ガン」ハヤカワ文庫SF 大森望・中村融訳

「…この世界は、ミッキー・マウスの腕時計みたいに組み立てられている! 安っぽい、いいかげんなやっつけ仕事だ! 神は当然の報いを受けるんだ!」
  ――ゴッド・ガン

【どんな本?】

 思いっきりお馬鹿でイカれたアイデアを徹底的に突き詰め、SFマニアが随喜の涙を流す濃い芸風で定評のあるイギリスのSF作家バリントン・J・ベイリー Barrington J. Bayley の短編を集めた、日本独自の短編集。

 マニア好みではあるけれど、そのアイデアはケッタイな宇宙だったり時間の流れだったり、科学というより世界観や哲学的な発想の作品が多いので、科学や数学が苦手な人でも楽しめるのが大きな特徴。ただし思いっきり常識のタガが外れているので、狂った妄想についていけるかどうかが評価の分かれ目になる。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2016年11月25日発行。文庫本で縦一段組み、本文約290頁に加え、中村融による解説「ベイリーの短編について 訳者あとがき」11頁。9ポイント40字×17行×290頁=約197,200字、400字詰め原稿用紙で約493枚。文庫本としては標準的な厚さ。

 文章は比較的にこなれている。内容は難しいような、そうでもないような。というのも、お話の根本に絡むネタと、単なるハッタリが混じっているから。大半、特に物理学や宇宙論などの科学関係は、まずもってハッタリだと思っていい。対して人の認識や物の同一性など、哲学っぽいのは注意して読む必要がある。

【収録作は?】

 それぞれ 作品名 / 原題 / 初出 / 訳者 の順。

ゴッド・ガン / The God-Gun / 第二短編集 The Seed of Evil 1979年 / 大森望
 飲み友達のロドリックは、科学から魔術にまで通じる、優れた発明家だ。ただ自分が興味を持つ事しかしないし、しても使い勝手や経済性は完全に無視するため、発明の大半は儲けにつながらない。そんな彼の最近の発明は…
 典型的なマッド・サイエンティスト物。ここで言う神は、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の神、すなわち創造主。その性質はどんなものか、どうすればヒトが影響を与えられるのかなど、神学的な問いに(怪しげな)物理学で解を出すあたり、ベイリー節が炸裂してる。
大きな音 / The Big Sound / サイエンス・ファンタシー1962年2月号 / 大森望
 ギャドマンは大きな物が好きだった。優れた作曲家だが、興味があるのは大きな、いや巨大なものだけ。友人にも女にも興味はなく、ひたすら大きなものだけに心を奪われていた。そんな彼がたどり着いたのは、音楽的巨大主義とでも言うべきもので…
 これまたワン・アイデアを突き詰めた作品。作品ばかりでなく、登場するキャドマン氏も、人生を「大きな音」だけに捧げ、それ以外は倫理すら一切切り捨てているのが、いっそ清々しい。いや社会的には、とっても困った人なんだけどw
地底潜艦<インタースティス> / The Radius Riders / サイエンス・フィクション・アドヴェンチャーズ1962年7月号 / 中村融
 ジュール艦長の指揮の下、地底潜艦<インタースティス>の試験航行が始まる。深度10マイルでアメリカ大陸を東から西へと横断する旅だ。航行は安定していたが、西海岸で浮上しようとした時、問題が起きる。深度5マイルより上には上がれない。
 地底潜艦ってアイデアが、既にクレイジー。トンネルを掘って潜っていくのかと思ったら、とんでもない。ってだけじゃなく、問題解決の方法が、これまたなんともベイリーらしいw 艦長の名前がジュールなのは、同然ながらヴェルヌへのオマージュだろう。
空間の海に帆をかける船 / The Ship that Sailed the Ocean of Space / Best SF Stories from New Worlds 8 1974年 / 大森望
 おれとリムは、海王星の外側にいた。観測用の宇宙船に住み込み、定期的に観測して記録を取る仕事だ。煩い奴らは誰もいない上に、ビールはしこたまある。その日も飲んだくれていたが、ケッタイな物が見つかった。時速30マイルで近づいてくるが、なんと質量がない。
 これまたベイリーらしい無茶苦茶な発想の作品。ええ、タイトルに偽りはありません。にしても、こんなしょうもない飲んだくれに見つかるとは、お互い不幸な話でw
死の船 / Death Ship / Zenith 1989年 / 中村融
 ティーシュンは、物理学プロジェクト9号に携わっている。通称<死の船>。敵との戦いが激しさを増す中、これは決定的な技術になるかもしれない。もしクリーヴス上級大臣の訪問があれば、決行日は早まるだろう。
 ナチスと共産党を合わせたような社会になっているヨーロッパを舞台に、ベイリーらしいケッタイなアイデアが炸裂する作品。ちょっと調べたところ、作品中の「等冪」は「冪等」と同じ意味らしい(→Wikipedia)。作品名の Death Ship は、ドイツの作家 Bruno Traven に同じ名前の作品(→英語版Wikipedia)があるが、関係は不明。
災厄の船 / The Ship of Disaster / ニュー・ワールズ1965年6月号 / 中村融
 誇り高きエルフの王エレン・ゲリスが乗り込んだ<災厄の船>は、霧の中を彷徨っている。どこにも陸地は見えず、食料は尽きかけていた。復讐に飢える<災厄の船>の前に、格好の獲物が現れる。みすぼらしい人間の船だ。衝角で一蹴し、ひとりの人間を捕虜にすると…
 ベイリーには珍しいファンタジイ。「指輪物語」の知的で穏やかなエルフとは違い、このエルフは傲岸不遜で野蛮、人間を見下し怒りに燃え虐殺も厭わない。この世界はエルフとトロールと人間が三つ巴の争いを続けているようで…
ロモー博士の島 / The Island of Dr. Romeau / インターゾーン1995年8月号 / 中村融
 記者のプレンディスは、ロモー博士の島を訪れた。名高い博士が行っているのは性行動の研究と噂されているが、実態は謎に包まれている。博士が言うには「ここは快楽の島だ。われわれの目的は、世界に幸福をもたらすことにある」とのことだが…
 こちらはH・G・ウェルズの「モロー博士の島」のパロディ…なんだけど、いきなり若い美女が出てくるあたりから、何やらアヤしげな雰囲気がプンプンw とまれ、今となっては、似たような内容の漫画を描いてる人がきっといると思うw
ブレイン・レース / Sporting with the Chid / 第二短編集 The Seed of Evil 1979年 / 大森望
 大鎌猫狩りに来たブランドとロイガーとウェッセル。しかし反撃でウェッセルは肉塊になってしまった。蘇生させようにも、近くの宙域に病院はない。幸いなことに、同じ大陸にチド星人のキャンプがある。チドは優れた外科手術の技能を持っているが、その風習は全く知られておらず…
 これまたベイリーお得意の、奇想天外な習性を持つエイリアンを描く作品。奇想天外ではあるものの、なんか納得しちゃいそうな理屈がついてるのが困るw ドロドロのグチャグチャが苦手な人には、ちと辛いかも。
蟹は試してみなきゃいけない / A Crab Must Try / インターゾーン1996年1月号 / 中村融
 あの夏。おれたちは、いつもツルんでた。勇敢なるレド・シェルを筆頭に、ソフト・ナット,クイック・クウロー,ギンピー,タイニー。おれたちはそこらをのし歩き、酒場で騒ぎ、他のグループと喧嘩し…そして、もちろん、雌に求愛した。
 やりたい盛りなのにモテない童貞小僧たちの、しょうもない夏を描く青春物語…なんだけど、蟹なんだよなあw
邪悪の種子 / The Seed of Evil / New Writings SF 23 1973年 / 中村融
 22世紀。太陽系にエイリアンが来た。不死身と名乗る異星人は、百万年も生きていたが、進んだ技術や不死身の秘密などを明かそうとはせず、亡命者として暮らす事を望む。外科医のジュリアン・フェルグは、不死身の秘密を奪おうと画策するが…
 いささか市民権意識が高すぎる22世紀の風潮がもどかしいのに対し、自らの目的のためなら手段を択ばないジュリアンの執念はいっそ清々しいw 困ったストーカーの話かと思ったら、意外な方向へと風呂敷が広がった末のオチは、この作品集の最後を飾るにふさわしい壮大で寂寥感漂うもの。
中村融 : ベイリーの短編について 訳者あとがき

