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2013年6月の18件の記事

2013年6月30日 (日)

SFマガジン2013年8月号

佐々木敦「…フィクション=虚構については、ジャンルを問わず、おしなべてそうだと思いますが、現実を忘れるための虚構と、現実を考えるための虚構がある。…」
大橋可也「自分の作品も、現実から乖離したものではなく、観たあとに現実に戻ってくると、周りの見えかた、感じかたが少し変わってくるような作品にしたいんです」
  ――「グラン・ヴァカンス」上演記念特別対談 ダンスとSFの親近性 大橋可也×佐々木敦

 280頁の標準サイズ。今月の特集は「日本ファンタジイの現在」として、乾石智子/勝山海百合/中村弦/西崎憲の小説に加え、読書ガイド「日本ファンタジイ必読作家20選」。

 まずは乾石智子「春告鳥」。<星の老人>は地から<ダカン>を掘り出す。人は家系からダカンを受け継ぐことはできるが、自分が<星の老人>から貰えるのは一生に一度だけ。人はダカンと強い絆を結び、人により様々な魔法が使えるようになる。かつて故郷クリアルから出奔した魔法使いオウルムに、故郷から若い客人ダナイエンが訪ねてきた。クリアルに危機が迫っている、助けて欲しい、と。
 異世界を舞台とするハイ・ファンタジイだが、世界観がとても明確で、ルールがすんなりと頭に入ってくる。登場人物の人物像も思い浮かぶし、物語の流れもわかりやすく、「おはなし」として綺麗にまとまっていて、作家としての職人芸の巧みさが光る。今回の特集では、私はこれが一番好き。クライマックスのシーンも迫力あるし、映像化したら映えるだろうなあ。

 二番手は勝山海百合「チョコレートとあぶらあげ」。ヘルシンキからロヴァニエミへの出張を終え、僕はヘルシンキに向かうフィンランド鉄道の夜行列車に乗り込んだ。二年前の2008年、東京は大災害に襲われ、首都機能を福岡に移した。その頃、僕はヘルシンキ郊外の大学にいた。
 「なぜフィンランドであぶらあげ?」と不思議に思いながら読んでいくと、「そういうことか」と納得。北欧といってもフィンランドは微妙に印象が違って、よくいえば牧歌的、悪くいえば田舎。スウェーデンがイングランドだとすれば、フィンランドはアイルランド。ムーミンやカレワラやサンタクロースの土地で、何が出てきてもおかしくない雰囲気で、ファンタジイの舞台としては格好の国。このまんま長編にしても面白そう。

 三番手は中村弦「廃園の昼餐」。おれは気づいたときには全知だった。おれは女の腹の中、子宮にいた。おれは過去も未来も全て知っている。おれを孕んだ女が生まれたとき、父親や母親が死ぬとき、おれが死ぬときも知っている。母親は麻布に住んでいる。おれが最初に感じたのは退屈だった。
 「ファンタジイ」というより「幻想小説」と呼びたい一編。胎児の「おれ」が辿る、幻想的な風景の中の旅と、母親の百音やその家族の人生のひと時を交互に描く、幻想的で奇妙な物語。

 最後は西崎憲「フェアリー・キャッチ」前編。主人公は避暑地の民宿の子で、小学三年生の昭太郎。夏休みに入って突然に早起きになった昭太郎は、アチコチを探検して歩く。とある別荘の洋館に、今年も彼女が来ていた。齢は昭太郎と同じぐらい、大きなリボンを結んだきらきら光る髪。その日、昭太郎は不思議な旅人に出会い…
 幼い少年が、不思議な能力を持つ旅人と出会って…というお話。ちょっと懐かしい雰囲気もあり、和製ブラッドベリという感じだけど、お話の輪郭はブラッドベリよりクッキリハッキリしていて、親しみやすい。今回は前編のみで、ヒキがとっても巧い。「うおお、どうなるんだあ~!」という所で(次号へつづく)。んな殺生な。

 「日本ファンタジイ必読作家20選」は、最近頭角を現してきた作家を中心に20人を紹介。萩原規子/妹尾ゆふ子/光原百合/西崎憲/恒川光太郎/多崎礼/高橋由太/小野不由美/五代ゆう/縞田理理/西魚リツコ/廣嶋玲子/仁木英行/乾石智子/上橋菜穂子/村山早紀/畠中恵/菅野雪虫/勝山海百合/中村弦。児童文学出身の人と女性が多いのが、SFとの大きな違いかな。あと登竜門が多様なのも羨ましい。

 小説は巻末にもうひとつ、松永天馬「モデル」。神様は「光あれ」と言われた。すると闇と光が生まれ、光は発電所から街へと供給され、神様の言葉は電力会社の広告に使われた。人気モデルのまことは中学生の頃、竹下通りでスカウトされた。神様や資本主義のロールモデル。
 いきなり聖書の天地創造と現代日本の資本主義・広告万能社会をシャッフルする出だしは、なかなかに挑発的。一般人から見ると華やかで胡散臭い芸能界・広告業界をデフォルメして描きつつ、そこに現代を感じさせるガジェットを混ぜ込んでゆく。

 冒頭の引用は飛浩隆「グラン・ヴァカンス」のダンス化を記念した対談。あれをダンス化ってのが、もう想像がつかない。一体、どういう舞台になることやら。

 「ユハネスブルグの天使たち」刊行記念トークイベント採録「建築と廃墟のある風景に惹かれて」宮内悠介×大森望は、宮内氏のファンなら必読。デビュー時の大森望の千本ノックが実に厳しい。やっぱりDX9はミクだったか。しかも、なんとニコニコの住民で…。愚民ども、探し出せ!

 「SFセミナー2013」レポート。藤井大洋氏の自作アプリ、ブロガーの一人として欲しいような要らないような…やっぱりイヤだなw

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2013年6月28日 (金)

キャサリン・メリデール「イワンの戦争 赤軍兵士の記録1939-45」白水社 松島芳彦訳 2

開戦間もない頃から、市民は求めに応じて、兵隊を親しく受け入れる証として、励ましの手紙を書いたり、ちょっとした品物や絵を送ったりした。
(略)
サモイロフは、アニシコという若者が手紙をくれた女性に返事を書くのを手伝った。「あんたは筆がたつ。どう書けばいいか知っている」とアニシコはいった。(略)返事が来ると、アニシコは戦友たちに、声に出して回し読みさせた。だが、悪ふざけが裏目に出た時が、年貢の納め時だった。彼に来た手紙を戦友が読んだ。「息子よ。私に愛の言葉をお掛けだけれど、私は七十をとっくに越えているのですよ」

 キャサリン・メリデール「イワンの戦争 赤軍兵士の記録1939-45」白水社 松島芳彦訳 1 から続く。

【感想 続き】

 赤軍は得意の築陣防御を解き、攻撃態勢へと移行させた直後に、ヒトラーのバルバロッサ作戦が発動、ドイツ軍がソビエトへと雪崩れ込む。組織的にも大粛清の後であり、完全に虚をつかれた赤軍は壊走。ドイツ軍は大量の捕虜を人間扱いせず、有刺鉄線で囲っただけの原野に放置する。

 取り残された赤軍将兵の一部はバルチザンと称し、周辺の集落を略奪して食いつなぎ、また時にはフリッツ(ドイツ軍)の補給部隊を襲い、伸びきったドイツ軍の補給線を遮断する。脱走兵の処分を命ずるスターリンの命令227号は、そんなバルチザンの多くまで脱走兵扱いし、その影響は戦後の年金にまで及んだ。

 ここで、ついに赤軍はジューコフやコーネフなど新世代の指揮官が登場、今まで政治教育優先だった新兵訓練も簡潔ながら実践的なものになる。シベリアで辛酸を舐めた囚人やクラーク(富農)も徴兵され、懲罰部隊として最も危険な任務につく。スターリングラードの激戦は、ついに赤軍の勝利に結びつく。すかさず戦意高揚に利用するスターリン。そしてイワンたちは、西へと進軍を始める。

 ここでの赤軍の対応が、いかにも赤軍らしい。新兵器を出すのではなく、「戦車の生産施設を東で再建する際、現行モデルを大量に生産する方針が採られた」。「新型の開発はおろか改造さえ、生産の停滞を招き、乗員も新たに訓練しなければならない」。徹底した人海戦術&物量作戦。V2とかの新兵器に頼った独軍とは対照的。

 戦場の地獄について、今でも多くの将兵は口を閉ざす。それは当時も同じらしく。

アゲイエフは妻への手紙で、なぜ戦闘について詳しく書けないか説明を試みている。「…緊張状態では何も考えずに、たった一つの目的に向けて行動している。でも疲労のせいで緊張が惰性に代わると、何もかもどうでもよくなる時がある。だから、自分を揺さぶって我に帰らなければならないんだ」

 西部ロシアは無法状態となり、多くの子供が家族と家を失う。家族との絆を失ったのは兵士も同じで、里心を呼び起こすのか、多くの孤児が「連隊の息子」となった。13歳のワシーリーはドイツ軍に母を連行されて家を焼かれ、赤軍の野営地にたどり着く。赤軍は彼に軍服と食事と仕事を与える。「ある試算によれば、六歳から十六歳の二万五千人が、戦争のある時期に軍隊と行動していた」。

 西へと向かう兵士たちは、やがて資本主義世界へとたどり着く。それまで西側について何も知らなかった農民の彼らは、ポーランドやルーマニアの農場で驚く。イワン・ワシーリエヴィッチは語る。

「両方を比べるのは面白かった。俺も同じようなところ、つまり農場で育ったからだ」
「一言で言えば、豊か、ということだ」
「資本主義の農場の方が豊かだった」

 そんな豊かさに触れた、彼らの想いは、「缶詰やボトルをこぶしで全部ぶっ壊してやりてえ」。つまり、怒りだ。なぜか。

これだけ豊かなドイツ人がなぜ、東隣の国々を侵略したのか。こんなに満ち足りているのに、どうしてさらに多くを求めたのか。

 ある者は家族と引き裂かれ、ある者は故郷を荒野に変えられた。そんな復讐の念に加え、豊かな生活のドイツ人が貧しいロシアの農民を略奪・強姦・虐殺した事実が、彼らの怒りに火を注ぐ。相変わらず横領が横行する補給や、後方への将兵の郵便を優先するNKVDの命令もあり、赤軍は略奪集団と化す。

ケーニヒスベルグの市長によれば、ドイツ人住民の中で、食料に不自由せずその冬を過ごせたのは、ソ連軍人の子を身ごもった女性だけだった。

だが、プラウダなどの報道はもちろん、公式文書も「ソ連軍の残虐行為には触れなかった」。だが、意外な事に、強姦を免れる若い女性もいた。

四月になってようやく住民は、赤子を抱えた女性が実際に、レイプを免れているのに気づいた。兵士のポケットには、飢えたドイツの子供に与える菓子が一杯だった。感傷的になっていた兵士は、祖国に残した家族の様子が気になっていた。

 こういう荒みきった将兵が、後に満州に雪崩れ込むのである。関東軍に置いてけぼりを食らった現地の民間人がどうなったかは、あまり想像したくない。

 ロシア人と言えば酒だ。密造酒サマゴンに慣れた彼らは、高級ワインを見つけたが「これで六箱を開けたが、どれも炭酸飲料ばかりだった」。1945年にあるソ連中尉曰く「もし、わが軍がこんなに酒に溺れなければ、二年前にドイツ軍に勝っていただろう」。ドイツ降伏を目前に控えた5月5日、ベルリンに駐屯したある兵は…

たまたまメタノールの容器を見つけた。彼は(略)治安機関の別の二人と一緒に験し飲みをした。(略)料理係が現れたので、彼も巻き込んでさらに飲み続けた。夜になって別の七人が加わった。(略)彼らは生きて勝利の日を迎えられなかった。

 勝利の後の帰還は、花束と喝采で迎えられる。だが、「終戦から三年も経たない1948年、公の場で戦争を振り返ることは事実上禁止された」。栄光はスターリンが独占する。ジューコフすら、引き篭もり生活を余儀なくされる。

1947年にとどめの一撃が振り下ろされた。スターリンはソ連の都市から、路上の物乞いを排除する命令を出した。物乞いの多くは戦争で手や足を失った傷痍軍人だった。

 やがてスターリンの命も尽き、フルシチョフが軍の削減を目論む。退役軍人は怒り狂うが、後のブレジネフは大祖国戦争の威光で権威を飾ろうと考え、退役軍人を舞台へ引っ張り出す。ソ連崩壊を経て、今はプーチンが教会にろうそくを献じる。共産主義を叩き込まれたある退役軍人は…

嫌悪感をむき出しにして言った。「俺はあの政治家どもをポトスヴェーチニキー(ろうそく野郎)と呼んでいる」。

 かと思えば、「教会のほうが気持ちにしっくり馴染むという者もいる」。ロシアにも、戦死者を国家がいかに弔うかという、靖国問題みたいのは、あるんだなあ。

 日本人としては、「満州における恐怖のソ連軍は、ドイツ軍の蛮行のオツリだった」という、いささか複雑な結論に唖然とする。また、莫大なソ連の戦死者の数には、「北進していたらあるいは…」などとも考えてしまう。ドイツ軍ばかりでなく、補給将校の横領や飢えとシラミに悩まされ、NKVDの督戦隊に後ろから銃を突きつけられながら戦ったイワンたち。物語はあまりに大きすぎて、暫くは消化できそうにない。

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2013年6月27日 (木)

キャサリン・メリデール「イワンの戦争 赤軍兵士の記録1939-45」白水社 松島芳彦訳 1

ソ連はこの戦争で頑強に抵抗したが、二千七百万人を超える未曾有の犠牲を出した。その多くは市民で、強制移住や飢餓、病気や虐待の不幸な犠牲者だった。しかし赤軍の損失、つまり戦死者も、八百万人超という恐るべき規模に達した。

【どんな本?】

 ソ連では大祖国戦争と言われる第二次世界大戦。ダンケルクやノルマンディーなど欧米の記録は多く、また敗戦国であるドイツや日本も戦後は言論の自由が保障されたため、従軍した将兵や戦禍に巻き込まれた民間人が多くの手記を残しており、戦争の実態は調べやすい。しかし、共産国の様子は鉄のカーテンに閉ざされ、英雄ともてはやされた一部の将兵の活躍を除けば、ほとんど表に出てこなかった。

 本書の成立には、ソ連崩壊が重大な関係がある。それにより、多くの資料が公開され、また自由なインタビューが可能となった。ロンドン大学クイーン・メアリー・カレッジで現代史の教授を勤める著者が、前線で戦った将兵や、戦場となった西部ロシア・ウクライナに住んでいた民間人へインタビューを行い、また公開された公的資料を漁り、「普通のソ連人イワン」の視点で、第二次世界大戦を再現する。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原初は Ivan's War : The Red Army 1939-45, by Catherine MerriDare, 2005。日本語版は2012年5月25日発行。単行本ハードカバー縦一段組みで本文約436頁。9.5ポイント44字×20行×436頁=約383,680字、400字詰め原稿用紙で約960枚。長編小説なら約2冊分。

 文書は翻訳物の戦争物にしては比較的に読みやすい。著者は歴史学の人で軍事関係の人ではないので、軍事というより「現代史を掘り起こす」始点で書かれており、あまり専門用語も出てこない。反面、「連隊」や「師団」などが用語解説もなく出てくるので、素人には規模の見当がつけにくい。また、距離の単位がヤードなのも、不慣れな日本人には辛いかも。

【構成は?】

序章 戦争の真実
第1章 「革命行進曲」
第2章 全世界に広がる戦火
第3章 災厄の翼が羽ばたく
第4章 暗黒の戦争
第5章 「敷石一枚を争う市街戦」
第6章 国土の荒廃
第7章 兄弟愛に祝福あれ
第8章 歓喜と悲嘆、そして苦難
第9章 死体からの略奪
第10章 剣を収めて
第11章 そして記憶にすべてを刻み
 謝辞/訳者あとがき/写真一覧/主要年表/参考文献/出典/出典について/索引

