かわらないブラッドベリ
初めて読んだのは、「10月は黄昏の国」だった。古本屋で買った酷い乱丁の本だった。SFというより、ホラーの色調が強い内容の短編集だった。「骨」「大鎌」「群集」あたりが記憶に残っている。
記憶に残るといっても、文章は思えていない。頭に浮かぶのは、風景だ。短編が多いせいでもあるけど、彼の作品は、ストーリーより情景が印象的な作品が多かった。
SF者は彼をSF作家と呼び、ホラー・ファンはポーの後継者と位置づけ、ファンタジイ好きは幻想文学者という。要は、みんな、彼に仲間になって欲しかったのだ。
改めて考えると、作家としては不器用な人だったんじゃないかと思う。何を書こうが、ブラッドベリの味になる。一つ覚えと言っていい。それで良かった。彼の読者は、ブラッドベリが好きなのであって、ジャンルはなんだって良かったのだ。重要なのは、ブラッドベリの味がすることであって、SFかホラーかファンタジイかなんて、どうでも良かったんだ。
最初から、彼の作品は古びた雰囲気があった。当然、今読んでも古びた感じがする。ただ、古び方は昔とかわらない。A・C・クラークやJ・P・ホーガンが次第に陳腐化してしまうのに対し、彼の作品は長く愛されるだろう。いつのひか、火星にも彼の作品が持ち込まれるに違いない…紙か電子形態かは不明だが。
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