 ベイリーの味は、なんといっても奇想。とんでもない世界や読者の常識を覆すアイデアを、とことんまで突き詰めて屁理屈で強引に納得させ、SFにおける新しい地平を切り開く…かと思わせて、しょうもないオチで奈落に突き落としてくれる。

 ある意味50年代の精神を受け継ぎながら、イギリスならではの人の悪さを感じさせるあたりが、余人には代えがたい魅力。なにせ強烈な個性を誇る芸風なので好みは別れるけど、ウケる人には徹底してウケる、ちょっとカルトな作家です、はい。

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2017年2月14日 (火)

「伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ」ハヤカワ文庫SF 高橋良平編

「そうだろう、え! こんな生まれつきの怠けものでなかったら、とうに病院に行ってなきゃならんところだ。もちろん、医者としてね」
  ――思考の谺

【どんな本?】

 SF小説の翻訳家として数多の名作SFを訳し日本に紹介した伊藤典夫の膨大な業績の中から、主に初期の傑作を選りすぐって集めた珠玉の傑作選。

 なんといっても、ベテランのSFファンの間では傑作の呼び声が高いが、諸々の事情で今は読者の手が届かない、1940年代~1960年代の傑作が、手に入れやすい文庫で蘇ったのが嬉しい。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2016年11月15日発行。文庫本で縦一段組み本文約400頁に加え、編者あとがき Explorer of Science and Time 7頁+鏡明による1980年の伊藤典夫インタビュー10頁。9ポイント40字×17行×400頁=約272,000字、400字詰め原稿用紙で約680枚。文庫本としてはちょい厚め。

 文章はこなれている。古い作品が多いだけに、内容も特に難しくない。書かれた時代が時代だけに、電子回路ではなく真空管を使っているなど、さすがに大道具・小道具は違和感があるが、その辺は読みながら今風に読み替えよう。

【収録作は?】

ボロゴーヴはミムジイ ルイス・パジェット / Mimsy Were the Borogoves, Lewis Padgett / アスタウンディング1943年2月号
 遥か未来から、動作確認中のタイム・マシンで、子供のおもちゃが過去に送られた。届いたのは1942年。小学校をサボった悪ガキのスコットがこれを拾い、こっそり家に持って帰る。面白がって遊んでいたスコットだが…
 ニール・スティーヴンスンの某作品は、コレをネタにしたのかな? 私は英語が苦手なせいか、他の言語をやすやすと覚えられる人が羨ましくてしょうがない。いったい、私はどうやって日本語を身に着けたんだろう。幼い子供が知識を身につける能力が、つくづく羨ましい。
子どもの部屋 レイモンド・F・ジョーンズ / The Children's Room, by Raymond F. Jones / ファンタスティック・アドベンチャー1947年9月号
 10歳の息子ウォルトから、図書館に返すよう頼まれた本を、ビルは読み始めた。複雑な物語で、一つの文章が二つの意味を持っている。最初は戸惑ったが、次第にのめり込み、朝方まで読みふけってしまう。返却先の大学図書館に行ったが、<子どもの部屋>なんてない、と言われてしまう。
 これもサミュエル・R・ディレイニーが…。特別な人だけが読める本、特別な人だけが入れる図書室なんてアイデアは、妙な賤民/選民意識を持つSF者には抗えない魅力がある。短編として綺麗に完結してるけど、少年向けの長大な冒険物語のプロローグとしても充分に通用するなあ。というか、ウォルトを主人公にして誰か続きを書いてく…いや平野耕太は却下w
虚栄の街 フレデリック・ポール / The Tunnel Under The World, by Frederik Pohl / ギャラクシイ1955年1月号
 6月15日の朝、ガイ・バークハートは悪夢から目覚めた。大爆発に巻き込まれる夢だ。いつものように会社に出かけ、ロビーでタバコを買おうとすると、店員がいつものステビンズじゃない。おまけに馴染みのない新銘柄まで押し付けられる。職場では皆勤のバース氏が珍しく休んでいて…
 お話の流れは、典型的な「平凡な日常の中に、奇妙な小さい事柄が少しづつ忍び込む」タイプ。さすがに時代背景は変える必要があるけど、今でも映像化すれば充分にウケそうな作品。フレデリック・ポールらしい、スレた感覚が満ち溢れている。そういえば「宇宙商人」も今は手に入れにくい傑作になっちゃったなあ。
ハッピー・エンド ヘンリー・カットナー / Happy Ending, by Henry Kuttner / スリリング・ワンダー・ストーリーズ1948年8月号
 ケルヴィンは健康と名声と富を手に入れ、一生を幸福に暮らした。それは、こんな経緯で…
 冒頭からハッピー・エンドを約束した物語だが…。 そういえばジョン・W・キャンベルもアイザック・アシモフにアドバイスしたとか。「物語の書き始めは、もっとストーリーの後の個所から書き出すといい」と(→アシモフ自伝)。そういう構成の巧みさが光る作品。
若くならない男 フリッツ・ライバー / The Man Who Never Grew Young, by Fritz Leiber / Night's Black Agents 1947
 わたしはナイルの河畔に座っている。妻のマオットは、家畜を連れて西に行きたいようだ。ほかの者たちがそうするように。みんな若くなっていくのに、わたしは30過ぎの姿のまま変わらない。耕地は減り、灌漑水路も粗末になり、雨が多くなった。
 時間の流れが逆になった世界を、ずっと見つめ続ける男の物語。歴史を逆回転で語る後半からは、ゾクゾクするセンス・オブ・ワンダーが伝わってくる。
旅人の憩い デイヴィッド・I・マッスン / Traveller's Rest, by David Irvine Masson / ニュー・ワールズ1965年9月号
 激しい戦闘が続く北の最前線から解任された<XN3>は、南へと向かう。そこで仕事を見つけるつもりだ。前線の近くでは、幾つか敵からの攻撃の影響があったが、南へと向かうにつれ次第に傷跡は減り…
 時間SFアンソロジー「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」にも収録された、名高い作品。空間の移動が時間の流れ方を変える、独特の世界が魅力なんだけど、かなり感覚を狂わされるので、乗り物酔いする人は要注意。
思考の谺 ジョン・ブラナー / Echo In The Skull, by John Brunner / サイエンス・ファンタジイ1959年8月号
 おんぼろアパートの一室でサリイは目覚めた。目の前にはジンの空き瓶。腕時計は質草に消えた。今は文無しで、風呂にも入れない。家主のロウエル・ラムゼイは今のところ部屋代を待ってくれるが、何か魂胆がある様子。しばらくロクなものを食べていないが、コートまで売ったら、もう着るものもない。
 これも映像化すれば当たりそうな作品。オケラで着るものすらない所まで追い詰められたサリー、何か企んでいる様子のロウエル夫妻。この両者が抱える秘密を巡り、次第に恐ろしさがつのってゆく。冒頭、サリイの貧乏暮らしの描写が、容赦ないまでに真に迫ってるのがわかってしまうのが悲しいw
Explorer of Science and Time 編者あとがき / 伊藤典夫インタビュー(星雲立志編)