 基本的に時系列に記述が進む。ただし、あくまでも前線の将兵や現地に住む民間人の目線で書かれており、戦争全体の推移はわからない。背景が知りたければ、ハリソン・E・ソールズベリの「燃える東部戦線」や山崎雅弘の「宿命のバルバロッサ作戦」などで補おう。いや「バルバロッサ作戦」は読んでないけど。

【感想は?】

 日本人にとっては、いろいろと複雑な気分になる本だ。

 1945年8月9日、ソビエト軍が満州に雪崩れ込む。無敵と自負した関東軍は相次ぐ南方への戦力抽出で形骸化しており、ソ連軍は軍事史上に残る快進撃を成し遂げた。残された民間人は過酷な運命を辿り、今も残留孤児として痛みは続く。捕虜となった将兵はシベリアで抑留され、多くの人が犠牲になった。この時の赤軍の体質がどのように形成されたか、本書を読めば否応なしに理解できる。

 まず、冒頭の引用の数字にブッ飛ぶ。「ロシアに年金問題は存在しない」と言われる原因の一端は、これかもしれない。我々が触れる情報だと、第二次世界大戦では欧米の活躍が多く描かれるが、「1939年から45年までに召集された赤軍兵士は三千万人を超えた」「人的にも物質的にも、ドイツの軍事的損害の四分の三は東部戦線で生じた」。

 本書は、開戦前のソ連の国情から始まる。悪名高い集団農場政策により「1939年までに農村の世帯数は二千六百万から千九百万に減少した。農村部から消えた男女のうち約一千万人が死亡したと推定される」。おまけに軍じゃ粛清の嵐で「戦前最後の三年間で、全軍管区の90パーセントの指揮官が降格された」。冬戦争(→Wikipedia)は、そういう状況で始まった。

 そして1941年6月22日、バルバロッサ作戦(→Wikipedia)の発動。電撃戦で経験を積んだ独軍は「砲撃と空襲の標的を正確に把握していた。まず赤軍の指令拠点を狙い、さらに鉄道と工場を攻撃した」。もともと赤軍兵の3/4は農民の倅、烏合の衆と化して壊滅。

撤退が敗走と化したのは、輸送体制が整っていなかったからだと前線士官のほぼ全員が指摘している。(略)必要量の五分の四を満たす輸送能力を持つ部隊は皆無であると指摘していた。

 「十月になると、戦前の人口の四十五パーセントに相当するほぼ九千万人が、敵の占領地域に取り残された」。赤軍は泥縄式に兵を補充するが、次から次へと消えてゆく。残された住民の一人、繊維工場の女性労働者の回想。

「工場が閉鎖されているのを見たとき、私の心臓は凍り付いてしまいました。多くの工場長が逃げ出していたのです」

 だが、ドイツ軍の蛮行が復習心を呼び起こす。ドイツの情報将校曰く「我が軍は捕虜を意味もなく生かしてはおかなかった」。赤軍の大佐が語る。「もしドイツ軍が捕虜を大切にしていたら、その話はすぐに伝わってきただろう。口にするだけでおぞましいが、彼らは捕虜を虐待し飢えさせ殺したことで、我々を助けたのだ」。

 行き場を失った将兵は森に潜みパルチザンとなり、ただでさえ脆弱なドイツ軍の輸送網をズタズタにする。その効果はM.v.クレヴェルトの「補給戦」に詳しい。セヴァストーポリ要塞で有名なクリミア陥落の模様は、日本の沖縄戦を髣髴とさせる悲劇が暴かれる。そしてスターリンの命令227号が出る。

この「封殺部隊」は、従来から背後の監視を任務としてきたNKVDの部隊「ザクラドオトリャドゥイ」を補佐して、遅れをとる兵士や逃げる兵士を容赦なく射殺する任務を帯びた。

 と同時に、前線では政治将校の介入なしに士官が作戦を決められるようになる。というか、それまでは政治将校がいろいろと邪魔してたわけ。おまけに横領が横行し、目端の利く士官はモスクワの上官に賄賂として軍事物資を送る。そして兵の食事は「一日にスプーン五杯のカーチャ」。女性の徴兵も始まり、前線では「狙撃の腕なら、女性でも戦場で男性に秀でることができた」。政治教育が中心だった新兵教育も、実践的なものになっていく。

恐怖を取り除くため「アイロンがけ」と呼ぶ訓練を施した。塹壕の中に寝かせて頭上をソ連の戦車が通り過ぎるまで我慢させた。赤軍に関するドイツの諜報報告によれば、「兵士はこの訓練を受けると、人が変わったように勇敢に戦うようになった」。

 そしてスターリングラード(現ヴォルゴグラード)の逆転が起きる。多大な犠牲を伴ったが、ソ連の体制はその犠牲を秘匿する。包囲下のレニングラード(現サンクトペテルブルグ)で名を馳せた女性詩人オリガ・ベルゴリツは1942年にモスクワのラジオに英雄として出演するが…

「…私はラジオで語る言葉を見いだせませんでした。こう言われたからです。“何を話してもかまいませんが、飢餓の思い出だけはいけません”」

 最悪の状況で、将兵の支えとなったのは、歌。

スヴェトラーナ・アレクセイエヴィッチは戦場体験のある女性たちと話し、同様の発見をした。「前線に赴く時、何が最も記憶に残ったかと尋ねたところ、みな同じ答えだった。彼女たちは出発に際し、好きな歌を歌っていたのだ!」

 ある軍曹は、歌に「左、右、伏せ、注意、撃て!」と兵が覚えるべき命令を組み込みんだ。暗記学習より効果があるので、他の部隊にも広がった。

…赤軍兵たちは、無人の野の向う側で一人のドイツ兵が奏でるアコーディオンの調べを聞いた。自分たちが野営地を出発して以来、歌ってきた旋律だった。数日後、薬きょうに入れた一枚のメモが赤軍前線の近くで見つかった。下手なロシア語で、歌詞を教えてくれと書いてあった。

 そしてクルクスの戦車戦を経て、ソ連軍は反転攻勢へと向かう。ここで赤軍将兵に起きた変化が、後の満州の悲劇へと繋がってゆく。長くなったので、それは次の記事で。

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2013年6月25日 (火)

早瀬耕「グリフォンズ・ガーデン」早川書房

「…知識なんて、そんなに簡単に蓄積できるものじゃないわ。雪崩みたいなものよ。ある日とつぜん、蓄積した知識が、音をあげるの。それまでは、なんのために降りつもっているのかも、どれぐらい積もったのかもわからない」

【どんな本?】

 一橋大学商学部経営学科のコンピュータのゼミの卒論の一部、という異色の成立過程を経て出版された長編SF小説。東京で修士課程を終え札幌のコンピュータ・サイエンス研究機関に招かれた「ぼく」と恋人の由美子、東京で大学生活を送る「ぼく」と佳奈。二組の恋人たちの会話を通し、人間の認識と世界の関係を問いかけてゆく。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 1992年4月30日発行。今は新刊じゃまず手に入らないんで、読むには古本を買うか図書館で借りるか。単行本ハードカバーで縦一段組み、本文約269頁。9ポイント46字×21行×269頁=約259,854字、400字詰め原稿用紙で約650枚。長編小説としては少しだけ長めかな?

 デビュー作(にして今のところ最後の作品)にしては、意外と文章はこなれている。ただ、中で交わされる会話は、認知科学っぽかったり哲学的だったりで、ソコが本書の味であると共に、苦手な人には辛いところかも。

【どんな話?】

 修士課程を終えたぼくは、札幌のコンピュータ・サイエンスの研究所に研究員として招かれた。通称、グリフォンズ・ガーデン。招きに応じたぼくは、恋人の由美子と共に札幌に向かう。札幌へ飛ぶ飛行機の中で寝込んだぼくは、夢の中で知らない女性・佳奈に出遭った。

 22歳になった「ぼく」が部屋にもどると、佳奈からの手紙が届いていた。リサイタルの招待状だ。彼女とは、毎日のように会っている。

 …そして、二組の恋人たちの物語が始まる。

【感想は?】

 どうも田中康夫の「なんとなく、クリスタル」を連想させるなあ、と思ったら、同じ大学だった。生活感がないというより、知的にも経済的にもあまり不自由を感じたことのない階層の生活感、なんだろうなあ。

 90年代初期を舞台にしていて、当事の商品や流行りモノが頻繁に出てくる。携帯型の音楽プレーヤーがカセットで、流れる曲は Tears For Fears の Everybody Wants To Rule The World(→Youtube)だったり Queen の Radio GA GA(→Youtube)だったり。

 同時に時代を感じさせるのが、コンピュータ関係のガジェット。さすがに今になって読むと、「ディスケット」「MT」とかは、ちと苦しいかも。ディスケットはハードディスクで、MTは磁気テープ。当時はオープンリールのテープを使ってたんだよなあ。あとTSS端末とか。TSSは Time Sharing System の略で、要は大型コンピュータの端末。

 そういった細かい部分は古びても、肝心の中央コンピュータ IDA-10 のアイデアは、さすがにまだ実現していない。現在のコンピュータの基幹となる素子そのものが、全く違う。このネタと「二組の恋人たち」ってあたりで、スレたSF者は「ははん、読めたぞ」と思うだろう。

 などの大ネタ以上に、この作品の魅力となっているのは、二組の恋人たちを中心に交わされる会話。なかなか気の利いた命題が、各章で次々と出てくる。普通の小説なら、「んな小難しいネタ話すカップルがいるかい!」と怒るかもしれないが、そこはSF小説ってことで。例えば…

「あわせ鏡の鏡像は無限か?っていう命題に、無限って答えるひとは、理学部系統で、有限ってこたえるひとは工学部系統なんだって。そのわけを知っている?」

「英語と日本語のクロスワードでは、どちらがむずかしいか知っている」

「どうして、神様は、かおりだけは情報としてのたしかな言葉をあたえてくれなかったのかしら」

 …などなど。なにせ、「ぼく」の勤め先は、第五世代コンピュータ開発機関の知能工学研究部門だ。ヒトに似た能力をコンピュータに実装しようとする際に問題になりそうな事柄が、フォレーム問題を初めとして次々とネタに上がってくる。カクテル・パーティー効果とヒトの聴覚システム、チューリング・テスト、かな入力を好む人とローマ字変換を好む人の違いとか。関係ないけど、昔のワープロ選手権とかじゃかな入力、それも親指シフトの人が速さ・正確さ共に上位を独占していたような気が。

 チューリング・テストに合格できるコンピュータ(またはプログラム)は、本当に「考えている」と言えるのか。意識があるんだろうか。そもそも、意識はどうやって生まれるのか。そのためには、何が必要なのか。終盤ではこの問題に正面から取り組み、やがて世界そのものを巻き込んだ壮大な解へと発展してゆく。

 が、やはり最大の魅力は、物語中に散りばめられた、ヒトの認知や科学の歴史に関する様々なトリビアだろう。スティヴン・ジェイ・グールドやアイザック・アシモフのエッセイが好きな人にお薦め。

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2013年6月24日 (月)

ココログの背景色を変えるJavaScript v02

O’Reilly の「JavaScript 第6版」を読んで作ったのが、右上の表。テキトーにクリックすると、地の色が変わる…はずなんだが、chrome じゃ動かなかった。Firefox と IE と Safari じゃ動いたんだが。以下にソースを示すが、jQuery を使えばもっと簡単に書けるんで、あまし参考にしないように。

2013.06.25追加:

 Google Chromeで動かない理由がわかった。chrome は、ローカルのCSSを読み込むが、アクセスは許可していない。だから描画には使えてもJavaScriptでスキャンはできない。ココログで公開した記事をchromeで読んだら、ちゃんと動きやがったw 以下、お世話になった頁。実は他にも幾つかコッソリ直してるが、動作に変わりはないはず←をい

<script type="text/javascript">
//<![CDATA[
// OK : Firefox 21.0, Internet Explorer 9.0.17, Safari 5.1.7
// no : Chrome 27.0.1453.116 m : chromeはローカルなCSSを読めてもcssRulesにアクセスできない
//            だからオンラインだと動くんだな、これがw
//        http://updownlog.tumblr.com/post/10308374906/chrome-cssrules
//        http://www.webdeveloper.com/forum/showthread.php?231153-cssRules-are-null-in-Chrome

var com_cocologNifty_chikuwablog2;
if( !com_cocologNifty_chikuwablog2 ) com_cocologNifty_chikuwablog2={};

com_cocologNifty_chikuwablog2.changeBGColor = (function() {
    var colors = [                    // 背景色の一覧
        "rgb( 230, 255, 255)",
        "rgb( 255, 255, 255)",
        "rgb( 230, 230, 255)",
        "rgb( 255, 230, 255)",
        "rgb( 230, 255, 230)",
        "rgb( 255, 255, 230)",
        "rgb( 230, 230, 230)",
        "rgb( 255, 230, 230)",
    ] ;
    var tbody = '<table cellspacing="1" bgcolor="#aaaa44"><tbody>\n_tbody_</tbody></table>\n';
    var tline = '<tr><td style="background-color: _sColor_; "' +
        ' align="center" onclick="_com_(this);" data-id="_sName_">_sName_</td>\n_line_</tr>\n';
    var tcolm = '<td style="background-color: _rgb_; " onclick="_com_(this);"' +
        ' width="12px" data-id="_sName_" >&nbsp;</td>\n';

    var BG = {};    // 連想配列、スタイルのクラス名 or ID : スタイル設定
    var tb = "";    // クリックする表のHTML

    function cKeys( a ) { r=[]; for(var i in a ) r.push(i); return r; }
    function cEach( a, f ) { for( var i=0; i<a.length; i++ ) f(a[i]); return a;}
//                                    スタイルシートから背景色設定を探し連想配列BGに設定
    function makeBG() {
        cEach( document.styleSheets, function( x ) {
            try {
                cEach( x.cssRules, function( y ) {
                    try {
                        if( y.selectorText.match(/\s+/) ) return;
                        if( y.selectorText.match(/MultiBox/) ) return;
                        if( y.style.backgroundColor.toString().match( /transparent|init/i ) ) return;
                        if( y.style.backgroundColor ) { BG[y.selectorText] = y ; }
                    } catch( e ) {}
                } );
            } catch( e ) {}
        } );
//                                    クリックする表のHTMLを作る
        tb = tbody.replace( /_tbody_/m, cKeys(BG).map( function(x) {
            return tline.replace( /_sColor_/, BG[x].style.backgroundColor ).
                replace( /_sName_/mg, x ).
                replace( /_line_/m, colors.map( function(y) {
                    return tcolm.replace( /_rgb_/m, y ).replace( /_sName_/m, x );
                } ).join( "" ) );
            } ).join( "" ) ).
            replace( /_com_/mg, "com_cocologNifty_chikuwablog2.changeBGColor.chg" );
        return tb;
    }
//                                    表を書き出す
    function doWriteUI( c ) {
        if( tb == "" ) { tb = makeBG(); }
        document.writeln( tb );
//alert( tb );
        return tb;
    }
//                                    表をクリックしたら背景色を変える
    function doChange( c ) {
        BG[c.getAttribute( "data-id" )].style.backgroundColor = c.style.backgroundColor;
        return false;
    }

//doWriteUI();
    return {
        writeUI: doWriteUI,
        chg: doChange,
    };
}() );
//alert( "a");
com_cocologNifty_chikuwablog2.changeBGColor.writeUI();
//]]>
</script>
 

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David Flanagan「JavaScript 第六版」オライリージャパン 村上列訳

 本書は、JavaScript 言語と、Web ブラウザが実装する JavaScript API を学習するためのものです。少なくとも何らかのプログラミング経験があり、JavaScript を学びたい読者と、すでに JavaScript を使っているけれども JavaScript への理解を深め、 JavaScript 言語と Web プラットフォームを本当に極めたいプログラマ向けに書かれています。

