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2012年7月28日 (土)

SFマガジン2012年9月号

「よくぞ集まってくれた諸君!君たちは一人ひとりが五稜郭全学生徒から選び抜かれた最強・最精鋭の一兵卒であると同時に、五稜郭の運命を背負った誇り高き勇士だ!」
「「「おおー!」」」  ――籘真千歳「蝶と夕桜とラウダーテのセミラミス(中編)」

 280頁の標準サイズ。今月の特集は二つ、「この20人、この5作」は、厳選した海外のSF作家20人について、代表作5作を紹介する。もうひとつは映画「ダークナイト ライジング」と「アベンジャーズ」の公開にあわせ、「アメコミ特集2012」。お陰で小説は山本弘の「輝きの七日間」と籘真千歳の「蝶と夕桜とラウダーテのセミラミス(中編)」のみ。しくしく。

 「この20人、この5作」の面子は、以下。

アイザック・アシモフ/アーサー・C・クラーク/ロバート・A・ハインライン/フィリップ・K・ディック/カート・ヴォネガット/シオドア・スタージョン/スタニスワフ・レム/J・G・バラード/サミュエル・R・ディレイニー/アーシュラ・K・ル・グィン/ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア/クリストファー・プリースト/ウィリアム・ギブスン/デイヴィッド・ブリン/コニー・ウィリス/ダン・シモンズ/ロバート・J・ソウヤー/グレッグ・イーガン/ニール・ゲイマン/チャイナ・ミエヴィル

 まあ、こーゆーリストってのは、どう作っても文句が出るもんだけど。私なら、ディレイニーとゲイマンとミエヴィルを外してラリイ・ニーヴンとジェイムズ・P・ホーガンとバリトン・J・ベイリーを入れるかな。グレッグ・ベアとスティーヴン・バクスターとマイク・レズニックとR・A・ラファティと…とか言い出すとキリがない。あと、一発屋も特集して欲しいなあ。クリス・ボイルの「キャッチワールド」、グラント・キャリンの「サターン・デッドヒート」、T・J・バスの「神鯨」、スパイダー&ジーン・ロビンスンの「スターダンス」…って、商売にならんな。

 なおブラッドベリは来月に追悼特集をやるんで、あえて見送ったとのこと。テッド・チャンが入ってないのは、寡作だからだろうなあ。ニューウェーヴの不合理に反発したアシモフから始まり、不条理が楽しいミエヴィルで終わるのが皮肉。以下、各作家について。

  • フィリップ・K・ディック:やっぱり彼のテーマは「本物と偽物」だよねえ。「くずれてしまえ」とか「電気羊」とか。
  • カート・ヴォネガット:彼のファンは妖女派と猫派がいるそうな。私は猫派。そういうものだ。
  • シオドア・スタージョン:短編は技巧を凝らしたのが多いけど、長編は素直に娯楽として楽しめるのが多い。私なら、まず「人間以上」を薦める。
  • スタニスワフ・レム:私はソラリスより「砂漠の惑星」の方が好きだ。わかりやすいし。
  • デイヴィッド・ブリン:知性化シリーズを完結させる気はあるんだろうか。
  • グレック・イーガン:他の作家は顔のイラストを掲載してるんで、もしや…と思ったら、No Image。笑った。

 友成純一「人間廃業宣言」、インドネシアのバリからホラー系の変な映画を紹介するこのコーナー。今回は「びっくり映画」Chllerama の第一話「ワジラ」Wadzilla に爆笑。巨大精子の暴走というエロマンガにありがちなアイデアだけど、それを実際に映像化しちまう実行力に脱帽。

 橋本輝幸「世界SF情報」、ペーパーバックは相変わらずジョージ・R・R・マーティンが4位まで独占。ローカス賞のSF長編部門はチャイナ・ミエヴィルの Embassytown。そういや「都市と都市」、まだ読んでないや。

 「アメコミ特集2012」は、柳下毅一郎「アメコミの気恥ずかしさ」で、「アベンジャーズ」と「ダークナイト ライジング」を巧く対比させてる。コミック特有のバカバカしさ・幼稚さを意欲的に取り込み爽快に仕上げたアヴェンジャーズ、敢えて排除しリアリティを追及したダークナイトと評している。

 それぞれの監督のインタビュウも載ってるんだが、「おお!」と思ったのが、アヴェンジャーズのジョス・ウェドン。「6人のヒーローをさばく(描く)のは大変でしょ?」という問いへの返答が見事。娯楽映像作品の真髄を衝いてる。

みんなのインフォメーションを追いかけることは絶対しない。それはやるほうも楽しくないし、観るほうもそう。反対に何が楽しいかと言えば、彼らのエモーションを追いかけること。

 籘真千歳「蝶と夕桜とラウダーテのセミラミス(中編)」。お嬢様養成学校として有名な扶桑看護学校二年の揚羽。人工妖精四等級予定の揚羽だが、なぜか代表生徒ノーブル・フローレンスの候補として出馬する羽目に。辞退するつもりが本命の朔妃は怪我で出馬できず、寡黙な優等生桔梗は多忙で出馬を断念。ミステリアスな雰囲気が好評の周防 vs 生徒会会長の柑奈のライバル対決となる…はずが、面白がって周防が辞退。退路を絶たれ悩む揚羽を見かねてか、剣道実習の時間に非常任講師三条之燕貴が対戦を申し込み…
 重くシリアスで静かな場面が中心な今回だけど、雪柳が登場すると一気に雰囲気が変わり、熱気と喧騒が溢れ疾走感に満ちた展開になるのが楽しい。いいなあ、こういうキャラクター。今度は雪柳を主人公にした作品を是非。

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