 解説によれば、ヘンリー・カットナーの奥さんはC・L・ムーアで、二人の共作ペンネームの一つがルイス・パジェットだとか。なんと20もおのペンネームを使っていたとかで、その豊かな創作能力は羨ましい限り。

 あまり小難しい理屈を使わず、ヒネリの効いたアイデアが光る作品が多く、いずれもドラマや映画の原作として使えそうな作品ばかりなのも、SF黄金時代ならではの感がある。「子どもの部屋」とかは、ライトノベルやバトル物アニメのプロローグだと思うと、もう妄想が止まらないから困る。

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2017年1月25日 (水)

ケイト・ウィルヘルム「翼のジェニー ウィルヘルム初期傑作選」アトリエサード 尾之上浩司他訳

「先生、私、羽があるんです!」
  ――翼のジェニー

「教えてほしいのだ、セア。なぜ、彼女はあのような彫刻を創ったのだ? 彼らのような芸術家たちは、なぜ詩や戯曲を書いたり、絵を描いたりするのだ? なぜ?」
  ――エイプリル・フールよ、いつまでも

【どんな本?】

 1956年にデビューし、日本ではサンリオSF文庫から「鳥の声いまは絶え」「杜松の時」などが紹介されたが、以降はとんとご無沙汰のアメリカのSF作家、ケイト・ウィルヘルムの初期作品を集めた作品集。

 理不尽で奇妙な状況を設定し、そこに追い込まれた者たちの姿を描く、SFとホラーと幻想小説にまたがる、ジャンル不定で奇妙な味わいの作品が多い。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2016年10月21日発行。単行本ソフトカバー縦一段組みで本文約230頁に加え、尾之上浩司の解説8頁+ケイト・ウィルヘルム作品一覧5頁。9.5ポイント43字×18行×230頁=約178,020字、400字詰め原稿用紙で約446枚。文庫本なら標準的な厚さの一冊分。