【どんな本?】

 Web 環境には欠かせないプログラミング言語となった JavaScript の、最も本格的な解説書。おなじみ O'Reilly の例に漏れず、この本も網羅的かつ本格的で、文法や言語仕様を原理から説明する理論的な構成であり、「手っ取り早く動くモノを作りたい」人には向かない。が、後半ではプロに必須の JQuery や XMLHttpRequest に章を割くなど、開発の現場で必須な情報の糸口も充分に紹介しており、職業的に JavaScript を使いたい人には必読の本だろう。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は JavaScript : The Definitive Guide SIXTH EDITION, by David Flanagan, 2012。日本語版は2012年8月15日初版第1刷発行。単行本ソフトカバー横一段組みで本文約788頁。8ポイント48字×38行×788頁=約1,43,7312字、400字詰め原稿用紙で約3594枚。長編小説7冊分の大ボリューム。

 O'Reilly の本にしては、日本語は比較的にこなれている部類だろう。問題は、内容のレベル。詳しくは後述するが、少なくともプログラミング初心者向きではない。

【構成は?】

  訳者まえがき/はじめに
 1章 JavaScriptの概要
第Ⅰ部 コアJavaScript
 2章 字句構造
 3章 型、値、変数
 4章 式と演算子
 5章 文
 6章 オブジェクト
 7章 配列
 8章 関数
 9章 クラスとモジュール
 10章 正規表現パターンマッチング
 11章 JavaScriptのサブセットと拡張
 12章 サーバーサイドJavaScript
第Ⅱ部 クライアントサイドJavaScript
 13章 Webブラウザに組み込まれたJavaScript
 14章 Windowオブジェクト
 15章 ドキュメントの制御
 16章 CSSの制御
 17章 イベント処理
 18章 HTTPの制御
 19章 jQueryライブラリ
 20章 クライアントサイドストレージ
 21章 メディアとグラフィックスの制御
 22章 HTML5 API
  索引

 第Ⅰ部はプログラミング言語としての構造や原理をじっくり解説する。第Ⅱ部は、大きく分けて2種類に分かれる。一つは実用的な内容で、ドキュメントやプラウザの制御・イベント処理・便利で普及しているライブラリなど、今すぐに必要なモノで、19章まで。もうひとつは、将来的にブラウザがサポートする予定だが、現在はまだ不安定な、未来的な機能の紹介。

【感想は?】

 最初にお断りしておく。私はプロとして JavaScript を使っているわけじゃない。プロとして使う場合、おそらく最も大きな問題は「ブラウザなどクライアントの環境により使える機能や動作が変わる」ことだろうが、その点について私は全く判断能力がない。また、最新のライブラリについてもほとんど知らないので、その辺についてはご期待に添えない。つまり、あまり信用のおけない評価者である事をご了解願いたい。

 まずは、この本の想定読者。以下の条件を全て満たす人が対象。

  • HTML と CSS を知っている。テキスト・エディタなどで文字の色を変えるタグを埋め込む程度の事はできる。
  • プログラミング経験がある。継承が使える程度にオブジェクト指向を知っていて、「変数のスコープ」や「無名の関数」が出てきてもビビらない。
  • コマンド・プロンプトや Terminal で HTTP リクエストを送受信できる程度には TCP/IP や HTTP を知っている。
  • 「本に書いてあるからといって実装されているとは限らない」と割り切れる。

 「手軽に使える JavaScript でプログラミングを覚えたい」とか、「動くモノを手っ取り早く作りたい」と考える人には、向かない。著者は、恐らくこんな使い方を想定している。

  • ある程度のプログラミング経験があり、かつプログラミング言語の構造を知っている人が、JavaScript の言語構造を学ぶために熟読する。
  • 仕事で JavaScript を使う人が、聖書代わりに机に置き、折に触れて参照する。
  • 見栄を張りたい人が、これ見よがしに本棚に並べて見せびらかす。

 目次では、いきなり「字句構造」や「型、値、変数」なんてのがダラダラと続く。これを見て「ああ、そういう本なのね」とピンとくる人向けだ。全部を一気に熟読できるほどヒマな人は滅多にないだろうから、基本的な読み方はこんな感じだろう。

  1. まず、全体を軽く流し読みする。c や java の経験がある人は、字句構造などはパラパラとめくる程度で充分だろう。意味が分からない部分があったら、「後で読む」印として付箋をつけておく。「どうやっているか」より、「何ができるか」を重点的に読む。長いサンプルコードは飛ばす。
  2. 人によっては試したくなってウズウズするかもしれない。が、この時点でいきなりコードを書き始めると、大抵は時間の浪費に終わる。実際に浪費した私が言うんだから間違いない←をい
  3. 必要になったら、関係ありそうな部分をじっくり読み返す。大抵はアチコチをめくり返しながら読み返す羽目になる。

 いやホント、どれだけ時間を浪費したことやら。私が数時間かけて書いたコード、jQuery だと1行で済むんだもん。でも、書いてる時は楽しかったから、まあ、いっか。

 所々にある軽いコラムが、意外と使えるのも、この本のいい所。JavaScript はクロージャを使いこなすとカッコいいんだが、アセンブラでスタックを弄ってたような人だと、かえってクロージャはわかりにくい。その辺をp195で解説してくれてる。また、p414のコラム「<script>要素中のテキスト」では、かつてのBASIC小僧なら「DATA/READが出来るじゃん!」と感激するだろう。

 分量が多いんで、一気に読むのはさすがにしんどい。全般としては面白いし役に立つ本で、JavaScript の日本語資料としては最高峰だろう。コード中の注釈も日本語に訳してある心遣いも嬉しい。その上で、敢えて幾つかイチャモンをつけてみる。

  • サンプル・コードが豊富なのはいいが、全てのフォントが同じなのは辛い。予約語やライブラリ提供のメソッドなど「ユーザが勝手に綴りを変えられないモノ」と、変数名などユーザが定義したシンボルはフォントを変えてほしい。
  • O'Reilly 本にありがちなのだが、例えばクラス定義の方法が複数出てくる。ちゃんと読めば、説明の手順として必要なのはわかるが、「コノ方法がオススメ」みたく「著者が好む書き方」をハッキリと示してもいいんじゃないか。

 読み終えて実際にコードを書こうとすると、「JavaScript リファレンス第6版」が欲しくなるし、見栄えのいいサイトを作るには「CSS 完全ガイド第2版」は必須。DOM(Document Object Model)も理解せにゃならんし、jQuery も使いこなしたい…などと考えると、本棚がドンドン埋まっていく。今のプログラマは大変だなあ。

 この本では動作検証用の環境として Firefox を勧めている。私も Firefox を主に使っているが、chrome も試してみる価値あり。しつこいバグに悩んだら、開発環境を変えるのも一つの方法。最後に「この本を読んで何ができるか」を示しておこう。ここ数日頑張って、なんとか出来たのが次の記事

【関連記事】

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2013年6月23日 (日)

ココログの右サイドバーを隠すJavaScript試作版

>>

 相変わらず JavaScript で遊んでる。今回のは、ココログの右サイドバーを隠したり表示したりする JavaScript。右上の赤い「>>」または「<<」をクリックすると、サイドバーが出たり隠れたりする…はず。ローカル環境の Firefox と Safari だと動いたんだけど、実際にココログで動かすと、どうなることやら。つか、相変わらずデザイン・センスは最低だな、をれ。

以下、ソース。「表示/隠す」のHTMLは、こんな感じ。

<span onclick="com_cocologNifty_chikuwablog.toggleSideBar.toggle(); " style="color: red;"><a name="toggleSideBar">&gt;&gt;</a></span>

JavaScript は以下。

<script type="text/javascript">
//<![CDATA[
var com_cocologNifty_chikuwablog;
if( !com_cocologNifty_chikuwablog ) com_cocologNifty_chikuwablog={};

com_cocologNifty_chikuwablog.toggleSideBar = (function() {
    var bWidth = "200px";
    var cRight, cCenter;
    var isShow = 1;                    //hide:0; show:1

    var minWidth = 600;                //const
    var nRight = "#right";            //const
    var nCenter = "#center";        //const
    var nName = "toggleSideBar";    //const

    function cEach( a, f ) { for( var i=0; i<a.length; i++ ) f(a[i]); }

    function doAlert() {
        alert( "iWidth:"+innerWidth+" iHeight:"+innerHeight+
         " sWidth:"+window.screen.width+" sHeight:"+window.screen.height );
    }

    function doToggle() {
        isShow = (isShow+1)%2 ;
        cRight.style.display        = ["none", "inline" ][isShow] ;
        cCenter.style.marginRight    = ["0px" , bWidth   ][isShow] ;
        cEach( document.getElementsByName( nName ), function( x ) {
            x.innerHTML = ["&lt;&lt;", "&gt;&gt;"][isShow] ;
        } );
    }

    function doInit() {
        cEach( document.styleSheets, function( x ) {
            try {
            cEach( x.cssRules, function( y ) {
                if( y.selectorText == ( nRight ) && y.style.width ) {
                    cRight = y; bWidth = y.style.width;
                }
                else if( y.selectorText == ( nCenter ) && y.style.marginRight ) {
                    cCenter = y;
                }
            } )
            } catch( e ) {}
        } );
        if( window.screen.width < minWidth || innerWidth < minWidth ) { doToggle(); }
//alert( "b:"+bWidth);
    }
   
    return {
        alt: doAlert,
        init: doInit,
        toggle: doToggle,
    };
}() );
com_cocologNifty_chikuwablog.toggleSideBar.init();
//]]>
</script>

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2013年6月22日 (土)

JavaScriptの設計者はLISP信者に違いない

 O'Reillyの「JavaScript 第六版」を読み始め、JavaScriptでオモチャを作って遊んでる。今はブログの背景色を自由に変えられるシロモノを作ろうと思った。きっと途中で挫折するけど。とりあえず今はスタイルシート中の背景色定義を拾い出す部品を作った。出来上がりは、こんな感じ。

body #container #banner .content #right

 プログラムは、大きく分けて2つの部分から成る。

  1. スタイルシートを検索し、背景色を設定しているクラスを抽出し、連想配列 BG に クラス名またはクラスID:背景色 のペアで登録する。
  2. 連想配列 BG から、HTML の <table>..</table> を作り出す。

 最初は、ベタな感じで作ってた。→全ソースは末尾  v01

//                            スタイルシートからクラス名(又はクラスID):背景色の連想配列BGを作る
var BG = [];
..いろいろ
//                                BGから<table>..</table>を作る
var m0 = "";
..いろいろ
document.writeln(tbody.replace( /_tcolm_/m, m0 ) ); //HTMLを書き出す

 変数 BG や m0 は、この処理だけの一時的な変数だ。ベタに書くと、いずれの変数もグローバル変数になって、気持ち悪い。JavaScript は、変数や関数のスコープは関数ごとに分かれる。なら無名関数を作り、すぐに実行よう。一時変数は関数が終われば消えるんで、外には影響しない。→全ソースは末尾 v02

(function(x) {
..いろいろ
//                            スタイルシートからクラス名:背景色の連想配列BGを作る
    var BG = [];
    for( var i0=0; i0<r0.length; i0++ ) { ..いろいろ }
//                                BGから<table>..</table>を作る
    var m0 = "";
    for( var k0 in BG ) { ..いろいろ }
    document.writeln(tbody.replace( /_tcolm_/m, m0 ) );
}() );

 連想配列 BG を作る部分と、HTML を作る部分は独立している。共有する必要蛾あるのは、BGだけだ。が、上の形だと、HTML を作る際の一時変数 m0 などが、BG を作る部分にも見えてしまう。同様に BG を作る部分の一時変数も、HTML を作る部分で見えてしまう。なんか面白くないんで、それぞれ無名関数として、名前空間を分けよう。→詳細は末尾 v03

(function(x) {
..いろいろ
//                            スタイルシートからクラス名:背景色の連想配列BGを作る
    var BG = ( function() { ..いろいろ }() );
//                                BGから<table>..</table>を作る
    var hText = ( function( BG ) { ..いろいろ }( BG ) );
    document.writeln(tbody.replace( /_tcolm_/m, hText ) );
}() );

 一時変数 BG も、関数の引数にしちゃえば不用だよね。よし、そうしよう。→詳細は末尾 v04

(function(x) {
..いろいろ
//                                BGから<table>..</table>を作る
    var hText = ( function( BG ) {
        var m0 = "";
        for( var k0 in BG ) {  ..いろいろ }
        return m0;
    }( function() {
//                                スタイルシートからクラス名:背景色の連想配列BGを作る
           ..いろいろ
        }() ) )
    );
    document.writeln(tbody.replace( /_tcolm_/m, hText ) );
}() );

 なんか関数型っぽくなってきたな。いっそのこと、for() {} の制御変数も無くせないかなあ。そういえば map とか join とかがあったなあ。でも、連想配列からキーだけ取り出す keys は私の環境じゃ使えないっぽいし、map は副作用が目的だとうまくいかないみたいだ。じゃ、自分で作ろう。

 とか考えてたら、関数型っぽいプログラムになってしまった。

(function(x) {
    var tbody = '<table cellspacing="1" style="background-color: rgb(176, 176, 68);"><tbody><tr>\n_tcolm_</tr></tbody></table>\n';
    var tcolm = '<td style="background-color: _rgb_; ">_sName_</td>\n';

    function cKeys( a ) { r=[]; for(var i in a ) r.push(i); return r; }  //連想配列aからキーの配列を返す
    function cForAll( a, f ) { for( var i=0; i<a.length; i++ ) f(a[i]); }  //配列aの全要素に対し f(x)
//                                BGから<table>..</table>を作る
    var hText = tbody.replace( /_tcolm_/m,
        ( function( BG ) {
            return cKeys(BG).map( function(x) {
                return tcolm.replace( /_rgb_/m, BG[x] ).replace( /_sName_/m, x);}).join("");
        }( function() {
//                                スタイルシートからクラス名:背景色の連想配列BGを作る
            var BG = [];
            cForAll( document.styleSheets, function( x ) {
                cForAll( x.cssRules, function( y ) {
                    if( y.style.backgroundColor ) {
                        BG[y.selectorText] = y.style.backgroundColor;
                    }
                } )
            } );
            return BG;
        }() ) )
    );
    document.writeln(  hText );
}() );

 なんか、自然と関数型プログラムを書くよう誘導されてるなあ。こんな感じ?

