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2016年11月 9日 (水)

トマ・ピケティ「21世紀の資本」みすず書房 山形浩生・守岡桜・森本正史訳 1

資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき(19世紀はそうだったし、また今世紀でもそうなる見込みがかなり高い)、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出し、それが民主主義社会の基盤となる能力主義的な価値観を大幅に減退させることになるのだ。
  ――はじめに

【どんな本?】

 フランスの経済学者トマ・ピケティが著し、2015年に話題を呼んだ、一般向け経済学の解説書。

 主に18世紀から21世紀初頭までの富裕国のデータを基に、富とそれが生み出す資本所得と、労働所得の分配を調べ上げ、戦争・不況・人口増加・技術革新など経済成長の動きと、富や所得の格差の関係を暴き出し、21世紀以降の社会の変化を予言し、対策を示す問題作。

 なお、元となるデータは、フランスとイギリスを中心に、ドイツ・イタリアなど西欧先進国,アメリカ・オーストラリアなど新興国,スウェーデンやデンマークなど北欧諸国に加え、日本も少し出てくる。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は Le capital au XXIe siècle, de Thomas Piketty, 2013。日本語版は2014年12月8日第1刷発行。私が読んだのは2015年1月15日発行の第7刷。凄い売れ行きだなあ。単行本ハードカバー縦一段組みで本文約608頁。9ポイント52字×20行×608頁=約632,320字、400字詰め原稿用紙で約1,581枚。文庫本なら上中下の三巻分ぐらいの大容量。

 文章は比較的にこなれている。内容も意外と難しくない。数式はいくつか出てくるが、わからなくても文章で説明しているので、説明についていくのに大きな問題はない。ハッキリ言って、これを読み通すのに必要なのは、優れたオツムじゃない。体力と気力と時間、それだけ。

 ただし、著者は思想的にリベラルに属し、大きな政府と累進課税を好む立場なので、小さい政府とシカゴ学派が好きな人には不愉快だろう。

【構成は?】

 第Ⅰ部~第Ⅲ部で問題を示しデータで裏を取りその原理を明らかにする。第Ⅳ部は解決策を示す。手っ取り早く結論を知りたい人は第Ⅳ部だけを読んでもいいけど、むしろ沢山出ているアンチョコ本の方が楽だと思う。