 文章はこなれている。SFとして特に小難しい仕掛けはないので、理科が苦手でも充分に楽しめる。

【収録作は?】

 それぞれ 作品名 / 原題 / 初出 / 訳者 の順。

翼のジェニー / Jenny with Wings / 第一短編集 The Mile-Long Spaceship 1963 / 佐藤正明訳
 幼い頃に両親を失ったジェニーは、祖父のパプと共に各地を旅しながら育つ。彼女には翼があり、パプは彼女が飛ぶのを誇りに思っていたが、それを知った周囲の者は大騒ぎするのだった。やがて年頃になったジェニーにも、気になる男の子ができて…
 書名にもなっているが、ハッキリいってこの作品集の中では異色。人と違っている事に悩む年毎の女の子を主人公に、70年代の少女漫画みたいな物語が展開する、素直でストレートで可愛らしいお話。今と違い当時のSF者は変わり者扱いされていたので、余計に突き刺さったんだろう。そういう意味では、「図書室の魔法」とも相通じるかも。
決断のとき / A Time to Keep / ザ・マガジン・オブ・ファンタジイ&サイエンス・フィクション誌1962年1月号 / 安田均訳
 ハリスンは、目立たず文学部に25年間務めてきた。22年前に妻を失い、ずっと一人暮らし。職場のミス・フレイザーは何かと気遣ってくれる。だが、最近は奇妙な事が起きる。ドアを開けると…
 平穏に波風立てず、やもめ暮らしを静かに続けてきた男に、突然降りかかってきた理不尽な災難。覇気のないオッサンをイジっているのか、エスカレートする冷戦などの時代背景があるのか、または誰か特定のモデルがいるのか、どうなんだろう?
アンドーヴァーとアンドロイド / Andover and the Android / 第一短編集 The Mile-Long Spaceship 1963 / 安田均訳
 好きな本や音楽に浸り、気ままな独身生活を楽しんでいるロジャーだが、同僚のフレンチ夫妻は結婚しろと煩い。会社で人事権を握るマティルダも、独身男は昇進させないつもりだ。暫くは彼らがセッティングしたパーティーに付き合っていたロジャーだが、妙案を思いつき…
 長く一人暮らしを続け、それに馴染んじゃうと、ペースを乱される他人と一緒に暮らすのが耐えられなくなったりする。おまけに職場に大きな不満がなく、入れ込める趣味があったりすると、もう手の施しようがない。んだけど、周囲はほっといてくれないんだよなあ…って、誰の事だw
一マイルもある宇宙船 / The Mile-Long Spaceship / アスタウンディング・サイエンス・フィクション1957年4月号 / 安田均訳
 アラン・ノーベットは病院で目覚めた。交通事故で頭に大けがを負い、大手術を受け、六日間も鎮痛剤漬けになって意識が戻らなかったのだ。だが、目覚めたアランの第一声は「船に何が起こったんだ? 一体どうして俺がこの地球に戻っているんだ?」だった。
 ちょっと構成がトリッキーで、一回読んだだけじゃよくわからなかった。そこで読み返すと、更に混乱してきた。えーっと…
惑星を奪われた男 / The Man Without a Planet / ザ・マガジン・オブ・ファンタジイ&サイエンス・フィクション誌1962年7月号 / 増田まもる訳
 地質学んだロッドは、鉱山探査のあために火星へ向かう宇宙船で、十三号座席の男を見つけた。乗客の一人ウイラード・ベントンとは仲良くなったが、ずっと、十三号座席の男が気になっていた。
 13なんぞという不吉な数字が何を意味してるのかと思ったら、そういう事か。土壇場に追い込まれた者が下す、究極の選択。それを後悔するか乗り越えるか。
灯かりのない窓 / No Light in the Window / 第一短編集 The Mile-Long Spaceship 1963 / 増田まもる訳
 人類最初の恒星間宇宙船のクルーに志願した、ハンクとコニーの新婚夫婦は、二人そろって残り一年間の選抜試験に臨む。他の候補者たちと共に多くの課題をこなし、理不尽な仕打ちに耐え、志願者四千人中の合格者六百人に二人そろって選ばれるよう踏ん張るのだが…
 トム・ウルフの「ザ・ライト・スタッフ」やジェイミー・ドーラン&ビアーズ・ビゾニーの「ガガーリン」などで、宇宙飛行士選抜の厳しさや理不尽さが描かれているが、この作品は同時代に書かれたもの。雰囲気、ハンクは完璧超人のニール・アームストロングっぽくて、コニーは愉快なピート・コンラッドっぽい。にしてもやっぱり心理学者は嫌われ者なんだなあ。
この世で一番美しい女 / The Most Beautiful Woman in the World / 第二短編集 The Downstairs Room and Other Speculative Fiction 1968 / 伊藤麻紀訳
 この世で一番美しい女が目覚めた時、彼はすでに去っていた。銀のベルを鳴らすと、ムラートのフェリシアが静かに入ってきて、女の世話をし朝食の用意を整える。重役会議に出なければならない。女の腕には青あざが残っているが、隠す必要はないだろう。
 中世ヨーロッパっぽい時代を舞台にしたファンタジイに出てくるお姫様かな、と思った所に出てくる「重役会議」なんて現代風の言葉。男も女も、同性に対しては腹の底が透けて見えるだけに、意地悪く見ればいくらでも意地悪く見れるもので。
エイプリル・フールよ、いつまでも / April Fool's Day Forever / アンソロジー Orbit 7 1970 / 尾之上浩司訳
 ジュリアとマーティの夫婦が住む家では、ときどき赤ん坊の声が聞こえてくる。空耳じゃない。二人とも聞こえるんだから。マーティの上司ヒラりーは辣腕で、手掛ける番組はみな当てている。そのヒラりーの勘では、どうも大掛かりでヤバい事が起きているらしく…
 本書の4割ほどを占める中編。冷戦下の終末感覚が伝わってくる作品で、世界全体を覆う異常気象・病気の蔓延と門戸を閉ざす各国家などの不安が漂う世界設定で、主人公ジュリア&マーティの周囲にはさらに科学的な新発見や流産などの不気味な要素が集まってくる。
 ジワジワと不安材料が集まり嫌な予感が募る語り口はホラーの味わいだし、もっと大掛かりな仕掛けを扱って高所から俯瞰するサイエンス・フィクションでもあるけど、冒頭の引用が示すように著者が訴えたいのは創作者の魂がテーマなのかも。当時のSF界はニューウェーブ(→Wikipedia)なんて動きもあったんで、その影響も感じるなあ。
解説:尾之上浩司/ケイト・ウィルヘルム作品一覧

 やっぱり書名が「翼のジェニー」ってのは、ちとアレかも。全般的に暗いトーンで不安にさせるの作品が多い中で、表題作はまっすぐで心地よい作品だし。いや好きですけどね、こういうのも。

 中でも特に気に入ったのは、最後の中編「エイプリル・フールよ、いつまでも」。長いだけあって多彩なテーマを盛り込み、中編に相応しくケリをつけてる。が、これだけ意欲的にテーマを盛り込むなら、長編化してじっくり書き込んで欲しくなったり。ドクター・ワイマンの立場とか、実に妄想を刺激してくれるし。

 ついでに「杜松の時」も復活して欲しいなあ。買い逃しちゃって、今でも悔やんでるんです、はい。

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2017年1月17日 (火)

ロバート・シェクリイ「人間の手がまだ触れない」ハヤカワ文庫SF 稲葉明雄他訳

「まずい!」とコードヴァー。「家へ帰って、女房を殺しちまわなきゃ」
  ――怪物

「おれたちはみんな罠にかかっているんだ」
  ――あたたかい

【どんな本?】

 1951年にデビューしたアメリカのSF作家ロバート・シェクリイの、デビュー短編集。

 小難しい理屈もなければウザい心理描写もなく、登場人物はカキワリ。当時のSFらしい大らかな仕掛けを使いながらも、読者の思い込みをひっくり返すアイデア・ストーリーの書き手で、やや皮肉でブラックな味わいが特徴。

 お話の筋書きで読ませる作品が多いためか、1950年代と古い作品ばかりなのに、家電製品など小道具の名前さえ変えれば、今でも充分に通用する短編が多いのが驚き。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は Untouched by Human Hands, by Robert Sheckley, 1954。日本語版は1985年12月にハヤカワ文庫SFより刊行。私が読んだのは2007年1月31日発行の新装版。文庫本で縦一段組み、本文約300頁に加え、中村融の解説「時代を築いた作家 ロバート・シェクリイの人と作品」13頁。9ポイント39字×17行×300頁=約198,900字、400字詰め原稿用紙で約498枚。文庫本なら標準的な分量。