  • 一つのプログラムは、幾つかの部品からできる。それぞれの部品は、なるべく他の部品に影響させたくない。部品の中だけで使う一時変数は、他の部品から見えないようにしたい。
  • JavaScript だと、変数のスコープは関数で区切る。なら、それぞれの部品は関数にすればいい。
  • 無名の小さな関数がアチコチにできて、関数型っぽいプログラムになる。

 その結果、プログラマの考え方も関数型になってくる。これは、JavaScript の2つの仕様が原因だ。

  1. 変数や関数のスコープは関数で区切る
  2. 無名関数が使える。

 きっと、JavaScript の言語を設計した人が、LISP を布教するために画策した陰謀に違いない。そのうち、「無名関数は function じゃなく lambda を使おう」とか言い出すんだ。そして世界は総てS式になるのだ。わはは。

 …てな馬鹿話はおいといて、以下、参考資料として、各段階のソース。

v01:ベタな書き方

var tbody = '<table cellspacing="1" style="background-color: rgb(176, 176, 68);"><tbody><tr>\n_tcolm_</tr></tbody></table>\n';
var tcolm = '<td style="background-color: _rgb_; ">_sName_</td>\n';
//                            スタイルシートからクラス名:背景色の連想配列BGを作る
var BG = [];
var r0 = document.styleSheets ;
for( var i0=0; i0<r0.length; i0++ ) {
for( var i1=0; i1<r0[i0].cssRules.length; i1++ ) {
        var r1 = r0[i0].cssRules[i1];
        if( r1.style.backgroundColor ) {
            BG[r1.selectorText] = r1.style.backgroundColor;
        }
    }
}
//                                BGから<table>..</table>を作る
var m0 = "";
for( var k0 in BG ) {
    m0 += tcolm.replace( /_rgb_/m, BG[k0] ).replace( /_sName_/m, k0 );
}
document.writeln(tbody.replace( /_tcolm_/m, m0 ) );

v02:無名関数にする

(function(x) {
    var tbody = '<table cellspacing="1" style="background-color: rgb(176, 176, 68);"><tbody><tr>\n_tcolm_</tr></tbody></table>\n';
    var tcolm = '<td style="background-color: _rgb_; ">_sName_</td>\n';
//                            スタイルシートからクラス名:背景色の連想配列BGを作る
    var BG = [];
    var r0 = document.styleSheets ;
    for( var i0=0; i0<r0.length; i0++ ) {
        for( var i1=0; i1<r0[i0].cssRules.length; i1++ ) {
            var r1 = r0[i0].cssRules[i1];
            if( r1.style.backgroundColor ) {
                BG[r1.selectorText] = r1.style.backgroundColor;
            }
        }
    }
//                                BGから<table>..</table>を作る
    var m0 = "";
    for( var k0 in BG ) {
        m0 += tcolm.replace( /_rgb_/m, BG[k0] ).replace( /_sName_/m, k0 );
    }
    document.writeln(tbody.replace( /_tcolm_/m, m0 ) );
}() );

v03:BG作成と表作成を無名関数にする

(function(x) {
    var tbody = '<table cellspacing="1" style="background-color: rgb(176, 176, 68);"><tbody><tr>\n_tcolm_</tr></tbody></table>\n';
    var tcolm = '<td style="background-color: _rgb_; ">_sName_</td>\n';
//                            スタイルシートからクラス名:背景色の連想配列BGを作る
    var BG = ( function() {
        var BG = [];
        var r0 = document.styleSheets ;
        for( var i0=0; i0<r0.length; i0++ ) {
            for( var i1=0; i1<r0[i0].cssRules.length; i1++ ) {
                var r1 = r0[i0].cssRules[i1];
                if( r1.style.backgroundColor ) {
                    BG[r1.selectorText] = r1.style.backgroundColor;
                }
            }
        }
        return BG;
    }() );
//                                BGから<table>..</table>を作る
    var hText = ( function( BG ) {
        var m0 = "";
        for( var k0 in BG ) {
            m0 += tcolm.replace( /_rgb_/m, BG[k0] ).replace( /_sName_/m, k0 );
        }
        return m0;
    }( BG ) );
    document.writeln(tbody.replace( /_tcolm_/m, hText ) );
}() );

v04:一時変数 BG を無くす

(function(x) {
    var tbody = '<table cellspacing="1" style="background-color: rgb(176, 176, 68);"><tbody><tr>\n_tcolm_</tr></tbody></table>\n';
    var tcolm = '<td style="background-color: _rgb_; ">_sName_</td>\n';
//                                BGから<table>..</table>を作る
    var hText = ( function( BG ) {
        var m0 = "";
        for( var k0 in BG ) {
            m0 += tcolm.replace( /_rgb_/m, BG[k0] ).replace( /_sName_/m, k0 );
        }
        return m0;
    }( function() {
//                            スタイルシートからクラス名:背景色の連想配列BGを作る
        var BG = [];
        var r0 = document.styleSheets ;
        for( var i0=0; i0<r0.length; i0++ ) {
            for( var i1=0; i1<r0[i0].cssRules.length; i1++ ) {
                var r1 = r0[i0].cssRules[i1];
                if( r1.style.backgroundColor ) {
                    BG[r1.selectorText] = r1.style.backgroundColor;
                }
            }
        }
        return BG;
    }() ) );
    document.writeln(tbody.replace( /_tcolm_/m, hText ) );
}() );

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2013年6月20日 (木)

ココログの背景色を変えるJavaScript動作検証

 この記事は自作のJavaScriptの動作検証用です。もちっとマシなモノが出来たら消すかもしれません。
もし巧く動けなら、下の表をテキトーにクリックすると、この頁の背景色が変わります…たぶん。
Windows7 上の Firefox21.0 でハードディスク上の HTML ファイルを開いて動作検証した時は巧く動いたんだけど、オンラインで動作するといいなあ。

               
               
               

 しかし、我ながら、プログラミングもデザインもユーザ・インターフェースも、悲しいくらいにセンス悪いなあ。

下は、HTML と JavaScript のソース。<td>タグを編集すると、動作が変わります。

  • background-color は、背景色を指定します。
  • data-id="left" は左袖を、data-id="content" は中央の記事本体を、data-id="right" は右袖の色を変えます。
<script type="text/javascript">
//<![CDATA[
function ckwbBGColor( c ) {
    var a = c.getAttribute( "data-id" );
    var t = document.getElementsByClassName( a );
    if( t.length == 0 ) { t = [ document.getElementById( a ) ] ; }
    for( var i=0; i<t.length ; i++ ) {
        t[i].style.backgroundColor = c.style.backgroundColor;
    }
    return false;
}
//]]>
</script>
<!-- // 中央:name==content 右:id==right 左:id==left -->
<table cellspacing="1" bgcolor="#aaaa44"><tbody>
<tr>
<td bgcolor="white" align="center">左</td>
<td style="background-color: rgb(220, 255, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="left"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 255, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="left"> </td>
<td style="background-color: rgb(220, 220, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="left"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 220, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="left"> </td>
<td style="background-color: rgb(220, 255, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="left"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 255, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="left"> </td>
<td style="background-color: rgb(220, 220, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="left"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 220, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="left"> </td>
</tr>
<tr>
<td bgcolor="white" align="center">中</td>
<td style="background-color: rgb(220, 255, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="content"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 255, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="content"> </td>
<td style="background-color: rgb(220, 220, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="content"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 220, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="content"> </td>
<td style="background-color: rgb(220, 255, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="content"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 255, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="content"> </td>
<td style="background-color: rgb(220, 220, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="content"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 220, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="content"> </td>
</tr>
<tr>
<td bgcolor="white" align="center">右</td>
<td style="background-color: rgb(220, 255, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="right"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 255, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="right"> </td>
<td style="background-color: rgb(220, 220, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="right"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 220, 255); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="right"> </td>
<td style="background-color: rgb(220, 255, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="right"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 255, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="right"> </td>
<td style="background-color: rgb(220, 220, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="right"> </td>
<td style="background-color: rgb(255, 220, 220); " onclick="ckwbBGColor(this);" data-id="right"> </td>
</tr>
</tbody></table>

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2013年6月19日 (水)

プログラミング初心者にはJavaScriptがお薦め?

 今、O'Reilly の「JavaScript 第6版」を読んでる。単行本ソフトカバー横組みで800頁超えという重量級のシロモノだ。JavaScript って言語を知る前は、「なんか軟弱っぽい」と思ってたが、実際に解説書を読んでみるととんでもない、文法こそJava っぽいけど、中身はメソッドの追加とか高階関数とか、まるきし LISP じゃないか…って、意味わかんないで言ってるけど、

 ってのはおいて。プログラマがアツくなるネタの一つに、「初心者がプログラミングを学ぶなら、何がいい?」ってのがある。昔は「とりあえずcでしょ」って時代が暫く続いたけど、今は Java や C# や PHP、マニアは Haskell とか、色々ありすぎてますますワケわからなくなってる。

 異色な解としては、Lotus 1-2-3(→Wikipedia)の開発者ミッチ・ケイバー(→Wikipedia)だったかな?「1-2-3 を使うってことは、プログラミングするってことだ」みたいなことを言ってた気がする。Excel のセルに計算式を入れてる人は、既にプログラミングの初歩を身につけているんだよ、みたいな意味。

 まあ、それは極端としても、初心者が「さあ、プログラミングを始めよう」と思った際、困ることが色々ある。私は perl が大好きなんだけど、Windows 環境に Perl の処理系を入れるのはそれなりの手間だし、仮に「使える」プログラムが作れたところで、他の人に使ってもらうには、相手のマシンにも Perl 処理系が必要だ。

 …とか考えてくと、初心者に優しいプログラミング言語には、幾つかの条件があるのがわかる。これズバリ結論を言っちゃうと、「現実世界で相談に乗ってくれる師匠を探し、師匠が薦めるモノにしよう」なんだけど。いやホント、初心者にとっちゃプログラミングってワケわからん事だらけで、実際にモニタ覗き込んでアドバイスしてくれる人の有無が大きな違いになるのよ。

 とはいえ、やっぱし人には見栄ってモンがあって。「こんな低レベルの質問したら恥ずかしい」とゆーアレはあるわけで、「ソレナリに腕を磨いてからにしたい」な気持ちも、少しはわかる。それとは別に、質問するにもマナーがあって、これを身につけないと、厳しい師匠からはボコボコにされたりする。とりあえずハードウェア環境・OS・言語処理系などはキッチリ伝えないとね。

 話が逸れた。その辺を考えて、「初心者にお薦めできるプログラミング言語」の条件はどんなのか、というと。

  1. 気軽に始められる。
  2. 出来たプログラムは、なるたけ多くの環境で動く。
  3. 流行っている。
  4. ソレナリに見栄えのいいモノが作れる。
  5. 簡単なコトが簡単にできる。

 その上で、「できればあった方がいい」条件ってのもあって。

  1. オブジェクト指向や関数の関数など、高度な機能も持っている。
  2. 経験を履歴書に書ける。

 とまあ、こんな所か。それぞれ見ていこう。

1. 気軽に始められる。

 例えば C# だと、まず Microsoft Visual Stdio を手に入れてインストールしなきゃいけないし、これでモノを作っても Macintosh じゃ使えない。perl とかのスクリプト系も処理系が必要だし、こっちは実行時にも処理系が要る。PHP だと HTTP サーバ立てなきゃいけない(間違ってるかもしんない)。JavaScript だと、対応する Web ブラウザさえあればいい。大抵のブラウザは JavaScript に対応してるから、とりあえずは動かせる。出来れば Firefox がベストだけどね。デバッガもあるから。lynx(→Wikipedia)使ってる人なんて滅多にいないんだよなあ。悲しい。こういう、「最初の一歩」の気軽さは、初心者にとっちゃ大事じゃないかなあ。

2. 出来たプログラムは、なるたけ多くの環境で動く。

 出来たら、人に見てもらいたいよね。でも、「まず .exe をインストールして…」とかって、面倒でしょ。JavaScript なら、ブログとかで頁を公開すれば、それでOK。普通に頁を見てもらえば、それで動くんだから、気軽だよね。

3. 流行っている。

 カッコいいとか、そういう話じゃなくてね。流行ってるモノは、学ぶ環境が整ってるんだ。参考書が多いから、自分にあったレベルのモノを選べる。インターネット上にも、沢山の資料がある。処理系の組み込み関数や、ブラウザとのAPIとかも、検索すれば出てくるし、「お手本」も多い。「お手本」のソースがスグに手に入るのも JavaScript の嬉しいところ。現実世界でも、流行ってるモノは知ってる人が多いから、師匠を探すのが楽。あと、マニアが忘れがちなのが、日本語環境。流行ってるモノは日本語が簡単に扱えるし、日本語の参考資料も充実してる。

4. ソレナリに見栄えのいいモノが作れる。

 中でどんなに難しい事をやってても、コマンド・プロンプトに1行のメッセージが出るだけじゃ、やる気が削がれるし、人に見せても「意味わかんねえ」で終わっちゃう。やっぱしマウスに同期してグリグリ動くとか、デッカイ音が出るとか、そういうのがあると、やる気が違ってくるでしょ。この辺は、やってみるとわかるよ。イベントに応じて動くモノとか、リアルタイムに動くモノって、やっぱし作ってて、すんごく楽しいから。

5. 簡単なコトが簡単にできる。

 "Hello, World" を出すのに、どれだけ手間が要るか、って話。この点、JavaScript は一見、コーディング量が多いように見える。例えば Firefox を実行・検証環境として使うなら、HTML から書く必要があるし。でもね。1. も関わってくるんだけど、「プログラミングを始めよう」と思ってから、最初のメッセージを出せるまでの時間を考えると、JavaScript はかなりいいセンいくと思う。エディタとブラウザがあれば充分なんだし。まあ、 HTML を知っていれば、って前提条件があるんだけど。

a. オブジェクト指向や関数の関数など、高度な機能も持っている。

 解説書を読んでる途中なんで、あんまし偉そうな事は言えないんだけど。JavaScript は正規表現も使えるし、クロージャもあるし、継承機能もある。なんか泥縄っぽいというか、かなりマニアックな雰囲気ではある。高階関数を使いこなしたら、尊敬されるかもしんない…職場によっては嫌われるけど。

b. 履歴書に書ける。

 まあ、そういう色気って、大事だよね。

 ってな感じに、上の条件だと、私が知る限り、JavaScript が最も優れてるんですね。まあ、条件自体が恣意的な気もするし、私が知ってるプログラミング言語なんてほんの一握りだから、異論も多いはず。

 …などと偉そうに書いてる私は、まだ JavaScript のプログラムは2つしか作ってないんだけど←をい。以下、私が作った BMI判定機(痩せすぎとか太りすぎとか)のソース・プログラム。これをテキスト・エディタ(メモ帳)とかにコピーして、bmi.html とかのファイル名をつけて保存し、bmi.html を Firefox とかのブラウザに Drag&Drop すれば使えます。

<html>
<head><title>サンプル</title></head>
<meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=utf-8" />
<body>
<script type="text/javascript">
//<![CDATA[
function xBMI(f) {
    var t = parseInt( f.nTall.value ); t = t ? t/100.0 : 1.70 ;
    var w = parseInt( f.nWeit.value ); w = w ? w+0.0   : 60.0 ;
    var b = w / ( t * t ) ;
    var a = ( b < 18.5 ) ? "痩せすぎ" :
        ( b < 25 ) ? "普通" :
        ( b < 30 ) ? "少し肥満" :
        ( b < 35 ) ? "肥満" :
        ( b < 40 ) ? "かなり肥満" : "酷い肥満" ;
    document.getElementById("aBMI").innerHTML =
        "BMI値:<strong>" + Math.round( b ) + "</strong>" +
        " 判定:<strong>" + a + "</strong>" ;
    return false;
}
//]]>
</script>
<p>身長と体重に半角の数字を入れて計算ボタンを押すとBMI値が出る</p>
<form id="idCrn" name="fnCrn">
<p>身長:<input type="text" id="iTall" name="nTall" onkeyup="xBMI(document.fnCrn)"
  size="20" value="170" style="text-align:right;" />(cm) 
体重:<input type="text" id="iWeit" name="nWeit" onkeyup="xBMI(document.fnCrn)"
  size="20" value="60" style="text-align:right;" />(kg) 
<input type="button" value="計算" onclick="xBMI(document.fnCrn)" />
<span id="aBMI" >BMI値:<strong>22</strong> 判定:<strong>普通</strong></span>
</p>
</form>
</body>
</html>

見栄えは、こんな感じ。

身長と体重に半角の数字を入れて計算ボタンを押すとBMI値が出る

身長:(cm)  体重:(kg)  BMI値:22 判定:普通

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2013年6月17日 (月)

鈴木隆「けんかえれじい 上・下」岩波現代文庫

「ひょうろく玉あ、ねんぶつ唱えるんなら、鼻糞ほじって教室でやりやがれ。おう、おめえ、こいつのことで、えろうごていねいな因縁つけやがったそうじゃが、ゆんべの女子(おなご)はのう、すっきりした女子よ。神聖な教会から、自分らの家へ帰るのがなんで組合の規則に触れるんじゃ。おう、言うてみい」

【どんな本?】

 昭和の児童文学作家・鈴木隆による、自叙伝的な痛快ユーモア青春小説。1966年には映画化され、今も根強い人気を誇る。戦前の岡山に育った南部麒六少年が、小柄な体をものともせず、スッポン先生に学んで喧嘩の腕を磨き、近隣の連中との実戦に明け暮れつつ、岡山から会津・東京そして戦火渦巻く大陸へと転戦していく。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 元は1966年7月、理論社より刊行。本書の底本は1982年の角川文庫版に著者が手を加えたもので、1976年TBS出版協会版を参照した。岩波現代文庫版は上巻2005年10月14日第1刷発行、下巻2005年11月16日第1刷発行。文庫本縦一段組みで本文約431頁+456頁=約887頁。9ポイント42字×18行×(431頁+456頁)=約670,572字、400字詰め原稿用紙で約1677枚。普通の長編小説なら3冊分ぐらい。