  •  謝辞
  • はじめに
    データなき論争?/マルサス、ヤング、フランス革命/リカード 希少性の原理/マルクス 無限蓄積の原理/マルクスからクズネッツへ、または終末論からおとぎ話へ/クズネッツ曲線 冷戦さなかのよい知らせ/分配の問題を経済分析の核心に戻す/本書で使ったデータの出所/本研究の主要な結果/格差収斂の力、格差拡大の力/格差拡大の根本的な力 r>g/本研究の地理的、歴史的範囲/理論的、概念的な枠組み/本書の概要
  •  第Ⅰ部 所得と資本
  • 第1章 所得と産出
    長期的に見た資本-労働の分配 実は不安定/国民所得の考え方/資本って何だろう?/資本と富/資本/所得比率/資本主義の第一基本法則 α=r×β/国民経済計算 進化する社会構築物/生産の世界的分布/大陸ブロックから地域ブロックへ/世界の格差 月150ユーロから月3000ユーロまで/世界の所得分配は産出の分配よりもっと不平等/収斂に有利なのはどんな力?
  • 第2章 経済成長 幻想と現実
    超長期で見た経済成長/累積成長の法則/人口増加の段階/マイナスの人口増加?/平等化要因としての人口増加/経済成長の段階/購買力の10倍増とはどういうことだろう?/経済成長 ライフスタイルの多様化/成長の終わり?/年率1%の経済成長は大規模な社会変革をもたらす/戦後期の世代 大西洋をまたぐ運命の絡み合い/世界成長の二つの釣り鐘曲線/インフレの問題/18,19世紀の通貨大安定/古典文学に見るお金の意味/20世紀における金銭的目安の喪失
  •  第Ⅱ部 資本/所得比率の動学
  • 第3章 資本の変化
    富の性質 文学から現実へ/イギリスとフランスにおける資本の変化/外国資本の盛衰/所得と富 どの程度の規模か/公共財産、民間財産/歴史的観点から見た公共財産/イギリス 民間資本の強化と公的債務/公的債務で得をするのは誰か/リカードの等価定理の浮き沈み/フランス 戦後の資本家なき資本主義
  • 第4章 古いヨーロッパから新世界へ
    ドイツ ライン型資本主義と社会的所有/20世紀の資本が受けた打撃/米国の資本 ヨーロッパより安定/新世界と外国資本/カナダ 王国による所有が長期化/新世界と旧世界 奴隷制の重要性/奴隷資本と人的資本
  • 第5章 長期的に見た資本/所得比率
    資本主義の第二法則 β=s/g/長期的法則/1970年代以降の富裕国における資本の復活/バブル以外のポイント 低成長、高貯蓄/民間貯蓄の構成要素二つ/耐久財と貴重品/可処分所得の年数で見た民間資本/財団などの資本保有者について/富裕国における富の民営化/資産価値の歴史的回復/富裕国の国民資本と純外国資産/21世紀の資本/所得比率はどうなるか?/地価の謎
  • 第6章 21世紀における資本と労働の分配
    資本/所得比率から資本と労働の分配へ/フロー ストックよりさらに推計が困難/純粋な資本収益という概念//歴史的に見た資本収益率/21世紀初期の資本収益率/実体資本と名目資産/資本は何に使われるか/資本の限界生産性という概念/過剰な資本は資本収益率を減らす/コブ=ダグラス型生産関数を超えて 資本と労働の分配率の安定という問題/21世紀の資本と労働の代替 弾性値が1より大きい/伝統的農業社会 弾性値が1より小さい/人的資本はまぼろし?/資本と労働の分配の中期的変化/再びマルクスと利潤率の低下/「二つのケンブリッジ」を越えて/低成長レジームにおける資本の復権/技術の気まぐれ
  •  第Ⅲ部 格差の構造
  • 第7章 格差と集中 予備的な見通し
    ヴォートランのお説教/重要な問題 労働か遺産か?/労働と資本の格差/資本 常に労働よりも分配が不平等/格差と集中の規模感/下流、中流、上流階級/階級闘争、あるいは百分位闘争?/労働の格差 ほどほどの格差?/資本の格差 極端な格差/20世紀の大きなイノベーション 世襲型の中流階級/総所得の格差 二つの世界/総合指標の問題点/公式発表を覆う慎みのベール/「社会構成表」と政治算術に戻る
  • 第8章 二つの世界
    単純な事例 20世紀フランスにおける格差の縮小/格差の歴史 混沌とした政治的な歴史へ/「不労所得生活者社会」から「経営者社会」へ/トップ十分位の各種世界/所得税申告の限界/両大戦間の混沌/一次的影響の衝突/1980年代以降のフランスにおける格差の拡大/もっと複雑な事例 米国における格差の変容/1980年以降の米国の格差の爆発的拡大/格差の拡大が金融危機を引き起こしたのか?/超高額給与の台頭/トップ百分位内の共存
