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2011年2月13日 (日)

松本仁一「アフリカを食べる/アフリカで寝る」朝日文庫 食べる編

 ココヤシの若い花枝がつぼみをつけると、夕方、その先を切り取り、ビールびんなどの空きびんに枝を差し込んでくくりつけておく。枝からしたたる樹液が、朝までにはびんにいっぱいになる。そのまま置いておくと、糖分が多いので自然に発酵し、昼ごろには酒になっている。

どんな本?

 朝日新聞社のナイロビ支局長だった著者が、取材でアフリカの様々な所を訪れた際に出会った出来事や、アフリカ各地の社会事情を、「飲む・食べる」事を通して綴るエッセイ集。アフリカらしく羊の頭や羽アリなどワイルドなものもあれば、援助物資の乾パンなど社会背景を反映したエピソードもある。

いつ出たの?分量は?読みやすい?

 元は「アフリカを食べる」「アフリカで寝る」の二冊の単行本で、1996年発行。1998年にそれぞれ文庫本になり、更に2008年の改版に伴い、11月30日に合本となった。「アフリカを食べる」編は約217頁。8ポイント41字×17行×217頁=151249字、400字詰め原稿用紙で約379枚。「アフリカで寝る」編も約216頁。文章はブンヤさんらしくこなれた日本語で、そこらの小説より遥かに読みやすい。が、スラスラ読めるかというと、内容が強烈なので…

構成は?

Ⅰ アフリカを食べる
  マサイの人々と(ケニア)
  海で
  野で
  戦場で
  イスラム世界で
 あとがき
 文庫へのあとがき
Ⅱ アフリカで寝る
  宿で
  家で
  空の下で
  車中で
 対談 久間十義×松本仁一
 あとがき
 合本へのあとがき
 解説 渡辺満里奈

感想は?

 合本なんで、一つの書評で済まそうと思ったんだが、気になった箇所に付箋をつけながら読んでたら、面白エピソードが多すぎて付箋だらけになってしまった。ということで、書評は「アフリカを食べる」編と「アフリカで寝る」編に分けることにした。

 表紙が強烈で、骨を齧るマサイ族の男の写真。こりゃ期待できそうだな、と思ったら最初のネタがいきなり「ヤギの骨」。表紙のお話ですよ。マサイの若者にヤギをご馳走になったエピソードで、「脂っこく、甘く、とろけるようなうまさ」だそうな。ただ、自宅で食べた時はあまり美味しくなかったとか。やっぱり、食事もシチュエーションが大事だよね。

 「マサイの生活は、牛を飼うという目的に向けて、感動的なほど完成されている」そうで、有名なライオンを殺す儀式も、ライオンから牛を守るために必要な技能を身につけるため。戦士としても優秀で、銃で武装する奴隷商人を槍で撃退した。お陰でマサイ地区より奥に住む部族は、奴隷にならずに済んだ。

 はいいが、なまじ成功したため、極めて保守的になり、今でも遊牧生活に拘り続けている。マサイに比べ弱かったトルカナ族は新進の気質に富み、農耕や漁業は勿論、ラジオや銃も取り入れ、今はマサイに牛戦争を仕掛けている。なお、銃はワニを仕留めるのにも使います。漁業用の網を破られるんで。

 著者は結構イケる口で、お酒もよく飲んでいる。バーに入ったら、賑やかだったのが警戒されて急に静かになったそうな。そこでビールを注文したら、密造酒チブクが出てきた。これの飲み方が面白い。

一口飲んだら、隣の客に渡すのだ。順に回し飲みして、終わったらその人が次の一杯を買う。(略)私も、一口飲んでから隣に回した。これで、「飛び込みの外国人」は仲間として認知されたらしい。みんなのおしゃべりが再開した。

 ったく、飲兵衛ってのは、どこでも変わらないなあ。冒頭の引用はタンザニアのヤシ酒。ヤシ酒の原料はココヤシだそうです。夕方まで置いておくと発酵しすぎて酸っぱくなるので、飲みごろは正午から午後二時ぐらいまで。だもんで、飲兵衛は昼から一杯やってる。「だからアフリカは発展しないんだ」という意見もあるそうだけど、別に発展しなくてもいいんじゃないか、って気にもなってくる。うーん。

 ここで農業の技術指導をしていた「とっかん」こと山賀望幸氏の話が泣かせる。彼の車で走り出し、集落に差し掛かると人が飛び出して止められる。顔なじみが「ヤシ酒を飲んでいけ」と誘うのだ。集落に差し掛かる度に彼は呼び止められ、酒を振舞われる。目的地に着いた時には山賀氏はべろべろになっている。そこまで現地の人に好かれるとは。

 エチオピアの難民キャンプでは、日本外交協会が送った乾パンが喜ばれている。難民に給食するにはボランティアの手が足りないので、調理が不要の乾パンが重宝するそうな。この乾パン、氷砂糖を同封していたんだが、子供たちは氷砂糖が食べられるとは知らず、道に捨てていた。なんだかなあ。

 とまれ、支援もいい事ばかりじゃない。マリの旱魃で地方農民が首都バマコに流入した際、救援組織は郊外に難民キャンプを作って小麦粉や魚の缶詰などの食料を配給した。ところが難民は配給の食糧を町の市場で叩き売った。町の食糧市場は暴落したため、近隣農民も食えなくなり、難民キャンプに雪崩れ込んできた。

 市場崩壊の例として興味深いのがモザンビーク。インド洋の近くで魚介類が豊富なはずなのに、街には海産物がない。独立直後は魚介類が沢山あった。が、政府が漁業を統制し、キロいくらの公定価格で政府が買い取る。魚の種類やイキのよさは無関係なので、漁師はやる気をなくした。農業も同様で、稲作の集団農場を作ったはいいが水が足りず苗が全滅。水が少なきゃトウモロコシに転作すりゃよさそうなもんなのに、役人曰く「この農場は稲作用なのです。コメ以外のものをつくることはできません。それに、国営農場の土地を個人が勝手に使うと罰せられます」

 おカタい話も面白いけど、それとは別に著者の器用さ・健啖ぶりにも感心した。インパラやキリンを刺身にし、ショウガじょうゆで食べる。岩場のウニはその場でスプーンで食べ、つぶ貝は海水でゆでる。ナイルのうなぎは白蒸しした上で串をさし、自家製のタレをつけて蒲焼にする。紅海のレストランでは、シェフにロブスターの刺身の作り方を披露する。しょうゆの小びんとわさびは、旅行の必需品だそうだ。さすが、旅慣れてらっしゃる。

 などと、とりとめのないまま、「アフリカで寝る」へと続きます。

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