 童話作家だけあって、日本語の文章そのものは読みやすい。戦前・戦中の時代が背景なので、当事の変に勇ましげな用語や文体もご愛嬌だろう。ただ、かなりキツい岡山弁・会津弁そして東京の裏社会の俗語が頻繁に出てくるので、一部の会話は意味を掴むのに苦労するが、それもこの作品には外せない味なんだよなあ。

【どんな話?】

 小柄で腕力もない麒六は、小学生の頃から喧嘩の研究に余念がない。持久戦になれば体力的に不利は必至であり、よって先手必勝の術を編み出したものの、大人が仲裁に入れば先に手を出した麒六が「横着もん」と決め付けられる。中学に入っても喧嘩癖は直らず、どころか教会で出遭ったスッポン先生に見込まれ、更なる修行に明け暮れ、不良仲間のOSMS団に入団する。ところが困ったことに、憧れの道子さんとの道中を硬派な団長に見咎められ…

【感想は?】

 タイトルは Elegy(哀歌)だが、むしろ Rhapsody(狂詩曲)かなあ。戦争に向かう日本と暗い背景ながら、そこに生きる南部麒六と愉快な仲間たちは、いつの時代も変わらぬ悪たれ小僧どもだ。

 少年たちの世界というのは、独特のルールが支配している。人と違っていれば、それだけで孤立しかねない。クリスチャンとして日曜は教会に顔を出さねばならぬ麒六だが、そこに学校行事が重なる。教会をサボれば父の鉄拳、学校行事をサボれば教師の鉄拳。板ばさみになる麒六が哀れだが、これの解決を「恥」と感じる麒六も、まさしく男の子。

 そう、子供といえども、自分の問題は自分でケリをつけねばナメられるのである。オトナから見れば馬鹿で理屈の通らぬ行動でも、子供にだってメンツがあるのだ。なぜか不思議と皆オトナになると、そういう事情はケロリと忘れちゃうんだけど。

 出だしから、喧嘩の工夫に頭を悩ます麒六の姿で始まる。小柄で非力というハンデを背負いつつ、なんとか戦術で凌ごうとする麒六。やがてスッポン先生という優れた師に巡り会い、厳しい修行生活に入ってゆく。かつてのジャッキー・チェンのカンフー物映画よろしく、キチンと段階を踏んでやってるのがおかしい。まあ修行ったって、まさしく不良の喧嘩なんだけど。

 この「不良の喧嘩」ってのも、それなりのルールがあって。下手に騒ぎを大きくすれば教師や警察の介入を招き、お互いに痛い目を見る。得物を使うにせよ、何をどこまで使っていいか、暗黙の約束がある。こういうルールは土地と時代で刻々と変わっていくものではあるが、充分に知っていれば裏をかく事もできる。こういった「状況の利用」も、麒六の喧嘩の腕のうち。昼と夜のギャラリーを意識した戦術の違いとかは、それなりに参考に…ならないな。今の人は、のんびり喧嘩見物なんかしてないし。

 こういった、オトナにとっては馬鹿馬鹿しいモノゴトを、至って真面目に書いてあるのが、この本の面白いところ。正調軟派14カ条・正調硬派14カ条などと、心得を箇条書きにしてあったり、児童文学作家のためか、自由で柔軟な小説作法も楽しみのひとつ。アチコチに出てくる詩や唄も彩を与えている。

 やがて麒六は会津に流罪となり、ここでも悪タレどもと喧騒を繰り広げる。キツい岡山弁の麒六が、会津弁を習得して、勢いがつくと啖呵がチャンポンになってくる。旧制中学だから、今だと中学・高校ぐらいか。なんたって、煩悩逞しい厨二の頃だ。雑誌のケッタイな通信販売にひっかかったりするくだりは、今の男の子だって心当たりがあるだろう。この手の青春の黒歴史こそ、この作品の前半の真髄。

 成長した麒六は上京し、大学生活に入る。ここでスッポン先生に次ぐ人生の師に出会う。童話作家の坪田譲治だ。穏やかな坪田先生に心服しつつも、生来の喧嘩癖は直らぬ麒六。ま、人って、そう簡単に変わるもんじゃなし。東京編でのハイライトは、麒六がブチ込まれた留置場の一幕。

 人殺しだの強姦犯だの掏りの常習犯だのが、「理想の童話とかいかにあるべきか」を巡り喧々囂々の議論を戦わせるシーンは、可笑しいやら悲しいやら。本なぞ読まぬオトナでも、幼い頃に読んだ童話はしっかり覚えてるし、それぞれにご贔屓の場面や台詞がある。コワモテのオッサンが、「俺は泣けてなあ、そうよ、身につまされちまったんだ」などと語るあたりは、ついつい引き込まれてしまう。

 彼らの会話は、書評を書く者の一人として、なかなか参考になる。上品にまとめて頭良さげにふんぞり返ってりゃいいってもんじゃ、ないんだよなあ。馬鹿っぽくても、「ああコイツ、ホントに好きなんだなあ」と思わせてなきゃ。

 下巻は軍隊編。召集された麒六が、愛しのマドンナ道子さんに別れを告げる間もなく、高田独立山砲兵第一聯隊に入隊、やがて大陸へと転戦してゆく。軍での麒六の評価が、なかなかツボをついている。

「…貴様も竹を割ったようなところが有るには有る。しかし、どうも俺の観るところ、軍人精神とは似て非なる割れ方のようである」

 昨日まで文学や法律を学んでた連中が、いきなり馬の世話やら砲の分解掃除。帝国陸軍の招集兵とはいえ、学徒動員の麒六たちだけに、一般の招集兵とは違って年齢・学歴ともにけっこう高い。にも関わらず、入営した次の朝、教官の上原見習士官の挨拶がいきなり「今朝、起床ラッパが鳴った時、マラの立ってた奴はいないか!」とくる。ぶはは。野郎ばっかしの世界だし、カッコつけてもいられないよなあ。

 兵の待遇の良し悪しも、上に立つ士官によりけり。滅多に殴らぬ傑物もいれば、イチャモンつけて殴るのを趣味にしてるのもいる。今と違い当事の大学進学率は、一割にも満たなかったはず。そんな社会での学徒といえば、その親も相応の立場だろうから、ヌルいかと思えばそうでもない。ストレスが溜まる軍隊生活だけに、仲間内での反目もある。となれば、喧嘩っ早い麒六が大人しくしているはハズもなく…

 後編も後半に入ると、麒六も大陸に渡り軍務につく。この軍務というのが、当事の帝国陸軍の混乱振りをよく示すシロモノで。軍記物も、太平洋戦線の資料はよく出ているが、大陸の記録は出版社もあまり大きく宣伝しないんで、軍オタでもない限りあまり実態は知られていない。そういう点でも、後編は、なかなか貴重。

 特に麒六は砲兵隊であり、行軍の様子がこと細かに書かれているのが、軍ヲタとしては嬉しい。当時は機械化も進んでおらず、そもそも開戦のきっかけがABCD包囲網による石油の枯渇でもあり、輸送は馬匹や人力に頼る事になる。敵が米軍と明確な太平洋戦線と違い、大陸では匪賊馬賊も出る。「補給戦」のクレフェルトが見たら、どうコメントするのやら。

 男なら誰だって抱えている黒歴史をカラリとユーモラスに描く上巻、トンガった青年が上意下達の軍で悪戦苦闘する下巻。書名は「えれじい」だが、実際にはアクションとギャグが満ちている。爽快で、ちょっと切ない青春娯楽小説。

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2013年6月13日 (木)

司馬遷「史記 六 世家 中」明治書院 新釈漢文大系86 吉田賢抗著

人を観察するには、その人が平素誰と親しくしているかを視、
裕福であったら、どのような与え方をするかを視、
高位についたら、どういう人物を挙げ用いるかを視、
困窮した場合でも、その為さないところを視、
貧乏の場合には、不正なものを取らないかを視ます。
  ――魏世家第十四より、李克が文侯に語る人選の要点

【どんな本?】

 中国の前漢・武帝の時代、紀元前91年頃に司馬遷が著した歴史書「太史公書」、通称「史記」は、夏・殷・周の各朝から春秋・戦国の騒乱、秦の勃興・楚漢戦争を経て漢の武帝の時代までを扱う。人物を中心とした歴史観に基づく紀伝体という構成が特徴で、大きく以下の5部に分かれる。

  1. 十二 本紀 黄帝から漢の武帝までの歴代王朝の君主
  2. 十  表   年表
  3. 八  書   礼楽・刑政・天文・貨殖など法制経済史
  4. 三十 世家 君主を取り巻く王侯
  5. 七十 列伝 他の有名人の人間像

 世家は周王朝の文王・武王から漢の武帝の時代までの、各国の王家・諸侯の勃興を扱う。明治書院のシリーズは、漢語の原文と読み下し文・現代語訳の 通釈・わかりにくい言葉を説明する語釈に加え、研究者により解釈が分かれる部分は余説として他の学説も収録するなど、研究所として充実した内容。このシリーズの世家は上・中・下の三巻で、中巻は春秋・戦国時代の諸国の盛衰から秦が統一するまでを描く。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 Wikipedia によると、原書の成立は紀元前91年ごろ。明治書院版は1979年10月10日初版発行。私が読んだのは1991年9月20日発行の13版。単行本ハードカバー縦一段組みで本文約390頁。9ポイント54字×21行×390頁=約442,260字、400字詰め原稿用紙で約1106枚。長編小説なら2冊分 ちょいだが、私は漢文と読み下し文は読み飛ばしたんで、実際に読んだのは半分程度。

 慣れないうちはかなりとっつきにくい史記だが、世家の中巻は読んでみると意外とそうでもない。というのも、それぞれ各王家の勃興から滅亡までを描くわけで、同じ時代の記述が何度も出てくるのだ。そのため、一度斜め読みして分からくても、別の王家で同じ人物・事件を再度記述しているので、復習できたりする。お陰で、少しだけ手ごわさが減った。

【構成は?】

楚世家第十
越世家第十一
鄭世家第十二
趙世家第十三
魏世家第十四
韓世家第十五
田敬仲完世家第十六
 戦国七雄時代略図

 各部はそれぞれ以下6つの項目からなる。読みやすいように、本文を10行~30行程度で区切り、その後に和訓や通釈をつける構成。

  1. 解説:各部の冒頭にあり、要約や位置づけなどを示す。
  2. 本文:漢文。
  3. 和訓:読み下し文。
  4. 通釈:現代日本語に訳した文章。
  5. 語釈:本文中のまぎらわしい語・難しい語や、関連知識が必要な語の解説。
  6. 余説:解釈に複数の学説がある場合、通釈で採用しなかった説を述べる。

【感想は?】

 この巻で出てくる王家は、いずれも滅びる運命にある。楚が越を滅ぼし、韓が鄭を併合するが、いずれも趙・魏・斉と共に秦に食われる。なんとも哀愁漂う巻だ。

 物語として面白いのは、やっぱり呉王・夫差&賢臣・伍子胥 vs 越王・句践&賢臣・范蠡の戦いだろう。

 范蠡が止めるのも聞かず句践は呉に攻め込むが敗走、会稽山で包囲される。范蠡の勧めに従い降伏する句践を、伍子胥は殺せと具申するが夫差は許す。後にも越の脅威を説く伍子胥の進言を夫差は聞かず斉や楚と争う。「これじゃ呉は滅びる」とボヤく伍子胥は太宰の嚭にチクられ、恨み言を残して自害。

 越に戻った句践は范蠡と共に民を慰撫し、生活は質素に甘んじる。食事の際は胆をなめ「なんじは会稽の恥を忘れたか」と復讐を誓う(臥薪嘗胆、→Wikipedia)。呉が戦で疲弊した頃を見計らい呉を攻め、姑蘇山に包囲する。降伏する夫差、許そうとする句践に范蠡は「殺せ」と進言。夫差は「わしは伍子胥に会わせる面目がない」と貌を布で覆って自害。

 大きな功をあげた范蠡。共に国を盛り立ててきた種に「句践は艱難を共にできても楽しみを共にすることはできない」「飛鳥が射尽くされると、良弓が見捨てられ、狡兔が殺し尽くされると、猟に走り廻った良犬は煮られる」(→故事ことわざ辞典)と言い残し越を去る。残る種に、句践は迫る。

「そちは、わしに呉を伐つに七術を教えてくれた。わしはそのうちの三つを用いて呉を破った。だあとの四つは、まだそちの胸中に在る。そちは、わしのため地下に在る先王に従って、その術をためしてみよ」

 面白いのは、これから。ズラかった名軍師の范蠡、名を変え斉で事業を興して巨財を築き、乞われて宰相となる。「長らく尊名を受けるのは不吉」と人に財を分け与え宰相を辞し、山東の陶へ向かう。陶朱公と名乗り事業と商売に励み、再び冨を得る。うはは。まだ続くぞ。

 次男が人を殺し楚で捕まる。末子に賄賂の大金を持たせ交渉に行かせようとするが、「それは長男の役割だろ」と割り込む。旧友の荘生への手紙を託し長男を使いに出す。粗末な荘生の家に呆れる長男だが、とりあえず金と手紙を渡す。「何もせずさっさと国に帰れ、仮に巧くいっても詮索するな」と諭す荘生を無視して楚の都に留まり、他の重臣に賄賂を配る。

 荘生の根回しが効いて大赦の噂が流れる。これを聞いた長男は荘生に「金を返せ」と迫る。ムカついたと荘生「勝手に持って帰れ」と言い放ち、楚王にチクる。「噂が立ってるよ、王は賄賂で罪を許すって」。怒った楚王は次男を死刑に処し、長男は虚しく死骸を抱えて帰る。これを見届けた朱公こと范蠡曰く。

「長男は若いころからわしと苦労してきたから、財を惜しむ。末子は生まれたときから豊かだから貯える苦労を知らず、あっさり棄てられる。この役は末子が適切で、長男にはできない。わしは遺骸が来るのを待っていた」

 趙・魏・韓は、かつての大国・晋の臣が独立した国で、三晋とも言われる。

 ここで面白いのは趙武(→Wikipedia)。晋の景公の時代、趙武の祖父・趙盾が屠岸賈に妬まれ一族が皆殺しになる。趙盾の子・朔は、友人の韓厥から「逃げろ」と諭されるが、「あなたが趙氏の祀りを絶たないでくださるなら、朔は死んでも恨むところがない」と言い残し死ぬ。身ごもっていた朔の妻は男の子を生む。これが趙武。

 迫る屠岸賈の追っ手、ここに登場するのが朔の友人・程嬰と、食客の公孫杵臼。二人は示し合わせて芝居を打つ。囮の嬰児を手に入れた杵臼は山中に逃れ、程嬰が彼を屠岸賈に売る。恨み言を残し杵臼は死ぬが、程嬰は趙武と共に山中に隠れる。

 15年後、病んだ景公は占いをたてる。卦に曰く「趙氏の祟り」。韓厥は景公に事実を告げる。成長した趙武に面会する景公。他の臣も屠岸賈を責め、趙氏は再興する。趙武が成人の折、、程嬰は「地下に逝って杵臼に報告する」と語る。「そなたに恩返ししたい、見捨てないでくれ」とすがる趙武だが、杵臼の決心は固く…

 他にも、趙は胡服に改めた武霊王も、その優れた武功と哀れな末路の対比が切ない。

 魏・韓のあたりは、強国に挟まれた小国の悲哀が否応なしに伝わってくる。田敬仲完世家は、斉の話。当時、西の秦と並ぶ強国だった斉だが、最終的には秦に敗れる。というのも、緩衝国であった趙・魏・韓が次々と秦に下されていったため。

 タイとベトナムに挟まれたラオス、ロシアとアメリカの綱引きの焦点アフガニスタンや東欧やフィンランド、やはりロシア・中国とアメリカの緩衝国・北朝鮮&韓国そして我が国の意味と立場も、史記に見ることができるだろう。

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2013年6月11日 (火)

