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2016年11月18日 (金)

セシル・アダムズ「恥ずかしいけど、やっぱり聞きたい」ハヤカワ文庫NF 春日井晶子訳

もしシャワー中に抗菌石鹸を落としたら、菌だらけになりますか、それとも「抗菌」作用がちゃんと働くのでしょうか?
  ――1 エッチな話、怖い話

イエバエはどのくらい天井に近づいたところで方向を変えて天井にとまるんでしょうか。
  ――2 自然・生物・科学

耳垢はいったい何のためにあるんですか?
  ――3 医学の話

ジャガイモをアルミホイルで包むとき、キラキラした側を外側にすべきですか、それとも内側?
  ――4 テクノロジー・時間・天気

どうして女性はみんな連れだってトイレに行くの?
  ――5 文化・生活で考えさせられること

アーリア人ってだれのことですか?
  ――6 エトセトラ

【どんな本?】

 副題は「禁断の領域に踏み込む雑学Q&A大全」。

 初夜権って本当にあったの? なんでコインの肖像画はみんな横向きなの? 西部劇のお産の場面では湯をわかすのはなぜ? 雲に乗るのって、どんな感じ? 死後に女だったとバレたジャズマンがいるって本当? 野球場の外野の芝生のチェック柄はどうやって作るの?

 <シカゴ・リーダー>紙などで人気のQ&Aコラム、ストレート・ドープ。読者からの難問・珍問・奇問に答えるのは、自称「何でも知っている」セシル・アダムズ。時は世紀末、最新テクノロジーのチェックも欠かさないセシル先生は、ついにネットの世界に進出し、AOLの掲示板でも大暴れ。

 「こんなこと、だれに聞いたらいいの? 快答乱麻の巻」「こんなこと、だれに聞いたらいいの? 疑心暗鬼の巻」に続く、嬉し恥ずかしの愉快なQ&Aを集めた雑学本。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は Triumph of the Straight Dope, by Cecil Adams, 1999。日本語版は2002年1月31日発行。文庫本で縦一段組み、本文約315頁に加え、訳者あとがき3頁。9ポイント39字×17行×315頁=約208,845字、400字詰め原稿用紙で約523枚。文庫本としては標準的な量。

 文章はこなれている。内容もわかりやすい。ただ、アメリカ固有のネタも混じっているので、わからなかったら読み飛ばそう。

【構成は?】

 それぞれの章は多くのQ&Aを含む。個々のQ&Aは1~5頁程度なので、美味しそうな所だけをつまみ食いしてもいい。

 編者まえがき
1 エッチな話、怖い話
2 自然・生物・科学
3 医学の話
4 テクノロジー・時間・天気
5 文化・生活で考えさせられること
6 エトセトラ
付録 ロンドンの<ビザール>誌によるエド・ゾッティのオンライン・インタビュー
 訳者あとがき

【感想は?】

 セシル先生もインターネットに進出し、読者との応酬も激しさをました様子。

 付録では「インターネットで仕事はやりやすくなった?」なんて質問も。的確な答えが手に入れやすくなった反面、「気のふれた説が山のように集まりました」「くだらない質問の水準が下がった」けど、「全体的には、非常にやりやすくなりました」。なんであれ、使い方次第ってことかな。

 流れる情報が増えれば雑音も増える。この巻ではイヤーキャンドルなんて懐かしいネタが…と思って検索したら、セラピーと称してまだ生き延びてるのかい。

 都市伝説はお国それぞれ。いい気分にラリって女とシケこんだ次の朝、目を覚ますと氷でいっぱいのバスタブの中。胸には口紅で「911(日本の119)に電話せよ」の文字。腰の後ろに20cmぐらいの切り傷がある。医師によると、腎臓が盗まれていて…。 日本だと、ダルマ女って有名なのがあるなあ。

 やっぱ怖いのが、SPAM。迷惑メールじゃなくて、缶入り肉のスパム。あれハワイじゃ大人気なんだけど、その理由は「かつて彼らは人食いの習慣があって、スパムの味は人肉に似てるからじゃね?」とか物騒なのも。このネタ流した人は人肉を食った事があるんだろうか。あ、ちなみに、ネタ元はポール・セローのまぎらわしいギャグです。

 他にも、騎乗した英雄の銅像は上がってる馬の脚の本数に意味があるとか、電線にスニーカーが引っかかってるのはアウトローのシマを表すとか、結婚式で投げた米粒を食べた鳥が爆発して死ぬとか、なかなか想像力豊か。

 ただし「蚊が血を吸ってる時に筋肉を緊張させると蚊が爆発する」ってのは、嘘じゃないけど破裂はするとか。私も昔やった事があって、破裂はしなかったけど抜けなくなってたなあ。

 盛り上がったのは「煙草で超人的な力を得るスーパーヒーロー」。オヂサンはピンときたよ。セシル先生はちゃんと知ってます。元は日本の漫画だと。けど向こうで無茶苦茶にアレンジされちゃったみたい(→Youtube)。んなもん知っててもオヂサンにしかウケないけどw

 こういう、んなもん知ってどうする的なネタも、この本の欠かせない味。チャック・ベリーのジョニー・B・グッドは1958年のヒットチャートじゃ最高8位だったけど、その上の7曲は何? とか。

 昔の牛乳やチーズなどの乳製品のパッケージには、鼻輪をつけた牛のイラストがよくあった。あれ、実は意味があったとか。大抵の牛は鼻輪をつけなくて、つけてるのは3種類。種牛か危険な牛か、または品評会に出す優秀な牛。つまり鼻輪つきの牛のイラストは、「いい牛だよ」ってメッセージなのね。

 動物ものでは猫の謎も。「猫はどんな高いところから落ちても大丈夫なの?」実は獣医が集めたデータもあって、7階までは猫の怪我の程度と落ちた高さは比例してたけど、それ以上になると「怪我の数は急降下します」。…え?

 はい、ちゃんとオチがあります。だって死んだ猫は獣医に持ち込まれないから、勘定されません。

 とかのしょうもないネタばかりではなく、少しは役に立つネタも。「粘土を食べるのがやめられません」なんて質問には、「鉄分不足による貧血かも」なんて温かいアドバイスも。また「ウチの犬はチョコレートが好きなんだけど」ってな質問には、「犬にとっては深刻な問題」と釘をさしてる。

 ちなみに耳垢にはちゃんと役割があって、「細菌や埃が鼓膜にまで入り込まないようにします」とか。たいていの場合はほっといても大丈夫で、「耳から自然に排出されます」。そうだったのか。

 それぞれのQ&Aは1頁~4頁ぐらいなので、面白そうな所だけを拾い読みしてもオッケー。役に立つかと言われるとアレだけど、ちょっとした暇つぶしや、難しい本を読んでる時の気分転換には最適でしょう。

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