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2015年10月13日 (火)

ピーター・H・ディアマンディス,スティーヴン・コトラー「楽観主義者の未来予測 テクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする 上・下」早川書房 熊谷玲美訳 2

ドイツ航空宇宙センター(DLR)の試算によれば、北アフリカの砂漠で太陽熱発電を行えば、現在の世界発電需要の40倍にあたる電力を供給できるという。
  ――第13章 エネルギー

アメリカの公立学校に通う生徒が高校を卒業する割合は平均で6割程度に過ぎない。
  ――第14章 教育

ピーター・H・ディアマンディス,スティーヴン・コトラー「楽観主義者の未来予測 テクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする 上・下」早川書房 熊谷玲美訳 1 から続く。

【感想は?】

 どうやって水の問題を解決するか。

 解決法の一つとして紹介しているのが、「スリングショット」。セグウェイで有名な物理学者で起業家のディーン・ケーメン(→Wikipedia)が提唱するもので、少ないエネルギーで水を蒸留する装置である。牛糞でも動く。何より、スターリングエンジン(→Wikipedia)ってのがマニア心をくすぐる。

 ただし、問題はお値段だ。今の所、製造コストは一台10万ドル。大雑把に1ドル100円としても一千万円。お話にならない…ってのは、気が早い。「商業ベースで大量生産するようになれば、製造コストは一台あたり2500ドルになる」。加えてスターリングエンジンも別売で、2500ドル。これで約100人分の水を調達できる。一人当たり50ドル。うーん。

 加えてメンテや教育が必要なんだが、そのアイデアが面白い。なんと、コカコーラと協力したのだ。なんたって、世界のどこでもコカコーラは売っている。その配送ネットワークを使えば、多くの地域でサービスを展開できるじゃないか。

 ちと初期費用は眉唾だが、コカコーラと協力するって発想には舌を巻いた。実に賢い。

 水は生活用水以上に、農業で使う。「従来型農業は、地球上の水の70%を使用している」。これを減らせれば、大幅な水の節約になる。意外な事に、ここで出てくるのが水耕栽培で、なんと水を7割節約できるのだ。更に、空中に植物を吊るして水を噴霧する空中栽培だと、更に7割を節約できる。

 面白いのは、この研究がNASAから始まったこと。長期間の有人宇宙飛行のために、水耕栽培の研究を始めたのがきっかけだ。今では、日本でも植物工場(→Wikipedia)が産業化されている。品目は限られているが、とりあえずビジネスとして成立しているのだ。

 水と同じぐらい重要なのが、エネルギー。下巻には「裏庭の原発」なんて案もでてて、思わず「『パパの原発』かいっ!」と突っ込みたくなった←マニアにしか通じない表現は止めろ。それは置いといて、やはり本命は太陽発電。今は初期費用+運用費用で、火力発電に敵わないが、ジリジリと安くはなっている…政府主導ってのが、ちと悩ましいが。

 逆に民間主導なのが、藻によるバイオ燃料生成。遺伝子組み換えの藻を使い、油を作る計画だ。これに挑戦しているのが、エクソンモービル,シェル,シェブロン。いずれも石油の大手だ。日本でも「藻 石油」で検索すると色々出てくるし、こりゃなんとかなるかも。

 が、人間そのものが変わらなきゃ、どうにもならない。だがこれも、希望はあるのだ。

 コンピュータはムーアの法則(→Wikipedia)に従い、急速に性能があがってきた。しかも、最近は iPhone など通信機能もついていて、これは有線電話インフラの貧しいアフリカなどで急速に普及している。では、コンピュータに何が出来るのか。やっぱり、教育でしょ。

 子供はみんなニンテンドーが好きだ。ポケモンは世界中の子供に愛されている。このポケモンを巡るエピソードが、実に感動的なのだ。語り手はジェームズ・ギー博士。彼はポケモンについて、こう語る。

 ポケモンは五歳児向けのゲームだが、遊ぶには多くの文章を読まなきゃいけない。最初はママに読んでもらうが、すぐに気がつく。「ママって下手だよね」。まあ他にも色々理由があるんだろうけど、自分で読めれば自分の好きに遊べるぐらいは子供でもわかる。じゃ、どうするか。読むことを学ぶのだ。誰に強制されるわけでもなく、自ら進んで。

 私はポケモンを良く知らないけど、あれって多少の計算能力も要るんじゃないのかな?とすると、算数も身につく事になる。最近はタッチペンで入力も出来るから、これを巧く使えば、読み書き算盤が揃うじゃないか。

 にしても、なんだって子供は(いや大人も)、コンピュータ・ゲームに夢中になるのか。

 誰だって、テストは嫌いだ。失敗するのが嫌いだ。だが、ゲームとなると、人はサルのように再挑戦しつづける。本来なら苦痛のはずのテストを、ゲーム中では喜んで受ける。レベルアップなどで、プレイヤーに報酬を与えるシステムが充実しているためかもしれない。

私は某技術の講師を務めた事がある。その時は、できるだけ細かい段階ごとに実習を挟み、受講者に達成感を味あわせるようカリキュラムを工夫した。「俺は何かが出来るようになった」と実感すると、人は学習意欲を煽られる。人はそういう生き物なんだと思う。ゲームの設計者は、こういうプレイヤーを煽るコツを沢山知っているんだろうなあ。

 何かを学習するには、仲間と先導者がいるほうがいい。ポケモンには通信対戦機能があるし、ゲームの歴史では高橋名人がいた。いや、ゲーム機に拘る必要はない。最近はスマートフォン向けゲームが沢山ある。携帯電話は貧しい地域にも普及してるし、世界の裏側にいる教師とも連絡が取れる。

 思ったより、環境は整っているのだ。しかも、ムーアの法則は、コンピュータだけに当てはまるものじゃない。近年の遺伝子解析技術の進歩は、ムーアの法則すら桁違いに上回っている。

 他にも携帯型X線撮影装置やらiPhone+バイオセンサやらDIYバイオやら、ワクワクする話が満載だ。おまけにSF者には、「ダイヤモンド・エイジ」なんて言葉も出てきて、ニヤニヤするクスグリもある。著者の楽観論を信じるか否かは別として、最新テクノロジーの話題が好きな人には、たまらなく楽しい本だろう。

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