二大政党制で両党の政策が似てくるわけ
ネタ元はウイリアム・パウンドストーンの「選挙の経済学」。
米国は昔から共和党と民主党が鍔迫り合いを演じていて、二大政党制などと言われる。大統領も両党が交代で務めている感がある。一般に共和党は保守っぽい印象があり、民主党は革新っぽい。
が、あくまでも「っぽい」のであって、意外と民主党が大きな戦争の口火を切ったりしているし、共和党でもコリン・パウエルあたりはリベラルな言動が目立つ。正直言って、私のような素人には両党の違いがよく判らない。
判らないのも当然で、「二大政党制で小選挙区だと、自然と両党の主張は似てくるんだよ」というのが、パウンドストーンのお話。うろ覚えだが、自分なりに絵を描いて解説してみよう。モデルは小選挙区。一つの議席を両党で競う選挙制度だ。
一般に政治主張は、右派とか左派とか言われる。二人の候補者がいたら、有権者は自分の主張に近い方の候補者に投票するだろう。
パウンドストーンは、これを浜の屋台に例える。浜辺があって、屋台が二つ出ている。客は浜の左から右へと全体に均等に散らばっている。両店の扱う品も値段も違いはない。客は、自分に最も近い店で買う。なるべく多くの客を掴むには、どこに店を出せばいいだろうか?
まず、右端と左端に店を出してみよう。それぞれが、同数の客を得るだろう。以下の図のようになる。
ここで、青屋が欲を出す。「もちっと真ん中に寄れば、赤屋の客を奪えるんじゃね?」
青屋の読みは当たり、赤屋の客を奪う。だが赤屋も黙っちゃいない。「そっちがその気なら、俺だって…」と、少し中央に寄る。
これを繰り返すと、最終的に二つの店は、浜の真ん中に並んで店を出す形に落ち着く。
と、こんな風に、浜の屋台は、浜の真ん中あたりに集まっていく。この図は一次元だけど、二次元の平面でも、似たような現象が起きて、特定の地域に同じ品物を扱う店が集まってくる。秋葉原は、そうやって出来たのだ。ホンマかいな?
政治の話しに戻そう。上の図のように、一つの議席を奪い合う二大政党制だと、両党の主張は、有権者全体の意見の中央値あたりで見分けがつかなくなっていく。とは言っても、単純化したモデルなので、幾つかの点で現実とは違う。今、アドリブで考えても、以下3つが思いつく。
- このモデルだと、有権者の全員が浮動票と仮定してるけど、そりゃ無茶でない?
- 有権者の全員が、両候補者の主張を完全に理解するとは思えないなあ。
- つかさ、政治主張って、一次元の直線で表せるほど単純じゃないよね。
それでも、このモデルは面白い。現実の選挙でよくある「表割れ」、または「スポイラー」と呼ばれる現象も、巧く説明できるのだ。
こんなシナリオを考えよう。両党が鍔迫り合いを演じている時に、第三の党が名乗りを上げる。ここでは、緑屋としよう。赤屋が左派、青屋を右派として、緑屋は極右とする。緑屋は極端な政策であり、少しの票しか集めない、選挙戦としては、事実上、赤屋と青屋の一騎打ちだが、緑屋の出現は、どっちの党の有利に働くだろうか?
実は、左派の赤屋に有利なのだ。極右の緑屋は、右派の青屋の票を奪う。半々に分け合ってたのが、青屋の票が減るので、赤屋の得票数が最大となる。この形の緑屋を、パウンドストーンはスポイラーと呼んでいる。
…などと記事を書いてみたけど、あんまし、この図はわかりやすくないなあ。お口直しに、今思いついたジョークを。
クラークの第三法則:共和党員向け 「充分に発達した民主党は、共和党と区別がつかない」
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