Raffaele Cecco「JavaScriptグラフィックス ゲーム・スマートフォン・ウェブで使う最新テクニック」オライリージャパン 相川愛三訳 1
本書は、ワンランク上を目指す JavaScript プログラマーに向けた解説書です。主にグラフィックスやアニメーションを扱いますが、単に HTML5 Canvas や jQuery について説明するだけの書籍ではありません。
【どんな本?】
Web ブラウザ上のゲーム・アプリケーションの開発用としては現在最も有力なプログラミング言語である JavaScript を使い、主に2Dのアクション・ゲームを作りたい人のための技術解説書。
単にアニメーション用のインタフェースを紹介するだけでなく、実行速度を速くする方法、マシンの性能が違っても同じような操作感を実現するコツや、使うメモリの容量を減らす工夫、他言語と比べた JavaScript のクセ、CSS と組み合わせた印象的なエフェクトなど、今すぐ応用できるテクニックを豊富なソースコードと共に紹介する。
【いつ出たの?分量は?読みやすい?】
原書は Supercharged JavaScript Graphics, by Raffaele Cecco, 2011。日本語版は2012年3月17日初版第1刷発行。単行本ソフトカバー横一段組みで本文約257頁。8.5ポイント46字×38行×257頁=約449,236字、400字詰め原稿用紙で約1,124枚。文庫本なら上下巻ぐらいの分量だが、キャプチャ画像やイラストを豊富に収録しているので、実際の文字数は6~7割程度。当然ながら、ソース・プログラムもふんだんに出てくる。
訳者は相当にプログラミングがわかっている人らしく、文章はこなれていて読みやすいし、言葉の使い方も適切。問題は内容で、次の条件三つをを全て満たす人向け。
- HTML と CSS が書ける。少なくとも、この記事頁の HTML と CSS ぐらいは、マニュアルを見ながらでもいいので、自分で作れる。
- JavaScript でプログラムを作れる。と言っても、この程度のオモチャで喜んでいる程度では苦しい。プログラミング技術として、クロージャ・コールバック・継承ぐらいは使えて、Web プログラマとしては DOM(Document Object Model、→XML用語辞典) による要素の追加や変更ができる。
- jQuery を多少は知っている。日頃から使っていると更によし。
意外なことに、ゲームを作った経験がない人でも、上記三つを満たす人なら、読みこなせる。なお、デバッガは Firebug を紹介しているので、ブラウザは Firefox を使っているといいかも。
本書のゴールとしては、次のようなゲームやエフェクトが出てくる。ただし、サウンドはなし。
- 懐かしのインベーダーゲーム:PC版&Android版
- チャット
- 棒グラフ:ポップアップする吹き出しつき
描く画像は2Dが中心で、グラデーションや影をつけて立体感を出すあたりが限界。テトリスを作るのは可能だけど、ぷよぷよは少しエフェクトを簡素化しないと難しいかも。さすがに物理演算エンジンを酷使する3Dゲームまでは無理です。ゲーム専用機ならPSP未満、かな。
HTML の規格だと、5章までは DHTML 対応で、6章から HTML5 が必要になる。
【構成は?】
前章を受けて後の章が続く形なので、素直に頭から読もう。
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【全般】
掟破りの楽しさ。いやこの記事を書く時点では5章までしか読んでいないんだけど。
なんといっても、いきなり最適化の話が出てくるのが掟破り。プログラミングの教科書なら、普通は「まずチャンと動くようにしろ、最適化はその後だ」と来る筈なんだがw
というのも、出てくる例の多くが、リアルタイムの応答が必要なモノが多く、実効速度に厳しい制限があるモノが多いため。そんなわけで、プログラミングの本としては、JavaScript が云々というより、リアルタイム系のゲームを作る際のコツやテクニックの紹介がやたら楽しいし、他のプログラム言語にも応用できそうな話が多い。
ということで、次の記事に続きます。
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