レドモンド・オハンロン「コンゴ・ジャーニー 上・下」新潮社 土屋政雄訳 エピソード集
イギリス人のレドモンド・オハンロンは、思い立つ。「コンゴ人民共和国の奥地にあるテレ湖には、幻の生物モケレ・ムベンベがいる。是非この目で見たい」。そこで古い友人でアメリカ人の動物行動学者ラリー・シャファー博士を巻き込み、秘境コンゴへと旅立つ。
個々のエピソードは強烈で、アフリカ中央部の混沌とした状況がヒシヒシと伝わってくる。が、登場人物はみな胡散臭い奴ばかりだし、語り手のレドモンドはいささか危なっかしい。そもそも「モケレ・ムベンベを見に行く」なんて人だし。という事で、この記事で紹介するエピソードの真偽は保障しかねます。詳しくは「コンゴ・ジャーニー」をご覧ください。
【エピソード集】
●コンゴ人民共和国科学研究省大臣ジャン・ヌガツィーブ大臣閣下の、ありがたいお言葉
「わしもダーウィンの支持者だ。
あれの言うことは全部信じとるよ。
最初は疑いもあったが、いまは確信しとる。
ダーウィンの魚ダイエットを実践していたら、皮膚が確かに白くなってきた」
●森の人ピグミー
ピグミーは森の動植物をよく知っていて、利用法を教えてくれる。
だが、ある大きな花について聞いた時は、誰も知らなかった。
「あの植物は使い道がない。だから、名前もない」
// 意外と即物的というか、実用主義というか
●狩りの名手ピグミー
ピグミーは狩りの名手だ。
矢は鉛筆ほどの長さで、矢羽根は一枚だけ。
威力はなさそうだが、毒が塗ってあり、サルなら2分、人間も10分ほどで死んでしまう。
●中央アフリカの英雄ジャン=ベデル・ボカッサ(→Wikipedia)、だが人食いとの噂も…
女性生物学者のウィルマ・ジョージが、休暇に中央アフリカ共和国を訪れた。
幸いなことに、大統領ジャン=ベデル・ボカッサの夕食会に招かれる。
そこで出たポークがとても柔らかかったので、ウィルマはそのレシピを尋ねた。
ボガッサは、客全員を大型冷蔵庫の前に案内し、扉を開いてトレーを引き出す。
トレーの上に載っていたのは、大臣の一人だった。
●学者って奴は…
ウィルマは、そのエピソードをオックスフォード大学の講義で語った。
受講生はみな若い動物学者だ。
その反応は、冷静なものだった。
「どうせ大臣を殺すなら、蛋白質不足を補うためにも、食べるのは道理にかなっていますね」
// いや感染症や寄生虫の危険が…←違うだろ
●村長
「ドングーの世襲村長も霊力の強い男でさ、
夜になると村中の男という男、男の子という男の子にキスをして歩くのよ。
うん、毎晩な。みんなわかってんだ。
だから、朝起きて糞をしに行くだろ?
そんとき糞の中に精液が混じってると、『やられた、村長にやられた』って言うんだ」
●白人だって
村人「白人は人食いだったな。白人はみんなそうだ。誰でも知っている」
レドモンド「えっ?」
村人「缶詰から出てくるぞ。人の指が出てくる。ソーセージも出てくるが、指も出てくる」
●布教
「お言葉ですが、ここの村人はジーザスなんて信じませんよ。
ジーザスなんてフランス人の霊ですもん」
// 日本なら八百万の神に追加しちゃうんでしょうね。一人ぐらいは誤差だし。
●暗黒大陸
ベルギー領コンゴでは、白人官僚の死亡率が77%だった。
アフリカ西海岸にいたすべてのイギリス人商人と政府職員のうち、85%は現地で死んだか、
病人として送還されてから本国で死んだ。
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