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2012年10月13日 (土)

榊涼介「ガンパレード・マーチ2K 新大陸編 4」電撃文庫

「出来合いのケチャップ、マスタードだけでは、5121の沽券にかかわる!俺の顔が立たんバイ。オトナの酸い味わいのレリッシュをオプションに加えて、はじめてホットドッグ屋台はホンモノの屋台に昇格する!レリッシュを笑う者はレリッシュに泣くんぞ?」

【どんな本?】

 2000年9月に SONY Playstation 用ゲーム「高機動幻想ガンパレード・マーチ」のノベライズとして短編集「5121小隊の日常」を皮切りに始まったシリーズ、通産34巻目。ゲームのシナリオは「5121小隊の日常Ⅱ」で完了したが、以降も榊涼介オリジナルの内容で「山口防衛戦」でシリーズは再開、現在まで続いている。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2012年10月10日初版発行。文庫本の縦一段組で本文約263頁。今回もあとがきはなし。ぐっすん。8ポイント42字×18行×263頁=約198,828字、400字詰め原稿用紙で約498枚、標準的な長編小説の長さ。短期間での連続刊行にも関わらず、執筆ペースは高速で安定してる。

 ライトノベルらしく一部の登場人物がクセのある話し方である点を除けば、相変わらず文章は素直で読みやすい。戦争物であるワリにオカタい言い回しが気にならないのは、実際に減ったせいか、私が慣れたせいか。

 ただ、やはり長いシリーズだけに、世界設定や登場人物の背景は入り組んでいる。冒頭に「承前」として「これまでのあらすじ」をまとめてあるが、中心となる5121小隊の面々を始め重要人物が一切の紹介なしに登場するので、さすがにこの巻から読み始めるのは無茶。できれば刊行順に「5121小隊の日常」から、または時系列的に最初の「episode ONE」から読み始めるのが理想。「なんか途中でめげそう」という人は「新大陸編1」から読み始めてもいいだろう。

 とか言ってるけど、要は私、このガンパレード・マーチの世界観が好きなのよ。

【どんな話?】

 カナダ国境より合衆国のオンタリオ湖~大西洋方面に押し寄せた幻獣の群はニューイングランドを席巻、不意を打たれつつも米軍はボストン防衛線で迎え撃つ。ボストン方面は突然の幻獣の撤退で持ち返すが、オンタリオ湖方面の圧力は次第に高まりつつあった。

 米国の「招待」に応じた5121小隊はフェルナンデス中佐率いる海兵隊の戦闘群と合流、途中でオンタリオ湖近くで孤立したレイクサイドヒルの救出に向かう。先行した陸軍の部隊を吸収しつつ前進を試みるが、北上するにつれ高まる幻獣の圧力には抗せず、湖からの強襲揚陸へと作戦を変更、ロチェスターにて原素子率いる整備班の活躍もあり、浮きドックでの市民大量輸送という奇策で起死回生を計る。

 だが、ワシントンではバーナード国防長官が陰謀を巡らせ、救援を待つレイクサイドヒル市民を見殺しにするミサイル攻撃を進言、パーシバルの努力も虚しくタイムリミットが迫る。5121小隊、特に舞と速水の三号機に曳かれるように幻獣はレイクサイドヒルに殺到する中、敵前上陸が始まった。

【感想は?】

 敵前上陸とくれば海兵隊のお家芸。浮きドックの奇策といい、こりゃノルマンディーの再来かと思ったら、実はちゃんと桟橋から上陸するのでありました。わはは。とまれお迎えも豪勢で、久しぶりにスキュラとゾンビヘリが襲来。「こりゃヤバい」と思ったら、なんと冒頭から必殺技が炸裂。気分は「なぎ払え!」

 二言目には「ファッキン」のアメリカ人に影響されてか、この巻での舞ちゃんも幾分か口が悪くなってる。今までユーモアの欠落を気にしてたけど、ちゃんと軽口叩けるじゃないか。まさか舞の台詞で笑う時が来るとは思わなかった。「やらんがな」って。

 意外な変化を見せてるのが狩谷。クールなように見えて、やはり自分が手がけた機体には愛着があるのか、対抗意識をのなせる技か。こーゆー人間臭い部分が増えてくると可愛くなってくるなあ。中盤では陰険眼鏡を生かした心遣いまで見せて、「あの狩谷が…」としみじみ。

 遠征先では常に新メニューの開拓に余念のない中村、アメリカでもホットドックのレリッシュ(→コトバンク)に拘る拘る。やぱり炊き出しするんかい。もはや恒例だね。つか久萬、居ついちゃうんじゃなかろか。この辺は取材の成果?

 新大陸編からの登場人物では、やっぱり光ってるのがフェルナンデス中佐とプラッター大尉のコンビ。生粋の海兵隊員であるプラッターの葛藤を、多彩な人脈とお坊ちゃんらしい機転で救うプラッター。そこにあんな伝令だもんなあ。そりゃ混乱するって。つか身分のわりに剛毅な御方だ。誰だ、衣装を作ったの。ヨーコさん?

 やはり最終巻だけあって、全体は戦闘シーンが目白押し。5121ほどではないにせよ、臨機応変の即応力に優れた海兵隊、サーカスまがいの機動で幻獣を翻弄する下品の王様小隊、地味に支援射撃に徹する軽装甲、先陣を切って白兵戦を挑む重装甲、そして絶望的な状況を楽しむ舞と速水の複座。しかも、ええ、当然、それだけじゃありません、はい。つか、すっかり忘れてたわエクスカリバー。使い勝手は…ご想像の通り。パーシバルは何と言うんだろう。

 なんとも陰鬱な雰囲気で幕を開けた新大陸編一巻、一縷の希望が射した二巻、起死回生を狙った三巻、そしてクライマックス。全体を見渡すと、きっちり起承転結の構造になってる。

 最終巻で明らかになった驚愕の設定も多々あるだけに、今後もシリーズは続いて欲しいなあ。いややっぱりね、この巻で白馬の騎士役を果たすアレとアノ人は華があるし。出てくるとパッと明るくなるんだよね、場面が。いっそ番外編で主役に据えちゃうとか←無茶言うな

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