 文章はこなれている。内容も難しくない。ロケットや悪魔は出てくるが、基本的に皮肉の効いたアイデア・ストーリーなので、理科が苦手な人でも大丈夫。

【収録作は?】

 それぞれ作品名 / 原題 / 初出 / 訳者 の順。

怪物 / The Monster / F&SF 1953年3月号 / 宇野輝雄訳
 金属製らしいとがった物体が、尻から炎を出しながらふわふわと動き回り、盆地に止まる。コードヴァーとハムは、この異様な物体を見に山頂まで出かけ、日が暮れる前に村に帰った。翌朝は、村の男が総出で物体を見に行くと、物体から異様な生き物が出てくる。
 ファースト・コンタクト物といえばそうなんだが、いきなり「女房を殺しちまわなきゃ」ときたのにはビビった。この黒さがシェクリイの味なんだろう。22頁と軽く読める作品ながら、植民地主義を皮肉っているようにも読める。
幸福の代償 / Cost of Living / ギャラクシー1952年12月号 / 小尾芙佐訳
 先週ミラーが自殺したせいか、どうも気分が晴れない。細君は機嫌がいいが、息子は最近ぶつぶつ言うだけで、どうもはっきりしない。オート・クックが作る食事は美しいし、オート・タオルはマッサージまでしてくれる。今日はA・E電気の財務課員がくる日だ。
 当時のアメリカは電化製品が爆発的に普及し始めた頃。個々のガジェットの名前さえ現代風に改めれば、今でも充分に愉しく読めちゃうあたりが、ちと情けなかったり。最後の一行がグサリと突き刺さる人は私だけじゃないはず。そうだと言ってよ。
祭壇 / The Altar / ファンタスティック1953年7・8月号 / 風見潤訳
 気分のいい春の朝。出勤中のスレーター氏は、外国人らしい男に道を聞かれる。「バズ=マティンの祭壇はどこにあるかご存じじゃないでしょうか?」ここは小さな町だし、スレーター氏も20年ちかく住んでいるが、マズ=マティンの祭壇なんか知らない。
 列車が止まる程度には人が住んでいるけど、ニューヨークのような大都会じゃない。こじんまりとした穏やかな町だからこそ成り立つ、奇妙な話。ドラマ「世にも奇妙な物語」などの原作にピッタリの作品。
体形 / Shape / ギャラクシー1953年11月号 / 福島正実訳
 その恒星系では、みどりの第三惑星が唯一、生物の生存可能な惑星だった。今まで何度もグロム星人の探検隊が訪れたが、全ての探検隊員が消息を絶っている。いったい、この惑星にどんな危険が潜んでいるのか。
 お約束の逆転がシェクリイの得意技の一つらしく、ここでも「他星系を探索し消息を絶つ調査船」なんてSFの定番を、「地球を訪れたエイリアンの調査隊が消息を絶つ」形にひっくり返している。
時間に挟まれた男 / The Impacted Man / アスタウンディング1952年12月号 / 風見潤訳
 今日、ジャックとケイの夫婦は、家を出てアイオワに向かう。今は文無しだが、向こうで教師の仕事が見つかったのだ。早くしないと、ガメつい家主のハーフが家賃を取りに来る。出かけようと階段を下りたジャックだが…
 とんでもなく壮大なスケールの仕掛けと、ハーフ vs ジャック&ケイのセコい対決のギャップが楽しい作品。もっとも「壮大な仕掛け」の中にも、なかなかセコい裏事情を仕込んであるんだけど。藤子不二雄あたりが漫画化してそうだなあ。
人間の手がまだ触れない / Untouched by Human Hands / ギャラクシー1953年12月号 / 稲葉明雄訳
 中継ステーションでの手違いで、ヘルマンとキャスカーは食料を積み忘れた。おまけにこの星域は未調査で、近くに食料を補給できる所はない。幸いなことに、見つかった惑星には酸素がありそうなばかりか、なんと建造物まである。
 不思議なもので、一つの家に長く住んでいると、だんだん狭くなってきたりする。別にどこかが壊れるとかじゃなく、正体不明なモノが幾つも部屋を占領し、何がどこにあるのかわからなくなる、ばかりでなく、ソコにあるモノが何なのかもわからなくなる。そんな経験、ありませんか? にしても、本好きとしてはヘルマンの役立たずっぷりが身に染みるw
王様のご用命 / The King's Wishes / F&SF 1953年7月号 / 峯岸久訳
 ボブとジャニスは電気屋を始めた。商売が軌道に乗れば、結婚資金も貯まる。ところが、困った事になった。この一週間、毎晩泥棒が入り、発電機や冷蔵庫を盗んでいくのだ。今夜こそ捕まえてやろうと張り込んだ二人の前に、ついに泥棒が姿を現したが…
 頼りがいのあるジャニスと、へっぴり腰のボブのカップル、そして一見コワモテなくせに意外と真面目な泥棒のキャラクターが楽しい短編。にしても二人の柔軟な適応力はたいしたものw
あたたかい / Warm / ギャラクシー1953年6月号 / 小笠原豊樹訳
 今日、アンダースはジューディーに結婚を申し込む。準備も万端、キッチリめかしこんで、これから出かけようとした時に、いきなり声がした。「助けてくれ!」
 一つの文字をじっくり見つめていると、次第に文字が単なるパターンや模様に見えてきて、読み方や意味がわからなくなる。そんな奇妙な感覚が味わえる作品。
悪魔たち / The Demons / ファンタシー・フィクション1953年2月号 / 風見潤訳
 出勤中に九丁目の角を曲がった時、保険外交員のアーサー・ガメットは消えた。気が付いたら濃い霧が立ち込める部屋の中で、目の前には赤い鱗に覆われた巨大な化け物がいる。逃げようにも、チョークで描かれた線から出られない。
 シェクリイの定番、ひっくり返しで始まる作品。人が悪魔を呼び出すんじゃなく、悪魔に人が呼び出され、無茶な要求を突きつけられる。何が欲しいのか自分でもわかっていない顧客に悩まされる計算機屋には、別の意味で突き刺さる作品かも。
専門家 / Specialist / ギャラクシー1953年5月号 / 小笠原豊樹訳
 宇宙船は光子嵐に巻き込まれたが、幸い被害はプッシャー(推進係)だけで済んだ。だがプッシャーは一人しかいない。近くの星域を調べたが、プッシャー族は少ない。なんとか原始プッシャー族がいそうな惑星を見つけたが…
 すべてが生物で出来ている宇宙船ってアイデアは他にもあるだろうが、この「専門家」って仕掛けは独特だろう。微妙な選民&賎民意識を持つSF者には、別の意味でジーンとくる作品。これを歌って大ヒットしたのがブルース・スプリングスティーンの「明日なき暴走」で←ウソつくな
七番目の犠牲 / Seventh Victim / ギャラクシー1953年4月号 / 小尾芙佐訳
 待っていた通告が、やっとスタントンに届いた。これで7人目だ。今回の獲物はジャネット・マリー・パチグ。なんと女だ。ヒトは戦うのが好きだ。この性向を満たすため、合法的な殺人制度ができた。精神浄化局に登録した者は、ハンターになり、次に獲物となる。
 映画「華麗なる殺人」の原作。ヒトが持つ闘争本能を制御して戦争をなくすため、厳格かつ公平なルールを定めて殺人を合法化した未来のお話。
儀式 / Ritual / クライマックス1953年5月号 / 風見潤訳
 神の船がやってきた。遠巻きにした村人の前で、ふたりの神がハッチから出てくる。五千年前の書物『神々大全』にならい、今度の神に相応しい歓迎をしなければならない。長老歌手は「入港許可の踊り」を命じ…
 「怪物」同様、訪れた人類(らしき者)を迎えるエイリアンの目線で描いた作品。神様ってのも、辛いもんです。
静かなる水のほとり / Beside Still Water / アメージング1953年10・11月号 / 風見潤訳
 探鉱者のマーク・ロジャーズは、引退して厚さ800mほどの岩板に住み着く。ささやかな貯えで空気ポンプや土壌や水など必要な物と雑用ロボットを買いそろえた。機械いじりが得意なマークはロボットを少しづつ改造し…
 ある意味、究極の引きこもりを描いた作品。わかりいやすいオチがつく作品ばかりの本書の中では、静かに時が流れてゆく宇宙での孤独な暮らしを淡々と描いた、特異な作品だろう。
解説:中村融

