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2012年4月11日 (水)

笹本祐一「ARIEL EX」SONORAMA NOVELS

「また、この銀河のどこかで、ろくでもないことを企んで いるものがいるのだろう」

【どんな本?】

 突然、地球は侵略を企む異星人の大艦隊に包囲された。かすかな希望は天才科学者岸田博士とその組織 SCEBAI が密かに開発した二足歩行の巨大ロボット ARIEL のみ。地球の命運を懸け、ARIEL に乗り込み極悪非道なゲドー社と、その手先のタレ目艦長に立ち向かう河合美亜・岸田絢・岸田和美の三人の美少女の活躍を描く、長編ロボットSFシリーズ番外編

 …の筈なんだが、この巻では絢ちゃんと和美ちゃんの出番はなし。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 ソノラマ文庫より2005年刊行の「侵略会社の新戦艦」と、2006年刊行の「家出艦長の里帰り」合本+書き下ろし追加。合本は2011年7月30日第一刷発行。新書版で縦二段組、本文約472頁+あとがき3頁+松浦晋也の解説「笹本祐一の肖像」6頁。8.5ポイント23字×17行×2段×472頁=369,104字、400字詰め原稿用紙で約923枚。ほぼ長編2冊分。

 文章そのものは読みやすいのだが、今回は大艦隊相手のバトルをリアリティたっぷりに繰り広げるので、お堅い言葉がポンポン飛び出す。また、「終わりなき戦い」は、かなり設定がややこしいので、出来れば9巻から通しで読もう。

【収録作は?】

#1 謎の実験戦艦
#2 ルキフェラス出航
#3 ルキフェラス対第三艦隊
#4 家出艦長の里帰り
#5 幸せに効く薬
プラス1話 終わりなき戦い(後編)
 あとがき/解説(松浦晋也)

 タイトルこそ ARIEL だが、「終わりなき戦い」を除けば ARIEL はおろか地球人の出番なし。ハウザー艦長が出ずっぱりで主役を張る。

【どんな話?】

 やっと地球侵略が終わったハウザー艦長は、満身創痍の老艦オルクスと共に、核恒星系へと帰還した。長期の乗艦任務が続いていただけに、乗務員の有給休暇も溜まっている。乗務員には休暇を与えるとして、艦長のハウザーと経理部長のシモーヌには、二つの重大任務が課せられた。ひとつは、老艦オルクスの代艦を探すこと。そしてもう一つ、ダイアナから与えられた任務は…

【感想は?】

 大団円…と言いたいところだが、最後までいじめられますハウザー君。

 なんと言っても上司がダイ姉ちゃん。最後の最後までコキ使われまくり。この巻でも、四六時中ため息ばかりついてる。ダイ姉ちゃんだけでも辛いのに、この巻では…

 と、まあ、本人は不幸と感じてるようだけど、ハタから見るとむしろ最高に充実した人生を送っている様にしか見えないんだが、どうなんでしょうねえ。有能な人間が、能力を最大限に活かせる環境と目的を与えられ、次々と実績を作る。私生活でも、まあ、アレだ。贅沢だよなあ。文句を言ったらバチがあたるぞ。

 他の面では乗務員も艦長の味方だけど、ダイ姉ちゃんが絡むとシモーヌはおろかデモノバまでハウザーの意向を先読みして逃げ道を塞ぐからタチが悪い。結局は白旗をあげる羽目になる。哀れ。

 そのダイ姉ちゃん、壮大な野望を持っているようで、今回の任務では新造艦ルキフェラスに加え、これまたトンデモない助っ人を連れてきて、艦の試験航海と同時に現場部隊の能力も検証している模様。

 新しい乗艦となるルキフェラスが、これまた大変なソロモノで。艦のサイズこそ小さいものの、能力は格段の差。この変は、第二次大戦当時の大艦巨砲主義から、現代のイージス艦への移行を思わせる。なんたって、ルキフェラスの最大の特徴は…

 このルキフェラスを使っての、最初の試験航海で与えられた任務ってのがまた、いかにもダイ姉ちゃんらしい凄まじいシロモノで。今まで恒星間航行すら実現していない野蛮人が住む辺境で老艦を騙し騙し運用し、チマチマと期限を引き延ばしていたのが嘘みたいな大仕事。ハウザー以下の乗務員も張り切って銀河を駆け巡りまくる。これぞスペース・オペラって感じの、爽快な大冒険を繰り広げるからたまらない。

 後半では、ハウザーが与えられた、もう一つの任務が主題。そう、今まで ARIEL を読んできた人ならだいたい想像がつく、まあそういうこと。とはいえ、そこは不幸体質のハウザー、いく先々でアクシデントふが起こりまくり。ちょっとした挨拶に出向くつもりが、大変なことに。

 間がいいというか悪いというか、久々の現場で張り切ったのはいいが、お歴々が勢ぞろいした場所で、これまた大変な宣言をする羽目に。しばらくはニュースやワイドショーの話題の渦に巻き込まれたんだろうなあ。下手な真似したら、何書かれるかわかんないね。ここまでドラマチックなのも、滅多にないし。

 いよいよ惜別の雰囲気が濃いこの巻、末尾を飾るのは「終わりなき戦い」完結編。ややこしい膠着状態に陥ってるロクサン18星系に殴り込んだルキフェラス、なぜかちゃっかり侵入している岸田博士を初めとする困った面々。ルキフェラスが展開する幽霊艦隊の正体を、海賊にもたらす岸田博士の思惑は…

 今までピンとこなかったルキフェラスの能力が、この巻で明らかになってるだけに、この巻に収録したのは巧い構成で、ハウザーの作戦がグッと迫真性を増してる。と同時に、ダイ姉ちゃんのロクでもない思惑の片鱗が、この「終わりなき戦い」で垣間見えるのも読みどころ。由貴ちゃんも、相変わらずの態度なようで、いい就職先を見つけたというか、鬼が金棒を手に入れたというか。こういう手口を使うなら、そりゃ話が早いよねえ。これから銀河はどうなるんだろう。

 …と、人気シリーズの最終巻に相応しく、全てが収まるところに綺麗に収まり、悪の侵略者の首領ハウザーがトコトン苛められる最終巻。やっぱり悪の侵略者は懲らしめないと、ねえ←違う

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