  • 第9章 労働所得の格差
    賃金格差 教育と技術の競争か?/理論モデルの限界 制度の役割/賃金体系と最低賃金/米国での格差急増をどう説明するか?/スーパー経営者の台頭 アングロ・サクソン的現象/トップ千分位の世界/ヨーロッパ 1900-1910年には新世界よりも不平等/新興経済国の格差 米国よりも低い?/限界生産性という幻想/スーパー経営者の急上昇 格差拡大への強力な推進力
  • 第10章 資本所有の格差
    極度に集中する富 ヨーロッパと米国/フランス 民間財産の観測所/世襲社会の変質/ベル・エポック期のヨーロッパの資本格差/世襲中流階級の出現/米国における富の不平等/富の分岐のメカニズム 歴史におけるrとg/なぜ資本収益率が成長率よりも高いのか?/時間選好の問題/均衡分布は存在するのか?/限嗣相続制と代替相続制/民法典とフランス革命の幻想/パレートと格差安定という幻想/富の格差が過去の水準に戻っていない理由は?/いくつかの部分的説明 時間、税、成長/21世紀 19世紀よりも不平等?
  • 第11章 長期的に見た能力と相続
    長期的な相続フロー/税務フローと経済フロー/三つの力 相続の終焉という幻想/長期的死亡率/人口とともに高齢化する富 μ×m効果/死者の富、生者の富/50代と80代 ベル・エポック期における年齢と富/戦争による富の若返り/21世紀には相続フローはどのように展開するか?/年間相続フローから年間相続ストックへ/再びヴォートランのお説教へ/ラスティニャックのジレンマ/不労所得生活者と経営者の基本計算/古典的世襲社会 バルザックとオースティンの世界/極端な富の格差は貧困社会における文明の条件なのか?/富裕社会における極端な能力主義/プチ不労所得者の世界/民主主義の敵、不労所得生活者/相続財産の復活 ヨーロッパだけの現象か、グローバルな現象か
  • 第12章 21世紀における世界的な富の格差
    資本収益率の格差/世界金持ちランキングの推移/億万長者ランキングから「世界資産報告」まで/資産ランキングに見る相続人たちと起業家たち/富の道徳的階層/大学基金の純粋な収益/インフレが資本収益の格差にもたらす影響とは/ソヴリン・ウェルス・ファンドの収益 資本と政治/ソヴリン・ウェルス・ファンドは世界を所有するか/中国は世界を所有するのか/国際的格差拡大、オリガルヒ的格差拡大/富裕国は本当は貧しいのか
  •  第Ⅳ部 21世紀の資本規制
  • 第13章 21世紀の社会国家
    2008年金融危機と国家の復活/20世紀における社会国家の成長/社会国家の形/現代の所得再分配 権利の論理/社会国家を解体するよりは現代化する/教育制度は社会的モビリティを促進するだろうか?/年金の将来 ペイゴー方式と低成長/貧困国と新興国における社会国家
  • 第14章 累進所得税再考
    累進課税の問題/累進課税 限定的だが本質的な役割/20世紀における累進税制 とらえどころのない混沌の産物/フランス第三共和政における累進課税/過剰な所得に対する没収的な課税 米国の発明/重役給与の爆発 課税の役割/最高限界税率の問題再考
  • 第15章 世界的な資本税
    世界的な資本税 便利な空想/民主的、金融的な透明性/簡単な解決策 銀行情報の自動送信/資本税の狙いとは?/貢献の論理、インセンティブの論理/ヨーロッパ富裕税の設計図/歴史的に見た資本課税/別の形態の規制 保護主義と資本統制/中国での資本統制の謎/石油レントの再分配/移民による再分配
  • 第16章 公的債務の問題
    公的債務削減 資本課税、インフレ、緊縮財政/インフレは富を再分配するか?/中央銀行は何をするのか?/お金の創造と国民資本/キプロス危機 資本税と銀行規制が力をあわせるとき/ユーロ 21世紀の国家なき通貨?/欧州統合の問題/21世紀における政府と資本蓄積/法律と政治/気候変動と公的資本/経済的透明性と資本の民主的なコントロール
  • おわりに
    資本主義の中心的な矛盾 r>g/政治歴史経済学に向けて/最も恵まれない人々の利益
  • 凡例/図表一覧/原注/索引

【感想は?】

 そういうわけで、感想は次の記事から。とりあえず家賃や住宅ローンを払ってて懐が寂しい人には、いろいろと身に染みる本です。

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