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2011年10月 4日 (火)

SFマガジン2011年11月号

 280頁の標準サイズ。先月に続き、今月も赤い表紙。3回続けて懐古的な特集の上に、今回はついに海外SF小説の収録がゼロになった。いいのか?

 特集は「日本SF第一世代回顧」として、星新一・小松左京・光瀬龍・眉村卓・筒井康隆・平井和正・豊田有恒・福島正実・矢野徹・今日泊亜蘭・広瀬正・野田昌宏・石原藤夫・半村良を取り上げ、代表作と全著作リストを収録。矢野徹は「折紙宇宙船の伝説」を紹介してるのが嬉しい。幻想的でエロティックな名作ですぜ。

 眉村卓が「当時SFは際物扱いされた」なんて書いてて、「そうだったんだよなあ、昔はガキの読み物扱いだったんだよなあ」などと想いふけってしまう。いつから「ナニやら小難しいシロモノ」に出世したんだろう?驚いたのが1960年の空想科学小説コンテストの盛況ぶり。なんと応募総数580余編。SF作家クラブ設立の様子が楽しい。「宇宙人はダメ、馬はダメ」はともかく、「星新一より背が高くてはダメ、小松左京より重くてはダメ、筒井康隆よりハンサムはダメ」ってw

 巻頭カラーで籘真千歳「スワロウテイル/幼形成熟の終わり」と月村了衛「機龍警察 自爆条項」の告知。自爆条項は、ライザちゃんが大活躍する模様。彼女の元に旧い仲間がやってきて…って話。これは期待してしまう。

 東茅子の Magazine Review はアナログ誌2011.4-2011.7/8。リチャード・L・ラベットの「ジャックと豆の木」が面白そう。軌道エレベーターを自力で登る男のお話。高い所に登りたがる奴ってのはいるもので、ビルや木に登る奴がいるんだから、いるよね、きっと、そういう奴も。

 貴重な小説では、梶尾真治の怨讐星域がまだ続いてた。今回の「自由教会にて」は、これだけ抜き出してもでも短編として充分に成立している。自由教会に若い男がやってきた。観光客や老人はよく来るのだが、若い男は珍しい。彼が聖職者に語る話は…

 友成純一の人間廃業宣言は、韓国プチョン・ファンタ10日間の報告。でも肝心の映画の報告より、韓国のホテル事情や世界経済の話の方が面白いってのはどうよw 日本と韓国のポルノの比較とか、興深いよねえ。今後もこの調子で横道に逸れまくって下さい。

 大森望の新SF観光局は、「さよならジュピター」製作時のブレイン・ストーミングの様子で爆笑。「もうこなくていい」って、横田順彌を呼んだ時点でこういう展開になるのは予想できただろうにw

 若島正の「乱視読者の小説千一夜」、そうだよねえ。やっぱり、本は旅行の必携品だよねえ。長期に渡る時は、硬軟長短取り混ぜ数冊は持って行くよねえ。

 金子隆一のコラムは有人恒星間飛行と放浪惑星の話。彗星の巣とも言われるオールト雲が、太陽系外縁に広く広がっていて、これを飛び石のように伝えば他の恒星系へ行けるんじゃないか、みたいな話は一部のSFマニアに知られてるけど、これが案外とイケるんじゃないか、というお話。

 意外とエキサイティングだったのが、八代嘉美によるジェイムズ・ティプトリー・ジュニア論。「男たちの知らない女の創生――細胞生物学をティプトリー的に読み解くと。これ、ES細胞やiPS細胞などの最新細胞生物学を、たったの7頁という短い頁数で、素人にも分かりやすく懇切丁寧に解説してくれてる。

 次回はやっと新しい海外SF短編が中心となる模様。アリステア・レナルズというとサイコロみたいな本を想像しちゃうけど、大丈夫でしょう、きっと。

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