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2015年12月25日 (金)

星名定雄「情報と通信の文化史」法政大学出版局 1

 人間はどのようにして情報をはこび、そして伝えてきたのだろうか――。そのことについて、古代から現代にいたるまでの足跡をたどるのが本書のテーマである。
  ――はじめに

【どんな本?】

 現代では、大抵の連絡ごとはインターネットや携帯電話によるデジタル通信で事が足りる。昭和の頃は、固定電話やファックスが活躍した。電話が普及する前は、手紙や葉書が主な手段だった。では、その前は?

 情報の記録媒体としての粘土板やパピルスから、伝達する手段としての狼煙や使者などを紹介し、また駅制などに代表される様々な情報通信ネットワークを作り上げた原動力や、それが社会に与えた影響、そしてシステムを維持するための工夫や問題点などを、当時の歴史背景とともに語り、情報通信の歴史と意義を明らかにする、一般向け歴史解説書。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2006年10月25日初版第1刷発行。単行本ハードカバー縦二段組で本文約487頁にくわえ、あとがき2頁。8.5ポイント27字×22行×2段×487頁=約578,556字、400字詰め原稿用紙で約1,447枚。文庫本なら三冊分ぐらいの大容量。

 学術書に近い内容だが、比較的に文章はこなれている。読みこなすのに特に前提知識は要らないが、やはり歴史の本なので、歴史、それもヨーロッパ史に詳しい人ほど楽しめる。

【構成は?】

 だいたい時代に沿って話が進むので、素直に頭から読もう。

  •  はじめに
  • 第Ⅰ部 情報通信史のあけぼの 人類の歴史と共に出発
    • 第1章 コミュニケーションの源流を辿る
      1. プロローグ 古代人のコミュニケーション
      2. 絵から文字へ ヒトは記録する
      3. 書写の材料 石から紙へ
      4. 焔と煙と 狼煙が伝えたもの
    • 第2章 古代王国を支えた強大な駅制
      1. 古代オリエント 乾いた大地に使者が走る
      2. 古代ペルシア 王の道と駅伝システム
      3. 古代ギリシャ ヘメロドローメンが走る
      4. 古代中国 漢字に秘められた郵駅の仕組み
    • 第3章 古代ローマ帝国の駅制
      1. ローマの道 すべての道はローマより発す
      2. クルスス・プブリクス 公共の道というけれど
      3. ディプロマタ 乱用が制度崩壊の一因に
  • 第Ⅱ部 基本通信メディアの誕生 中世から近世へ
    • 第4章 大帝国の巨大通信ネットワークの出現
      1. 唐の駅制 南船北馬の地に展開
      2. サラセンの駅伝 カリフの魔法の鏡
      3. モンゴルの站赤 東西の架け橋となる
      4. インカの飛脚 王の目と耳に
    • 第5章 仏英における駅制の発展過程
      1. フランスの駅制 ルイ11世が整備開始
      2. イギリスの駅制 ヘンリー八世が創設
    • 第6章 わが国の情報通信の歩み
      1. 弥生時代 意外と高い情報密度
      2. 大化前代 大和と筑紫のあいだに早馬が走る
      3. 律令時代 唐制を範に通信網を敷く
      4. 平安時代 手紙文化の誕生
      5. 鎌倉時代 六波羅飛脚が京都と鎌倉を結ぶ
      6. 戦国時代 密使が飛び交う世界
      7. 江戸時代 飛脚のネットワークが完備
    • 第7章 中世ヨーロッパの成立と飛脚の台頭
      1. 僧院飛脚 キリスト教社会の絆に
      2. 大学飛脚 故郷と学生を結ぶ
      3. 商都の飛脚 商業活動を支える
      4. 為替と飛脚 支払期限を決める飛脚の速さ
      5. 騎士飛脚 青い外套をまとい馬にまたがる
      6. 都市の飛脚 市民のコミュニケーションを支える
    • 第8章 ハプスブルグ家と歩んだタクシス郵便(駅逓)
      1. 16世紀中葉までの発展 フランツが基礎を築く
      2. 18世紀中葉までの発展 帝国駅逓の地位を獲得
      3. タクシス郵便の終焉 400年の歴史に幕
  • 第Ⅲ部 改革と発展の時代 近世から近代へ
