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2017年11月21日 (火)

ハーラン・エリスン「ヒトラーの描いた薔薇」ハヤカワ文庫SF 伊藤典夫他訳

「実に単純明快なんだ。鉄のかたまりは誤りをおかす人間より十中八九はすぐれているんだ」
  ――ロボット外科医

「言うのは簡単なんだ、実際にそれが自分の身に起こるまでは」
  ――バシリスク

「世の中の人の大部分が幻想を信じこんでしまったら、そう、そのときにはっそれはもう現実なのね」
  ――ヒトラーの描いた薔薇

「われわれは忘れるために夢を見るのだと思います。そしてそれはなかなかうまくいきません」
  ――睡眠時の夢の効用

【どんな本?】

 アメリカSF界の暴れん坊、ハーラン・エリスン Harlan Ellison の作品を集めた、日本独自の短編集。

 SFとは言っても、小難しい理屈はほとんど出てこず、仕掛けとしては悪魔や天国や民間伝承が多いので、むしろ奇想小説と言うべきかも。そのかわり、現代アメリカ社会を痛烈に皮肉る社会批評や、過激な暴力描写が売り物で、またオチを放り投げているような作品もある。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2017年4月25日発行。文庫本で縦一段組み、本文約350頁に加え、大野万紀の解説が豪華15頁。9ポイント40字×17行×350頁=約238,000字、400字詰め原稿用紙で約595枚。文庫本としては標準的な厚さ。

 文章はこなれている。ただ、エリスンの芸風として、俗語や口汚い言葉がよく出てくるので、好みは別れるかも。SFとしても、あまり難しい仕掛けは出てこないので、理科が苦手な人でも大丈夫。

【収録作は?】

 それぞれ 作品名 / 原題 / 初出 / 訳者 の順。

ロボット外科医 / Wanted in Surgery / IF 1657年8月号 / 小尾芙佐訳
 医工(フィメック)、医療ロボット。診断は正確で、手術の腕も確か。医工の登場で医学界には大きな衝撃が走る。人間の医師の地位は下がる一方で、難しい手術はみな医工に任される。外科医のスチュアート・バーグマンは失意に暮れ…
 ディープ・ラーニングを応用した AI が大流行の今こそホットな作品。ちなみにエキスパート・システムを使った MYCIN(→Wikipedia) は1970年代初期なので、時代を先取りした作品と言える。ちょっと調べたら、既にダヴィンチ(→News Picks)をはじめ、様々な医療ロボットが活躍しているとか。もっとも、今はまだ「道具」って位置づけだけど。
恐怖の夜 / The Night of Delicate Terrors / A Chicago Weekly 1961年4月8日 / 伊藤典夫訳
 車を走らせるフッカー一家。南部ジョージア州メーコンから、北部イリノイ州シカゴへ。そこで秘密会議が開かれる。途中、吹雪に捕まったが、ここケンタッキー州では黒人が泊まれる宿はめったに見つからない。いや宿どころか、食事すら…
 SFじゃない。黒人の権利を求める公民権運動(→Wikipedia)が高まり始めた1960年代の作品。当時は差別が合法だったんだよなあ。北爆などベトナム戦争では評判の芳しくないジョンソン大統領だが、公民権法では優れた手腕を発揮してます。
苦痛神 / Paingod / ファンタスティック1964年6月号 / 伊藤典夫訳
 トレンテは苦痛神だ。エトス族がそう定めた。トレンテ以前にも苦痛神に選ばれた者はいた。苦痛神は、無限に近い寿命を持つ種族から選ばれる。はるかな昔から、宇宙中の生き物に、容赦なく苦しみを与える。それが苦痛神の仕事だ。勤勉に仕事に励むトレンテだったが…
 宇宙の生きとし生けるもの全てに、命じられるまま機械的に苦しみを振りまく神。私は「服従の心理」で描かれたアイヒマン実験(→Wikipedia)を思い浮かべた。
死人の眼から消えた銀貨 / Pennies, Off A Dead Man's  Eyes / ギャラクシー1969年11月号 / 伊藤典夫訳
 ジェッド・バークマンが82歳で天に召された。貧しいながらも、最後まで誇り高く歩み続けた男。おれ同様、ジェッドに拾われた仲間も2~3人いる。12年前ぶりだ。葬儀が行われるペンテコスト教会には、黒人が集まっている。
 「恐怖の夜」同様に、人種差別を題材にした作品。1963年のバーミングハム黒人教会爆破事件(→Stdio Be)に触発されたのかな? が、この作品は、更にヒネリを利かせている。一見、わかりにくいって点じゃ、在日朝鮮人問題と共通点があるかも。
バシリスク / Basilisk / F&SF 1972年8月号 / 深町眞理子訳
 野戦パトロールから帰る途中、ヴァーノン・レスティング兵長は罠を踏み抜いてしまう。尖らせた先端に毒を塗った竹。気が付いた時、レスティングは敵のアジトにいて、片足を失っていた。敵はレスティングを拷問にかけ…
 時代的に、ヴァーノンがいた戦場は、ベトナムだろう。米軍は将兵を大切にするって話だが、民間人の感情はそうでもないらしい。最近も、トランプ大統領が「私は捕虜にならなかった人が好きだ」なんて暴言を吐いたり(→産経ニュース)。もっとも、この辺は日本の方が酷いんだよなあ。
血を流す石像 / Bleeding Stones / Vertex: The Magazine of Science Fiction 1973年4月号 / 伊藤典夫訳
 ニューヨーク。聖パトリック大聖堂(→Wikipedia)を、四万人の群衆が取りまいている。ジーザス・ピープル(→Wikipedia)だ。正面の扉から、枢機卿が現れた。群衆は喜びに満ちる。その時、天を指し示す枢機卿の指先に…
 ジーザス・ムーブメントなんてあったのか。知らなかった。暴れん坊エリスンに相応しく、筆で鬱憤を晴らしまくる作品。今ならCGでド迫力の映像を創れるだろうなあ。
冷たい友達 / Cold Friend / ギャラクシー1973年10月号 / 小尾芙佐訳
 ここはニュー・ハンプシャーのハノーヴァ。ぼくは悪性リンパ種で死んだ…はずだ。が、病院のベッドで目が覚めた。病院には誰もいない。病院だけじゃない。街全体が空っぽだ。ぼくはユージン・ハリスン、郵便局員、独身。
 誰もいない街に、たった一人で生き残った男。だと思っていたが…。まあ、アレだ、モテない男には、グサグサと突き刺さる作品。どうせ、どうせ…
クロウトウン / Croatoan / F&SF 1975年5月号 / 伊藤典夫訳
 掻爬のあと、キャロルは大変な勢いで怒り出す。「あの子を見つけてきて」。いや見つけてこいったって、もうトイレに流しちまったし。仕方なく、マンホールの蓋をあけて下へと降りてゆく。意外と下水道は不快じゃなかった。
 前の「冷たい友達」とは対照的に、リア充だがしょうもない男を主人公とした作品。下水道に潜る場面では、つい「ざまあ」とか思ったり。はい、ひがんでます。ニューヨークの地下世界を舞台とした、幻想的な作品。
解消日 / Shatterday / ギャラクシー1975年9月号 / 伊藤典夫訳
 バーで待ちぼうけを食らったピーター・ノヴィンズは、電話をかける。が、まちがって、自宅の番号にかけてしまった。誰も出ない…はずなのに、回線の向こうで受話器があがる。しかも、電話に出たのは…
 章題がみんな地口になっている、翻訳家泣かせの作品。いきなり自分が二人になったら、どうするだろう? お互い協力して…とはならないのが、エリスンらしい。
ヒトラーの描いた薔薇 / Hitler Painted Roses / ペントハウス1977年4月号 / 伊藤典夫訳
 1935年、ダウニーヴィルで惨殺事件が起きた。被害者はラムズデル一家六人、うち三人は子供。彼らは裕福で人柄もよく、町の者に愛されていた。ただひとり生き残ったのは、マーガレット・スラシュウッド。町の者は彼女を犯人と決めつけ、井戸に放り込んで殺した。
 アメリカは歴史が浅い。開拓時代は連邦政府どころか州政府すら地方まで力が及ばず、住民たちが集まって社会を創り上げてきた。だもんで、今でも保安官なんて制度が生き残っている。それだけに自治には熱心だが、必ずしも冷静とは限らず…
大理石の上に / On the Slab / オムニ1981年10月号 / 伊藤典夫訳
 ロードアイランド州のリンゴ農園から、巨人の死体が見つかる。身長30フィート(約9メートル)、ピンクの肌、隻眼。残った一つの眼には、ふたつの瞳孔。そして、心臓の真上に無残な傷。興行主のフランク・ネラーは巨人を買い取り、見世物にする。
 有名な神話に題をとった作品。冒頭のリンゴ園の描写から、エリスンらしい絶望と破滅の予兆に満ち溢れている。
ヴァージル・オッダムとともに東極に立つ / With Virgil Oddum at the East Pole / オムニ1985年1月号 / 伊藤典夫訳
 惑星メディア。原住民の人馬族とのコミュニケーションは、なかなか巧くいかない。おれはウィリアム・ロナルド・ボーグ。明暗境界線上の最大の島メディテーション島に一人で住んでる。ヴァージル・オッダムは、厳寒のアイスランドからボロボロの姿で這ってきた。
 エリスンには珍しく、遠い惑星を舞台とし、異星人とのファースト・コンタクトを扱った作品。テレパシーらしき能力を持っちゃいるけど、なかなか意思疎通はできないって意地の悪い設定に、エリスンの性格が出てるw
睡眠時の夢の効用 / The Function of Dream Sleep / Asimov's 1988年12月中旬号 / 小尾芙佐訳
 マグラスが目を覚ました時、自分の脇腹に空いた口を見た。小さな鋭い歯が並んだ、大きな口。それは一瞬でかき消えた。夢じゃない。確かに見た。医師に診てもらったが、異常は見つからない。そこで元妻のトリシアに勧められたのが…
 エリスンの「怒り」を感じさせる作品が多いなか、最後のこれは「哀しみ」が伝わってくる。眠うるしかない時だって、あるんだよね。

