久門易「今日からデジカメがうまくなる」ソフトバンク新書008
どのようなデジカメでも、覚えておくべき基本の操作はたった5つだけ。これらをマスターすれば、カメラの操作に関してはプロなみのテクニックを身につけたも同然です。そのうえで、撮影の目的や被写体によって異なるポイントをしっかり押さえるだけで、うまい!と思える、人に見せてほめられる写真が撮れるようになります。
【どんな本?】
プロ・カメラマンによる、ズブの素人むけ写真撮影入門。
昔のフィルム・カメラに比べ、最近のデジタルカメラは機能が豊富だ。そして、何枚撮ってもフィルム代は要らない。だが、いくら機能が豊富でも、分厚いマニュアルは見るだけで読む気が失せるし、読んでもイマイチ意味がわからない。そんな面倒くさがり屋で機械オンチな人に向け、ポイントを絞ってわかりやすく解説した、デジタル・カメラで綺麗な写真を撮るコツを具体的に教えてくれる親切で便利な本。
【いつ出たの?分量は?読みやすい?】
2006年4月26日初版第一刷発行。変化の速いデジタル物だが、意外と今でも充分に通用する内容。ソフトカバーの新書で本文約192頁+あとがき2頁。9.5ポイント38字×14行×192頁=約102,144字、400字詰め原稿用紙で約256枚だが、サンプルの写真を豊富に掲載しているので、実際の文字数は7~8割ほど。小説なら中編ぐらいの分量。
文章はこなれていて読みやすい。内容も初心者向けで、特に前提知識は要らない。必要なのは、下手な写真を撮った経験だけ。
【構成は?】
まえがき
第1章 なぜ下手な写真しか撮れないのか?
第2章 5つのポイントを押さえればデジカメは使いこなせる
第3章 うまいと言われる写真を撮る方法
第4章 写真を「魅せる」方法
第5章 間違いだらけのカメラ選び
あとがき
【感想は?】
本書の想定読者は、以下3つの条件を全て満たす人。
- デジタル・カメラを持っている
- 写真やカメラについては「撮りたいものに向けシャッターを押せば写真が撮れる」ぐらいしか知らない
- もうちょっと上手に写真を撮りたいと思う
悲しいことに私も条件を満たしている。腕前は、この記事の一番下の写真を見て欲しい。多少なりとも写真を知っている人なら「うわヒドい」と絶句するだろう。ちなみに持ってるカメラは Nikon COOLPIX S600。えっと、何世代前だ?
そんな人向けに、この本がある。登場するデジタル・カメラは、一眼レフとコンパクト・カメラの両方。違いを大雑把に説明すると、高価(5万円以上)で大きいのが一眼レフ、安くて小さいのがコンパクト・カメラ。プロやマニアが持ってるのが一眼レフ、私やあなたが観光地で記念撮影に使うのがコンパクト・カメラ。
内容の多くは、コンパクト・カメラに割かれている。写真というとレフ板や望遠レンズなど高価な機材が要りそうだが、この本に出てくるのはせいぜい千円の三脚ぐらいで、あとは背景用の色紙や100円ショップの造花ぐらい。つまりは徹底的に素人向けでお手軽な写真の入門書なのだ。内容は、大きく分けて以下の4つ。
- カメラの機能と、その意義
- 腕をあげるために心がける点
- 具体的な対象・目的別の撮影のコツ
- プロ・カメラマンの仕事の真相など
カメラの機能と使い方はマニュアルを見ればわかるが、その機能のナニが嬉しいのか、素人にはわからない。この本は、5つの機能に絞り、その原理から効果、そして「どんな時にどんな目的でどんな風に使うのか」を懇切丁寧に教えてくれる。たった5つってのが嬉しい。曰く。
- 露出補正で明るさを調整しよう
- なるたけストロボ(フラッシュ)は使わない
- 人の全身をカッコよく撮るには遠くから望遠で撮ろう
- マクロモード(接写、チューリップ印)や半押しでピントを合わせよう
- ホワイトバランスで色を調整しよう
早速試したが、補正露出の効果は絶大。右の写真は上から補正露出-2・-1・0・+1・+2と変えたもの。つか今までマクロモードを知らなかった。ああ恥ずかしい。ちなみに同じ女性モデルでも、女性週刊誌に載る写真と青年誌に載る写真は肌の色が全然違って、一般的に女性誌は色白に調整してる。これ、たぶん、読者が好む肌の色の違いなんだろうなあ。
上達のコツは、これも5ステップにまとめてある。
- カメラを使いこなそう
- 設定やアングルを変えて何カットも撮ろう
- 写したいものを大きく写そう、他は切れてもいいじゃないか
- 背景も気をつけよう、オシャレなモデルにはオシャレな背景
- 光に注意しよう
デジタル・カメラだとフィルム代が要らないんで、いくらでも練習できるのが嬉しい。おまけに、撮ってすぐ確認できるし。「写したいものを大きく」ってのは、気がつかなかった。観光地で記念碑とかと一緒に写真を撮る時、記念碑が切れないよう気を使うけど、大事なのはモデルなんだよなあ。
対象・目的別のコツは、とっても具体的。ちょっと目次から引用しよう。
人物を撮る:撮影時のポイント/被写体別アフドバイス
行事を撮る:結婚式・パーティー/音楽会・舞台/運動会/お祭り/花火・夜景/観光地での記念撮影
ものを撮る:さまざまな小物/絵画や版画などの平面物/料理/花
作品を撮る:ポートレート/風景・自然/スナップ/旅行/コンテストに入賞するコツ
「観光地じゃまず風景だけを写し、その後に人をアップで撮ろう」とか、楽しい写真を撮る嬉しいコツを具体的に教えてくれる。「料理は切れてもいいからデッカク撮ろう」とか。Yahoo!オークションなどに出展している人は、「ものを撮る」必読。また、「子供を撮るには、まず子供に好きなポーズをさせ、後で大人が好きなポーズを撮ろう」とか、プロならではの気遣いも嬉しい。
なんであれ、学ぶには実習が一番いい。だから、この本の最も適切な読み方は、こんな感じだろう。晴れて天気のいい日に、この本とカメラとカメラのマニュアルを持ち、動きやすい格好で戸外に出かけ、読みながらパシャパシャと実際に撮ってみるのだ。できれば、あなたの好きな人にモデルになってもらおう。その前に、カメラの電池とメモリの残量の確認を忘れずに。
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