« シェイクスピア全集10「ヴェニスの商人」ちくま文庫 松岡和子訳 | トップページ | ロバート・B・チャルディーニ他「影響力の武器 実践編」誠信書房 安藤清志監訳 高橋紹子訳 »

2012年5月24日 (木)

榊涼介「ガンパレード・マーチ 5121小隊 決戦前夜」電撃文庫

 「俺は生きるぞ。たとえこの身が滅びようとも、魂魄となって可愛いソックス達のところへ戻ってくるばい!」

【どんな本?】

 SONY Playstation 用のゲーム「高機動幻想ガンパレード・マーチ」を榊涼介が小説化するシリーズ第二弾。多くのプレイヤーが悔し涙で枕を濡らす凶悪イベントにして中盤のクライマックス熊本城決戦をテーマに、決戦に臨む小隊の面々を描く短編集。ゲームのイベントを忠実になぞりつつも、以降の榊ガンパレで活躍する榊オリジナル登場人物も少し顔を見せる。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2002年10月25日初版発行。文庫本縦一段組みで本文約270頁+きむらじゅんこの憂鬱Ⅲ2頁。8ポイント42字×17行×270頁=192,780字、400字詰め原稿用紙で約482枚。長編小説なら標準的な分量。

 文章の読みやすさは文句なし。ただ、ゲームのノベライズなので、登場人物や背景の説明はあっさりと片付けてる。できれば「5121小隊の日常」から読もう。

【どんな話?】

 比較的融通が利いた従来の遊撃的な任務から、戦況の悪化と士魂号の実績が相まって緊急支援的な出撃が増えてきた5121小隊。それでも数をこなすうちに素人だったパイロットたちも腕を上げ、重装甲・軽装甲・複座型それぞれの役割分担もでき、5121小隊なりの戦術も板についてきた。

 その頃、悪化する一途の戦況を打開すべく、芝村閥が大博打を打とうとしていた…

【収録作は?】

第一話 鉄橋爆破
 善行からの命令は、意外なものだった。瀬戸口と来須の二人で某鉄橋に赴き、爆破作業をする工兵隊を護衛せよ、というものだ。着実に任務を遂行する来須はともかく、女性のストライクゾーンが広い事だけが取り得の瀬戸口がなぜ、という疑問を抱きながら、二人は現場に赴くが…

 減らず口が止まらない瀬戸口と、寡黙な来須の対照が楽しい一遍。ゲームでも来須は滅多にしゃべらないから、ファーストマーチだけだと帽子と腹筋の印象しか残ってなかったりする。ここでは来須の武装に注意しよう。工兵隊の百翼長が可愛いイカレてるのが楽しい。今後の榊ガンパレで重要な役割を担う二人のオリジナル人物が登場している点にも注目。
ソックスハンターは永遠にⅠ 友情
 悪化する戦況に覚悟を決めんとする中村、しかし決意はなかなか固まらず…
第二話 単座型軽装甲
 なんとか田辺に取り入ろうと策を練る滝川だが、彼女が遠坂に抱く気持ちにも気づいている。カッコよさに憧れて士魂号に乗り込んだ滝川、しかし速水や壬生屋との才能の差も否応なしに思い知らされる。だが愛機を思う気持ちだけは小隊一だ。今日も軽装甲を相手に「会話」に浸る滝川だった。

 珍しい滝川が主役の一遍。本人の希望とは裏腹に、後には玄人受けするいぶし銀の戦術を見せる滝川が、ない頭を振り絞って自分の戦術を見つける記念すべき作品。まあ、天才コンビ速水&舞と、剣の達人壬生屋に挟まれちゃ、どうしても凡人は埋もれちゃうよなあ。彼と森と茜の奇妙な関係もくすぐったい。
第三話 未央の世界
 戦況の悪化に伴い、新市街も閉店する店が増え、閑散とした雰囲気になってきた。いつもの胴着姿で出かけた壬生屋は、乗り越えるべき壁に遭遇する。前線で戦う毎日で明日をも知れぬ身、躊躇ってはならぬと決死の覚悟を固め、見事な一閃を決めたと思ったが、直後に彼女が見たのは…

 ファンには瀬戸壬生で知られる二人の話。ゲーム内でも瀬戸口のストライクゾーンの広さは相当なもの。対する壬生屋といえば、戦場じゃ得物が射程の短い超硬度大太刀のせいもあり、士気が高まると突出する傾向がある。彼女から貰うコマンド「切る(右)」と「切る(左)」は、幅跳びと組み合わせると実に使い勝手がいいんだが、NPCは避けないんだよなあ。
ソックスハンターは永遠にⅡ 伯爵邸の午後
タイガーに誘われ、慣れぬ茶会に出席した中村だが…
第四話 第一種警戒態勢
 軍上層部が起死回生の策として発案した作戦、熊本城決戦。加藤清正が築城した名城熊本城に大量の幻獣をひきつけ、地の利を生かして殲滅する、という作戦だ。城の近辺では多くの部隊が築陣に余念がなく、否応なしに決戦へと戦場の空気は変わりつつある。5121小隊は比較的備えが薄く、激戦が予想される北側に配置された。

 決戦前夜の5121小隊の緊張した雰囲気を描く一遍。生きるか死ぬかの決戦を前にして、5121小隊の面々はというと、相も変わらず不器用なラブコメを繰り広げるのであった。
原日記Ⅲ
ただでさえ稼働率が低く配備数が少ない士魂号だけに、当然補給も四苦八苦。
第五話 緒戦――5121小隊整備班
ついに始まった熊本城決戦。稼働率の低い人型戦車は、迅速な補給・修理・整備がなければ活躍できない。否応なしに前線に近い所に配置された補給車と整備テントだが、やはり恐れていた通りゴブリンやヒトゥバンなどの小型幻獣が浸透し…

 そういえばいたねえ、ヒトゥバン。最近はめっきり出番が減って忘れられているけど。ドサクサにまぎれて獲物を狙うイワッチの抜け目なさが鮮やか。やっとこさ出番に恵まれた新井木だが、やっぱり新井木はこうでなくちゃ。ゲームでは不幸キャラの田辺さん、ここでもやはり眼鏡を割りまくり。頼りになるんだかならないんだかわからないのが遠坂。昔はこういうボケを大真面目にやってくれたんだよなー。
原日記Ⅳ
「不細工なキャスター」って、もしかして…

 群像劇らしく、次々とスポットが当たる人物が変わる「第一種警戒態勢」が見事。クセ者揃いの5121小隊にあって、凡人滝川があがく「単座型軽装甲」が私は好きだ。

【関連記事】

|

« シェイクスピア全集10「ヴェニスの商人」ちくま文庫 松岡和子訳 | トップページ | ロバート・B・チャルディーニ他「影響力の武器 実践編」誠信書房 安藤清志監訳 高橋紹子訳 »

書評:ライトノベル」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/201750/54791334

この記事へのトラックバック一覧です: 榊涼介「ガンパレード・マーチ 5121小隊 決戦前夜」電撃文庫:

« シェイクスピア全集10「ヴェニスの商人」ちくま文庫 松岡和子訳 | トップページ | ロバート・B・チャルディーニ他「影響力の武器 実践編」誠信書房 安藤清志監訳 高橋紹子訳 »