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2011年8月31日 (水)

SFマガジン2011年10月号

 280頁。表紙をめくっていきなり鷲尾直広のイラストがカッコいい。テーマは「宇宙の戦士」のパワードスーツ。無骨なシルエット、分厚そうな装甲、そして肩からにょっきり飛び出た長い砲身。こっちを表紙にした方が売れるんでない?大判のポスターをおまけにつけるとか。

 先月に引き続き特集は「SFスタンダード100ガイドPART2」。上田早夕里氏が「ブルー・シャンペン」ってのは、何かわかるような気がする。ここ数年流行ってるクリストファー・プリースト、私は「逆転世界」が一番好きだなあ。あれ、読んでると世界が歪んで見えてくるんだよね。

 この手の特集に恒例のイチャモン、「何でコレが入ってないのよ」を幾つか。

 クリフォード・D・シマックの「都市」でしょ、キース・ロバーツの「パヴァーヌ」、オラフ・ステープルトンの「スターメイカー」、グレゴリー・ベンフォードの「夜の大海の中で」から始まるシリーズ。

 何より、グラント・キャリンの「サターン・デッドヒート」がないのがけしからん。タイトルどおり、土星にある異星人の遺物をめぐる争奪戦を描くお話で、冒険物語でもありファースト・コンタクト物でもあり、ハードSFと娯楽物語を見事に融合させた傑作小説。読了感も爽快だし、ハリウッドで映画化してくれないかなあ。ビジュアル的にも魅力的なシーンがたくさんあるし。

 え?代わりに何を外すのかって?無理です、そんなの←をい

 もうひとつの特集がミリタリーSFで、ジョン・G・ヘムリイ(ジャック・キャンベル)の短編「亀裂」と堺三保の解説「ミリタリーSF略史」。

 「亀裂」は、というと。舞台は地球型の惑星イムテプ。ヒトに似た原住民イズコプは、草原での農耕遊牧生活が中心だ。ヒトの調査員が80人ほど駐在している。突然の救難信号を受け、200名の大隊が支援に向かったが、イズコプの大群に迎撃され、生き残ったのはシン軍曹・ヨハンセン伍長など8名だけ。イズコプの攻撃の原因は?

 「ミリタリーSF略史」は、ミリタリーSFの定義が興味深い。

  1. 主人公が軍人である。
  2. 戦争が、舞台設定であると同時に、物語のテーマでもある。
  3. 戦闘の詳細な描写があり、戦術や戦略に関する専門的かつ技術的な言及がある。
  4. 舞台は未来かつ地球外のいずこかである。

 ガンダムは 1. と 4. が微妙だけど(「逆襲のシャア」なら 1. はクリアかな)、ボトムズとダグラムとマクロスは合格?

 コラムでは金子隆一がジェイムズ・P・ホーガンをとことん Dis ってる。たいした度胸だ。内容の是非はともかく、議論が盛り上がってホーガンの読者が増えると嬉しいなあ。

 橋本輝幸の「Magazine Review」、今回はF&SF誌の2011年1・2月号と3・4月号の紹介。冒頭のパット・マキューウェンの「楽しき我が生=家」が面白そう。ハウスシックがテーマで、あらゆる化学物質にアレルギーを発症する人はどんな家に住めばいいのか、というと…。この発想だけでもブッ飛び。早く翻訳して欲しいなあ。

 ローカス・ベストセラー・リストのペーパーバックは相変わらずジョージ・R・R・マーティンが大暴れで、1~4位を独占してる。

 ところで、ブルーマーズは出るんだろうか?

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