SFマガジン2011年10月号
280頁。表紙をめくっていきなり鷲尾直広のイラストがカッコいい。テーマは「宇宙の戦士」のパワードスーツ。無骨なシルエット、分厚そうな装甲、そして肩からにょっきり飛び出た長い砲身。こっちを表紙にした方が売れるんでない?大判のポスターをおまけにつけるとか。
先月に引き続き特集は「SFスタンダード100ガイドPART2」。上田早夕里氏が「ブルー・シャンペン」ってのは、何かわかるような気がする。ここ数年流行ってるクリストファー・プリースト、私は「逆転世界」が一番好きだなあ。あれ、読んでると世界が歪んで見えてくるんだよね。
この手の特集に恒例のイチャモン、「何でコレが入ってないのよ」を幾つか。
クリフォード・D・シマックの「都市」でしょ、キース・ロバーツの「パヴァーヌ」、オラフ・ステープルトンの「スターメイカー」、グレゴリー・ベンフォードの「夜の大海の中で」から始まるシリーズ。
何より、グラント・キャリンの「サターン・デッドヒート」がないのがけしからん。タイトルどおり、土星にある異星人の遺物をめぐる争奪戦を描くお話で、冒険物語でもありファースト・コンタクト物でもあり、ハードSFと娯楽物語を見事に融合させた傑作小説。読了感も爽快だし、ハリウッドで映画化してくれないかなあ。ビジュアル的にも魅力的なシーンがたくさんあるし。
え?代わりに何を外すのかって?無理です、そんなの←をい
もうひとつの特集がミリタリーSFで、ジョン・G・ヘムリイ(ジャック・キャンベル)の短編「亀裂」と堺三保の解説「ミリタリーSF略史」。
「亀裂」は、というと。舞台は地球型の惑星イムテプ。ヒトに似た原住民イズコプは、草原での農耕遊牧生活が中心だ。ヒトの調査員が80人ほど駐在している。突然の救難信号を受け、200名の大隊が支援に向かったが、イズコプの大群に迎撃され、生き残ったのはシン軍曹・ヨハンセン伍長など8名だけ。イズコプの攻撃の原因は?
「ミリタリーSF略史」は、ミリタリーSFの定義が興味深い。
- 主人公が軍人である。
- 戦争が、舞台設定であると同時に、物語のテーマでもある。
- 戦闘の詳細な描写があり、戦術や戦略に関する専門的かつ技術的な言及がある。
- 舞台は未来かつ地球外のいずこかである。
ガンダムは 1. と 4. が微妙だけど(「逆襲のシャア」なら 1. はクリアかな)、ボトムズとダグラムとマクロスは合格?
コラムでは金子隆一がジェイムズ・P・ホーガンをとことん Dis ってる。たいした度胸だ。内容の是非はともかく、議論が盛り上がってホーガンの読者が増えると嬉しいなあ。
橋本輝幸の「Magazine Review」、今回はF&SF誌の2011年1・2月号と3・4月号の紹介。冒頭のパット・マキューウェンの「楽しき我が生=家」が面白そう。ハウスシックがテーマで、あらゆる化学物質にアレルギーを発症する人はどんな家に住めばいいのか、というと…。この発想だけでもブッ飛び。早く翻訳して欲しいなあ。
ローカス・ベストセラー・リストのペーパーバックは相変わらずジョージ・R・R・マーティンが大暴れで、1~4位を独占してる。
ところで、ブルーマーズは出るんだろうか?
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