フェリクス・J・パルマ「宙の地図 上・下」ハヤカワ文庫NV 宮崎真紀訳

「子供のころ、宇宙人はきっとどこかにいるはずだと思いつめていた時期があった。話したっけ?」

【どんな本?】

 「時の地図」で颯爽と日本上陸を果たし喝采で迎えられたたスペインの作家フェリクス・J・パルマによる、「時の地図」の続編。前回のテーマ「タイムマシン」に続き、今回のテーマは「宇宙戦争」。そう、タコ型の火星人がロンドンを蹂躙するアレだ。

 「宇宙戦争」の大ヒットでベストセラー作家となったH・G・ウェルズと、ロンドンの自然史博物館の地下に静かに眠る異形のモノの会合を発端に、夢と冒険とロマンスがギッシリ詰まった物語が展開する、長編娯楽SF大作。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は EL MAPA DEL CIELO, by Fe'lix J. Palma, 2012。日本語版は2012年11月25日発行。文庫本縦一段組みで上下巻、本文約461頁+448頁に加え訳者あとがき5頁。9ポイント41字×18行×(461頁+448頁)=約670,842字、400字詰め原稿用紙で約1678枚。そこらの長編小説なら3冊分の大ボリューム。

 翻訳物ではあるが、文章は日本語としてこなれていて読みやすい。内容もサービス満点の恋と冒険の娯楽物語なので、特に構える必要はない。随所に歴史や映画のネタが仕込んであるので、18世紀の欧米史や文学史に詳しいと、より楽しめる。もちろん、分からなくてもお話の面白さは充分に味わえるのでご安心を。

 また、前作「時の地図」の続編であり、前作の設定を受け継いだ物語だが、未読の読者でも楽しめる構造になっている…というか、どちらから読み始めても楽しめる。迷ったら、手に入れやすい方から読み始めるといいだろう。

【どんな話?】

 「タイム・マシン」に続く科学ロマンスの諸作が大当たりし、最近では「宇宙戦争」が話題を攫ったH・G・ウェルズ(→Wikipedia)。ところが、彼に断りもなく続編を書いた男ギャレット・P・サーヴィス(→Wikipedia)がロンドンを訪れ、あつかましくもウェルズとの接触を求めてきた。不愉快な気分で会合に臨んだウェルズを、明るく馴れ馴れしいサーヴィスは丸め込み、、ロンドンの自然史博物館の地下に眠る秘密を探る探索へと連れ出し…

【感想は?】

 これぞ娯楽の王道。博物館の地下に眠る秘密、閉鎖された極地でのサスペンス、血と肉と内臓が飛び散るホラー、圧倒的な力を持つ敵に立ち向かう智恵とアクション、ゴージャスな上流階級の社交界、代々受け継がれた秘宝、大英帝国の陰で暗躍する秘密組織、純情で不器用ながら深く大きな恋、そして幼い頃から心に秘めた夢。

 所々で著者が読者に語りかける、やや時代がかった小説作法も、ヴィクトリア朝の舞台にフィットしてるし、なによりサービス満点なこの物語に相応しい。

 などの娯楽物語を形作る大仕掛けとは別に、細かい仕掛けもアチコチに仕込んであるのが憎い。冒頭のウェルズとサーヴィスの会合と自然史博物館地下の潜入場面から、「この物語にはイースター・エッグが沢山隠してありますよ」とのメッセージを伝えてくる。

 まず、ギャレット・P・サーヴィスからして、実在の人物。また同時代のヴェルヌの名前も出てきて、ウェルズがヴェルヌの姿勢の違いがわかるのもファンには嬉しい。科学・技術・産業面での考証を充分に行い、SFではサイエンスに重点を置く冒険物語を得意としたヴェルヌに対し、ウェルズは社会風刺を重視した暗い物語が多い。両者共にSFの祖と見なされるが、当事のお互いは、あまり交渉がなかった模様。

 次のジェレマイア・レイノルズが主役を努める南極探検の場面も、いきなり大笑い。なんたって地球空洞説(→Wikipedia)だ。ここに登場するシムズも実在だったとは。もうひとりの重要人物、砲兵特務曹長アランも、好きな人ならピンとくるだろう。また、隊員募集のコピーは、明らかにアーネスト・シャクルトン(→Wikipedia)の名コピーを持ってきている。

「求む男子。至難の旅。
僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証無し。
成功の暁には名誉と賞賛を得る」

 ここで展開する閉鎖環境での戦いは、ホラーやサスペンス映画が好きな人なら大喜びだろう。

 続くニューヨークを舞台として幕を開ける第二部では、打って変わって華やかなロマンスが展開する。いつも不機嫌で気難しいエマ・ハーロウ嬢に、果敢なアタックを繰り返しては玉砕を繰り返すモンゴメリー・ギルモア。事業ではスゴ腕でブイブイ言わせてるギルモア君だが、色事に関してはからきし。彼とエマ嬢が繰り広げるスレ違いが連続するコントは、ラブコメの王道そのもの。経済界では辣腕を振るうギルモア君の、トンチンカンだがくじけない根性と、純情そのものの愛情に泣け、笑え。

 冒頭のウェルズとサーヴィスの会話から流れるもう一つのテーマ、そてはヒトが夢を見る力、物語が生み出す奇跡。これが後半に入ると、懐かしい人物の再登場をきっかけに、怒涛の流れとなって押し寄せる。

 たかが物語、所詮はお子様向けの荒唐無稽な御伽噺。けれど昔からヒトは伝説を伝え、英雄たちの戦いを語り、不思議な世界や魔法の道具に胸を躍らせてきた。子供だましと言われようが、SF者やファンタジーのファンはいい齢こいて夢をつむぎ、作家の大法螺を楽しんできた。ややコテコテの風味も、そんな人々に送る、夢と冒険とロマンスの大作に相応しい。

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2013年6月 9日 (日)

溝口敦「暴力団」「続・暴力団」新潮新書

著者・溝口敦氏の公式サイトはこちら。→溝口敦の仕事

 暴力団は今曲がり角におます。このまま存続できるのか、それとも大きく体質を変えて生き残りを図るのか。
 ちょっと物の分かった暴力団の組員なら、ほとんど悲観的な見通しを語ります。
「お先真っ暗!」「将来性はゼロとちがいます?」
  ――「暴力団」まえがき より

【どんな本?】

 芸能界や建築業界との癒着が問題視され、嫌われ恐れられると同時に、屈折した憧れも持たれる暴力団。バブルの頃は地上げで幅をきかせていたようだが、暴力団対策法などの締め付けが効いたのか、最近は高齢化が囁かれ、あまり派手な話題にはならない。

 そもそも、暴力団とは何者か。彼らはどうやって稼いできたのか。今はどうやって稼いでいるのか。どんな暴力団があるのか。組の組織はどうなっているのか。どんな者がどんな形で暴力団に入るのか。組に入った後は、どうやって出世するのか。海外の犯罪組織とはどう違うのか。なぜ刺青したり指を詰めるのか。そして、市民は彼らにどう対応すべきかなど、「暴力団」では、現代の暴力団の実態を描く。

 2004年から2011年にかけて、各自治体が暴力団排除条例(→Wikipedia)を制定・施行し、暴力団の立場は大きく変わった。福岡では凶暴化した暴力団が、相次いで事件を起こしている。暴力団対策法(→Wikipedia)があるのに、なぜ条例が必要なのか。条例により、暴力団の立場はどう変わったのか。警察は暴力団にどう対応しているのか。そして、暴力団は、今後どう変わってゆくのか。「続・暴力団」では、暴力団対策法/暴力団排除条例の影響を受け、大きな曲がり角を迎えた暴力団の現在を報告し、また「半グレ集団」など新たに勃興した反社会的組織もあわせ、警察の思惑と今後の展望を予見する。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 「暴力団」は2011年9月20日発行。新書版で縦一段組み、本文約182頁+あとがき6頁。9.5ポイント39字×15行×182頁=約106,470字、400字詰め原稿用紙で約267枚。「続・暴力団」は2012年10月20日発行。新書版で縦一段組み、本文約200頁+あとがき3頁。9.5ポイント39字×15行×200頁=約117,000字、400字詰め原稿用紙で約293枚。いずれも小説なら中編に該当する分量だろう。

 文章はこなれていて読みやすく、スイスイ読める。あの世界は「シノギ」など業界用語?が発達しているが、そういった言葉も丁寧に説明していて、特に前提知識はいらない。時おり法律が絡んでくるが、それも著者がくだいた言葉で解説してくれる。かなりハードな取材に基づいているはずなのに、軽く読めてしまうのが却って困るぐらい。

【構成は?】

暴力団

 まえがき
第一章 暴力団とは何か?
第二章 どのように稼いでいるか?
第三章 人間関係はどうなっている?
第四章 海外のマフィアとどちらが怖いか?
第五章 警察とのつながりは?
第六章 代替勢力「半グレ集団」とは?
第七章 出会ったらどうしたらよいか?
 あとがき

続・暴力団

 まえがき
第一章 組長・幹部たちはどう語るのか?
第二章 法律でどこまで守られるか?
第三章 出会ったら、どうすればよいか?
第四章 芸能界はまだ蝕まれているか?
第五章 警察は頼りになるか?
第六章 暴力団は本当になくなるのか?
第七章 どうやって生き延びていくのか?
 あとがき

【感想は?】

 「暴力団」は基礎編、「続・暴力団」は「最新情報編」。多少内容がカブっている部分はあるが、日本のヤクザの状況をザッと知るには、わかりやすくて手ごろな本。ズブの素人を読者に想定して書いた本らしく、構成や内容も丁寧で、サービスも充分。なんたって、「暴力団」のまえがきの〆が「とりわけ怖いもの見たさの読者は大歓迎です」。

 まえがきの冒頭から、原題の暴力団が置かれている厳しい状況が明らかになる。なんとなく「景気が悪いと裏社会が栄える」と思っていたが、現実は逆らしく、地価が上がらないから地上げの仕事もないそうな。もちろん薬物の密輸・密売もおししいシノギ。これの怖い所が、需要供給資本主義の原理が働いちゃう所。

 締め付ける→供給が減る→価格が上がる→単位あたりの儲けが増える→美味しい→新しい手口を開発する

 イタチごっこになっちゃてるわけ。
 昔のヤクザはテキ屋・博徒・愚連隊の三種があった、ってのも面白い。テキ屋はフォーテンのトラさんで、お祭りとかで屋台を出す人。博徒は賭場を開く人で、愚連隊は、まんま暴力集団。今はあんまし違いがないっぽくて、これを著者は「犯罪のデパート」と評している。

 この「犯罪のデパート」が日本のヤクザの特徴。これがフランスあたりだと、麻薬なら麻薬組織、誘拐なら誘拐組織と、犯罪ごとに組織が特殊化してるとか。こういった海外情勢も本書の凄い所で、なんと香港の三合会(トライアド、→Wikipedia)にまで取材している。よくコンタクトできたなあ。ここで語られる香港の黒社会と日本のヤクザの違いは衝撃的で、「犯罪組織もイロイロだなあ」と考えさせられる。

 ヤクザばかりでなく、六本木を根城にした関東連合などの「半グレ集団」を扱っているのも本書の特徴。昔は暴走族は暴力団構成員の供給源の一つだったのが、肝心の暴力団そのものが高齢化して…と成立の過程から始まり、彼らのシノギから組織の実態、そして警察の対応まで解説している。

 「続・暴力団」では、最新暴力団事情といった感がある。中でも暴力団対策法・暴力団排除条例が大きなテーマとなり、著者のメッセージも繰り返し述べられる。曰く「暴対法では暴力団を合法と認めている、これはおかしい、さっさと非合法にして壊滅させろ」と。

 とまれ暴力団排除条例が暴力団には大きなダメージを与えているのは確かで、福岡の騒ぎもその結果だとか。つまりは追いつめられた暴力団が生き残りをかけて必死に反撃している、警察しっかりせんかい、と。警察についても多くの紙面を割いているのも「続・暴力団」の特徴で、よりメッセージ性の強い内容となっている。

 最新情報だけあって、話題になった島田伸介の引退など芸能界の話が多いのも「続・暴力団」の特徴。「厳密に暴力団排除条例を適用したら紅白歌合戦の演歌勢は壊滅」などと刺激的な話も出てくる。かと思えば、宗教団体との関係も出てくるのが面白い。ヤクザなら神棚があって神道系かと思いきや、なんと欧米や韓国系の新興キリスト教と言うから、アレか?他にも鶴の話が「暴力団」では出てきたり。

 他にもイタリアの司法とマフィアの壮絶な抗争など、内容はエキサイティングでサービス満点。敢えて文句をつけるなら、取材の苦労話をもう少し入れても良かったんじゃないかと思う。明らかに身の危険がある剣呑な雰囲気の取材に基づく場面が何度も出てくるのに、あまりにあっさり語っちゃっていて、少し考えないとネタの有り難味がわからなかったりする。ネタがネタだけに迂闊な事は書けないだろうし、ジャーナリストとしてソースやルートを守る必要もあるんだろうけど、ちともったいない。

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2013年6月 8日 (土)

榊涼介「ガンパレード・マーチ2K 西海岸編 1」電撃文庫

「ぬほほ。テレビ見とったバイ。ぬしゃも目立ちたがり屋よのー。まだ目立ち足りんか?」

【どんな本?】

 元は2000年9月28日発売の SONY Playstation 用ゲーム「高機動幻想ガンパレード・マーチ」。マニアックな内容が独特の性向を持つ人々に受け星雲賞まで獲得し、2010年にはPSP用のアーカイブとして復活を遂げた。

 そのノベライズとして2001年12月15日に発売の短編集「5121小隊の日常」から始まった榊涼介のシリーズ、こちらもコアなファンの根強い支持を受けて、入れ替わりの激しいライトノベルでありながら12年以上もシリーズを重ね、この巻で通算37巻目。

 第二次世界大戦は、意外な形で終わる。1945年、月と地球の間24万kmに突如出現した黒い月、ついで人類の天敵「幻獣」の襲来だ。圧倒的な兵力の幻獣はユーラシアを蹂躙し、人類の生存圏は南北アメリカとアフリカ南部、そして日本が残った。

 1998年、幻獣は九州に上陸。1999年、日本は二つの法案を可決する。熊本要塞の戦力増強と14歳~17歳の少年兵の招集である。壊滅寸前の自衛軍の戦力回復の時間稼ぎのため、学兵たちを投入する腹案だった。キワモノ兵器の人型戦車・士魂号三機を核とし、学兵のはみだし者を集めた5121小隊が意外な活躍を見せ、九州を奪われるものの多くの学兵を救う。

 やがて山口防衛戦・九州奪還を通し一部の幻獣勢力と和平に漕ぎ付け、北海道独立の危機を凌ぐ。名声を得た5121小隊は、米国ワシントン政府の招聘を受け新大陸へ渡る。幻獣に包囲されたニューヨーク州レイクサイドヒルの市民を救い、サムライ・ブームを巻き起こす。

 米国西海岸には、ワシントンと異なるもうひとつのアメリカ、シアトル政府があった。日本はワシントン政府を承認していたが、この機にシアトル政府との国交も樹立しようと、5121小隊を神輿としてシアトルに派遣、その陰で政・軍・財界も接触を始める。レイクサイドの英雄5121小隊はシアトルでも歓迎されるが、肝心の5121のメンバーは死地を生き延びたとはいえ、無駄にエネルギーを持て余し煩悩にまみれる十代の少年少女。戦場のストレスも重なり暴走は騒動を巻き起こし…

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2013年6月7日初版発行。文庫本縦一段組みで本文約284頁。8ポイント42字×18行×284頁=約214,704字、400字詰め原稿用紙で約537枚。諸編小説としては標準的な長さ。安定してます榊さん。

 文章の読みやすさは文句なし。戦争物ではあるが、この巻ではあまりマニアックな描写はあまり出てこない。敢えて言えば「小隊」・「将校と兵」の概念ぐらい。長いシリーズではあるが、この巻は戦況とともに舞台も変わっているので、この巻または前の連作短編集「5121小隊の日常Ⅲ」から読み始めてもいいだろう。