 激動の60年代に活躍した人だけあって、饒舌で過激な暴力を描きながら、世の中の理不尽への絶望と憤怒をぶちまけたような作品が多い。

 加えて、この短編集の魅力は、定評ある訳者陣。安定の伊藤典夫の職人芸や、小尾芙佐の名人芸が堪能できるのが、オールドSFファンには嬉しいところ。

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2017年11月 7日 (火)

ダリル・グレゴリイ「迷宮の天使 上・下」創元SF文庫 小野田和子訳

「GFD」ドクター・グロリアもやっとわかったようだ。「一日ゲイ(ゲイ・フォー・ア・デイ)」
  ――上巻p37

統合失調病はあらゆるタイプの科学者を呑みこんでしまう泥沼だ。
  ――上巻p57

「モラルなんてものは理屈じゃない。神さまんとこのお巡りさんが石板に書いて渡してくれるようなもんじゃない。神経組織に接続されてるものなんだよ」
  ――上巻p142

「それはね、個人的体験はありとあらゆる証拠のなかで最悪のものだからよ、ぼうや。あたしがひとつ学んだことがあるとすれば、それは脳は嘘つきのろくでなし野郎だってことだわね」
  ――下巻p64

「もっとも宗教を必要とするのは、もっとも絶望した人間であり、そういう人間は社会のどん底にいる」
  ――下巻p154

彼女が空想のものだからって、彼女が現実のものじゃないってことにはならない
  ――下巻p277

【どんな本?】

 近未来。化学ジェットプリンターが普及し始めた。あらゆるドラッグのレシピは、インターネットから手に入る。気の利いた高校生なら、既存のレシピをいじり、新しいドラッグだって創れる。

 家出少女フランシーヌは、ボロい教会でソレに出会う。ヌミナス。何かに見守られている、そんな温かい気持ちになる。みじめな暮らしに変わりはないが、気持ちは前向きになった。

 しかしガサ入れで捕まり収容所に入れられたフランシーヌは、教会に通えなくなる。当然、ヌミナスも手に入らない。やがて薬の効果が切れ神を見失った彼女は、自らの命を絶つ。

 フランシーヌと同室になったライダは、フランシーヌの症状に憶えがあった。かつて彼女が仲間とともに立ち上げた新薬開発会社リトル・スプラウト。そこで開発した薬と効果がそっくりなのだ。NME110、またの名をヌミナス。統合失調症の治療に役立ちそうだが、副作用が困る。神の幻覚を見るのだ。

 仲間と話し合い、ヌミナスは葬ったはずだった。だが、それが出回っている。誰が裏切ったのか。何が起きているのか。目的は何か。真相を突き止めようとライダは動き出すが…

 1990年にデビューしたアメリカのSF作家による、近未来ドラッグSF作品。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は AFTERPARTY, by Daryl Gregory, 2014。日本語版は2017年3月10日初版。文庫本で縦一段組み、本文は上巻約271頁+下巻約281頁=約552頁に加え、橋本輝幸による解説7頁。8.5ポイント41字×17行×(271頁+281頁)=約384,744字、400字詰め原稿用紙で約962枚。標準的な上下巻分の文字数。

 文章は比較的にこなれている。ただ、登場人物は犯罪者が中心のためか、俗語や略語が多く、それにひっかかる人もいるかも。用語集が欲しかった。SF的なガジェットは、主にドラッグ。神を感じるとか、ゲイになるとか。その辺に抵抗がなければ、楽しめるだろう。

【感想は?】

 オツムのイカれた奴ばかりが出てくる、ヘンテコなアクション・ミステリ。百合のトッピングつき…のフリをした、ドラッグ小説。

 主人公のライダ・ローズ42歳からして、一種のジャンキー。ヌミナスの副作用でヤられ、冒頭じゃ収容所暮らしだ。彼女には天使ドクター・グロリアが見える。しかも、グロリアが幻覚だと、ライダ本人は分かってるあたりが、なんともややこしい。

 次に登場するボビー23歳も、思い込みに捕われている。彼はいつもプラスチックの宝箱を、首にぶら下げている。彼の意識は、その宝箱のなかに入っている、そうボビーは信じている。と書くと危ない奴のようだが、それを除けば、気は弱いが優しい人物だ。つまりはタダのヘタレな若造です。

 もう一人のライダの仲間、オリー・スカーステン、こいつはマジでヤバい。

 元は陸軍にいて、次に民間の調査会社に入った。調査会社ったって、タダの浮気調査じゃない。主な客は軍と政府。そこでは彼女の特技が活きた。一見、関係なさそうな複数の情報を突き合わせ、一つの仮説を組み立てる。ただし、これは一歩間違えると、ただの偏執狂だ。

 というか、既に間違えてしまった。そんなわけで、収容所にいるオリーは、薬で特技を抑えている。初登場時のオリーは、薬の支配下にある。そんなオリーが示す症状は、なかなか悲惨。この辺、オリヴァー・サックスの著作が好きな人には、「おお、あのネタか」とピンとくるかも。

 そして彼女たちの前に立ちふさがるヴィニー。日頃はミニチュアのバイソンを可愛がる普通の男。しかし、ヤクをキメると、ザ・ヴィンセントに人格が変わる。タフで冷酷で荒事に慣れたカウボーイ。ハードボイルド小説に出てくる探偵そのものだ。ただし、悪役だけど。

 いずれも、オツムはイカれちゃいるが、なんとかソレと折り合いをつけて生きているのが、この作品の特徴だろう。ただ、その方法はそれぞれ。

 ライダはグロリアを幻覚だと自分に言い聞かせる。ボビーは宝箱さえあれば、ただのヘタレ青年だ。対して、オリーは、薬の影響を嫌っている。これがヴィニーになると、もっと積極的だ。必要に応じて、薬により人格を変える。

 一般にドラッグには悪い印象が付きまとう。が、冒頭のフランシーヌのエピソードは、その思い込みに疑問を投げかける。彼女からヌミナスを奪ったのは、果たしてよかったのか。

 なんて真面目に考え込んでいる読者を、続く大学のドラッグ・パーティーの場面では、とことん茶化してくれる。GFD、ゲイ・フォー・ア・デイ。野郎だらけのおちんちんランドが、このドラッグによりパラダイスに変わる。勘弁してくれw

 このあたりで語られるドラッグの性質も、薬学が好きな人には、なかなか楽しめるところだろう。バイアグラの開発経緯で分かるように、薬ってのは単純じゃないのだ。

 といったSFな道具立てはあるものの、物語はライダを中心として、ヌミナス流出の謎を追うハードボイルド風に進んでゆく。にしても、ライダやオリーなど女性陣がタフでアグレッシヴなのに対し、ボビーといいロヴィルといい、野郎どもが軒並み情けないのはどういう事だw

 謝辞にあるように、オリヴァー・サックスやV.S.ラマチャンドランやダニエル・デネットの著作が好きな人には、「おお、そうきたか!」な場面の多い、ちょっと変わったドラッグ小説。

【関連記事】

【余計なおせっかい】

 謎の焦点となるヌミナス。これ、あながち架空ってわけでもない。

 例えばアリス・W・フラハティの「書きたがる脳」には、「詩神を呼ぶ装置」が出てくる。脳の特定部分を刺激すると、インスピレーションが沸きだすのだ。ロバート・A・バートンの「確信する脳」には、宗教的法悦を与える装置が出てくる。

ちなみにこの法悦装置、二重盲検が不充分って批判もある。が、別の見方をすれば、プラシボ効果を高める演出をすれば、かなり使えるとも言える。もっとも、何に使うのかが問題だけど。

 ジョナサン・ハイトの「社会はなぜ左と右に分かれるのか」によると、人の倫理観には六つのアンテナがある。それぞれのアンテナの感度は人により違い、これが政治的・倫理的な対立を生む。アンテナのうち一つが神聖/堕落で、これが発達した人は宗教に入れ込みやすいんだろう。

 つまり、ヒトの脳には、神を感じる機能があるらしい。それが特定の部位なのか、ニューロンの繋がり具合で全体に分散してるのかはわからないが。今のところ、TMS(→Wikipedia)などの大げさな装置が必要だが、これを薬に置き換えたのが、この作品のヌミナスだ。

 と、そんなあたりを踏まえて、関連記事の第二弾・ノンフィクション編をどうぞ。

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2017年10月17日 (火)