 「祭壇」「時間に挟まれた男」「人間の手がまだ触れない」「王様のご用命」「悪魔たち」「七番目の犠牲」など、時代背景や小道具を現代風にアレンジして漫画家・ドラマ化すれば、今でも充分に当たりそうな作品が多い。日本には梶尾真治や草上仁がいるけど、若手も出てきて欲しいなあ。

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2016年12月30日 (金)

ジャック・ヴァンス「天界の眼 切れ者キューゲルの冒険」国書刊行会 中村融訳

「イウカウヌ、生きて帰れたら、かならず報いを受けさせてやるからな!」
  ――シル

「わたしが切れ者キューゲルと呼ばれているのは伊達じゃない」
  ――マグナッツの山々

【どんな本?】

 ヒネリの効いた皮肉なストーリーが持ち味のSF/ファンタジイ作家ジャック・ヴァンスによる、<滅びゆく地球>シリーズに属するユーモア冒険ファンタジイ連作短編集。

 時は数十億年未来の地球。太陽は赤く腫れあがり、地表は有象無象の化け物が徘徊している。人々は科学を失い、魔法が幅を利かせていた。主人公はキューゲル、黒髪瘦身の自称「切れ者」だが、実際は口先三寸で夜を渡る天下御免のスチャラカ男。彼が行くところ必ず騒動が持ち上がり…

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は The Eyes of the Overworld, by Jack Vance, 1966。日本語版は2016年11月25日初版第1刷発行。単行本ハードカバー縦一段組みで本文約296頁に加え、訳者あとがき「<滅びゆく地球>シリーズのこと」12頁+ジャック・ヴァンス全中短編リスト12頁。9ポイント44字×18行×296頁=約234,432字、400字詰め原稿用紙で約587枚。文庫本なら標準的な厚さの一冊分。

 文章はこなれている。内容も難しくないし、特に前提知識も要らない。ややブラックな笑いに満ちたユーモラスなファンタジイなので、気楽に読もう。

【収録作は?】

 それぞれ 作品名 / 元題 / 初出 の順。

天界 / The Overworld / F&SF 1965年12月号
 アゼノメイの定期市に店を出し、シケたインチキ護符を売るキューゲルだが、客足は芳しくない。流行ってるフィアノスサーの店を冷やかしに行ったキューゲルは、耳寄りなネタを仕入れる。<笑う魔術師>イウカウヌの館にはお宝がたんまり眠っていて、主人のイウカウヌは暫く留守だろう、と。
 大冒険の幕開けとなる作品。幕開け直後から、出自の怪しいインチキ商品を口先三寸で売りつけようとするキューゲルと、ヤバくて怪しげな儲け話を持ち掛けるフィアノスサーの企みから、このシリーズを通して特徴の「狐と狸の化かしあい」が炸裂してる。使われる魔法もなかなか意地悪で、霊験あらたかっぽい牌も、そりゃ効果は確かだけど、あんまし有り難くないしw
シル / Cil / The Eyes of the Overworld 1966年
 山賊や化け物に追われ不気味な塔を通り抜けたキューゲルは、海に行き当たる。浜辺では老人が篩で砂をかき分けていた。老人が語るには、彼の曽祖父の父が浜で護符をなくして以来、彼の一族は護符を探し続けている、と。
 「ウルフェント・バンデローズの指南鼻」に出てきたダーウェ・コレムが(再び)登場する作品ながら、キャラは完全に別物。何があった…って、そりゃキューゲルなんぞに関わっちゃったら、ねえ。四人の貝人間の贈り物とかも、このシリーズらしいしょうもなさ。
マグナッツの山々 / The Mountains of Magnatz / F&SF 1966年2月号
 南へ向かうキューゲルとダーウェ・コラムの前に立ちはだかる、マグナッツの山々。だがその前に、怪しげな者が潜んでいそうな森を抜けなければならない。幸か不幸か、小川の岸に一艘の筏と、ぼろをまとった男が四人。山賊かもしれないが、道を聞き出せれば…
 相変わらず口先三寸で相手を丸め込むのだけは得意なキューゲル、さっそく山賊相手に取引を持ち掛けるが、このオチはヒドいw <見張り番>のくだりも、いかにも胡散臭い話だってのに、全く懲りてないあたりがキューゲルらしいというか。
魔術師ファレズム / The Sorcerer Pharesm / F&SF 1966年4月号
 山を抜け、平地へと向かう下り坂には、グロテスクな石像が無数に並んでいる。明らかに人の手によるものだ。いぶかしむキューゲルだが、すぐに謎は解ける。多くの職人たちがやってきて作業を始めたのだ。雇い主は魔術師ファレズム、労働条件は魅力的で…
 このシリーズには珍しいホワイトな雇用主だよね、と思ったら入社試験はなかなか大変でw 雇われてもいないくせに福利厚生だけは求めるキューゲルの根性もたいしたもんだけど。にしても、ジアルム・ヴラッツさん、最中に何を考えてるんだかw
巡礼たち / The Pilgrims / F&SF 1966年6月号
 荒れ地を抜けた日暮れ時、やっと立派な旅籠に辿りついたキューゲルだが、なんと満室。エルゼ・ダマスに向かう巡礼でいっぱいだった。せめて豪華な晩飯をと思ったが、これも厨房はてんてこまいでレンズ豆しかない。
 冒頭から、お大尽のロダーマルクも不幸だよなあ、博打にしても、こんな胡散臭い奴を相手にしなくてもよさそうなもんだ…とか思ってたら、さすがキューゲル、そんなもんじゃ済まなかったw エルゼ・ダマスの都での地理学者との会話も、お約束をキッチリ守った酷いものw
森の中の洞穴 / The Cave in the Forest / F&SF 1966年7月号
 <古森>で怪物に追い立てられたキューゲルは、小さな空き地に辿りつく。そこには貼り紙があった。「この案内を見つけた方には、無料で一時間の占いと相談に応じます」と。案内の通りにゆくと、「入口――全客万来!」との銘板が。
 化け物だらけの森の中に貼り紙って、そりゃもう怪しさプンプンだと思ったら、やっぱりw 相変わらず出てくる奴はロクでもない奴ばかりで、ファベルンにしてもザライズにしても、まあ、アレだw
イウカウヌの館 / The Manse of Iucounu / F&SF 1966年7月号
 数多の試練を乗り越え、アゼノメイへと戻ってきたキューゲル。恨み積もるイウカウヌに借りを返す計略も練り上げ、準備も整えた。向かうは災厄の始まり、イウアウヌの館。やっと対面がかなった<笑う魔術師>、だがどうも様子が…
 しょもないドタバタ・コメディのラストに相応しい、しょうもないエンディングw
訳者あとがき/ジャック・ヴァンス全中短編リスト

 性根はねじくれているにせよ、それなりに頭が切れる「マグナス・リドルフ」に対し、キューゲルの場合は相手とどっこいどっこいなあたりが、このシリーズの味だろう。ただ悪辣さはどっこいどっこいで、被害はキューゲルの方が遥かに酷いw