【どんな話?】

 シアトルの銀行に、奇妙な四人組が押し入った。十代の少年少女で、人質を取るどころか客も銀行員も追い出し、金も要求しない。しっかり者のシャロン・大人しいクラウス・お喋りなマイケル・ガタイのいいピート、小学校以来の幼馴染で、戦場帰りだ。「手榴弾で自爆する」と脅しをかけ、集まったマスコミを介してシアトルのヒーロー・5121小隊との面会を要求し…

【感想は?】

 未央ちゃん、大活躍の巻。

 テレビに道着で登場する場面から、バッチリ決まってる。芯は強く落ち着きがあり、修羅場を潜った経験も豊富。とはいえ、根はまっすぐで不器用な未央ちゃん。英語もたどたどしく、交渉役には思いっきり向かない。しかも、同行するのは、小学校二年生と机を並べる滝川。明らかに人選は失敗してるぞ四人組。つか滝川、タコス齧りながら登場って、どうよw しかも無意味ゴーグル見破られてるし。

 今回は二部構成。一部は四人のズッコケ銀行強盗を介し、シアトル政府の内幕が次第に明らかになってゆく。人質?となった滝川・壬生屋そして通訳の森のニュースを聞きつけ、5121小隊の面々が事件の解決に向け蠢動を始める。

 といった話の中で、最もスポットを浴びるのが未央ちゃん。先の「小隊の日常Ⅲ」では小学校に赴き剣道を教え、教師・児童ばかりかPTAまで支持層を広げた彼女の人望が、この巻では絶大な威力を発揮する。因縁の対決を演じたペドロとリーアムも、この巻では再び仲良く?姿を見せる。つかリーアム、見る目はあるぞ。

 などと未央ちゃんが堂々と主役を勤める中で、単なるコミック・リリーフに堕した滝川が哀れw 剣道の指導を通じ厚い人望を集める未央ちゃんに対し、小学二年生と机を並べて勉強してる有様じゃあ、なあ。でも Episode TWO の「士魂号、前へ!」じゃ子供相手に意外なコミュニケーション能力?を見せた滝川、精神年齢的に彼らと近いから←をい

 とまれ、不器用な未央ちゃんと能天気な滝川じゃ話が進むはずもなく。四人組の要求の重大さは、次第に騒ぎを大きくし、シアトル政府と日本の国交問題にまで発展してゆく。まあ、5121を人質に取った時点で、もはや抑えようがないんだけど。

 ってな中で、なんとか火消しに奔走するのが陰険眼鏡こと狩谷夏樹。クールな頭脳と爽やかな弁舌、それとは裏腹に真っ黒な腹の中を存分に活かし、直情的な連中が集まった現場を冷静に仕切っていく。やっぱりね、彼は黒くないと。人好きのする笑顔に計算ずくの陰謀こそがなっちゃんの本領。

 などと火消しに努力する秀才なっちゃんの緻密な計算を、根こそぎ破壊して火に油どころか高性能爆薬を投げ込むのが怪人半ズボンこと茜大介。「東京動乱」での活躍に味をしめたのか、ここでも奇怪なアジテーションで善良な人々を煙にまき、脚線美で幻惑しながら、狩谷が沈静化させた状況を更なる混乱へと押しやってゆく。なんというか、人望はないけど、有象無象の群集を扇動する能力はあるんだよなあ。5121に入らなかったら、共生派のアジテーターとして秀でた能力を発揮してたかも。困った奴だ。

 などと他の連中にスポットを攫われ、やや影が薄いのが舞ちゃんとあっちゃん。戦闘では圧倒的な存在感を見せる二人も、常識が通用しない連中はさすがに制御しきれない模様。頼みの綱の原さんも、事態を面白がって遊んでるし。

 などとコミカルな雰囲気ばかりでなく、話が進むにつれシアトル政府の暗黒面や、幻獣との戦況も次第に見えてくる。複雑な国際情勢まで絡みだしたこの物語、果たしてどこへゆくんだろう。

 ところで、ちょい役だけど肘鉄が得意技のキャスターさん、次でも出番があるのかしらん。

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2013年6月 6日 (木)

デーヴ・グロスマン「戦争における[人殺し]の心理学」ちくま学芸文庫 安原和見訳

「おぞましさのあまり目をそむけたくなる部分があるからといって、その営為について考えまいとしてもむだである。いや、むだどころか有害でさえある」
  ――カルル・フォン・クラウゼッツ

「ロジャー、いまのことばから察するに、ベトナムで人を殺したという事実を背負って戻ってきたわけだ。それがいちばんつらいことだったのかな」
「まあね。半分はね」
「それで、残りの半分は?」
「帰ってきても、だれもわかってくれなかったことさ」

第二次世界大戦中、米陸軍准将S・L・A・マーシャルは、いわゆる平均的な兵士たちに戦闘中の行動について質問した。その結果、まったく予想もしなかった意外な事実が判明した。敵との遭遇戦に際して、火線に並ぶ兵士100人のうち、平均してわずか15人から20人しか「自分の武器を使っていなかった」のである。しかもその割合は、「戦闘が一日じゅう続こうが、二日三日と続こうが」つねに一定だった。

【どんな本?】

 つまるところ、戦争とは殺し合いだ。軍は敵を殺すために兵を集め、鍛え、前線に投入する。戦記物では、偉大な勝利を掴んだ将の話もあるし、戦死または負傷した兵の話もある。その兵の心の中では、何が起こっているのか。

 この本は、意外な事実で幕を開ける。「第二次大戦中、米陸軍の前線の兵のわずか15~20%の兵しか発砲していない」と。これが朝鮮戦争では55%に上がり、ベトナムでは90~95%に上がった。撃たなければ撃たれる生死の境で、なぜ撃たないのか。撃つ者と撃たない者は、何がどう違うのか。米軍はどうやって発砲率を上げたのか。その代償は何か。

 米国陸軍に23年間奉職して兵卒から中佐にまで昇進し、レンジャー部隊・落下傘部隊の資格を持つたたたきあげの軍人であり、また心理学者・歴史学者でもある著者が、戦争を「組織的な殺し合い」として捉え、人が人を殺す際の心理を分析し、なぜ殺す/殺さないのか・どうすれば殺せるのか・殺した人の心はどう変わるのかなど、人の心の深層を探り、その理論で軍のしくみや慣習、また現代社会の問題点を照らし出す、過激で衝撃的な本。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は ON KILLING, by David A.  Grossman, 1995, 1996。日本語版は1998年7月21日原書房より単行本で刊行、ちくま学芸文庫版は2004年5月10日第一刷発行。文庫本縦一段組みで本文約487頁+訳者あとがき3頁。8.5ポイント40字×18行×487頁=約350,640字、400字詰め原稿用紙で約877枚。長編小説ならやや長め。

 文章は比較的こなれていて読みやすい。軍事系の本だが、特に歴史や兵器の前提知識も要らない。「第二次世界大戦は日独伊 vs 米英ソ」「ベトナム戦争は北ベトナム vs 南ベトナム&米」程度で充分。あえて言えば、単位系がヤード・フィートって事ぐらいか。

【構成は?】

 献辞/謝辞
 はじめに
第一部 殺人と抵抗感の心材 【セックスを学ぶ童貞の世界】
 第1章 闘争または逃避、威嚇または降伏
 第2章 歴史に見る非発砲者 
 第3章 なぜ兵士は敵を殺せないのか
 第4章 抵抗の本質と根源
第二部 殺人と戦闘の心的外傷 【精神的戦闘犠牲者に見る殺人の影響】
 第5章 精神的戦闘犠牲者の本質――戦争の心理的代価
 第6章 恐怖の支配
 第7章 疲憊の重圧
 第8章 罪悪感と嫌悪感の泥沼
 第9章 憎悪の嵐
 第10章 忍耐力の井戸
 第11章 殺人の重圧
 第12章 盲人と象
第三部 殺人と物理的距離 【遠くからは友だちに見えない】
 第13章 距離――質的に異なる死
 第14章 最大距離および長距離からの殺人――公開も自責も感じずにすむ
 第15章 中距離・手榴弾距離の殺人――「自分がやったかどうかわからない」
 第16章 近距離での殺人――「こいつを殺すのはおれなんだ。おれがこの手で殺すんだ」
 第17章 刺殺距離での殺人――「ごく私的な残忍性」
 第18章 格闘距離での殺人
 第19章 性的距離での殺人――「原初の攻撃性、解放、オルガスムの放出」
第四部 殺人の解剖学 【全要因の考察】
 第20章 権威者の要求――ミルグラムと軍隊
 第21章 集団免責――「ひとりでは殺せないが、集団なら殺せる」
 第22章 心理的距離――「おれにとってやつらは畜生以下だった」
 第23章 犠牲者の条件――適切性と利益
 第24章 殺人者の攻撃的要因――復讐、条件づけ、2パーセントの殺人嗜好者
 第25章 すべての要因を盛り込む――死の方程式
第五章 殺人と残虐行為 【ここに栄光はない、徳もない】
 第26章 残虐行為のスペクトル
 第27章 残虐行為の闇の力
 第28章 残虐行為の罠
 第29章 残虐行為のケーススタディ
 第30章 最大の罠――汝の行いとともに生きよ
第六部 殺人の反応段階 【殺人をどう感じるか】
 第31章 殺人の反応段階
 第32章 モデルの応用――殺人後の自殺、落選、狂気の確信
第七部 ベトナムでの殺人 【アメリカでは兵士たちになにをしたのか】
 第33章 ベトナムでの脱感作と条件づけ――殺人の抵抗感の克服
 第34章 アメリカは兵士になにをしたのか
        殺人の合理化――なぜベトナムでうまく働かなかったのか
 第35章 心的外傷後ストレス障害とベトナムにおける殺人の代償
 第36章 忍耐力の限界とベトナムの教訓
第八部 アメリカでの殺人 【アメリカでは子供たちになにをしているのか】
 第37章 暴力のウイルス
 第38章 映画に見る脱感作とパブロフの犬
 第39章 B・F・スキナーのラットとゲームセンターでのオペラント条件づけ
 第40章 メディアにおける社会的学習と役割モデル
 第41章 アメリカの再感作
  訳者あとがき

【感想は?】

 イヤ~な気分になる本だ。なにせ、人殺しの話なのだから。途中、ベトナムなどの戦場で敵兵を殺した兵が、その時の状況と気持ちを語る部分が、何度も出てくる。これが実に真に迫っていて、グロ耐性の少ない人は大きなダメージを受ける。

 だが、そこに本書の価値がある。読者は、なぜ嫌な気持ちになるのか。人が人を殺す事の、何が嫌なのか。ソコを、この本は掘り下げてゆく。もちろん、血や肉や骨のグロさも、ある。と同時に、人が人を殺す、そのタブー破りの残酷さに、ヒトは本能的に嫌悪感を持つのだ。

 本書は、序盤に、意外な事実を明らかにする。第二次世界大戦の米陸軍では前線の兵の15~20%しか発砲しなかった、と。他の兵はなぜ撃たなかったのか。嫌だからだ。人を殺すのが、嫌だからだ。しかも、撃った兵は、必ずしも敵兵を狙ったとは限らない。敢えて銃口を上に向け、狙いを外す者も多いのだ。

 などといったエピソードを積み重ね、「ヒトはヒトを殺すことへの強い嫌悪感がある」事を明らかにする。と同時に、嫌悪感を持たぬ小数の者の存在も。

 そう、本質的に大半の人は人を殺せないのだ。だが、それでは、戦争にならない。だから、軍は、あの手この手でヒトを殺せるようにする。では、どうすれば殺せるのか。どうすれば、ヒトを残虐行為に走らせる事ができるのか。第三部以降で、ヒトが組織的に残虐行為に手を染めるメカニズムを解き明かす。

 ここで出てくる古代エジプトの戦車やローマのファランクスの意外な利点。それは、戦争だけに利用去れているのではない。あらゆる差別やいじめや嫁いびりなど、暴力を伴わなくとも、理不尽な形で相手に不利益を与えるあらゆる行為をなす者が、ソレを利用している。そして、いじめが止めにくい理由、往々にして第三者が問題を軽視しがちな原因も。

 戦争に限れば、殺しやすくする手段の一つは「距離」だ。直感的にわかるように、遠いほうが殺しやすい。相手の姿が見えなければ、殺しの実感がわかず、殺しやすい。人が投擲兵器を開発した理由の一つがソレであり、無人攻撃機が恐ろしいのも、そのためだ。本書では書かれていないが、地雷や爆弾テロは時間的な距離を利用している、と考えていいだろう。

 それ以上に恐ろしいのが、社会的・心理的な手段だろう。グークなどと蔑称を使い、相手をヒトと思えなくする。命令を下す者と実際に手を下す者を湧け、互いが相手に責任をなすりつけられるようにする。「やらない奴はチキンだ」「みんなやってるんだ」と、集団で圧力をかける。

 だが、それでも罪悪感は残る。それを正当化するために、「アイツが悪いんだ」と被害者を悪者に仕立て上げる。自分一人でやるのは難しいが、「赤信号みんなで渡れば怖くない」。衆を頼み、被害者を更に痛めつける。更に罪悪感は募り、更なる正当化が必要になり…。そんな悪循環が、不利益を与える側に起き、現象はエスカレートしていく。

 では、第三者はなぜ問題を軽視しがちなのか。ここで私はあなたに問う。「あなたは、そうやって残虐性がエスカレートするメカニズムを知っていましたか?」

 知らない人が多いんじゃなかろか。そう、わかんないのだ。

多くの人は臆病なのではなくて、ただ人間の残虐性という事実に慣れていないのだ。そんなことは考えたこともなく(新聞やニュースで読んだり聞いたりしているのにまさかと思うかも知れないが)、いざとなるとどうしてよいかわからないのだ。

 ということで、酷い場合には「んな事あるわけねーだろ」と被害そのものを「なかった」事にしたがる。この本は戦争に焦点を絞っているが、ちょっと想像力を働かせれば、似たような構図はどこにでも見つかる。大きなものでは、かつての奴隷制や人種・宗教などあらゆる差別がある。身近なものでは、いじめや嫁イビリ、児童虐待だ。

 基本的に軍人が書いた本だから、将兵の立場に立って書かれている。ベトナムでは様々な手段で兵に人殺しというタブーを乗り越えさせたが、その代償も大きかった。「なぜ殺せないか」「どうすれば殺せるか」「その代償は何か」を分析し、組織的に残虐行為をする手口を暴く。悪用すれば危険な内容だが、知らなければ餌食にされるか、または知らぬ間に共犯者にされてしまう。あなたが悪を憎むのなら、少なくとも悪に手を貸したくなければ、その手口を知っておこう。

 なお、第八部では、米軍の使った方法を理由に暴力表現の規制を求めており、これにはかなりの説得力がある。私は違う意見だが、別記事で述べる。

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2013年6月 5日 (水)

ジャック・ヴァンス「奇跡なす者たち」国書刊行会 浅倉久志編

「未来には多くの道がある。そのなかには、まぎれもなく気の滅入る道もあるだろうさ」
  ――奇跡なす者たち

【どんな本?】

 先日(2013年5月26日)、惜しくも世を去ったSF界の巨匠ジャック・ヴァンスの傑作中短編8作を集め、日本独自に編集した傑作選。「SFが読みたい!2012年版」のベストSF2011海外編でも、堂々3位に輝いた。異世界を書かせたら定評のあるヴァンスだけに、この作品集は遠い未来の異星を舞台にした作品が集まっている;「最後の城」だけは遠未来の地球だが。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2011年9月15日初版第1刷発行。単行本ハードカバー縦一段組みで本文約405頁。9ポイント45字×20行×405頁=約364,500字、400字詰め原稿用紙で約912枚。普通の長編小説なら2冊分に少し足りない程度。

