原爆投下の是非
(ハリー・S・)トルーマンはそのときもその後も、自分が原爆の使用を決定したのは正しかった、それどころか避けられなかった、と頭から思い込んでいただけではなく、爆弾を落としたおおかげで、連合軍と日本とを問わず無数の生命が救われた、と死ぬ当日まで信じていた。
――ポール・ジョンソン「アメリカ人の歴史 Ⅲ」共同通信社 別宮貞徳訳 より
広島・長崎の原爆について、自分の考えを書いておこう。私は、トルーマンの考えを、部分的にだが支持する立場だ。
【北朝鮮への経済制裁】
と言いつつ、全く違う話から始める。現在、日本は北朝鮮こと朝鮮民主主義人民共和国に対する経済制裁を先導している。主な目的は二つだ。一つは、日本人拉致被害者を取り戻すこと。もう一つは、核兵器開発を諦めさせること。いずれも、一つの目的に集約できる。日本国民を北朝鮮の脅威から守ることだ。
経済制裁は効果をあげているらしく、百万単位の餓死者が出ているとの報道もある。ああいう国だから、真偽はわからない。ただ栄養失調が蔓延しているのは事実らしく、何度も徴兵の身長条件を緩めている(サーチナの142センチの軍人…北朝鮮の徴兵制の身長条件が4年連続で低下)。百万単位は大袈裟にしても、相応の餓死者は出ているだろう。
日本政府の政策が、北朝鮮人民を殺しているわけだ。この件に関し、日本政府は責任を負うべきだろうか?朝鮮人民に対し、謝罪すべきだろうか?
「冗談じゃない。文句は金政権に言え。まず日本人拉致被害者を返し核を放棄しろ。話はそれからだ」
多くの日本人は、こう考えるだろう。私も同じ意見だ。この件に関し、日本政府に非はない。あるとしたら、未だに日本人拉致被害者を取り戻せていない点にある。朝鮮人民の餓死に関しては、何の責任もない。朝鮮人民を食わせるのは、金政権の責任である。日本政府を責めるのは筋違いだ。日本政府は、日本国民を守ろうとしているだけだ。
日本政府には、日本国民を守る責任がある。そのためなら、北朝鮮の人民が飢え死にしてもいい。
北朝鮮の人民を飢え死にから守るのは、北朝鮮政府の責任である。日本政府に責任はない。
【原則】
これを更に一般化すると、こうなる。
原則 : 国家は、国民を守る責任がある。そのためなら、他国民を殺してもいい。
何やら殺伐とした理屈のようだが、現代の先進国の多くは、この理屈で動く。とはいえ、今の国際社会では、他国民をあまり粗末に扱うと反発を食らう。現在の北朝鮮がいい見本だ。日本人を拉致したがために、世界中から経済制裁を食らい、却って国民(人民)の生活は苦しくなった。
では、国家はどうすべきか。他国との関係を考えた上で、国民がより安全になる政策を採ればいい。ありがちなのが、友好国と手を結ぶ方法だ。「わが国は貴国の国民を守ります、かわりに貴国も我が国民を守ってください」。大半の西側先進国は、お互いにこんな了解で動く。自国民を守るためには、(友好国の)他国民も大事にしたほうがいい。
ただし、あくまでも、大事にするのは、友好国の国民である。友好的とは言えないまでも、敵に回したくない国の国民も、似たような扱いにするだろう。国際社会じゃ仲間が多い方が得だ。無闇にケンカを売る国は、嫌われて孤立する。だから、大抵の国が、大抵の国に対し、互いの国民を粗末には扱わない。
だが、ハッキリと敵になったのなら、話は別だ。その場合は、むきだしの自国民優先策となる。
敵国民はいくら殺してもいい、自国民を守るためなら。
これが、現在の日本と北朝鮮の関係だ。宣戦布告こそしていないが、事実上の戦争状態だろう。
【原則を原爆に適用する】
では、原爆投下時のアメリカ合衆国と大日本帝国の関係はどうか。こちらはハッキリと宣戦布告がなされた、文句なしの戦争状態だ。ここで私は、先の理屈を適用する。
日本人はいくら殺してもいい。アメリカ市民の犠牲を減らすためなら。
合衆国大統領は、合衆国市民を守る責任がある。そのためなら、日本国民を殺してもいい。
日本国民を原爆から守るのは、日本政府の責任である。合衆国政府に責任はない。
そんなわけで、私はハリー・S・トルーマンを責めない。彼は合衆国将兵の犠牲を減らそうとした、それだけだ。彼が責任を負っているのは、連合軍の将兵と市民に対してだ。大日本帝国の国民に対してでは、ない。
では、大日本帝国の国民を守るべき存在は、何か。まずは、大日本帝国政府だ。または、広島と長崎の防空を担う帝国陸海軍である。もっと突き詰めるなら、無謀な戦争を始めた者たちを責めるのが妥当だろう。
【教訓】
以上の事から、私は日本政府に次の2点を期待する。
- 防衛体制を整えよ。他国の軍に攻撃されるのはまっぴらだ。
- 無謀な戦争はするな。国民の命を無駄使いしないでくれ。
偉そうな言い方だけど、結論としては大筋じゃ今の日本政府の政策と同じだ。後は手段と程度の話で、そっちになると私のようなシロウトには、よくわからんです。
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