A・E・ヴァン・ヴォクト「宇宙船ビーグル号」浅倉久志訳 早川書房世界SF全集17

二足生物たちの故郷の惑星には、きっと無尽蔵のイドが彼を待っているにちがいないのだ。
  ――黒い破壊者

情報総合学とはなにか?
それは、
一分野の知識を、他の諸分野の知識に、
秩序正しく結びつける科学です。
  ――神経の戦い

イクストルは果てしなく広がる夜のなかに、身動きもせず、だらりと横たわっていた。彼はゆっくりと永遠への歩みをつづけており、空間は底知れぬ暗黒だった。
  ――緋色の不協和音

「単なる意見だが」と、グローヴナーの背後のだれかがいった。「回れ右して故郷へひき返すべきじゃないかな」
  ――M-33星雲

【どんな本?】

 SF界のレジェンド、A・E・ヴァン・ヴォクトによる、古典的で稀有壮大なスペース・オペラ・シリーズ。

 遠い未来。人類は太陽系を飛び出し、銀河系へと進出していた。更なる宇宙の秘密を解き明かそうと、多くの探査船が銀河へと向かう。しかし宇宙には人類が未だ知らない危険が満ちており、多くの探査船が消息を絶ってしまった。

 この問題に対処するために計画されたのがビーグル号である。大型の宇宙船に千人近い科学者と軍人を搭乗させ、その頭脳を結集すれば、未知の危機にも対処できるであろう。そしてもう一つ、ビーグル号には新しい試みがなされていた。エリオット・グウローヴナーも参加しているのである。彼の専門は情報総合学であり…

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は The Voyage of the Space Beagle, by A. E. Van Vogt, 1950。日本語版は1968年12月31日初版発行。単行本ハードカバー縦二段組みで本部約204頁。8ポイント26字×19行×2段×232頁=約229,216字、400字詰め原稿用紙で約574枚。文庫本なら標準的な厚さの一冊分。

 文庫版は二つ出ている。ハヤカワ文庫SFより浅倉久志訳で「宇宙船ビーグル号」、創元SF文庫より 沼沢洽治訳で「宇宙船ビーグル号の冒険」。創元SF文庫の新版は2017年7月に出たばかりなので、手に入れやすいだろう。

 文章はこなれている。古典だけあって、出てくるガジェットそのものはSFファンにお馴染みのものが多い。ただし次から次へと大量の仕掛けが出てくるので、SFに慣れない人には辛いかも。動作原理などを作中で色々と理屈をつけちゃいるが、大半はハッタリなので、深く考え込まないこと。特に相対論関係のツッコミは厳禁w

【収録作は?】

 長編の形になってはいるが、実質的には四本の短編を繋げて編集した形なので、ここでは連作短編集として扱う。

 以下、作品名は日本語の作品名/原題/初出 の順。

黒い破壊者 / Black Destroyer / アスタウンディング誌1939年7月号
 静寂に満ちた星で、実りのない狩りを続けるクァール。そこに小さな光点が近づいてくる。やがて光点は巨大な銀色の球体となり、中から二本足の生物が出てきた。あの原形質をむさぼりたい。膨れ上がる欲望を抑え込み、静かに獲物へ近づく。今は警戒させない方がいい。
 スペース・オペラのスーパースター、クァールが登場する伝説の作品。大きな黒猫に似ているが、耳の巻きひげは電磁波を操り、両肩には器用に動く触手が生えている。酸素も塩素も呼吸でき、その筋力は鋼鉄をもへし折る。
 タフでパワフルな肉体に加え、その性格は凶暴にして残忍かつ執念深い。獲物を追い始めれば百日でも追い続けるが、食うのは死んだ直後の獲物だけ。おまけに高い知能を持ち…と、悪役ながら実に魅力的な設定。
 何より、猫に似ているってのがズルいw 可愛い上にカッコいいってのが、もう反則スレスレ。そんなクァールをナメてかかり、まんまと騙されるビーグル号の面々に、思わず同情しちゃったり。
神経の戦い / War of Nerves / アザーワールズ誌1950年5月号
 クルーに情報総合学の理解を深めてもらおうと、グローヴナーは講演を開く。しかし、あいにくと隊長選挙の演説会と時間がカブり、講演会場はガラガラ。それでも参加者がいるだけマシ、と情報総合学を紹介したグローヴナーが、宇宙空間を眺めていた時、それが起こった。
 外からやってくるエイリアンの脅威に加え、船内でも主導権をめぐり搭乗員同士の勢力争いがあるのが、このシリーズの特徴の一つ。この作品では、憎まれ役のケントが次第に存在感を増してくる。日系のコリタに数少ない理解者の役を割り振ったのも、時代背景を考えると大胆な試みかも。
 もう一つの読みどころは、特殊な「思考」や「感覚」の描写。スランにおける同族との会合シーンもそうだったんだが、テレパシーの描き方が、この人は抜群に巧い。単に「思考を読む・伝える」だけでなく、それに伴う副作用をキッチリ練り込んで書き込むことで、読者に「おお、なんか科学的っぽい」と思いこませる、独特の迫力に満ちている。
緋色の不協和音 / Discord in Scarlet / アスタウンディング誌1939年11月号
 前の宇宙の爆発で吹き飛ばされたイクストルは、島宇宙のはざまに漂っていた。時空間を渡る光エネルギーも、次第に貧しくなってゆく。そこに、エネルギーの励起状態が飛び込んできた。力場を広げ、ソレの巨大なエネルギーをむさぼる。蘇った活力で、逃げようとする獲物を追いかけ…
 いきなり「前の宇宙の生き残り」と、壮大な風呂敷を広げてくれる作品。発表年を見ると、ビッグバン理論の黎明期だ。ハッタリ屋のヴォクトも、当時の最新科学の成果を積極的に取り入れていた模様。
 と、仕掛けは大掛かりながら、ドラマとしては、閉ざされたビーグル号船内でのハンティング劇となる。もっとも、狩られるのがどっちかは難しいところだがw かなり広い設定のビーグル号だが、この作品ではイクストルの特異能力により、逃げ場のない閉塞感が漂ってくる。
 しかもこのイクストル、実におぞましい性癖を持っていて、この感じなんか覚えがあるなあ、と思ったら、やっぱり某大ヒット映画シリーズだった。
M-33星雲 / M33 in Andromeda / アスタウンディング誌1943年8月号
 M-33渦状星雲へと向かうビーグル号に、何者かが干渉してきた。その効果は脳波修正装置に似ており、搭乗員の脳に作用する。しかも、情報総合学室の遮蔽装置すらつらぬく、おそろしく強力な威力を持っている。
 エイリアン視点で描く「黒い破壊者」や「緋色の不協和音」とは対照的に、この作品ではなかなか敵の正体が掴めない。ホラー・タッチのファースト・コンタクト物としてはオーソドックスな手法ながら、エイリアンの能力も相まって、不気味さがいっそう際立っている。
 また、今まで憎まれ役だったケントが、隊長代理となって更に存在感を増しているのも、この作品の特徴。あくまでクールに理詰めで攻めるグローヴナーに対し、あてこすりと扇動が得意なケント。二人の対比は、理屈っぽさで嫌われがちなSFファンには、美味しい隠し味として効いてきたり。

 ファースト・コンタクト物が大好きな私には、次々と登場する奇矯なエイリアンたちが楽しくてしょうがない。しかもホラー風味の味付けなので、映像化しやすいのも嬉しいところ。今ならCGを駆使すれば、可愛いけど凶暴なクァールも、さぞカッコよく描けるだろうなあ。

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2017年10月12日 (木)

A・E・ヴァン・ヴォクト「スラン」浅倉久志訳 早川書房世界SF全集17

なぜぼくが殺されねばならないんだ? なぜあんなにやさしくかしこい、すてきなおかあさんが殺されねばならないんだ?
  ――p9

「いいかね、大衆がたずさわっておるのは、いつもほかのだれかのゲームじゃ――自分自身のゲームではなくてな」
  ――p63

【どんな本?】

 アメリカSFの黄金期を築いたA・E・ヴァンヴォクトの、記念すべき処女長編。初出はSF雑誌アスタウンディング誌の1940年9月号より四カ月間の連載である。その間、人気投票では、全投票者がこの作品を1位に推すという快挙を成しとげている。

 遠い未来。世界政府の所在地セントロポリスで、9歳の少年ジョミー・クロスは母親と共に逃げ回っていた。今も多くの追手が迫っている。二人はスラン。二つの心臓を持ち、人の思考を読める。秘密警察はスランを狩り、市民もスランを憎み切っている。スランのしるし、一房の金色の触毛がバレれば命はない。

 ただ一つの望みは、父が遺した大地下道。その奥に、世界を変えうる秘密が眠っている。それを見つけ、辿りつき、秘密を読み解ける知識を身につけるまで、なんとしてもジョミーは生き延びねばならない。しかし、彼を守ってくれた母は…

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は SLAN, by A. E. Van Vogt, 1940。日本語版は1968年12月31日初版発行。単行本ハードカバー縦二段組みで本部約204頁。8ポイント26字×19行×2段×204頁=約201,552字、400字詰め原稿用紙で約504枚。文庫本なら標準的な厚さの一冊分。文庫本がハヤカワ文庫SFから出ているが、今は入手困難。図書館に頼るなら、全集の方が手に入れやすいだろう。

 文章はこなれていて読みやすい。超人類であるスランを始め、ケッタイなガジェットも続々と出てくるし、ちゃんと理屈もついている。しかも、当時の科学のレベルを考えると、幾つかのガジェットは予言が当たってたりする。が、実際はハッタリのまぐれ当たりだろう。あまり真面目に考え込まないこと。漫画を楽しむノリで「そういうものだ」で済ませておこう。

