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2018年6月11日 (月)

武蔵工業大学編「なんでも測定団が行く はかれるものはなんでもはかろう」講談社ブルーバックス

「はかれるものはすべてはかろう。はかれないものは、はかれるようにしよう」
  ――1 フィートは足の長さ、ではインチの長さの基準は?

つまり、「致死量」とは実験動物群の半数が死亡し、半数が生き残る統計的数値である。
  ――11 ダイオキシン1グラムで死ぬ人の数は?

一般に荷重変動幅が二倍になると橋に与える疲労のダメージはその三乗(23)で八倍となる。
  ――12 橋の寿命はどうやって予測するの?

青函トンネルの(略)貫通誤差は水平方向で37.4cm、垂直方向で52.5cmであり、また高さの出会い差は19.6cmであった。
  ――13 トンネルを掘るとき、真ん中でピタリと出会う測量の技術

ダイオキシンは、正式にはポリクロロジベンゾジオキシンおよびポリクロロジベンゾフランとよばれ、ベンゼン核につく塩素の位置と数により、それぞれ75,135の異性体とよばれる仲間がある。現在までに両方で17種の異性体に強い毒性が確認されている。
  ――33 超微量のダイオキシン類を分離するカラムの長さの秘密

ヒノキは非常に優れた材料で、伐採後200~300年間は強度が増していき、千数百年経ったとき、ほぼ伐採時の強度に戻るといわれている。(略)古い樹木の寿命は、ほぼ樹齢と等しい…
  ――35 木を切らずに樹木の年齢ははかれるの?

【どんな本?】

 科学や工学では、正確に測ることが大切だ。また、政治や経済でも、人口や失業率の数字は重要な指標になる。では、どうやって地球の重さを調べたのか。二酸化炭素の濃度はどう測るのか。飛行機は自分の高度がなぜわかるのか。選挙のニュースでは、どうやって当確を出すのか。

 科学から社会問題まで、モノゴトの基本となる数字をどう出したのか、そして実際の数字は幾つなのかを、読みやすい短いコラムにまとめた、一般向けの解説書。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2004年8月20日第1刷発行。新書版で縦一段組み、本文約230頁に加え、あとがき2頁。9ポイント43字×17行×230頁=約168,130字、400字詰め原稿用紙で約421枚。文庫本ならやや薄い一冊分ぐらいだが、イラストやグラフも結構あるので、実際の文字数は9割ぐらいか。

 なお、武蔵工業大学編となっているが、著者を隠す意図はない。各記事の末尾に執筆者が、また巻末にも執筆者一覧がある。

 各記事ごとに執筆者が違うので、読みやすさはそれぞれ。全般的に「もっと頁をくれ」みたいな執筆者の叫びが聞こえてきそうな記事が多かった。

【構成は?】

 それぞれ4~6頁の独立した記事は並ぶ形なので、美味しそうな所だけをつまみ食いしてもいい。

  • はじめに 発刊によせて
  • 第1章 はかる歴史
    • 1 フィートは足の長さ、ではインチの長さの基準は?
    • 2 宇宙空間では重さはゼロなのに、質量は存在するの?
    • 3 温度目盛りは人間の血液の温度から始まった!
    • 4 原子時計ではかると一日の長さは一定ではない!?
    • コラム1 ナノワールドの温度変化をとらえる
    • コラム2 「はかる」という言葉の意味はさまざま
  • 第2章 人間をはかる
    • 5 知能指数で本当に頭の良し悪しがわかるの?
    • 6 自分に適した一日の栄養摂取量を計算してみる
    • 7 眠りの深さと夢の関係をはかる
    • 8 注射してから薬が効き始めるまでの時間は?
    • 9 人間の知恵ってはかれるの?
    • 10 運動神経のいい人と悪い人はどこが違うの?
    • 11 ダイオキシン1グラムで死ぬ人の数は?
  • 第3章 ものをはかる
    • 12 橋の寿命はどうやって予測するの?
    • 13 トンネルを掘るとき、真ん中でピタリと出会う測量の技術
    • 14 飛んでいる飛行機の高度はどのようにはかるの?
    • 15 一秒間に地球を七周半する光の正体とは?
    • 16 色や鮮やかさの違いはどのようにはかるの?
    • 17 原子核や中性子、宇宙の起源にせまる電子顕微鏡のしくみとは?
    • 18 土器の実年代はどのようにはかるの?
    • 19 車が衝突したときに受ける衝撃の大きさをはかる
  • 第4章 地球をはかる
    • 20 地球の重さをはかる
    • 21 地球の直径をはかる
    • 22 隣の銀河までの距離はどのようにはかるの?
    • 23 太陽の年齢は50憶年! 星に年齢はどのようにはかるの?
    • コラム3 大きな数の表し方
  • 第5章 情報をはかる
    • 24 コンピュータの速さをはかる
    • 25 カーナビはどうやって自分の位置を認識するのか?
    • 26 情報セキュリティで大切な暗号の強度をはかる
    • 27 音紋分析で声の何がわかるの?
    • 28 携帯電話のアンテナが立ったり立たなかったり 電波の強さはどのようにはかるの?
  • 第6章 環境をはかる
    • 29 地球の平均気温はどのようにはかるの?
    • 30 南極大陸の二倍に達したオゾンホールとオゾン濃度のはかり方
    • 31 100年後に「秋の七草」が「秋の五草」になる!?
    • 32 石油の寿命は40年! 地中深くにある石油の埋蔵量がどうしてわかるの?
    • 33 超微量のダイオキシン類を分離するカラムの長さの秘密
    • 34 生き物がすめる環境はどのようにはかるの?
    • 35 木を切らずに樹木の年齢ははかれるの?
    • 36 世界一透明な湖は桐の摩周湖!?
    • 37 迷惑な騒音の大きさってはかれるの?
    • 38 放射線・放射能をはかる
    • 39 地震のときの「地域危険度」を知っていますか?
    • 40 温暖化の原因 二酸化炭素の発生量ってどのくらい?
    • 41 地球の砂漠化はどれくらい進んでいるの?
  • 第7章 社会をはかる
    • 42 一億人を超える日本の人口はどのようにはかるの?
    • 43 平均寿命80歳時代 さてあなたはあと何年生きられるか?
    • 44 世論調査はあなたの気持ちを反映しているの!?
    • 45 当選確実!ってどのくらい確実? 選挙の当落はどのように予測するの?
    • 46 模擬試験で偏差値50 大学の合格率50%!?
    • 47 大混乱の初詣で、人出はどのようにはかるの?
    • 48 人は一生の間に地球を何周分移動する?
    • 49 失業率5% 失業者数はどうしてわかるの?
    • 50 会社の価値ってどのようにはかるの?
  • 付録/あとがき/執筆者一覧/さくいん

