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2011年12月29日 (木)

SFマガジン2012年2月号

「私はゴジラに誘拐され、妊娠した!」
「ブッシュ、ゴジラと秘密会談疑惑」  ――MAGAGINE REVIEW(橋本輝幸)
   F&SF誌2011.5/6~2011.7/8より、スティーヴン・ポプケス「変革の代理者」

 280頁の標準サイズ。…って、え?

 今月は日本作家特集として、若手作家5人の競作に加え、連載が2本(山本弘の「輝きの七日間」と梶尾真治の「怨讐星域」)。やっぱり小説が載ってないとねえ。

 特集トップは宮内悠介「ヨハネスブルグの天使たち」。南北に別れ内乱で荒れる未来の南アフリカ。13歳の黒人少年スティーヴは、チンピラ仲間と組み軍の車を盗んでは売り払って生き延びていた。スティーヴがアフリカーナーの白人少女シェリルと同居する円筒状のビルでは、毎日幾千もの少女が降るのだった。
 人種間の争いが続く南アフリカの殺伐とした雰囲気の作品なのに、「歌姫」の名前がDX9だったりするクスグリが入ってる。そういえばスティーヴィー・ワンダーの愛器はDX7だったような。かつての谷甲州やルーシャス・シェパードを思わせる、ハードボイルドで乾いた感じがいい。

 お次は十文字青「小さな僕の革命」。舞台は不況が続き失業者が溢れる近来の日本。くだらない世の中が嫌になった僕は、従弟の逸夢と組み、烏合離散を繰り返すネットのコミュニケーションツール「ミスト」に、ちょっとしたイタズラを仕掛けた。
 ヒリつく閉塞間は滝本竜彦の「NHKにようこそ」に似ている。起きる事件は現実の騒動をモデルにしてるのかな?このテーマなら、SFにしない方が面白くなると思うんだけど、どうだろ。

 片理誠「不思議の日のルーシー」。夏のある朝、ウィル少年は妙な焦りに取り憑かれ町に出て、ルーシーという少女に出会う。隣のファラデーさんの家に住んでいるというが、ファラデーさんに娘はいない筈だ。だがルーシーはこの町を知っているし、町の人もルーシーを知っていた。
 田舎の町の普通の少年が夏に経験する、ちょっと変わった事件。前二作のやさぐれた雰囲気とは打って変わり、ブラッドベリのように牧歌的な印象の話。

 倉数茂「真夜中のバベル」。「原理的には、あらゆる言語が理解できる」能力を持つ青年、シロウ。彼の幼馴染ハルが彼を訪ねていったとき、シロウは今日も家で寝こけていた。
 長編の冒頭みたいな感じで、一応は完結しているんだが、奥にある多くの設定が語られぬまま、って印象がある。意味ありげに出てくる人物も、詳しく語られないし。

 ラストは瀬尾つかさ「ウェイプスウィード」。舞台は未来の地球。人類の多くは宇宙で生活し、地球は島嶼部の少しの人々が残るだけだった。島で生まれ育った12歳の娘ヨルは巫女として生まれ、多くの知識を学んでいたが、村人は迷信深く彼女の話を信じない。ある夜、流れ星を眺めていたヨルは、流れ星の一つが分裂するのを見る。
 未来の海で繁栄する謎の生物ウェイプスウィードが魅力的。今回は前編のみで、後編は次号。舞台こそ地球なものの、異星のファーストコンタクト物と似たワクワク感がある。5編の中では最も王道SFの気配があって、後編が楽しみ。

 SF BOOK SCOPE は香月祥宏のJAPAN、水見稜「マインド・イーター[完全版]」に驚いた。未収録短編二編が追加ってのが嬉しい。本格的な作品だったのに、知りきれトンボで終わってたんだよなあ。ちゃんと完結してるのかしらん。

 梶尾真治「怨讐星域」、今回はノアズ・アーク号が舞台。シャトル部品製造に優れた能力を発揮する青年ジョナは、ひどく内気で、人と話すより工作機械を相手に仕事をするのが好きだった。チームのボスであるアラン直々の仕事を請けたジョナは、出来上がった部品を届けに営繕室フロアに赴くが…
 彼らしいホンワカした雰囲気のボーイ・ミーツ・ガールのお話。と同時に、この連作長編の重要なエピソードになりそうな一遍。完結が楽しみだなあ。

 堺三保のアメリカン・ゴシップ、今回はハリウッド映画版「アキラ」と「All You Need is Kill」のお話。All…は、なんとトム・クルーズの出演が決まったとか。気合入ってます。対してアレなのがアキラ。金田はネオ・マンハッタンでバーを経営する青年で、演じるはギャレト・ヘドランド27歳。これじゃ「健康優良不良少年」は無茶だよなあ。あの特異なバイクも出そうにないし、祭りの予感。

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