【感想は?】

 そのまま漫画化して週刊少年ジャンプで連載したら、大人気を博しそうな王道の娯楽冒険物語。

 とにかくテンポがいい。危機また危機、逆転に次ぐ逆転、そしてアッと驚くどんでん返し。短いサイクルで、これが何度も繰り返される。今の作家なら10巻の大作にしそうなストーリーを、一冊に詰めこんだジェットコースター・ストーリーだ。

 それだけ濃けりゃ説明じみて読みにくくなりそうなもんだが、全くそんな事はない。最初の3頁で重要な登場人物は全て揃い、主人公ジョミーの立場と目的、そしてこの作品全体を通してのテーマと、お話の向かう方向も見えてくる。しかも、主人公ジョミーの命が狙われている緊迫感の中で。

 人の思考を読めるスランの特殊能力も、普通なら有利に働きそうだが、冒頭ではこれが逆に危機感を煽るあたりも巧い。人があるれる大都会に、9歳の少年が放り出される。そして、全ての人がスランを憎んでいる。正体がバレたら命はない。

 なまじ人の思考が読めるだけに、ジョミーの恐怖は更に増す。少しでも怪しまれ通報されたら、それで終わりだ。しかも敵に容赦が期待できない事も、すぐに明かされる。

 ってな感じの危機感・緊迫感が、最初から最後まで途切れずに続くあたりは、とても処女長編とは思えぬ手際の良さ。

 75年も前の作品だけに、古さが気になるかと思ったが、とんでもない。とにかくお話が面白い上ので、早く次を読みたくて仕方がなく、突っ込みを入れている暇がない。

 ばかりでなく、逆に今だからこそ楽しめる部分も多い。

 なんたって、SFの古典だ。現在のSF漫画やSFアニメやSF映画のクリエイターは、多かれ少なかれヴォクトの影響を受けている。または、ヴォクトに憧れたクリエイターの影響を受けている。

 だもんで、21世紀の私たちは、ヴォクトがどんな場面を描いているのか、ありありと思い浮かべる事ができるのだ。それは「マジーン・ゴー!」だったり「ヤマト,発進!」だったり「ゲッタアァァービイィィーム!」だったり。

 当時の読者は「なんか凄い事が起きている」としか感じられなかったシーンを、私たちはフルカラー音声付きで楽しめるのだ。まあ、ソレナリに特撮映画やアニメに浸ってる人限定だけど。

 もう一つ、21世紀だからこそ楽しめる点がある。なんたって75年も前の作品だ。それだけに、チグハグな描写もいくつかある。遠い未来の都市で荷馬車が動いてたり。これ、たぶん、40年前だと「さすがに古いなあ」で終わっていただろう。

 が。幸いにして、少し前にスチームパンクなんて動きがあった。アニメだと、LAST EXILE が印象に残っている。19世紀的なデザインのメカが、悠々と空を泳いだりする、見た目と機能のミスマッチが楽しい作品群だ。そういえばメイドインアビスも、スチームパンク以降ならではの芸風だよなあ。

 そういった映像のお陰で、私たちの考える「遠い未来の情景」は、一気にリセットされた。40年前だったら、ビルの合間を縫ってチューブ式の高速道路が走りエアカーが飛び回る、クリーンでメタリックな感じでなければ、私たちは「未来の都市」とは認めなかっただろう。

 だが、ブレードランナーやスターウォーズの影響もあり、薄汚いビルや粗大ゴミが積み上がった風景も、未来としちゃアリだよね、と私たちは思えるようになっている。そのため、この作品の古さゆえのミスマッチも、「コレはコレで」と楽しむ余裕が、今の私たちにはできた。

 もっとも、先に描いたように、そういった場面も、元をたどるとヴォクトに辿りついたりするんだけど。

 なんて屁理屈は一切忘れて(←をい)、著者の騙りに身を任せよう。最初の頁からハラハラドキドキ、ワクワクゾクゾクな物語があなたを待っている。全ての男の子たち、そしてかつて男の子だった者たちのための、傑作娯楽冒険活劇だ。

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2017年9月28日 (木)

チャーリー・ヒューマン「鋼鉄の黙示録」創元SF文庫 安原和見訳

「自分が連続殺人鬼だとなったら、いろんな疑問が湧いてくるもんだよな」
  ――p11

エズメがいなかったらとうぶんいいこともできやしない。でも悪いことばっかりじゃない。うまくすれば、敵に向かってまともに銃をぶっ放せるかもしれないぞ。
  ――p286

「現実のほうが妄想より変だってこともあるんだぞ、少年」
  ――p322

【どんな本?】

 南アフリカはケープタウン出身の新人作家による、コミック風味のお馬鹿冒険SF。

 バクスター・ゼヴチェンコは、ケープタウンの高校に通う16歳。学校じゃ二組のギャングが争ってる。アンワル率いるナイスタイム・キッズは武闘派でヤクをさばき、デントンがまとめる知性派のフォームは書類偽装で稼いでいた。

 そんな中、バクスターは小集団スパイダーを結成、マニアックなポルノを売りさばく。学校の平和が乱れれば商売どころじゃない。そこでバクスターは両巨頭の調停に頭を痛めている。頭痛の種はもう一つ、妙な夢にも悩まされていた。

 その日、ガールフレンドのエズメから不吉な話を聞く。ひとつ年上のジョディ・フラーが殺された、と。連続殺人鬼マウンテン・キラーの餌食になったらしい。奴は被害者の額に眼のような絵を残していく。この事件を機に、バクスターはケープタウンの闇の世界へと足を踏み入れ…

 ヤンキー漫画,トールキン風のファンタジイ,悪趣味なホラー・ゲーム,ハリウッド風のガン・アクション,秘密組織がらみの異陰謀論,勘ちがいした東洋趣味などの定番に加え、南アフリカ土着の伝説をまぶし、外連味たっぷりに描くケープタウン風俺TUEEE!な厨二病小説。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は Apocalypse Now now, by Charlie Human, 2013。日本語版は2015年3月13日初版。文庫本で縦一段組み、本文約418頁に加え、橋本輝幸の解説6頁。8ポイント42字×18行×418頁=約316,008字、400字詰め原稿用紙で約791枚。文庫本としては厚めの部類。

 文章は比較的にこなれている。内容も特に難しくないが、ボーア戦争などの南アフリカの歴史と現状を知っていると、より楽しめる。

【感想は?】

 高校生が主人公の馬鹿話だ。そのつもりで、リラックスして読もう。

 出だしはヤンキー漫画風に、高校の様子を描いてゆく。ったって、Be-Bop Highschool みたく可愛らしいモンじゃない。拳でケリつける日本の不良が平和主義者に見える。なんたって、銃器を振り回しヤクをサバいて稼いでるし。ヤンキーどころか、ヤクザやマフィアの世界だ。

 やがて知人が連続殺人鬼の被害にあったのを機に、バクスターはケープタウンの裏社会へと首を突っ込む羽目になる。彼の案内人となるのが、ジャッキー・ローニン。ローニンの名でわかるように、この作品のスパイスの一つ、勘違い東洋趣味のはじまりだ。

 ジャッキー・ローニン、賞金稼ぎ。ただし、普通の賞金稼ぎじゃない。「化けもん探し」が専門。おんぼろビルにオフィスを構える、40過ぎのむさ苦しいオッサン。バクスターが訪ねた際は、借金取りに間違われ…ってのも、貧乏探偵の定番のパターンだね。

 このしょぼくれた中年探偵ローニンが繰り出す無情不死酔拳ってのも、まるきし南アフリカ版の民明書房。

 酔拳で見当がつくように、ブレイク前のジャッキー・チェンのカンフー映画に、勘ちがい東洋趣味とトールキン風ファンタジイを混ぜ、隠し味にシモネタと南アフリカの伝説を紛れ込ませた、この小説を象徴するような小話。文庫本だと140p~5頁ほどなんで、味見にはちょうどいいかも。

 そんなローニンと組み、最初の化け物退治に出かける場面では、南アフリカ版のゴースト・バスターズが炸裂する。映像化するにしても、かつての香港映画のように低予算の特撮が似合うシーン。当然、主演はカンフーの使い手じゃないと。

 その後の<肉欲の城>は、ホラー・マニア大喜びの酒池肉林が延々と続く。当然、ホラーのスターとくればアレで、そういうのもゾロゾロと。などといった店内の様子もさることながら、その裏方で働くオバチャンたちの逞しさには、思わずニヤリとしちゃったり。

 とまれ、日本の特撮映画や漫画じゃ、この手の化け物には銃などの物理兵器が効かないのがお約束になってる。が、このお約束、海を越えるとチャラになるんだよなあ。まあ、その方が画面が派手になるからいいけどw

 やがて話が進むに従い、ローニンの過去の因縁が明らかになり、また仲間も増えてゆく。これまたハードボイルドな探偵物のお約束通り。なんだが、肝心のローニンが、いまいちヘッポコなのが、この作品ならでは。みんなビンボが悪いんや。

 笑っちゃうのが、最後の決戦に赴く前の武装を整えるシーン。やたらと話が壮大な割に、どうにもローカルな所で済ませちゃうあたりは、日本のライトノベルにでも影響されたんだろうか。