【感想は?】

 私は数字が好きだ。数字を覚えるのは苦手だけど。数字が出ると、なんか信用できる気がする。

 けど、どっからどうやって数字を出したのか、よく分からない場合もあるし、信用できそうもない数字もある。実際に自分がどう測るかを考えると、全く見当もつかない場合も多い。

 例えば地球の重さ(というより質量)。重力は質量に比例し、距離に反比例する。なら1kgあたり、どれぐらいの重力が出るのか、わかればいい。でも1kgのモノが出す重力はやたら小さい。この小さな力を、ICもレーザーもない1798年に測ってるから凄い(→Wikipedia)。よく思いついたなあ。

 やはり賢さを感じさせるのが、カーナビ。GPSでだいたいの位置はわかるが、精度が荒い(誤差30mぐらい)。海や砂漠ならともかく、街中じゃ30mは大きな違いだ。そこで微調整しなきゃいけない。

 当たり前だが、車は道路を走る。河や住宅の中は走らない。そしてカーナビは道路の座標を知っている。だから、計算で出た座標に近い道路に寄せるのだ。お絵かきソフトを使う人は、グリッド調整みたいなモンだと思って欲しい。

 意外と単純なのが、放射線の量を測るガイガー・ミュラー・カウンター。SF小説とかじゃガイガー・カウンターと呼ばれるが、ガイガーもミュラーも人の名前(→Wikipedia)だったとは。ミュラーさん、いつも無視してごめんなさい。

 さて、しくみは。原子核は、崩壊する際にβ線(電子か陽電子、→Wikipedia)を出す。物質は、β線に当たると、陽イオンと電子に分かれる。いずれも電荷があるので、電極に引き寄せられる。そこで電極に寄ってきた電子や陽電子の数を数えるわけ。ちなみにベクレルも人の名前だった(→Wikipedia)。

 これが生物や社会になると、ちと精度が悪くなる。例えば毒などの致死量。マウスとかの動物実験で試し、半数が死んだ量を、ヒトの体重に換算して出す。種や個体差や体調で数値は違う上に、「半数が死んだ量」だから、確実に死ぬとは言い切れないのだ。

 社会だと、選挙の当確の出し方が興味深かった。要は面接と電話と出口調査なんだが、これで出した数字は「特定の党は常に低め(あるいは高め)に出る」ってのは興味をそそられる。いわゆる「濃い」政党は低めに出るんだろうか?

 当然、これには統計が関わってくる。となると気になるのは標本(サンプル)数と誤差。標本数400で誤差5%、2500で誤差2%だとか。「誤差を半分にするには調査する人数を四倍」にせにゃならんとは、なかなか厳しい。とすると、内閣支持率の1~2%の変化とかは、ほとんど誤差だねえ。

 とか、本論の「はかり方」の話も面白いが、測った結果や、関係なさそうな雑学的な話も面白い。

 なんと言っても、驚いたのがトキ。なんと「田んぼでドジョウやカエルをたべ、近くの雑木林をねぐらとする」と言うから、里の鳥だったとは。人里離れた山奥に住む鳥だとばかり思っていた。じゃ農薬の影響も大きいんだろうか。

 生まれと育ちで気になるのが、いわゆる運動神経。オッサンにも希望はあるのか?と思ったが…

 これについては、「遺伝の影響はわずかしかない」と、少し希望が持てる。が、悲しいことに、大事なのは幼い頃、特に5~12歳ごろの運動経験。5~8歳に神経回路が発達し、9~12歳で使い方が巧みになる。この時期が大事なのだ。「子供は外で遊べ」は、真実なのかも。

 短く独立した記事が並ぶ本なので、気になる所だけを拾い読みできるから、コマ切れの時間しか取れない忙しい人には嬉しいかも。科学などと肩ひじ張らず、セシル・アダムズの「こんなこと、だれに聞いたらいいの?」みたく、雑学系の本を楽しむ感じでつまみ食いしよう。

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