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2011年5月11日 (水)

榊涼介「ガンパレード・マーチ2K 北海道独立 3」電撃文庫

「何度も煮込んで、肉の臭みを取って、はじめて黄金のスープが得られるもんぞ。然るに、百の徹底を九十点の妥協でごまかしとる。残りの十を化学調味料で破壊的にごまかしとる! 海苔でけばけばしく飾ることなんぞいらん、にんにくを安易に使うな、ハンパで大きいばかりのチャーシューは国家を破滅させるっぞ」

どんな本?

 元は2000年9月28日発売の SONY PlayStation 用ゲーム「高機動幻想ガンパレード・マーチ」。開発に予算をつぎ込みすぎて宣伝費ゼロという無茶な伝説を持つこのゲーム、ファンもカルトな人が多いのか今でも評判が高く、2010年には PSP に移植されゲームアーカイブスでついに念願の復活を遂げた(Sony ソフトウェアカタログ)。

 そのノベライズである当シリーズも根強い人気で、2001年12月発行の「5121小隊の日常」で始まったシリーズも今作で28冊目(ガンパレード・オーケストラを入れると31冊目)となる。

 ゲームは熊本を舞台に圧倒的な物量(?)を誇る幻獣を相手に、寄せ集めの学兵部隊「5121小隊」に加わって3ヶ月間生き延びる、というもの。ノベライズが続くうちに5121小隊は歴戦の強兵となり、ついにこの「北海道独立」では、人間を相手として戦う場面も出てくる。

いつ出たの?分量は?読みやすい?

 2011年5月10日初版発行。文庫本で縦一段組み約280頁。8ポイント42字×17行×280頁=199920字、400字詰め原稿用紙で約500枚。この巻も前作とほぼ同じ分量。いつもどおり解説・あとがきはなし。ファンをやきもきさせた挿絵のきむらじゅんこ氏もなんとか復活。軍が中心の物語だけに少々堅い言い回しが多いものの、そこはライトノベル。学兵中心に話を進めることで、充分な読みやすさを確保している。

 とまれ小説オリジナルの登場人物も多い上に、舞台背景も相当に込み入ってるため、読むなら素直に「5121小隊の日常」から読み始めましょう。

どんなお話?

 召集に応じて漆黒の一号機に乗り込んだ壬生屋の前に現れた白銀の巨人。今までは剣を持てば無敵だった壬生屋が、珍しく苦戦する。事態の元凶である樺山の暴走は止まらず、知事の小笠原は更なる苦境に追い込まれる。大原との会談を終え戻った吉良は、本間と共に小笠原の説得を試みるが…

感想は?

 来須大活躍。今まで若宮とのコンビだったのが、石津を加えてスリーマン・セルになったためか、随所で都合よくコキ使われてます。前の「逆襲の刻」でもそうだったんだけど、彼が活躍する場面って、やたら記述をあっさり片付けちゃうんだよなあ。やっぱりヘソが嫌いなのかしらん(違うと思う)。しかし若宮の同僚って、なんで無口な奴ばっかりなんだろ。

 そんな来須と対照的に、ほとんと戦闘では活躍しないくせに美味しいところをさらっていくのが滝川。前巻でも蓄積した疲労が心配されていた滝川、この巻ではついに…。山口防衛戦で彼が被弾したシーンもよかったけど、この巻のシーンも泣かせてくれます。

「待てよ、冗談じゃねえ!…この子はとってもいい子なんだ」

 そんな滝川に付き合う山川君。茜といい滝川といい、どうも彼は問題児を押し付けられる運命にあるようで。つか、滝川、意外と真面目に報告書出してるのね。まあ茜と違って素直に人の助言を聞き入れる奴だから、巧く指導してやってくださいな山川君。

 報告書の他にも、登場人物の抱える秘密がいろいろと明らかになるこの巻。先行偵察に出た中村も、意外と有能で几帳面なところを見せます。今までカーミラにやられっぱなしだったハンス君も、この巻では珍しく反撃に出る模様。そりゃ似合わぬハッピなんぞ着せられりゃ、文句のひとつも言いたくなるってもんで。

 秘密といえば、茜の人知れぬ苦労もなかなかのもの。あのスタイルを貫き通す陰で、そこまで用心を重ねていたとは。しかし秘密を握られた今、彼の運命はどうなることやら。まあ、今更弱みが増えたところで、たいして変わらない気もするんだけど。

 小説オリジナルの登場人物では、二正面作戦を強いられ苦戦が続く橋爪、やっと彼にも頼もしい(?)援軍が現われる。敵が幻獣なら、最高に頼れる人なんだけど、こっちの戦線では果たしてどこまで戦力になるやら。歴戦の勇者、合田隊長の指導が鍵を握るのかな。

 終盤近く、なんとか結集を果たそうとする5121小隊。だが、ここにも精神汚染は浸透し、思わぬ裏切り者の登場で感動の再会は阿鼻叫喚の修羅場へと急転する。反撃を試みる舞、しかし裏切り者への同調者は続出し… ゴブリンまで巻き込むとは、さすが世間の荒波で揉まれただけのことはある。

 舞→萌→素姐と来た表紙。次は誰なんでしょうねえ。ここはひとつオリジナル・キャラクターを代表して桜沢レイちゃんを←をい

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