 ドタバタ基調のユーモラスなブラック・コメディなので、構えず気楽に楽しもう。ただし、オチはかなりキツいので、そういうネタが通じる人向け。

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2016年12月15日 (木)

A・G・リドル「アトランティス・ジーン3 転位宇宙」ハヤカワ文庫SF 友廣純訳

「たしかに人類史上最大の発見だよ――しかも、史上もっとも絶望に見舞われた時代になされた発見だ」

「私には計画がある。我々はこの宇宙に永遠の平和を築くのだ」

「伝説は死にません」

自分に残された時間はあとどれぐらいだろう。世界を救うために、自分にできることはあるのだろうか。

【どんな本?】

 個人出版から火が付いた、アメリカの新鋭作家による娯楽アクション伝奇SF長編小説三部作の完結編。

 疫病の蔓延とイマリとの戦いで、崩壊寸前にまで追い詰められた人類社会だが、なんとかイマリを南極大陸に追い詰めることができた。南極のイマリはレールガンで武装した要塞に立てこもり、また各地に潜む内通者が攪乱作戦を始める。加えて、蘇ったアレスは更なる計画を隠し持ち、反撃の機会を伺っていた。

 そんな折、プエルトリコのアレシボ天文台は、画期的な発見をしていた。明らかに知性体からと思しき信号を、電波望遠鏡が捉えたのだ。

 アトランティスの遺伝子にはどんな意味があるのか。宇宙からのメッセージの正体は。アレスは何を目論んでいるのか。そしてデイヴィッドとドリアンの因縁に決着はつくのか。

 数々の謎を見事にまとめあげ、風呂敷を綺麗にたたむ、痛快娯楽アクションSF長編、堂々の完結編。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は The Atlantis World, by A. G. Riddle, 2014。日本語版は2016年10月25日発行。文庫本で縦一段組み、本文約446頁に加え、著者あとがき2頁+訳者あとがき3頁。9ポイント40字×17行×446頁=約303,280字。400字詰め原稿用紙で約759枚。文庫本としてはちょい厚め。

 文章はこなれている。内容も特に難しくない。ロボット物のアニメを楽しめるなら、充分についていける。ただ、お話は三部作まとめて一つの長編になっているので、素直に開幕編の「第二進化」と第二部の「人類再生戦線」から読もう。

【感想は?】

 おお、綺麗にケリがついてる。お見事。

 まとめにかかるのかと思ったら、さにあらず。完結編ではスケールが更にエスカレートし、とんでもない規模の歴史と戦いが語られる。その分、オカルト成分は控えめだが、表紙はダテじゃなかった。

 三部作に分けて出版すると、どうしても前の巻までの内容を忘れちゃうんだが、新人のクせにこの著者は、そういった所もキチンと目配りしてるのが憎い。大事な伏線は、回収する前にうまくサワリを説明する親切仕様だ。しかも、ウザくない程度に。

 これは構成の巧みさも光ってる。まず全体を60ぐらいの細かい章に分け、読者に「私は読み進んでいる」と進行感を与える。また、登場人物は幾つかのグループに分かれて舞台に立ち、複数の舞台を並行して語ることで、「続きが気になる」気分をずっと味あわせる。おがけで、読み始めたらやめられない止まらない。

 長いお話なので、どうしても動きの多い場面と少ない場面がでる。これも先の複数グループを巧く組み合わせ、必ずどれかのグループが激しく動いているようにして、短い区切り単位でバラエティ豊かなストーリー進行を楽しめるようになってたり。

 キャラクターでは、ドクター・ポール・ブレンナーがいい。CDC(疫病対策センター)の研究者で、合衆国で疫病に対抗するため奮闘した人。典型的な仕事オタクの研究者で、ウイルスについちゃ詳しいが、人づきあいとなると、まあ、アレで。せっかくのチャンスにビタミンの話なんかしてんじゃねえよw

 ケイトとデイヴィッドの主人公カップルも危機また危機の連続で読ませるが、キャラクターとして最も光ってるのは、悪役ナンバー2のドリアン。トランスフォーマーならスタースクリームに当たる人。

 幼い頃から邪悪っぷりじゃ半端ない素質を発揮したドリアン様、この巻の冒頭じゃアレスに首根っこを押さえられ、手も足も出ない状態。そのアレスは肝心の目的は決して漏らさず、便利な道具としてドリアンをコキ使う。

 なんとか反撃の機会を伺うドリアン様だが、なにせアレスの目論見が分からないので、今は忍耐の時…と大人しくしてるはずもなく、スキあらば寝首をかこうと、決してくじけない所がいい。そんな執念深さはデイヴィッドに対しても同じで。

 やっぱり彼の本領はバトル・シーンでこそ光る。この巻ではジュラシック・パークまがいの場面で、プレデターみたいな化け物がうじゃうじゃいる環境を、一切の感情を捨て合理的な判断と無尽蔵の体力で目的達成に向け突っ走るあたりが、ドリアンらしさ全開で楽しませてくれる。いや身近にいたらはなはだ迷惑な人なんだけどw

 そんなドリアンを巧みに操るアレスも、これまた曲者というか意思の権化というか。何考えてるのかはわからないが、どうせ邪悪な事だろうと思ってたら、早速やらかしてくれました南極要塞で。

 やがて物語はアトランティス人の謎を追い、更に壮大な舞台へと向かってゆく。こっちの話だけでも三部作にしていいぐらいのスケールだが、このあたりの語り口は、50年代のスペースオペラを思わせるスピーディーかつ大仰で爽快、そしてスリリングなもの。

 定番のオカルトから最近の科学トピックなど大量の仕掛けを遠慮なくブチ込み、危機また危機の動きの激しい展開で、ヨーロッパ・アメリカ・インドネシア・チベットと世界中を駆け巡り、更に壮大な宇宙の歴史まで語る、サービス満点の娯楽作品。

 とにかく大げさで楽しく爽快なSFが読みたいなら、格好のお薦め。

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2016年12月 9日 (金)

フレドリック・ブラウン「さあ、気ちがいになりなさい」ハヤカワ文庫SF 星新一訳

ピートは正しかった。もっとも、まちがっていたという点についてだが。
  ――電獣ヴァヴェリ

「じつは、ぼくはナポレオンなんですよ」
  ――さあ、気ちがいになりなさい

【どんな本?】

 意表を突くアイデアと皮肉なオチで、SF黄金時代に多くの読者に愛されたフレドリック・ブラウン。彼のキレのいい短編を、やはり短編の名手・星新一による翻訳という黄金コンビで実現した、日本独自の短編集。