 肝心のラストバトルも、やたらと壮大な設定を背負っちゃいるが、あくまで舞台はケープタウンってところが、これまた日本の怪獣映画を思わてるところ。もちろん、巨大なアレが、周囲の迷惑も顧みずに大暴れします。つか、なんじゃその決着はw

 などと、行き過ぎヤンキー漫画に始まり、勘違い東洋趣味・カンフー映画・落ちぶれ探偵者・悪趣味ホラー・秘密組織と陰謀論・トールキン風ファンタジイ・因縁の対決など、「混ぜるな危険」な素材をコッテリとブチ込み、南アフリカの伝説をふりかけ、厨二な妄想で仕上げた、能天気冒険アクションSFだ。

 あくまでもお馬鹿な話なので、真面目に突っ込まないように。もっとも、突っ込みながら読むのも面白いだろう。疲れるけどw

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2017年9月20日 (水)

ピーター・ワッツ「エコープラクシア 上・下」創元SF文庫 嶋田洋一訳

血はすべてその子宮の外にある。
  ――上巻 前兆

もちろん、今の世界にはゾンビがいる。それを言うなら吸血鬼も。
  ――上巻 原式

「何かが――隠れている。名状しがたいものが」
  ――上巻 寄生

「この世界には、武装した者たちの暴力があまりにひどくて、意識ある生命として存在することをやめたくなるような場所もある」
  ――上巻 獲物

「…われわれは哺乳類が核兵器を作ったあとも生きている。きわめて単純なOSで動いていて、たいていどんな環境でも作動する。われわれは考える肉体のカラシニコフなのだ」
  ――下巻 猛獣

今、全裸でこの文章を打っている。
  ――下巻 参考文献

「…それはあなたの目の前にあって、あなたがそれを正視していないだけよ」
  ――下巻 大佐

【どんな本?】

 前作「ブラインドサイト」でSF界に大騒ぎを巻き起こしたカナダ出身の海洋生物学者による、前作の続きとなる長編SF小説。

 2082年、65536個の人工物が地球を取り巻き、消える。これを異星人の偵察と考えた人類は探査船<テーセウス>を建造、選び抜いたクルーを乗せ太陽系外縁へと向かう。彼らは異星の知性体と接触するが、消息を絶ってしまう。

 その7年後、地球。

 人類は過去から吸血鬼を蘇らせ、研究所に隔離していた。高い知性と優れた運動能力を持つが、人類とは全く異なる思考をする、人類の亜種にして天敵。だが吸血鬼のヴァレリーは監視の裏をかき、脱出を果たす。

 それとは違った形で高い知性を得た者もいる。両球派。メンバーの脳を緊密なネットワークでつなぎ、一つの集合精神にまとめあげる。両球派は人里離れた土地に修道院を築き、他の人とは接触せずに暮らしていた。

 現生人類で生物学者のダニエル・ブリュクスは、サバティカルを利用しオレゴンの砂漠にフィールドワークに出かける。だがタイミングが悪かった。戦闘用ゾンビを従えた吸血鬼ヴァレリーが、両球派の修道院を襲う所に居合わせてしまい…

 人類を遥かに超えた知性同志の出会いと、それに居合わせた現生人類の戸惑いを、奇想天外なアイデアを思いっきり詰めこみながらも、クールな文体で描く、サイエンス・フィクションの極北。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は Echopraxia, by Peter Wats, 2014。日本語版は2017年1月27日初版。文庫本で上下巻。本編の「エコープラクシア」が上巻約302頁+下巻約180頁=482頁に加え、特別収録短編「大佐」40頁を収録。おまけに渡邊利通の解説10頁と、参考文献が豪華44頁。8ポイント42字×18行×(302頁+180頁+40頁+10頁+44頁)=約435,456字、400字詰め原稿用紙で約1,089枚。上下巻は妥当な所。

 前作の「ブラインドサイト」同様、かなり読みにくい。前作同様、主な登場人物の思考様式が人類とは大きく違う上に、最新の科学の成果を使ったSFガジェットが大量に出てくる、とても濃い作品だ。並みのSFでは満足できないスレッカラシ向けなので、覚悟して挑もう。

 なお、解説はとても親切にネタを説明してくれているが、同時にネタっばたしにもなっているので、要注意。もちろん、ちゃんとその由を警告しているけど。

【感想は?】

 そう、この作品は、とっても濃い。

 なんたって、凄まじいガジェットが次から次へと出てくる。冒頭の吸血鬼、伝説から復活させた人類の天敵ってのも相当なもんだが、それにちゃんと「十字架が苦手」なんて弱点も与えるだけでなく、そこにキチンと理屈と仕掛けがついてるあたりも、タダモノではない。

 この理屈と仕掛け、いちいち「説明しよう」なんてやってたら、それだけで数頁を費やしてしまいそうな凝ったシロモノなため、アッサリと流しちゃってるのが憎い。この手の話に詳しい者にはたまらない美味しさなんだが、慣れない人には何の事だか見当もつかない。

 例えば、この世界の情報ネットワークを示す「クインターネット」。名前からしてインターネットの進化版で、量子コンピュータや量子ネットワークを使ったモンなんだろう、と当たりはつく。が、作品中では名前が出てくるだけで、なんの説明もなく話が進んでゆく。

 じゃどうでもいいネタなのかというと、そうでもない。この作品の大事な登場人物?である両球派が成り立つために、どうしても必要になる基礎技術の一つでもある。

 なんたってヒトの脳が発する信号を、ほぼリアルタイムで、多くの脳で共有しようなんて話だ。要求される通信容量は桁違いである。これを捌くには新世代の通信技術が必要で、となれば量子ネットワークだろうなあ。

 なんて所まで、たった一つの言葉「クインターネット」に押し込めちゃってる。実に手ごわい。

 その分を、豪華44頁もかけた参考文献で補っている…のはいいが、一部の文献は2055年や2072年や2093年だったりと、なんとも意地が悪いw

 さて、その両球派。高度な技術を投入した結果、出来上がった集合知性はたいしたもので、「特許局の仕事の半分を占領」するほど。とはいえ、その代価も高い。なんたって脳をいじっちゃった結果、「現実世界では、手助けがないと道路も横断できない」。ある意味おバカでもあったり。

 そんなわけで、砂漠の真ん中に修道院を建て、そこに閉じこもっているんだが、楽しいのは修道院の防衛システム。なんとも奇想天外なシロモノながら、ある世代の日本人には妙に懐かしかったり。そう、砂の嵐に守られているのだ。わはは。

 賢いながらも、ある意味おバカな両球派、これを俗な言い方をすれば「賢さには代価が要る」で終わりそうだが、その代価がオーディンの片目(→Wikipedia)のようにわかりやすい形じゃないのが、この作品のテーマの一つ。

 何より、物語で重要な役割を果たす者たちが、主人公のブリュクスより賢い奴らばかり、という構造が皮肉だ。

 先の「ブラインドサイト」では、意識が重要な主題だった。それはこの作品でも同じで、意識なき知性の脅威が、主にヴァレリーを通して何度も繰り返し強調される。と同時に、語り手が現生人類である点も、小説としての工夫の一つ。

 両球派や吸血鬼に、いいように小突き回され、それでも連中の裏をかこうと工夫を凝らすブリュクスのあがきは…

 最新科学の成果を駆使した大量のガジェットをブチ込み、異様な世界の中で異形の者たちに囲まれた主人公の恐怖で追い打ちをかけて読者の脳をオーバーヒートさせつつ、冷徹かつ壮大な世界観へと導く問題作。時間をかけ、頭を冷やしながら、じっくり読み解こう。

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2017年8月22日 (火)

ガレス・L・パウエル「ガンメタル・ゴースト」創元SF文庫 三角和代訳

「おまえ、ここにいるなかで本物は自分だけだと感じたことがあるか。ほかの全員はただの見せかけだって」
  ――p43

「ドアを蹴破り、大暴れする。いつものことさ」
  ――p176

キャラクターは死んでも、プレイヤーは生きつづける。
  ――p239

「行きましょうか、モンキー・マン。仕事をすませるわよ」
  ――p376

【どんな本?】

 イギリスのSF作家ガレス・L・パウエルの、日本初上陸作品。

 第二次世界大戦。アクアク・マカークは不死身の英国空軍パイロットだ。片目に革の眼帯、腰の左右にクロームメッキのリボルバー、そして唇には葉巻をくわえ、スピットファイアを駆りメッサーシュミットを狩るエース・パイロット、天下無敵のオナガザル。

 連日の出撃で隊の者は次々と倒れ新しい者に顔ぶれが変わってゆくが、マカークは常に生き残った。そんなマカークを倒すため、ドイツ軍は英国の空軍基地を襲う。全翼機から落下傘で降下してきたのは、黒装束のニンジャ部隊だ。

 1959年、イギリスとフランスは合併、後にアイルランドとノルウェイが加わった連合王国は、ヨーロッパ統合の礎となる。そして2058年、連合王国の国王ウィリアム五世夫妻をテロリストが襲い、国王は重傷、王妃アリッサも軽傷を負う。

 別居中の夫ポールが殺されたとの連絡を受け、ヴィクトリアはロンドンのポール宅へ向かう。ポールは頭蓋骨を叩き割られ、脳まで奪われた。しばらく彼の部屋を調べていたヴィクトリアに、正体不明の男が襲い掛かる。