    • 第9章 合衆国成立とアメリカ郵便の誕生
      1. 手紙を運んだ私営船 母国との絆を担う
      2. 植民地飛脚の整備 遅々として進まず
      3. 植民地の駅逓 イギリス本国が管理する
      4. 駅逓から郵便へ 新聞郵便がスタート
      5. アメリカ郵便の発展 西部開拓とともに進む
      6. ニューヨークの市内郵便 民営郵便が活躍する
      7. 安息日の労働 是非を巡り論争
    • 第10章 19世紀イギリスの郵便改革
      1. 近代の郵便事情 高い料金が利用を阻む
      2. ヒルの郵便改革案 外部からの提案
      3. 1ペニー郵便開始 社会生活に溶け込む
    • 第11章 日本の郵便近代化
      1. 創業前夜 幕末の混乱で宿駅制度が崩壊
      2. 前島密 近代郵便創設を建議
      3. 杉浦譲 新式郵便スタートに尽力
      4. 郵便創業 65の郵便局でスタート
      5. 前島洋行 英米の郵便制度を視察
      6. 旧制の再編成 交通と通信を分離
      7. 郵便の全国展開 政府専掌を打ち出す
      8. 外国郵便の開始 日米郵便交換条約の締結で
      9. 東京府内の郵便 1日19回も配達
  • 第Ⅳ部 情報の伝達 古代から現代まで
    • 第12章 陸路の情報伝達
      1. 使者と飛脚 情報通信史のプロローグを飾る
      2. 駿馬 至急報伝達の主役に
      3. 馬車 旅人と郵便を運ぶ
      4. 鉄道 機械時代の到来
      5. 自動車 馬なし時代に移る
    • 第13章 海路の情報伝達
      1. イギリス 郵便の船舶輸送に補助金を出す
      2. 日本 官主導で日本郵船を創設
    • 第14章 空路の情報伝達
      1. 伝書鳩 古代から情報を空輸する
      2. 気球 普仏戦争で活躍
      3. 飛行船 世界一周を敢行する
      4. 航空機 郵便輸送で民間航空がスタート
    • 第15章 空間と時間を克服した通信技術
      1. 人間テレグラフ 目と耳と口と
      2. 腕木通信 現代通信ネットワークの起源に
      3. 有線電信 電気式テレグラフの誕生
      4. 無線電信 海の世界で不可欠に
      5. 電話 人々の生活に浸透する
  • 第Ⅴ部 マスメディアの台頭 近代
    • 第16章 新聞の創業
      1. 新聞前史 口承伝達から手書きメディアへ
      2. ヨーロッパ 印刷メディアの誕生
      3. アメリカ 独立運動を鼓舞する
      4. 日本 瓦版からはじまる
    • 第17章 通信社の誕生
      1. ヨーロッパ 英仏独の三強が誕生
      2. アメリカ 共同取材から出発
      3. 日本 政治宣伝機関から出発
    • 第18章 ラジオからテレビの時代へ
      1. ラジオ 無線電話かの技術を使う
      2. テレビ 新聞と並ぶマスメディアに
  • 第Ⅵ部 エピローグ
    • 第19章 情報通信の隠された世界
      1. 暗号 古代から活用される
      2. 情報活動 検閲と密使の話
    • 第20章 昭和の思い出と平成の変貌
      1. 昭和の時代 人の温もりを残すコミュニケーション
      2. 平成の時代 高度情報化社会の到来
  • あとがき
  • 図版・地図・表リスト
  • 参考文献/索引

【感想は?】

 インターネットの有難みが、しみじみと伝わってくる本。

 インターネットが普及しはじめた頃、「情報革命の時代だ」などと言われた。ちょっとピンと来なかったのだが、この本を読むと、ほとんどリアルタイムかつ安価で世界中の人と話ができるのは、凄い事なんだと改めて感じる。

 というのも、歴史上の多くの大国が、国内外の情報ネットワークを整備するために国家あげての努力をし、また通信速度を上げ通信費用を捻出するために大変な投資をしてきたのが分かるからだ。それもそのはず、情報の伝達には、時として国家の命運すらかかっているのだから。

 では、どのような情報ネットワークがあったのか。それは次の記事で。

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