« 竹原直道編著「むし歯の歴史 または歯に残されたヒトの歴史」砂書房 | トップページ | ウィリアム・コッツウィンクル「ドクター・ラット」河出書房新社 内田昌之訳 »

2012年5月31日 (木)

榊涼介「ガンパレード・マーチ episode TWO」電撃文庫

 「市中引き回しの上、陰惨な『踏み靴下』を強制されるっぞ。以後、やつは忠実な生徒会連合の手先として働くことになる」

【どんな本?】

 SONY Playstation 用ゲーム「高機動幻想ガンパレード・マーチ」の、榊涼介によるノベライズ・シリーズ第五弾。前巻に引き続き、この巻ではシリーズ開始の「5121小隊の日常」以前の日常を綴る。前巻でやっと到着した士魂号、この巻ではついに初陣を飾るのでお楽しみに。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2003年7月25日初版発行。文庫本縦一段組みで本文約277頁+きむらじゅんこの憂鬱Ⅵ2頁。8ポイント42字×17行×277頁=197,778字、400字詰め原稿用紙で約495頁。長編小説なら標準的な長さ、前巻とほぼ同じ分量。

 ライトノベル作家らしく読みやすい文章。時系列的にも前巻に続く小隊結成の初期を書いているので、ゲームをプレイしていない人は、前巻の「episode ONE」から入るのがいいかも。

【どんな話?】

 ついに士魂号が到着し、パイロットたちも人型戦車操縦の習熟に余念がない。ギクシャクしていた整備班とパイロットたちも多少は打ち解け、なんとか隊としての体裁を整えつつある。だが厳しさを増す戦局は悠長な戦車兵育成を許さず、ついに準竜師から出陣の要請が来た。

【収録作は?】

第一話 5121小隊発足
 一足遅れた整備班の残り、遠坂圭吾・狩谷夏樹・新井木勇美・ヨーコ小杉が合流した。熱心に戦術研究に取り組む芝村・速水、白兵戦以外は考えていない壬生屋に対し、自分のすべき事が見えてこず悩む滝川は、軽装甲と話し合う。整備作業が一段落した森は、一人の憲兵を見かけ…

 出だしから遠坂のマイペースが炸裂。トゲのある人物が多いこの作品で、彼の素直さ・鷹揚さはヨーコさんやののみと並ぶ一服の清涼剤。なんたって、あの原さんまで篭絡するんだから凄い。壬生屋は最初から白兵戦しか考えてない所が、彼女らしい。トゲと言えば「陰険眼鏡」の名で特殊な?女性ファンに人気の狩谷のダークさもよく出てる。なんで遠坂より狩谷が人気あるのかなあ。ガンパレは、ファンもクセの強い人が多いようで。「小隊の日常」の「突撃準備よろし」で暴れた田代の登場も、いかにも彼女らしい。
芳野の日曜日
 ムーンロードを通りかかったパイロットの四人は、珍しい人を見かける。国語教師の芳野だ。心痛に耐えかね酒びたりの芳野を心配した四人は、こっそり後をつけ…
 「episode ONE」の「教官の憂鬱」に続く、芳野先生にスポットがあたる掌編。
第二話 士魂号、前へ!
 ついに初陣を迎えた5121小隊。しかし、長時間の待機が続いていた。緊張するパイロットの面々、特に壬生屋と滝川は周囲の状況も見えていない。待ちくたびれた所に、やっと幻獣が出現した。多数の戦車随伴歩兵に加え、六輪の装輪型戦車士魂号Lを有する友軍に対し、幻獣はゴブリンなど小型が主体で、ナーガ十体とミノタウロス一体。戦力的には自衛軍が圧倒的に優位な戦場だが…

 やっと初陣。どうなるかと言えば、まあご想像の通り。この作品は後半が感動的。ゲームの初陣の善行の台詞を、巧く膨らませている。滝川が意外な形で活躍するのが、彼らしい。榊オリジナルの登場人物も、ひょっこり顔を出してる。来須の数少ない台詞は、彼がこの物語で負わされた役目を見事に綺麗に象徴してる。熊本城決戦でも似たような役割だったなあ。
ソックスハンターは永遠にEX ソックスロボ発進!
己の野望の実現のため、冥府魔道に堕ちたロボ。だが、最初の試練はあまりに厳しく…
第三話 茜事件
 訓練を終え自宅に戻った速水を、滝川が訪ねてきた。何を考えてか、ゲーム機とソフトをぎっしり持ち込んで。御託を並べながら深夜までゲームに興じていた滝川、どうも悩みがあるらしい。なんとか聞き出したのは、とんでもない話で…

 ゲームをプレイした人には、タイトルで想像がつく通りの展開。以後、この三人は小隊の三馬鹿として名を馳せることになる。変な連中に巻き込まれちゃったな、速水。長いキャリアを誇るだけあって、田代が冷静に事態を把握してるのが笑える。
芝村舞の野望Ⅲ 舞の愉快な仲間たち
ののみと共に舞の部屋に招待された速水、彼が空けた冷蔵庫には…
原日記――monologue
ゲームじゃバランスブレイカーなアレが、なぜ登場しないのか、というお話。司令官プレイの時は必須なんだけどね。しかし榊さん、シグ・ザウエル(→Wikipedia)好きだなあ。
第四話 銀剣突撃勲章
 少しづつではあるが、戦場に慣れつつある5121小隊。本日の戦場は、珍しく5121同様に士魂号を擁する部隊と同じ戦区となった。鮮やかな真紅の軽装甲を駆る荒波を隊長とし、二機の複座が従う部隊だ。無駄のない動きで多数の中型幻獣を翻弄した軽装甲は、一転して逃走に入り…

 珍しく新井木にスポットが当たる作品。彼女も滝川同様、普通が取りえの登場人物。彼女を通して、直接戦闘には参加しない整備班の立場を描いている。今までほとんど台詞のなかった坂上が、ヤクザな風貌とは裏腹に人生の先輩としての風格を見せる。ののみといい、案外と浪花節なんだよな、この人。オリジナル展開が中心となる山口防衛戦以降では大活躍する荒波が鮮やかに登場するのも、この短編。つか壬生屋、いい加減学習しろ。

 この巻の白眉は、「士魂号、前へ!」、特に後半の展開。いや私、滝川が贔屓なもんで。今まで戦場じゃほとんどいい所なしだった彼が、珍しく彼の特技を活かして活躍する話だし。これとか Panzer Lady とか、良い作品に恵まれてるな、滝川。

【関連記事】

|

« 竹原直道編著「むし歯の歴史 または歯に残されたヒトの歴史」砂書房 | トップページ | ウィリアム・コッツウィンクル「ドクター・ラット」河出書房新社 内田昌之訳 »

書評:ライトノベル」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/201750/54845986

この記事へのトラックバック一覧です: 榊涼介「ガンパレード・マーチ episode TWO」電撃文庫:

« 竹原直道編著「むし歯の歴史 または歯に残されたヒトの歴史」砂書房 | トップページ | ウィリアム・コッツウィンクル「ドクター・ラット」河出書房新社 内田昌之訳 »