 パリ第一大学で学ぶ連合王国の皇太子メロヴィクは、延々と続くパーティーや歓迎会にうんざりしていた。しかも母上様のお小言つき。息抜きに、パリで出会ったジュリーとデートに出かけるが…

 MMORPG,人格移植,架空の歴史そして巨大飛行船など多数のSFガジェットを詰め込みながら、目まぐるしいストーリーと心地よいアクションの連続で読者を楽しませ、ド派手な展開で終盤へとなだれ込む、痛快娯楽アクションSF小説。

 2013年の英国SF協会賞をアン・レッキーの「叛逆航路」と分けあった。またSFマガジン編集部編「このSFが読みたい!2017年版」のベストSF2016海外篇でも8位に躍り出た。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は ACK-ACK MACAQUE, by Gareth L. Powell, 2013。日本語版は2015年12月11日初版。文庫本で縦一段組み本文約428頁に加え、原型となった短編「アクアク・マカーク」22頁+訳者あとがき5頁。8ポイント42字×18行×428頁=約323,568字、400字詰め原稿用紙で約809枚。文庫本としては厚めの部類。

 文章はこなれている。SFな仕掛けは次から次へと途切れなく出てくるが、不思議なくらいスンナリ頭に入ってきて、全く戸惑うことはなかった。お話がめっぽうスピーディーで面白いため、それに引っぱられた部分はある。

【感想は?】

 英国SF協会賞を分けあった「叛逆航路」とhが対照的に、思いっきり痛快な娯楽アクション作品。

 なんたって、キャラクターがいい。まずはタイトル・ロールのアクアク・マカーク。スピットファイアを駆るエース・パイロット。隻眼に二丁拳銃、派手に暴れるのが大好きで、いつも葉巻をくゆらせているオナガザル。なぜにオナガザルw でも荒っぽい場面じゃ、とっても頼りになる人。

 もう一人の暴れん坊は、若き未亡人ヴィクトリア。元ジャーナリストだけあって、狙った事件はしぶとく食らいつく。しかも何の因果か棒術を身に着けるばかりか、秘密兵器まで持っていて、そこらのチンピラなら軽く叩き伏せる実力の持ち主。

 そんな二人の暴れん坊にスポットを奪われちゃったのが、皇太子のメロヴィク。究極のお坊ちゃんだが、根は意外と純情で正義感もある、普通の青年だったり。

 とかの面子に対する悪役も、実に味のある連中が揃ってる。

 最初に登場するのは殺し屋「笑い男」。不気味な笑顔を貼りつかせ、着々と獲物に迫ってくる。彼の後から出てくる奴らは、更に悪辣さが増して。ラスボスの凶悪さも相当なもんだが、私が一番気に入ったのは、悪の組織のマッド・サイエンティスト。

 優れた頭脳を持つためか、人類の愚かさに見切りをつけ、己の技術で理想の世界を実現しようとする…のはいいんだが、自分以外の人間にはオツムがないと決めてかかってる感じなのが、なんとも。やっぱり悪の科学者は、これぐらいイカれてなくちゃ。

 そして、この物語で最も美しいヒロイン、テレシコーヴァ号。五つの気嚢を持つ、全長1km近い巨大な硬式原子力飛行船。いいねえ、飛行船。使い勝手はアレだけど、悠々と大空を舞う姿は、なんたって見栄えがする。

 とかの連中が暴れる舞台も、なかなか凝ってるわりに、スルスルと頭に入ってくるから不思議。

 著者がイギリス人なせいか、アメリカの存在感が薄く、そのぶん西ヨーロッパの影響力が強い。その仕掛けとして、イギリスとフランスがガッチリ手を組んでる。この手を組むきっかけと経過は、やっぱりイギリス人らしいw おまけにアイルランドまでちゃっかり引きずり込んじゃって。

 中盤以降は、連合王国を中心とした世界情勢が、お話の大事な要素になってくる。こういう政治・外交ネタは往々にしてストーリーの流れを淀ませがちなんだが、この作品ではネットのニュースを引用する形で、短いながらもわかりやすく伝える工夫は見事。

 そう、この作品、なんといってもテンポがとってもいいのだ。ややこしい背景はニュース記事などで端的に示し、個性的な人物たちの動きを中心に話を進めてゆく。その話も、次から次へと襲い来るピンチと衝撃の真相の連続で、頁をめくる手が止まらない。

 その背景も、アッサリ流しているようでいて、スエズ危機や香港返還やフォークランドなど、要所要所で20世紀の歴史のツボを押さえているから憎い。

 二丁拳銃のサルのエース・パイロットや巨大飛行船でわかるように、徹底して娯楽路線の作品だ。個性的なキャラクター、印象的なガジェット、登場人物を襲う危機また危機、そして世界を揺るがす陰謀。リラックスして作者の騙りに身を任せよう。

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2017年8月14日 (月)

ジョーン・スロンチェフスキ「軌道学園都市フロンテラ 上・下」創元SF文庫 金子浩訳

太平洋上を宇宙エレベーターが炭疽菌ケーブルを伝って上昇していた。
  ――上巻p11

「毎日、朝ごはんをプリントアウトするのを忘れないでね」
  ――上巻p56

「動物っていうのは放浪癖のある植物にすぎない」
  ――上巻p120

「家賃を払うのだってやっとなんです。 このままだと、あと三日で家が溶けちゃうんですよ」
  ――上巻p352

「人に、ほんとうに起きているんじゃない別のことが起きてるんだって思わせるのはおもしろいのよ」
  ――下巻p37

「愚かさって病気じゃないの?」
  ――下巻p264

【どんな本?】

 アメリカのSF作家ジョーン・スロンチェフスキによる、学園コメディ長編SF小説。2012年ジョン・W・キャンベル記念賞受賞。

 22世紀初頭。地球は温暖化し、危険な地球外生物ウルトラファイトが蔓延していた。合衆国大統領を輩出する家柄のジェニー・ラモス・ケネディは、事故で愛する兄を喪ったばかり。両親のもとを離れ、軌道上のフロンテラ大学に進学し、生命科学を学ぶつもりだ。

 人為的に小型化された像やテディベアが遊ぶフロンテラは、生物相まで徹底して管理しており、ウルトラファイトなどヒトに害をもたらす生物の侵入を許さない安全な環境だ。

 早速、同じ新入生の聡明なアヌークと意気投合したジェニー。スランボールのチームはキャプテンのケン&ヨーラをはじめとして、みな気があいそう。ただ同居人のメアリはなかなか姿を見せないし、生命科学の教授シャロン・アベネイシュの指導は厳しい。

 勉学に、スポーツに、ボランティアに、そして新しい出会いに、忙しく日々を過ごすジェニーの周囲に、トラブルは絶えず…

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は The Highest Frontier, by Joan Slonczewski, 2011。日本語版は2015年6月30日初版。今は文庫本で合本が出てる。上下巻で本文約420頁+406頁=826頁に加え、訳者あとがき5頁。9ポイント42字×18行×(420頁+406頁)=約624,456字、400字詰め原稿用紙で約1,562枚。上中下の三巻にしてもいい分量。

 ズバリ、かなりとっつきにくい。いや文章はかなり工夫しているのだ。ただ、内容的にかなりクセが強い。見慣れぬガジェットが出てくるとワクワクする濃いSFファン向け。

【感想は?】

 そう、この作品はかなりとっつきにくい。理由は4つ。

 なんといっても、小説として不親切。冒頭からたくさんの人物が登場し、それぞれが複雑な関係を持っている。これを一気に覚えなきゃならない。創元SF文庫の伝統で、巻頭に登場人物一覧があるのが、とても有り難い。

 次に、アメリカ文化、特に名門大学の文化にベッタリな点。友愛会や上級生との関係など、アメリカの大学の風習をデフォルメして描いてるんだろう。アメリカ人には以心伝心で通じる文化なんだろうけど、日本人にはピンとこない場面が多い。

 第三として、これが「オフビートなコメディ」な点。そう、変な奴ばかりが出てくるのだ。が、この「変」ってのが、アメリカ(の知識階級の)文化を基準としたものなので、何がギャグで何が文化的な違いなのか、外国人にはイマイチよくわからない。改めて考えると、モンローやニューマンは相当にキツいギャグなんだとわかるんだが。

 そして最後に、SFとしてかなり濃いこと。最初の行から「宇宙エレベーターが炭疽菌ケーブルを伝って上昇していた」とくる。他にもウルトラファイトやらトイネットやらHIVやら、ブッ飛んだアイデアが冒頭から矢継ぎ早に出てくる。

 そんなこんなで、特にSFに慣れていない人にとっては、凄まじくとっつきにくい。逆に濃いSF者は、「なんかシンドイけどイカれたアイデアがギュウギュウに詰まってて美味しそう」と食欲をそそられたり。

 最初の頁で、ジェニーはニューヨーク州の自宅でクズ(葛)を剪定する最中に、地球外生命体のウルトラファイトを見つける。ここ、実に見事にアメリカ人向けである由を表す場面なのだ。

 現在、合衆国南部は日本から侵入したクズが大繁殖し、侵略的外来種に指定されている(→Wikipedia)。日本から侵入し定着してしまったクズと、地球外からの侵入種ウルトラファイトを対比させているんだが、これがピンとくるのはアメリカ人ぐらいだろう。

 そのクズが主に繁殖しているのは南東部が中心で、北東部のニューヨーク州は比較的に被害が少ない。ここにクズが繁殖している事で、地球の温暖化をほのめかせているんだが、これもアメリカの地理とクズの繁殖地を知っている人でないと、伝わりにくい。

