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2011年4月30日 (土)

笹本祐一「ARIEL vol.09」SONORAMA NOVELS

シモーヌ「お姉さんが二人ともこっちの味方なんですよ。こんな頼もしい援軍、ありませんでしょ?」
ハウザー「買っても負けてもろくなことにならないような気がするのは、なぜだろう」

どんな本?

 天才科学者のお爺ちゃんが作った巨大ロボット ARIEL に乗り込むのは若き美女と美少女。巨大戦艦で地球侵略を企む宇宙人から、われらが地球を護るため、行け ARIEL、戦え ARIEL…と思ったら大間違い。今まで宇宙人相手の戦闘ではいい所がなかった ARIEL、この巻でもほとんど宇宙の筏扱い。

いつ出たの?分量は?読み易い?

 2010年8月30日第一刷発行。新書版で縦2段組の本文約410頁。8ポイント23字×17行×2段×410頁=320,620字、400字詰め原稿用紙で約802枚。文庫本17巻と18巻の合本だけあって、普通のライトノベルの倍程度の容量。

 ライトノベルの世界では安定して高い人気を誇る笹本氏だが、この巻は珍しくあまりスラスラ読めない。理由は3つある。第一に、登場人物が異様に多いこと。第二に、舞台背景が込み入っている点。とはいっても、長い物語がクライマックスを控え、それぞれに背景を抱えた多数の人物が続々と舞台に集ってくる段階なので、こればっかりは仕方がない。登場人物一覧があると助かるんだけど、なんとかなりませんか朝日新聞社さん。第三の理由は…

 さすがにいきなりこの巻から読む人はいないと思うけど、一応警告しておきます。アクの強い登場人物が何の紹介もなしに多数出演してるんで、素直に1巻から読みましょう。

掲載作品は?

第45話 開戦前夜(承前)
第46話 ファーストコンタクト
第47話 踊るセレモニー
プラス1話 終わりなき戦い(前編)

 第45話~第47話は本編で、プラス1話は番外編。なんと、この物語の完結以降のエピソード。相変わらずダイ姉ちゃんにコキ使われているハウザー艦長、お馴染みのクルーと共に向かった新たなる任地はロクサン18星系。海賊船団と辺境連合軍が睨みあうこの任地、実は帝国の公示で誰も落札しようとしない厄介な星系で…

感想は?

 笹本さんは美形に恨みでもあるのだろうか。なぜここまでハウザー艦長がいじめられるのだろう。オンボロの中古艦を極小の予算で騙し騙し使いつつ、会社の利益のため奮闘努力しているのに、いつの間にか辣腕の長姉は上司になり凄腕情報学者の次姉は艦内に潜り込み妹は駆け落ちに失敗して不貞腐れる。

 父は帝国軍第三艦隊を率いて任地に勝手に踏み込んできたし、つられてライバル企業も大挙して押しよせる。なにやら第三勢力も怪しい動きを見せ一触即発の事態だというのに、頼みの副官は次姉に丸め込まれ後ろからは経理部長に狙われる。なおも困ったことに原住民の代表まで殴りこんでくる始末。

 殴りこんでくる原住民というのが、当然われらが ARIEL…はあくまでおまけで、張り切ってます岸田博士。この暴れん坊爺さんが、この巻のもう一人の主役。なにせ舌先三寸で SCEBAI を立ち上げ ARIEL の開発予算を分捕った古狸、前巻で世界中の航空宇宙機関を動かし無茶なロケット打ち上げを連発させた挙句、この巻ではついに敵の本拠地に堂々と乗り込みます。どこまで図々しいんだかw

 この巻の前半の読みどころは、地球軌道上での ARIEL とシャトルのランデブー・シーン。もう完全に笹本さん趣味に走ってます。航法管制のリレーの様子とかシャトルを高軌道に持ち上げる手段とか、異様にマニアック。この地球軌道上のシーンの緻密さマニアックさが「読みにくさ」に第三の理由で、人工衛星打ち上げや管制の技術的詳細を知らない人には煩雑としか感じられないかも。逆に多少なりとも知っていると、記述のひとつひとつが「これはひどい。もっとやれ」の連続で、「ついに日本のSFもここまできたか」としみじみ感慨にふけってしまう。いずれにせよ軽く読み飛ばせないのは確実。じっくりと味わって読みましょう。

 化学反応を利用し、基本的に作用反作用で動ている地球の機器に対し、今まで物理法則を無視したような機動を見せたエイリアンの艦や艦載兵器。その無茶な機動の秘密が、この巻でついに明かされる。それはどういうものかというと、確かにこりゃ詐欺だw いや確かに理屈の上じゃ収支はあってるけど。

 今まで全く活躍の機会がなかった主役ロボットの ARIEL、この巻でやっと日の目を見ます。それも、全銀河が注目するオープン・フリートのバトルロイヤル…の隅っこで、ひっそり。結局、ゴテゴテと装備した120ミリバルカンやハイパワーレーザードライバーは何だったんだw

 長い物語りもいよいよ大詰め。前巻で大活躍をした由貴ちゃんも、いよいよ次巻では再び本領を発揮する模様。短編「終わりなき戦い」の後編も含め、大いに期待してます。ところで、「終わりなき戦い」、やっぱり元ネタはジョー・ホールドマンなんだろうなあ。

関連項目

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