星名定雄「情報と通信の文化史」法政大学出版局 1
人間はどのようにして情報をはこび、そして伝えてきたのだろうか――。そのことについて、古代から現代にいたるまでの足跡をたどるのが本書のテーマである。
――はじめに
【どんな本?】
現代では、大抵の連絡ごとはインターネットや携帯電話によるデジタル通信で事が足りる。昭和の頃は、固定電話やファックスが活躍した。電話が普及する前は、手紙や葉書が主な手段だった。では、その前は?
情報の記録媒体としての粘土板やパピルスから、伝達する手段としての狼煙や使者などを紹介し、また駅制などに代表される様々な情報通信ネットワークを作り上げた原動力や、それが社会に与えた影響、そしてシステムを維持するための工夫や問題点などを、当時の歴史背景とともに語り、情報通信の歴史と意義を明らかにする、一般向け歴史解説書。
【いつ出たの?分量は?読みやすい?】
2006年10月25日初版第1刷発行。単行本ハードカバー縦二段組で本文約487頁にくわえ、あとがき2頁。8.5ポイント27字×22行×2段×487頁=約578,556字、400字詰め原稿用紙で約1,447枚。文庫本なら三冊分ぐらいの大容量。
学術書に近い内容だが、比較的に文章はこなれている。読みこなすのに特に前提知識は要らないが、やはり歴史の本なので、歴史、それもヨーロッパ史に詳しい人ほど楽しめる。
【構成は?】
だいたい時代に沿って話が進むので、素直に頭から読もう。
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【感想は?】
インターネットの有難みが、しみじみと伝わってくる本。
インターネットが普及しはじめた頃、「情報革命の時代だ」などと言われた。ちょっとピンと来なかったのだが、この本を読むと、ほとんどリアルタイムかつ安価で世界中の人と話ができるのは、凄い事なんだと改めて感じる。
というのも、歴史上の多くの大国が、国内外の情報ネットワークを整備するために国家あげての努力をし、また通信速度を上げ通信費用を捻出するために大変な投資をしてきたのが分かるからだ。それもそのはず、情報の伝達には、時として国家の命運すらかかっているのだから。
では、どのような情報ネットワークがあったのか。それは次の記事で。
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