 いずれもキャラクターよりアイデア重視の作家だけに、軽く読めるものの、後で落ち着いて考えると実はかなりブラックな話が多い。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 1962年10月に早川書房より<異色作家短編集>として単行本が刊行。2005年10月、新装版を刊行。文庫版は2016年10月25日発行。文庫本で縦一段組み、本文約326頁に加え、訳者あとがき3頁+坂田靖子の解説7頁。9ポイント40字×17行×326頁=約221,680字、400字詰め原稿用紙で約555枚。標準的な文庫本の分量。

 翻訳物ながら文章は抜群の読みやすさ。SF的なガジェットも出てくるが、小難しく考え込むシロモノはない。ドラえもんが楽しめる人なら、充分に読みこなせる。

 なお、収録作中の五編を短編集 Angels and Space Ship より、四編を Space on My Hands より、三篇を Mostly Murder より選出。

【収録作は?】

 それぞれ 作品名 / 元題 / 初出 の順。

みどりの星へ / Something Gone / Space on My Hands, 1957
 辺境の星クルーガー第三惑星に不時着したマックガリー。ここは真紅の太陽・紫の空・褐色の平原・赤い森と、緑に欠けた世界だった。以前にもここに宇宙艇が着陸した記録があり、その宇宙艇を探しマックガリーは五年も一人で惑星上を彷徨っていた。
 改めて考えると地球の風景はなかなかカラフルで変化に富んでるよなあ。青い空、白い雲、緑の草原、黒や灰色のアスファルト、ドギつい色の広告…。
ぶっそうなやつら / The Dangerous People / Mostly Murder, 1951
 田舎町の理髪店でベルフォンテーン氏はサイレンを聞いた。理髪店の主人によれば、5マイルほど離れた病院から、狂った犯罪者が脱走したらしい。急いで町を離れようとベルフォンティーン氏は駅へ向かう。が、凶悪犯も早く町を離れたいだろう。とすると、凶悪犯も…
 駅ったって新宿駅みたく常に人がうじゃうじゃいる駅じゃなくて、せいぜい数人しかいない小さな駅なのがミソ。人込みの中に紛れ込めるならともかく、少人数の見知ら開ぬ同士ってのは、なかなか気まずいもので。
おそるべき坊や / Armageddon / Unknown 1941年8月号
 オハイオ州のシンシナティ市。ここでは、やがて人間と悪魔の決戦が行われる。殊勲者はいたずら小僧のハービー坊や、メイン・ウェポンは買ったばかりの水鉄砲。その日、ハービー坊やは両親と一緒に手品のショーを見に行き…
 ええ、世界では私たちの知らない所で大変な事が起きてるんです。たいていは本人すら知らないうちに。にしても、世界を救ったむくいがこれとはヒドいw
電獣ヴァヴェリ / The Waveries / Astounding 1945年1月号
 ラジオの広告コピーライターのジョージ・ベイリーは、ボスのJ・R・マッギーの命令で、商売敵の作った広告をラジオで聞いていた。その日の広告には、妙な雑音が入る。ト・ト・トと。これが侵略開始の合図だった。
 異形のエイリアンによる、奇妙な侵略を描いた作品。実はSF史上最強のエイリアンかもw
ノック / Knock / Thrilling Wonder Stories 1948年12月号
地球上で最後に残った男が、ただひとり部屋の中にすわっていた。すると、ドアにノックの音が……
 どう続くのかは、読んでのお楽しみ。
ユーディの原理 / The Yehudi Principle / Astounding 1944年5月号
 チャーリーが奇妙な発明品を持ってきた。ユーディの原理で動くという。鉢巻きみたいな形の機械だ。働き者の小人さんのように、頼んだことをやってくれる。ただしビルを移すなどの無茶な事はできない。また小人さんはあまり賢くないので…
 こういうのに出てくる発明家ってのは、頭がいいんだか悪いんだかよくわからないのが定番で。なんだってよりにもよってハンクなんかに相談するw
シリウス・ゼロ / Nothing Sirius / Captain Future 1944年4月号
 シリウスをめぐる二つの惑星、フリーダとソアでの商売は上々だった。女房と娘のエレンは帳簿をつけている。そこにロケット操縦士のジョニーがきた。なんと未発見の惑星があるという。さっそく新惑星に向かうと…
 銀河を駆け巡る行商の家族って出だしから、当時のSFの臭いが強烈に漂ってくる作品。彼らが降り立つ惑星も、ブラウンならではのイカれた風景でw
町を求む / A Town Wanted / Detective Fiction Weekly 1940年9月7日号
 奥の部屋じゃ市会議員のヒギンスと警官のグレンジが、一杯やりながらポーカーを楽しんでる。俺の用事は二階にいるボスだ。アニーは既に片づけた。そろそろ手を広げてもいい頃だと俺は思うんだが…
 ブラウンには珍しく風刺のきいた作品。でも語り口が上品なのは、ブラウンの芸か星新一の味なのか。
帽子の手品 / The Hat Trick / Unknown 1943年2月号
 ホラー映画を観たあと、エルジーとボブ・メイとウォルター二組のカップルは、エルジーのスタジオで飲み始めた。エルジーのリクエストでボブがトランプ手品を披露したのがトラブルのはじまりで…
 「タネもシカケもありません」
不死鳥への手紙 / Letter to a Phoenix / Astounding 1949年8月号
 18万年のあいだ、私は四千回の人生を繰り返してきた。元は普通の人間だった。事のはじまりは第一次原爆戦で、当時の私は23歳だった。さいわい、その時の戦争は、それほど極端じゃなかったが…
 発表は1949年で、第二次世界大戦が終わり冷戦へと向かう頃。アメリカばかりでなくソ連・イギリス・フランスなど世界各国が原子爆弾の開発に向けしのぎを削っていた時代。
沈黙と叫び / Cry Silence / Mostly Murder, 1951
 その駅にいるのは私を含めて四人。農民らしい背の高い男は話しかけても返事をしない。駅長と作業服の男は議論を戦わせている。誰もいない森の奥で木が倒れたら、その音は存在するのだろうか。列車は遅れている。
 「ぶっそうなやつら」同様、小さな駅で偶然に出会った者同士の会話で進むお話。そういえば星新一も人殺しの話が多いなあ。「殺し屋ですのよ」とか。
さあ、気ちがいになりなさい / Come and Go Mad / Weird Tales 1949年7月号
 新聞記者のバインは、編集長のキャンドラーから奇妙な話を持ち込まれる。元は精神病院の院長を務めるランドルフ博士。博士の病院に患者を装って潜り込み、ネタを掴んでほしい、と。だがどんなネタなのかは一切不明で…
 主人公のバイン君の仕掛けが凝ってるが、ブラウンの凝り性は更にアレで。
訳者あとがき
解説:坂田靖子

 1940年代~1950年代の作品なので、電話や汽車などの舞台設定や小道具こそ古びちゃいるが、肝心のメインのアイデアは今でも充分に面白いのが、この時代のSFの特徴。特にブラウンはアイデアの切れ味と構成で勝負する作品が多く、今後も愛され続けるんだろうなあ。

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