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2014年12月 3日 (水)

SFマガジン2015年1月号

本誌隔月刊化のお知らせ
  1959年12月に創刊し、以来月刊誌として刊行を続けてきました本誌<SFマガジン>は、2015年より隔月刊に移行します。
 発売日は、偶数月25日になります。
 12月25日(木)に2月号を刊行した後、2月25日(水)発売の4月号より誌面リニューアルを行い、これまで以上に充実した内容でお届けいたします。

 280頁の標準サイズ。特集は「円谷プロダクション×SFマガジン」として、小説3本(山本弘「多々良島ふたたび」,北野勇作「宇宙からの贈りものたち」,小林泰三「マウンテンピーナッツ」)に加えコラム四本を収録。

 小説は他に谷甲州「ギルガメッシュ要塞」,小田雅久仁「長上」前編、夢枕獏「小角の城」第30回、神林長平「絞首台の黙示録」第7回、円城塔「エピローグ」第8回…って、海外作品の紹介がない。

 山本弘「多々良島ふたたび」。ウルトラマンの人気エピソード、「怪獣無法地帯」の後日譚。あの事件で崩壊した測候所を再開する準備段階として、学術調査隊を派遣することになった。当時、測候所に務め、生き延びた松井朝雄は、ガイド役として志願し、気象観測船<涼雲丸>に乗り込んだ。その船には、密航者も乗っていた。毎日新報の江戸川由利子と名乗る若い女性だ。

 山本弘らしく、オリジナルへの愛が溢れる作品。子供心にピグモンとガラモンがソックリなのに「あれ?」と思ったんだが、そこにキチンと理屈をつけてるあたりが嬉しい。場面の描写も、ちゃんと時代に沿ってるあたり、こだわりを感じる。トランジスタラジオが最新とか、透明円筒とか。やっぱピグモンは人気あるんだなあ。

北野勇作「宇宙からの贈りものたち」。元ネタはウルトラQの「宇宙からの贈りもの」。いつもと同じ夢だ。多目的スペースの六角形の作業台で食事をしている。髪の短い女が言う。「ちゃんと食べとかないとダメよ」。がっしりとした男が、笑いながら背中を叩く。俺は咳きこんで「すこしは手加減してくださいよお、センパイ」と言う。

 あの「かめくん」の北野勇作が、どう料理するかと思ったら、やっぱりいつもの北野勇作、どこまで現実でどこからが幻覚なのか判別しがたい、曖昧模糊とした、でも妙に生活感が漂う世界だった。

 小林泰三「マウンテンピーナッツ」。元ネタはウルトラマンギンガ。すんません、見てないです。久野千草は焦っていた。やっと掴んだチャンス、オーディションの日だってのに、ついてない。バス停は目の前だってのに、過激な環境保護団体マウンテン・ピーナッツのデモが道を塞いでいる。

 どう見てもマウンテンピーナッツはシーシェパードのパロディ。戦闘員からして大笑い。過激な自然保護団体が、怪獣をどう見るかというと…というテーマで、無茶苦茶な話が展開してゆく。「変身して戦う女子高生」という萌えっぽい仕掛けを使いながら、ここまで色気のない話に仕立て上げるのはさすがw

 紀田順一郎「<怪獣博士>大伴昌司の真実」。ウルトラマン・シリーズなどで脚本を担当し、怪獣の設定などを作っていた大伴昌司の評伝。試写の後、彼が考えた設定で、現場のスタッフが「ああ、そうだったのか、おれたちは、そういう映画をとっていたんだ」と納得する所で笑ってしまった。大勢で作る映像作品って、そういうモンなのかも。

 神林長平「絞首台の黙示録」第7回。教誨師を訪ねた作家のぼくと、死刑囚のおれ。二人を迎えた年配の後上明生牧師は、問題の教誨師ではなかった。地祇に現れた息子の後上明正が、邨江清治の教誨師らしい。明正はおれを見て、一瞬凍りついた。

 昨日、死刑を執行されたはずの邨江清治。だが、そう名乗るタクミを見て凍りつく後上明正。いかにもキリスト教の聖職者っぽい理屈を並べてゆく明正が、よく書けている。お互いがお互いの正体に確信と疑念を抱きつつ、会話は次第に本論へと向かってゆくが。

 円城塔「エピローグ」第8回。今回は連続殺人事件を追う刑事クラビトの回。重要参考人に会いに行く事になったクラビト。気がつけばウラジミル・アトラクタ警察の取調室にいる。戦技研こと包括的戦術級技術研究会から特別に供与された、インタフェースという技術らしい。

 相変わらず何が事実で何が物語なのかサッパリわからないこの話も、いよいよ佳境らしく、懐かしい名前がチョロチョロと出てくる。「書くこと」に意識的なこの作者らしく、この作品も、そういう仕掛けが芯にあるのかないのか。

 谷甲州「ギルガメッシュ要塞」。再起動した新・航空宇宙軍史の一編。マリサ・ロドリゲスは、ガニメデの軍事基地への侵入のアシストを請け負う。目標は、ギルガメッシュ・クレーター周辺にある、半地下式基地のひとつ、タイタン防衛宇宙軍ガニメデ派遣部隊の基地。軍用のはずなのに、警備システムはあっけなく無力化できた。

 広い太陽系全体に、まばらに広がった人類の版図。外惑星騒乱は鎮圧されたとはいえ、航空宇宙軍の人員は限られている。ましてや陸上戦闘用の将兵はわすかだ。となれば、外惑星の各地に派遣される人員も少なく、いきおい警備も手薄になる。それをどう補うかというと…

 小田雅久仁「長上」前編。来月43歳になる吉井泰之は、浅い眠りから目覚めた。“叫び“だ。まだだ。まだ俺は戦える。寝巻きは着ていない。ウィンドブレーカーを香れば、すぐに出かけられる。足音を忍ばせ家を出ようとするが、同居している母親の富久子に気づかれたようだ。

 うああ、ネタバレ全開で書きたい。悪と暴力に満ちた引用で始まる冒頭に、どうにも息苦しく身にこびり付く生活臭がプンプン臭う主人公の登場は、なんか純文学っぽい。が、主人公の吉井泰之が過去を回想する場面になると、この作者らしい異様な世界が広がってゆく。どう展開するのか、次回が楽しみ。

 第2回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作『ニルヤの島』刊行記念 柴田勝家インタビュウ。なんちゅうペンネームじゃ、と思っていたんだが、本人の 写真を見て納得。チョンマゲがないのが不思議なぐらいだw しかも一人称がワシw 柳田國男や諸星大二郎が出てくるあたりで、やっぱり納得してしまう。半村良も好きなのかなあ。

 新刊レビュウじゃ、山田正紀の「クトゥルフ少女戦隊 第一部 セカイをわたしのスカートに」に期待。SFでデビューしながら伝奇物・ミステリ・冒 険物と様々なジャンルに手を広げ、それでも何を書いてもやっぱり山田正紀節になる彼が、魔法少女物+クトゥルフをどう料理するのか。彼の若き日の旅行記が 読める日は来るんだろうか。

 飯田一史「エンタメSF・ファンタジイの構造」。今回は川原礫のソードアート・オンラインの分析。アンケートではライトノベル好きが男子26%女子15%と一番人気。これは予想通りとしても、SFが男子18%女子8%って、意外とSFも人気があるじゃないか。本を読まない率が5割としても、100人いたら12人がSFを好んでる勘定になる。1クラス40人なら4~5人はSFファン。これが本当ならSFの未来は明るい。

 …と思ってたら、なんとSFマガジン隔月化。すると4月号はサイコロ本に←ならねーよ

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