さようなら小松左京先生
長編と短編、双方で活躍した人だった。この人のホラー短編は怪談風味で、夏の夜の肝試しの前にやるのに適したジワジワくる怖さがあった。シリアスな面ばかりでなく、ユーモア短編も幾つかあって、いかにも関西風のコテコテな馬鹿話だった。長編で「真っ向勝負な剛速球のSF作家」という印象を持っていたので、驚きは大きかった。アイデア・ストーリーもあった。有名な「ヴォミーサ」は、今でもよく引き合いに出される。
日本沈没を読んだのはブームが去った後だったが、緻密な社会シミューレーションに圧倒された。コンピュータのない時代に、紙と電卓で設定を創り上げた力技にねじ伏せられた。
海外の作家だと、ハインラインに近い印象を持っている。ただ、ハインラインが主人公の視点を中心に描くのに対し、小松氏は群像劇に長けていた。「さよならジュピター」や「首都消失」も、集団として問題に挑む人々を描いていた。
今頃は半村良氏たちと卓を囲んでいるんだろうか。時間制限なしで、じっくり楽しんで欲しい。
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