 浅倉氏・酒井氏ともにベテランだけあって、文章は読みやすい。ヴァンスは特に難しい科学理論も出てこないので、海外SFの入門用には手ごろかも。

【収録作は?】

 以下、作品名は日本語の作品名/原題/初出/初訳/訳者 の順。

フィルスクの陶匠 / The Potters of Firsk / アスタウンディングSF1950年5月号 / SFマガジン1999年2月号 / 酒井昭伸訳
 新米記者のケセルスキーは星務省のトーム人事部長へのインタビューに訪れたが、デスク上の黄色い大鉢に見ほれてしまった。そんなケセルスキーを見透かしたトーム人事部長は彼を昼食に誘い、鉢のいわくを語り始める。「あれはちょうど、あなたくらいの齢ごろのことでした」
 
 駆け出しの職員トームが、新しい任地フィルクスで出遭った事件。30頁程度の短い作品ながら、見事な起承転結で鮮やかな職人芸を味わえる作品。この本の最初の作品でもあるし、味見には最適の一作だろう。この記事を書くために初出を調べて驚いた。なんと60年以上も前の作品だ。これを「期待の新人作家の作品」と言われたら、素直に信じてしまうだろう。
音 / Noise / スタートリング・ストーリーズ1952年8月号 / 初訳 / 浅倉久志訳
 星の海で遭難したハワード・チャールズ・エヴァンスは、救命艇で、その惑星に降り立った。現地で水は調達できるし、食料も充分にある。水耕タンクもあるので、長引くようなら食料も自給可能だ。特に危険な生物も見つからないし、救難信号を出していれば、いずれは救援隊が来るだろう…
 
 「未知の惑星で遭難した男が出遭ったのは…」という、古典的なパターンの作品。エヴァンスが降り立った惑星の風景が、なかなかに魅力的。タイトルは Noise だけど、むしろ静けさと調和を感じさせる幻想的な作品。
保護色 / The World Between ( Ecological Onslaught ) / フューチャーSF1953年5月号 / SFマガジン1986年4月号 / 酒井昭伸訳
 バーニスティーが率いる大型探索船<ブラウエルム>は、有望な惑星を発見した。ややこしい事に、この惑星は、彼らの母星系ブルー・スターと、敵対する星系ケイの中間あたりにある。お互いが見落としていたのだ。早速、領有宣言を出し、「ニューアース」と名付けたバーニスティーら一行は降り立って惑星改造を始めたが、ケイの連中も黙っちゃいなかった。
 
 これまた見事なバイオ/環境SF。生物を使って惑星の環境を改造しようとするバーニスティーらと、それを邪魔するケイの熾烈な頭脳戦が楽しい。オチも鮮やか。ジョージ・R・R・マーティンの「タフの方舟」が好きな人なら、きっと気に入るだろう。
ミトル / The Mitr / ヴォーテックスSF1953年vol.1 #1(夏号) / 初訳 /  浅倉久志訳
 入り江に住む一人の女、ミトル。カブトムシたちは、彼女をそう呼ぶ。名前の他の持ち物は、他に草の寝床と、カブトムシから盗んだ茶色の布地だけ。岬まで歩けば、ティ・スリ・ティ、年老いた灰色のカブトムシが話しかけてくるかもしれない。退屈したミトルは岬に向かい歩き始める。
 
 冒頭から、彼女ミトルは恐らく異星で遭難した男女の子が、たった一人で成長した姿なんだろう、と匂わされる。短く幻想的で、未来の一場面を切り取ったような短編。
無因果世界 / The Men Return / インフィニティSF1957年7月号 / SFマガジン1980年6月号 /  浅倉久志訳
 かつて、この世界は論理が支配していた。結果には、原因がある。だが、因果が崩壊した。そこに残っているのは、二種類の者だけ。かつての論理を維持し、故に常に飢えに悩む<残存種>レリクトと、因果が崩壊した世界に順応した<有機体>オーガニズム。時間すら崩壊した世界で飢える残存種は…
 
 因果が崩壊した世界に順応できるのは、どんな者かというと…。まあ、そうなるよね。これも、SFとファンタジーの境界のような作品。
奇跡なす者たち / The Miracle Workers / アスタウンディングSF1958年7月号 / SFマガジン1985年10月号・11月号 / 酒井昭伸訳
 フェイド卿が率いる遠征軍は、バラント城を目指し進軍する。イサーク・コマンドアを筆頭にアダム・マカダム,エンターリンと三人もの強力な咒師を擁するフェイド卿の進路を塞いだのは、意外な障害物だった。
 「<先人>どもが北と南の原生林のあいだに森を設けたのです」
 
 科学が衰退し、かわって魔法のような咒術が発達した未来の世界。中世の欧州を思わせる、群雄が割拠する社会構造。この作品で見事なのは、イサーク・コマンドアが語る咒術の原理。当初はいかにも魔法のようだが、ちゃんと文化人額的な考察がなされていて、万能ではなく、できること・できないことが明確にあるのだ。序盤で咒術の強力さを描き、圧倒的な力を示した上で、中盤以降で原理を開明していく。これ書き分ける構成の妙も見事。
月の蛾 / The Moon Moth / ギャラクシーSF1961年8月号 / SFマガジン1980年5月号 / 浅倉久志訳
 惑星シレーヌに領事代理として赴任したシッセル。日頃は古びたハウスボートに住まい、様々な楽器を練習する。常に<月の蛾>の仮面を被りながら。そう、ここシレーヌの海上都市ファンは、独特の複雑で強固な規範が支配しており、それに順応できなければ、最悪の場合は命を落としかねない。なんとか相応しい振る舞いを身に着けようと努めるシッセルに、緊急の報が飛び込んだ。凶悪犯ハゾー・アングマークがファンに逃亡した、というのだ。
 
 ファンの華麗で複雑な社会様式が見事で、クラクラしてくる傑作。日本語だと敬語があって、自分と相手の社会的な立場や、その時の状況によって、ことばづかいが変わるので、日本の読者にはファンの風習はわかりやすいかもしれない。が、それを楽器や仮面によって明示する文化というのも、なかなか凝っている。とまれ、社会的な地位が、わかりやすい経済力や権力ではないのが見事。複雑怪奇でありながら、洗練された様式美を備えたファンの文化と、凶悪犯を追うミステリの面白さを兼ね備えた、今なお色褪せないヴァンスならではの傑作。Moon Moth で画像検索した結果はこちら
最後の城 / The Last Castle / ギャラクシーSF1966年4月号 / 世界SF大賞傑作選2 1979年 / 浅倉久志訳
 シー・アイランド城は墜ち、残った者は虐殺された。ジャニール城にも戦士たちが押し寄せた。難攻不落と思われ、700年の栄華を誇ったジャニール城も、ついに陥落した。そして、ついにヘゲドーン城にもメックがやってきた。エタミン星系の惑星で発生した類人種族メックを、人類は改造して技術奴隷として使役してきた。従順だったメックが叛乱を起こすとは、誰も考えていなかった。
 
 我々が考える欧州の貴族の社会とは、どんなものだろう。遠い未来を舞台としつつ、グロテスクなまでに貴族社会・規則的な価値観ををデフォルメして提示する作品。「欧米」とは言うけど、アメリカと欧州は大きく違う点が幾つかある。その一つは開拓者精神で、アメリカじゃパンクの修理やログハウスの建築、キャンプでの焚き火など下世話な技術を身につけ、必要な時に発揮できる者は尊敬される。が、欧州の貴族階級では、己の手を汚す作業に携わるのは、恥と感じる人もいるとか。この辺は、長い伝統を持つ階級社会じゃよくある事らしく、インドじゃカーストとして明文化までされている。日本は、どっちなんだろうね。メーカー系企業だと、職人技を自慢する重役が結構いたりする。

 発表は1950年~1966年と古いが、21世紀の今日読んでも、全く古びていない。未来を描くSFで、60年以上も新鮮さを保つとは驚異だ。冒頭の「フィルクスの陶匠」の短編らしい切れ味も見事ながら、魔法をじっくり書き込んだ「奇跡なす者たち」、ファンの華麗で独特の価値観を描く「月の蛾」、こういった「異様・異形でありながら、底にキチンと理屈が通った社会」を描いた作品は、今でもヴァンスの独壇場だろう。

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2013年6月 2日 (日)

エレン・ラペル・シェル「太りゆく人類 肥満遺伝子と過食社会」早川書房 栗木さつき訳

BMI = 体重(kg) ÷ 身長2(m)

「肥満は一兆ドル産業を支える病気ですから」  ――某バイオ企業役員

妊娠六ヶ月までに飢餓を経験した母親から生まれた子どもたちは、成人になると、八割以上が肥満になる傾向があるという、驚くべき事実があきらかになった。同様に驚くべきことに、妊娠七ヶ月以降に子宮のなかで飢餓を経験した、あるいは生後五ヶ月までに飢餓を経験した人々は、その四割が肥満になりにくい傾向を示した。

【どんな本?】

これからの薄着になる季節には、誰もが気になるおなかのタプタプ。おかげでダイエット産業は花盛りで、低炭水化物ダイエットなど食事を工夫するもの、ヨガやジョギングなどカロリー消費を増やすもの、なかには薬物や手術に頼る場合もある。

 一般に肥満は本人の性格やだらしない生活の結果と見なされる。だが、本当にそうなのだろうか。例えば、ウシやブタなど食肉用の家畜は品種改良で意図的に肥満した品種を作り出している。ヒトはなぜ太るのか。やせ薬は安全なのか。生活習慣で肥満は改善できるのか。なぜ太った人が増えたのか。体質か、生活習慣か、社会環境か。

 最先端の遺伝子科学から学校の自動販売機まで、科学の成果と社会の変化を洗い出し、ヒトが太る原因を追うと同時に、食品業界と医薬品業界の裏側を暴露する切実なノンフィクション。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は THE HUNGRY GENE, by Ellen Ruppel Shell, 2002。日本語版は2003年8月15日初版発行。単行本ハードカバー縦一段組みで本文約314頁+訳者あとがき4頁。9ポイント45字×20行×314頁=約282,600字、400字詰め原稿用紙で約707枚。長編小説ならやや長め。

 文章は比較的にこなれている。特に前提知識は要らないので、内容そのものは中学生でも理解できるレベルだろう。注意すべきは一箇所だけ、第3章のobマウスとdbマウスの部分。さりげなく書かれているので読み飛ばしがちだが、以降の内容を理解するには重要な所なので、注意深く読もう。

【構成は?】

 はじめに――一1ドルの疾患
第1章 肥満大国アメリカ――外科手術に挑むナンシー
第2章 邪悪な人間は太る――肥満と偏見の歴史
第3章 肥満は生まれつきか――肥満と遺伝子
第4章 肥満研究最先端――謎の飽食因子をさがせ
第5章 飢え――フリードマン、ob遺伝子を発見する
第6章 臨床の例外――パキスタンのいとこたち
第7章 やせ薬の命にかかわる副作用――フェン・フェン療法の教訓
第8章 世界に広がる肥満という病――缶詰をあけはじめたコスラエ島民
第9章 健康は胎内から――飢餓にさらされた胎児と新生児の将来
第10章 欲望から手の届くところに――食品業界の思惑
第11章 正しい選択――肥満の波を押しとどめるには
 訳者あとがき

【感想は?】

 お腹のお肉が気になる人なら、書名だけで引き込まれるだろう。しかし、残念ながら、この本に具体的なダイエット法は出てこない。この本は、「太る原因」を探る本だ。その一部は遺伝であり、一部は母親の胎内を含めた育成状態であり、一部は社会環境であり、一部は食事内容であり、一部は生活習慣である。

 ではダイエットの役に立たないかというと、実はそうでもない。特に第10章と第11章。ここでは、アメリカのファストフード産業の活動と、生活の変化を挙げて、肥満の環境要因を数え上げていく。特にファストフード産業の部分を注意深く読めば、「太る食生活」が見えてくる。これを避ければ、ある程度の管理が可能になる…場合も、ある。

 そう、あくまでも、「管理できる場合もある」であり、生まれつきの体質で、太ってしまう人もいるのだ。この「体質」が複雑で、大きく分けて2つのケースがある。遺伝子に問題がある場合と、育成環境による場合。しかも、それぞれが複数の要因があるから、ややこしい。遺伝的な要因でも、少なくとも3種類以上の原因がある。

 遺伝的な問題では、2匹のマウスが登場する。obマウスとdbマウスだ。いずれも遺伝子の異常で太っている。鍵はレプチン(→Wikipedia)だ。レプチンは「食うのをやめろ」という信号を出す。obマウスは正常なレプチンが作れない。だから食べ続ける。レプチンを注射したobマウスは劇的に痩せた。

 「ヒトとマウスは違う」と思われるかもしれない。第6章では、遺伝子異常でレプチンを作れない子供たちが登場する。彼女たちは、レプチンの投与で劇的なダイエットに成功する。

 では、レプチンは万能なのか。残念ながら違う。先の肥満マウスはodとdbがいて、odは痩せたがdbは痩せなかった。なぜか。dbマウスは、レプチンの受容体に異常があり、信号が受信できないのだ。他にも、食欲を抑制する脳内タンパク質POMC欠損による肥満の例が出てくる。これで少なくとも3つの事が判る。1.遺伝的に太る人もいる 2.太る遺伝要因は複数ある 3.万能の痩せ薬はない。

 もう一つの体質、育成環境も重要だ。冒頭の引用が示すように、胎児や嬰児の頃の栄養状況も重要な要素となる。だが妊婦の食べすぎもよくない。糖尿・肥満の母から生まれた子も、肥満になりやすいのだ。サウザンプトン大学医学研究審議会の環境疫学班長デイヴィッド・バーカー曰く「妊娠七ヶ月以降の女性に好きなだけ食べさせたら、けっして望ましい結果にはならない」。

 などの生来的なものもあるが、社会的な要因もある。第10章では、アメリカの食品産業の現状を暴き、その病理を告発してゆく。日本の生活習慣はアメリカから10~20年遅れて追随している感があるので、巧くやれば回避できる…のかなあ。ここで描かれているのは、バーガーキングなどのファストフード産業が、誰をターゲットとしているか、だ。標的は、子供。

 テキサスA&M大学でマーケティングを教えるジェイムズ・U・マクニール名誉教授曰く「家族の車を買うときに鍵を握るのは親かもしれないが、家族の食費の鍵を握るのは子どもである」。アルコン・マーケティング社アカウント・ディレクターのカレン・ピッチアーノ曰く「一家族が(バーガーキングの)店で支払う料金の平均は家族連れでない顧客の代金の3倍にあたる」。だからマクドナルドはオモチャを景品につけるのね。

 これが何で怖いかというと、食べ物の好みは「発達」するからだ。日本でも、年配者にはコーラを「薬っぽい」と嫌う人がいる。一般に子どもは辛いものが苦手だが、インドでは子どももカレーを食べる。ところが、子どもにメニューを任せると、甘いものばかりになる。大人もこれに引きずられるとマズい。

 他にも、レプチン発見に至る研究者ジェフリー・フリードマンとダグラス・コールマンの軋轢、胃切除という過激なダイエットに挑むナンシー・ライト、医薬品業界と医学界の癒着、極端な社会変化が島民の生活と体形を変えたコスラエ島、ステルス・マーケティングを駆使する痩せ薬など、読み所はいっぱい。お腹の肉が気になる人なら、読んで損はない。

 余談その1、私のダイエット法。

 何かを食べたら3分以上歯磨きする。歯磨き粉は使わない。たとえポテトチップひとかけらでも、必ず3分以上歯磨きする。歯磨き粉には研磨剤が入っていて、あまり磨きすぎると歯が磨り減る。だから歯磨き粉は使わない。3日ぐらい続けたら、歯にモノが挟まっていると不快に感じるようになる。でも歯磨きは面倒だから、間食が減り、食事をキチンと食べるようになる。一般に間食はお菓子で、脂肪と炭水化物の塊だ。栄養バランスやカロリーの管理が難しい。でも食事は管理しやすいから、野菜や海藻をたくさん食べよう。

 余談その2。簡単なBMI計算機をJavaScriptで作ってみた。身長と体重に半角の数字を入れて計算ボタンを押すとBMI値が出る。

身長: (cm)  体重: (kg) 

あなたのBMI値は

21

です。

普通

です。

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