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2020年2月17日 (月)

SFマガジン編集部編「SFが読みたい!2020年版」早川書房

…ジョージ・R・R・マーティンの名前を見るたびに、「ワイルド・カード」の続きを出せと言いたくなるのは、私だけではないはずだ。
  ――マイ・ベスト5海外篇 細谷正充

 私も同感です、はい。

 今年も出ました年に一度のお祭り本。

 国内篇の上位陣は意外な接戦。対して海外篇はダブルスコア以上であの話題作。いずれもベテランと若手が入り混じって、層の厚さとバラエティの豊かさを感じるのが嬉しい。見逃してたのも多いなあ。柴田勝家「ヒト夜の長い夢」,ラヴィ・ティドハー「黒き微睡の囚人」,マイケル・ベンソン「2001:キューブリック、クラーク」…。

 あ、それと、草上仁「5分間SF」にはひたすら感謝。去年、そんな事を書いてたし。

 「伴名練インタビュウ SFの歴史を継いでいくこと」。既存の名作を巧みに織り込んで美味しく仕上げるマニアックな芸風の人、とばかり思い込んでいたけど、実は「いかにSFパンデミックを引き起こすか」「いかに素人をたぶらかしてSF沼に引きずり込むか」を常日頃から目論んでいる人なのがわかった。いやあ実に頼もしい。

 ところで、「サブジャンル別ベスト10&総括」で「海外文学」はあるのに「日本文学」がないのはなぜ? 既に日本文学はSFの拡散と浸透が済んでるから? いいや具体的な作家としては上田岳弘ぐらいしか知らないけど。

 同じく「サブジャンル別ベスト10&総括」はAI花盛りで、やはりポール・シャーレ「無人の兵団」は読みたい。あとサイモン・ウィンチェスター「精密への果てしなき道」も面白そう。

 「SFコミック」では、「電子書籍のコミックス販売額が紙のそれを上回ったのが2017年」に驚いた。コミックスじゃ、とっくに紙が追い越されてたのか。若い人ほど電子書籍に抵抗がなく、そのため読者層が若いコミックスは動きが先行してる、とかかな? 麦原遼「逆数宇宙」も読みたいし、そろそろ私も考える時がきたのか。

 「このSFを読んでほしい!」。早川書房はやはりピーター・トライアスが出るんですね。期待してます。アトリエ・サードのアルジス・バドリス「無頼の月」は2017年版から予告が続いているような気が…

 「2020年のわたし」。上田早由里のオーシャン・クロニクルには期待してます。高島雄哉「エンタングル:ガール2」ってマジかい!本当ならいいなあ。藤井太洋「マン・カインド」、やっぱり終盤なんだ。海外短編のアンソロジーを編んでくれたら嬉しいけど、新作小説も読みたいし、分身の術を会得するかマシンに精神をアップロードするかして欲しい。

 「2010年代ベストSF30」。チャイナ・ミエヴィルは「都市と都市」「言語都市」どっちが好き? 私は「言語都市」。だってエイリアンが出てくるし。

 「2010年代総括座談会 アイデンティティと多様性の時代に」鏡明×大森望×橋本輝幸。やっぱ「皆勤の徒」の翻訳って無理っぽいと思うよね。ピーター・ワッツに対し「こういう先鋭的でがんばってるSFはやっぱり入れておかないと」って、はい、全くその通り。小野不由美「白銀の墟 玄の月」を「1・2巻で完結だと思ってた」って、そりゃ唖然としただろうなあw 小川一水「天冥の標」を「SFの全体像」ってのは、言えてる。いやまだ最終巻を読んでないけど。SFの美味しい所を全部ブチ込みました、的な雰囲気があるよね。 

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