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2020年11月 9日 (月)

2020年米大統領選でトランプにとどめを刺したのは弱小政党

 2020年のアメリカ合衆国大統領選は、激戦の末に民主党のジョー・バイデンが共和党のドナルド・トランプを下した。

 戦いを決したのは、いわゆる激戦区と呼ばれる五つの州だろう。ペンシルベニア,ミシガン,ウィスコンシン,アリゾナ,ジョージアの五州だ。いずれも僅差でバイデンが制している。

 五州の票数を見ると、面白いことに気が付く。マスコミが滅多に報じない弱小候補、ジョー ・ ジョーゲンセンが大きな役割を果たしているのだ。特にミシガンを除く四州では、ジョーゲンセン次第で結果が逆転してしまう。

 そのジョー ・ ジョーゲンセンとは何者か。Wikipedia によるとリバタリアン党の所属である。

 リバタリアン党は個人の自由を神聖視し、政府によるあらゆる規制に反対する。薬物やポルノの規制に反対する点では民主党に近いが、銃規制や最低賃金も認めない点は共和党に近い。結局どっちに近いかは時と政策と個人によるのだが、2020年現在は共和党に近い者が多い。

 つまり、ジョーゲンセン候補の支持者は、「民主党より共和党の方がマシ」と考える者が多い。ジョーゲンセン候補が立候補していなければ、トランプに投票しただろう。

 ではジョーゲンセン候補がいなければ、どうなっていたか。ロイターの速報で試算してみよう。以下に2020年11月9日(月)02:00時ごろ(日本時間)の各候補者の獲得票数を示す。

バイデン トランプ ジョーゲンセン
ペンシルベニア 3355037 3313871 77441
ミシガン 2794853 2646956 60384
ウィスコンシン 1630569 1610030 38271
アリゾナ 1631195 1612585 49406
ジョージア 2465501 2455305 61888

 ここでジョーゲンセン票がトランプに流れたらどうなるかを試算した。

選挙人数 バイデン トランプ
ペンシルベニア 20 3277596 3391312
ミシガン 10 2734469 2707340
ウィスコンシン 11 1592298 1648301
アリゾナ 16 1581789 1661991
ジョージア 16 2403613 2517193

 ミシガン以外ではトランプが逆転勝利するのだ。では、肝心の選挙人数はどうか。ロイターの速報によると2020年11月9日02:00の時点でバイデン279名、トランプ214名である。大統領選で必要な選挙人数は271人。ここでミシガンを除いた選挙人をトランプに移すと、ジョー・バイデン222人、ドナルド・トランプ271人となり、トランプが勝っていたことになる。

 これは典型的なスポイラーと呼ばれる現象だ(→Wikipedia)。大物二人が僅差で争う選挙で、弱小候補が一方の大物の票を食い、もう一方を有利にしてしまう、そんな現象である。

 現実には、ジョーゲンセンに投票した者がすべてトランプに投票するとは限らない。バイデンに投票する者もいるだろうし、誰にも投票しない者も多いだろう。

 ただ、もしバイデンが汚い手を使うつもりがあったのなら、もっと楽に勝つ方法もあった。コッソリとリバタリアン党に選挙資金を与えるのだ。巨大政党である民主党・共和党と違い、リバタリアン党の選挙資金は少なく、知名度も低い。現在の倍の選挙資金があれば、もっと多くの票をトランプから奪っただろう。民主党はバイデンを宣伝するより、はるかに高い費用対効果でトランプの足を引っ張れた。

 泡沫候補と呼ばれる候補者も、二大候補が激しい接戦を繰り広げる際には、大きな影響を及ぼすのである。

 もっと詳しく知りたい方は、ウィリアム・パウンドストーン著「選挙のパラドクス」をお読みください。

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