 などと文句ばかりを垂れているが、SFとしてはイカれたアイデア満載で、なかなか楽しい。

 最初の炭疽菌ケーブルもそうだし、HIVの使い方も驚きだ。たぶんRNAウィルスなのがキモなんだろう。これが実は重要な伏線だったりするので、よく調べておこう。

 この時代、引っ越しも大きく変わり、たいていの実用品は3Dプリンタで転送すればいい。物語中で3Dプリンタは大活躍で、メシも服も家具も「プリントアウト」。便利なような、味気ないような。ところが大学生って、知恵はあっても分別は足りず、しかも無駄にエネルギーを持て余してるんで…。

 そういう意味じゃ映画「アニマル・ハウス」みたいな味もある。ただ騒ぎをおこすのが、落ちこぼれじゃなくて、優秀なクセに困った性癖と強力なコネを持った連中なのが、更にタチが悪いw

 肝心のジェニーにしても、自傷癖のあるメンヘラ。彼女とツルむアヌークは、ゴージャスな美女にして数学に秀でる才媛…かと思ったら、なんてこったいw 同居人のメアリはなかなか姿を見せず、やっと姿を拝めたと思ったら相当なプッツンさんで。

 恋愛要素もあるんだが、なにせ22世紀。同性愛も珍しくないんで、あたしゃちょっと期待しました、はい。その辺は…まあ、読んでのお楽しみ。

 オジサン・オバサンの読者は、ディラン学長の苦労に同情しよう。悪知恵に長け無限の行動力を持つ学生たちに加え、一癖も二癖もある教授陣ばかりでなく、学外からの問題にも対処せにゃならず、気の休まる暇がない。ほんと、少しは報われてもいいよなあ。

 などの人間模様を楽しむには、「大半の登場人物が変な奴」だって点を強く意識して読もう。これ大事。

 などのコメディ要素の他に、SF者にはスランボールをはじめ、中つ国やファウンデーションなど細かいネタが満載なのも嬉しい所。やはりスランボールのヘルメットにはアホ毛がついてるんだろうか。

 などと、序盤こそやたらモタつくものの、終盤に入ると、頻発するトラブルが拡大と増殖を繰り返し怒涛の展開となって、懐かしい王道のサイエンス・フィクションの味わいを蘇らせるエンディングへとなだれ込んでゆく。

 様々な理由で序盤はかなりとっつきにくいものの、SF者には美味しいネタを大量に散りばめて引き留め、最後にはキチンと本格SFの読了感を味合わせてくれる作品。

 テディ・ルーズベルトをはじめやたらとアメリカを強調するあたりはかなりアクが強いが、それもまたジョン・W・キャンベル記念賞らしい風味でもある。クセは強いが、濃いSFが欲しい人にお薦め。

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2017年7月 4日 (火)

ジャック・ヴァンス「スペース・オペラ」国書刊行会 浅倉久志・白石朗訳

「単純な問題です」ゴンダーは答えた。「第九歌劇団が消えました」
  ――スペース・オペラ

正午に数分まえ、ふいに太陽が南に傾いて沈んだ。
  ――悪魔のいる惑星

【どんな本?】

 奇想天外な発想と洒落た会話、そして皮肉の利いたオチで読者を魅了するSF/ファンタジイ作家ジャック・ヴァンス Jack Vance の中編・短編を集めた、日本独自の編集による作品集。

 書かれた時代が時代だけに、ガジェットの類こそ古臭い雰囲気があるものの、お話の核となるアイデアや、登場人?物たちの性格付けは見事だし、語り口は軽妙そのもの。ビール片手に気軽に楽しもう。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2017年5月25日初版第1刷発行。単行本ソフトカバー縦一段組みで本文約438頁に加え、白石朗による訳者あとがき13頁。9ポイント45字×20行×438頁=約394,200字、400字詰め原稿用紙で約986枚。文庫本なら上下巻に分けてもいい分量。

 文章はこなれていて読みやすい。内容も、SFガジェットはたくさん出てくるものの、小難しい理屈は要らないので、理科が苦手な人でもSFにアレルギーがなければ大丈夫。

【収録作は?】

 以下、作品名は日本語の作品名/原題/初出/訳者 の順。

スペース・オペラ / Space Opera / 1965 / 白石朗訳
 人類が恒星間宇宙に進出し、多くの知的生命とコンタクトを果たした遠未来。未知の惑星ルラールから来た異種族による第九歌劇団の地球初公演は、見事な舞台で観客を感心させる。だが、論争は残った。
 その演目は、本当に彼らのオリジナルなのか? 彼らを連れてきたゴンダー船長のヤラセではないか? 人類の音楽は他種族にも理解できるのだろうか? 論争の結論は出ないまま、大事件が持ち上がる。なんと、ルラール第九歌劇団が消えてしまったのだ。
 この事件をきっかけに、公演を主催した富豪のデイム・イザベル・グレイスは、大胆不敵な計画を思いつく。人類が生み出した芸術の至宝オペラを、異星人たちにも紹介しよう。かくして、彼女は豊かな人脈と財力を駆使してオペラ界のスターをかき集め、宇宙巡業の旅に出るのだが…
 ゴージャスなオペラ、曰くありげで強烈な個性の登場人物、謎に満ちたエイリアン、そして意外性に満ちた(が微妙にしょうもない)オチと、ジャック・ヴァンスの魅力がたっぷり詰まった長編。
 なんと言っても、キャラクターがいい。甥には甘いが強固な意志と豊かな財力&行動力で計画を進める、オペラ・マニアのデイム・イザベル・グレイス。彼女の強烈な個性に圧倒されながらも、セコい計略で脛をかじるスチャラカな浪費家の甥ロジャー・ウール。そんなロジャーをあっさり篭絡する謎の美女マドック・ロズウィン。
 加えて、オペラとは全く縁のない謹厳実直な宇宙船船長ながら、ルラール人を発見し第九歌劇団を地球に連れてきたアドルフ・ゴンダー。インテリを鼻にかけた音楽学の大家でイザベルの論敵バーナード・ビッケル。いずれもマイペースで不協和音出しまくりのチームだ。
 そんなメンバーによる、豪華絢爛なオペラ団の公演は、異星人にどう受け取られるのか。ジャック・ヴァンスの十八番、奇矯な文化を持つ異星人たちの魅力がたっぷり詰まった、センス・オブ・ワンダーあふれる作品。
新しい元首 / The New Prime / ワールズ・ビヨンド誌1951年2月号 / 浅倉久志訳
 紳士淑女がフォーマルな夜会服をまとう社交界のパーティーに、アーサー・ケイヴァーシャムは放り出された…全裸で。
 改めて冒頭のシチュエーションを書くと、つい笑ってしまう。実際、マジでこの通りなんだから困るw ドタバタ喜劇・ファンタジイ・遠未来のSFなど、バラエティ豊かな世界の五つの物語を、鮮やかなオチでまとめ上げた、語りの腕が冴える短編。
悪魔のいる惑星 / The Devil on Salvation Bluff / フレデリック・ポール編 Star Science Fiction Stories No.3 1955 / 浅倉久志訳
 レイモンドとメアリの夫婦は、開拓中の惑星グローリーに福音をもたらそうと、フリット族に奉仕を続ける。彼らのために道を作り家を建て用水路を掘り…。だが、フリット族は二人の厚意を喜ぶどころか、迷惑がって二人の努力の結晶をブチ壊すのだった。
 これもヴァンスの十八番が光る作品。グローリーに住むフリット族の奇怪な生活スタイルと、熱心に伝道に身を捧げるレイモンドとメアリの対比は、ヴァンスのお家芸とも言える構造だが、船員として世界各地を巡ったヴァンスの作品だけに、社会風刺を含んでいるような気も…
海への贈り物 / The Gift of Gab / アスタウンディング誌1955年9月号 / 浅倉久志訳
 惑星サブリアの海は希少物質を豊かに含む。養殖鉱業社は浅海に多数のいかだを浮かべ、養殖したフジツボや採集したナマコから、希少物質を抽出している。六カ月勤務の満了が近づいた頃、事件が起きた。カール・レイトの姿が見えない。彼を探しに出たフレッチャーは…
 60年以上も前の作品だってのに、全く古びていないのに驚く。養殖鉱業社の事業内容とか、充分に今のSFでも通用する。敢えて言えば、記録媒体がマイクロフィルムって所ぐらいで、これもコンピュータに変えればいいだけ。
 お話は、隔絶された海上での失踪事件から、ホラーぶくみのミステリとして始まり、海洋アクションを挟んで結末へと進む。失踪事件の恐怖、謎がほのめかすおぞましさ、そしてアメリカ人の好みに合いそうなラストなど、このまんまハリウッドが映画化すれば大当たりしそうな完成度も凄い。というか、きっと既にどこかの映画会社が買い付けてるだろうなあ。
エルンの海 / The Narrow Land / ファンタスティック誌1967年7月号 / 浅倉久志訳
 軟泥の中でエルンは生まれた。上から襲い掛かる巨大なものや、塩水沼に住む鬼をかわしながら、エリンは成長する。片方の沖は黒い闇の壁で、もう一方の沖は雲と雨と稲妻の壁。二つの中間領域が延々と続いている。
 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの「愛はさだめ、さだめは死」の先行して、異形のエイリアンの生活環をクールに描く、センス・オブ・ワンダーたっぷりのエッジの利いた作品。「悪魔のいる惑星」もそうなんだけど、一見ファンタジックに見えて、そういう環境は現実に考えられるあたりも、曲者ヴァンスならでは。

