SFマガジン編集部編「SFが読みたい!2017年版」早川書房
好きなものに順位をつけるなんて くだらんと思います
――表紙きっとぼくとは違う言語観、世界観にもとづいて書かれた文章を読むのはひたすら楽しい。
――高島雄哉
SFファンが楽しみにしている、年に一度のお祭り本。
やっぱり目玉は昨年度のSF作品の人気投票、「ベストSF2016 国内篇・海外篇」。2016年に出たSF関連作品から、アンケートを取って人気の高い作品を並べる企画。マニアは見逃していた作品を補い、初心者はどこから手を付ければいいかが分かる、親切な企画。
2017年2月15日初版発行、192頁と見た目は身軽ながら、中身はなかなか濃いのでそのつもりで。
肝心の「ベストSF2016」、今までは20位までだったのが、今回は30位までと五割増し。けっこう見逃してたのが多いなあ。奥泉光「ビビビ・ビ・バップ」とかガレス・L・パウエル「ガンメタル・ゴースト」とか、完全にノーマークだったし。
国内篇は若手・中堅・ベテラン入り乱れての戦国時代なのに対し、海外篇はハーラン・エリスン「死の鳥」を代表として、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアやジャック・ヴァンスやJ・G・バラードなど、古典と言っていいい作品が目立つ。
今となってはニューウェーヴなんてラベルは売り込み文句としちゃ全く効果を失っているにも関わらず、それでも人気があるのは、やっぱり作品として面白いからなんだろう。加えて、SFとしてあんましガジェットに凝ってないのも好評の理由じゃないかなあ。
いやイーガンも好きだけど、初心者には勧めにくいんだよね、濃すぎて。その点「アトランティス・ジーン」とかはハッタリとストーリーとアクションで突っ走る豪快娯楽作品で…って、ベスト30に入ってないじゃんw
アンケート回答者が挙げた作品を見ていくのも、「おお、この人はこういうのが好きなのか」ってのが分かって楽しい所。難波弘之が宮内悠介「アメリカ最後の実験」を挙げてるのは「やっぱり」だけど、「ビビビ・ビ・バップ」は見逃したのかな?
サブジャンル別のベスト10も、自分の好みが分かっている人や、新しい分野を切り開きたい人には嬉しい企画。今回はクラシックSFが加わった。ジョン・スラディック「ロデリック」は、AIが話題の今、いつブームになってもおかしくないんで、早めに確保しないと。あ、そこの君、私より先に確保しちゃだめだよ。
「このSFを読んでほしい!」は、各出版社の今年のSF関連出版予定。
早川書房のジョン・スコルジー「老人と宇宙」シリーズは、まだまだ続く予定。アトリエサードは名ばかり高いジョン・ブラナー「ザンジバーに立つ」だのアジリスアルジス・バドリス「無頼の月」とか、年寄りに優しいラインナップ。文藝春秋は藤井大洋「ビッグデータ・コネクト」第二弾って、ホンマかいな。
そしてそして、東京創元社は、やっとキム・スタンリー・ロビンスン「ブルー・マーズ」が、なんと四月に出るとか。「レッド・マーズ」が1998年8月だから、約20年待った勘定になる。まさかこの期に及んで「実は2020年4月でした」なんて言わないよね、ね! ついでにワイルド・カードもコミックス化とかしないかなあ。
にしても、最近のSFマガジン編集部は表紙で遊ぶのが好きだなあw
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