 「宇宙は拡大した地球ではない」と言ったのはスタニスワフ・レムだったかな? この作品集では全く同じ発想を奥に秘め、「拡大した地球」的発想の人類とエイリアンの軋轢を描きながら、ハリウッド好みのエンタテイメントとして成立しちゃってるのに感心する。

 私は最近になってヴァンスを好きになったニワカだけど、それだけに未読のヴァンス作品が沢山あるんで、色々と漁ってみよう。

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2017年6月29日 (木)

キム・スタンリー・ロビンスン「ブルー・マーズ 上・下」創元SF文庫 大島豊訳

少しでも油断すれば昔ながらの行動パターンにずるずると逆戻りしてしまう。一つのヒエラルキーを壊せば、すぐに次のヒエラルキーが生まれてとってかわろうとする。われわれはそれに対して警戒しなければならない。地球の複製を作ろうとしている人間はいつでもいるからだ。
  ――上巻p15

「わたしたちは原初の惑星に住みたいのよ。洞窟や崖を利用した住居か、あるいはクレーターの外輪山を掘りぬいたものね。大都市も惑星緑化もなし」
  ――上巻p233

ぼくらの肉体自身が火星の水の作る模様なんだ。
  ――上巻p415

「よい政府とは無視しても安全な政府」
  ――下巻p102

「こちらはあの子たちを教育して、子どもたちがわたしたちを裁くのよ」
  ――下巻p151

「今の火星は過去と未来が戦っている戦場だ。そして過去は力を持っている。けれど、ぼくらがみな向かっているのは未来だからね」
  ――p403

「わたしたちは自分たちの能力では理解できないところまで、テクノロジーを進めてしまっているのよ」
「うーん。理解はできると思う。ただ、信じられないだけだ」
  ――p508

【どんな本?】

 アメリカのSF作家キム・スタンリー・ロビンスンが、人類の火星植民・開発を描いた「レッド・マーズ」「グリーン・マーズ」に続く三部作の完結編。レッド・マーズは1998年、グリーン・マーズは2001年に日本語版が出たが、16年の時を経ての完結編刊行となった。いやあめでたい。

 20世紀初頭、科学者集団の定住から始まった火星開拓は、多くの植民者を引き寄せ、様々な集団がそれぞれ独自の社会を発展させてゆく。地球は超国籍企業体が台頭し、海面の上昇と180億に増えた人口を抱え、社会は崩壊の危機を迎えていた。

 人口の圧力を抱える地球は、多くの移民を火星に送り込もうとする。火星では独立を求める声が高まり、両者の軋轢は火星の軌道エレベーター破壊などの被害をもたらしつつ、危うい均衡状態を保っている。

 一方火星では、手つかずの火星環境の保護を求めるレッズや、更なるテラフォーミングを進めようとするグリーン、そして火星で生まれ育った世代を中心とするフリーマーズなど、多様な集団が争いまたは協力し、憲法を定めて地球からの独立を果たそうとしていた。

 科学と工学を駆使した環境改変技術、気候の変化に伴い変わってゆく生物相、綿密に書き込まれた火星の地質、そして過酷な環境の中で生きるために使われるテクノロジーなどの科学から、地球生まれの一世・火星生まれの二世以降・新たに地球から来た入植者など世代の違い、資本主義に変わる社会の構想、そして新たな世界へと散らばってゆく人類の姿など、SFの全てを詰め込んだ壮大な叙事詩。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は BLUE MARS, by Kim Stanley Robinson, 1996。日本語版は2017年4月21日初版。文庫本の上下巻で縦一段組み、本文約600頁+609頁=1,209頁に加え、渡邊利通の解説11頁。8ポイント42字×18行×(600頁+609頁)=約914,004字、400字詰め原稿用紙で約2,286枚。4~5冊に分けてもいい巨大容量。

 文章はやや硬い。内容も、かなり歯ごたえがある。SFガジェットはてんこもりだし、描写も凝っている。例えば温度は絶対温度表記で、気圧もヘクトパスカル。ちなみに摂氏零度は絶対温度で約273K、1気圧は約1000ヘクトパスカル。他にも量子力学・有機化学・地学・生物学など、科学の全方面に渡るトピックが続々と出てくるので、好きな人にはたまらない濃さだ。

 また、続き物なので、多くの登場人物が前の「レッド・マーズ」「グリーン・マーズ」と同じだし、背景事情も色濃く引きずっている。とはいえ、下巻の解説で、大まかに前二作のあらすじを紹介しているので、かなり助かった。私はレッドもグリーンも読んでいたんだが、中身はすっかり忘れていた。わはは。

 そんなわけで、人物間の関係はよく分からなかったが、舞台となる火星の風景がやたらと魅力的。サイエンスとフィクションで言えば、サイエンス分が好きな人向け。

【感想は?】

 20世紀SFの総決算。

 タイムトラベル以外のSFテーマを全部ブチ込んでじっくり煮込み、SF者がこだわる火星風味のダシを存分に染み込ませ、アメリカ西海岸風の味付けで仕上げた贅沢な作品だ。

 まず、なんたって舞台がいい。大胆なテラフォーミングで北半球に大洋が出来た火星。他にも様々な温暖化の試みで、主に北半球の低地を中心に少しづつ気温と気圧が上がりつつあるが、南半球や高地では赤茶けた荒々しい風景が広がっている。

 こういった風景を、各地を旅する多くの人物の目を通し、迫力たっぷりに紹介してくれる。だけでなく、100年以上の年月の中で変わっていく様子もじっくり描いてゆく。

 例えば大気だ。物語が始まったころは、みんな気密環境の中に居るか、専用のスーツを着ている。外は寒いし空気は薄いしで、生身の体じゃ生きていけないのだ。でも地衣類や苔ははびこりつつある。これが中盤以降になると、草ばかりか木まで育ち始め、動物も…

 なんてのは海がある北部の低地の話。

 火星の魅力の一つは、やたらと高低差が大きいこと。例えばオリュンポス山は2万1千メートルもある(Wikipediaとの数字の違いは海の出現によるもの)。しかも、火星は地上から水がなくなって久しいので、川などによる浸食も少なく、クレーターが幾つも残っている。

 地質学者にとっては、涎が止まらない環境だろう。環境保全を叫ぶレッズの頭目が、地質学者のアンなのも、変に納得しちゃったり。

 そのクレーターも、舞台を彩る楽しい仕掛け。大きな湖にすうる所もあれば、一つの閉鎖的環境になってる場合もある。これを活かして自分なりの生態系を創ろうとする環境詩学なんてのは、庭いじりが好きな人にはたまらないアイデアだろうなあ。

 そう、この物語の風景は、多かれ少なかれ、人の手が入っている。その手の入れ方が、ミクロなものから稀有壮大なものまで、SF小僧の妄想をくすぐりまくる魅力的なものばかり。

 冒頭から騒ぎの焦点となる軌道エレベーターは、A・C・クラークともチャールズ・シェフィールドとも違って独自のものだし、熱を供給しているソレッタもワクワクする。私が最も感激したのは、ヘラス海と北海をつなぐ大運河の掘削方法。地球上じゃまず無理な滅茶苦茶な方法を使ってるw

 いずれも脳内の妄想マシーンに大量の燃料をくべるシロモノなため、私は読みながらしょうもない妄想に浸ってしまい、なかなか読み進められず困った羽目になった。例えば1km四方の土地を緑化するには、どれだけの水が必要か、なんてのを調べ始め、点滴灌漑がベストかなあ、とか。もうストーリー関係ないしw

 そんな人間が引き起こす環境の変化が、そこに生きる人々の社会にも大きな影響を与えていくあたりは、フランク・ハーバートの「デューン」シリーズへのオマージュとも取れる。

 科学者が多いためか、比較的にリベラルな風潮の<最初の百人>は、皆から一目置かれちゃいるが、その中にもレッズとグリーンの対立がある。火星生まれを中心とするマーズ・ファーストは、資本主義とも共産主義とも違う、火星ならではの社会を築こうとする。そこにやってくる移民たちは、地球の価値観を引きずって…

 ってなあたりは、移民問題でゴタついている現代のヨーロッパやアメリカへの風刺みたく思えてくるからなんとも。いや1996年発表の作品なんだけど。移民が築いた国アメリカの作家だけに、当時から意識してたのかも。

 加えて、表紙にもあるように、火星でのスポーツを描いているのも、この作品ならでは。意外とスポーツを扱ったSFって少ないんだよね。ただ、基本的に個人競技ばかりで、球技がないのは、著者の趣味かな?

 やはり重力の違いは大きくて、記録も火星ならでは。この重力の違いは自然環境にも大きな影響があって、海での航海を描く場面でも、火星ならではのサスペンスを存分に味わえたり。にしても、そんな秘密兵器を隠しているとは卑怯なw

 一つの世界の誕生と成長、そしてそれが人類全体に与える影響を、当時の最新科学トピックと縦横無尽なガジェットを組み合わせ、西海岸的な自由主義を底流としながらも、細部にまで気を配った描写で描き切った、20世紀SFの到達点を示す巨大作。たっぷり時間をかけて、じっくり味わおう。

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