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2011年2月11日 (金)

榊涼介「ガンパレード・マーチ2K 北海道独立 1」電撃文庫

「あのねえ、あなた、何を育てているわけ?ここは整備員を育てるところなの」
「整備員といえども人間味がないといかん」

どんな本?

 元は2000年9月28日発売の SONY PlayStation 用ゲーム「高機動幻想ガンパレード・マーチ」のノベライズのシリーズ。ゲームもカルト的な人気を誇り、10年前のゲームであるにも関わらず、昨年は遂に PSP に移植され、今も新しいファンを獲得し続けている。

 根強くカルト的な人気はノベライズも同じで、シリーズの始まりは「5121小隊の日常」は2001年12月15日発売。以降、こちらも10年近く25冊(ガンパレード・オーケストラを入れると28冊)の刊行が続いている。ゲームをベースとしながらも小説は独自のストーリーを展開し、最近はオリジナルの登場人物の活躍も増えてきた。

 昨年の「逆襲の刻 極東終戦」で一応の完了と思われたが、あとがきも解説もなく、そっけないエンディングに多くのファンをやきもきさせた挙句、突然の新シリーズ刊行と相成った次第。

いつ出たの?分量は?読みやすい?

 2011年2月10日初版発行。文庫本で縦一段組み本文約280頁。8ポイント42字×17行×280頁=199920字、400字詰め原稿用紙で約500枚。ライトノベルのわりに変な口調も少なく、相変わらずの読みやすさ。冒頭、13頁ほどでシリーズ全体の「いままでのあらすじ」をまとめてある。とはいえ、今まで25冊(ガンパレード・オーケストラを含めると28冊)も続いた長いシリーズだけに、登場人物も異様に多いのだが、登場人物一覧はついていない。

 ということで、これから読み始める人は、素直に「5121小隊の日常」から入るのを薦める。ユーモラスな短編集だし、とっつきやすさもシリーズ随一で、幕開けに相応しい一冊です。

どんなお話?

 ハミルカルを滅ぼし、青森の幻獣軍も撃退して、首の皮一枚でなんとか生存の余地を得た日本。しかし、自衛軍の損傷は凄まじく、いまだ多くの師団・旅団の戦力は50%にも満たない状況だった。生命線とも言える青函トンネルは回復したものの、多くの戦略物資や重工業を担う北海道からの補給は途絶えがちだった。

 今まで謎に包まれ、青森血戦でも不気味な沈黙を続けていた北海道。軍の精鋭を温存した彼の地は、いったい何を考えているのか。復興のため多量の物資を必要とする本州に対し、補給を渋る彼らの本意は?

どうだった?

 口絵を見て、いきなり爆笑。樺山の爺様の悪役顔が、あんまりにも見事すぎ。軍産複合体の首魁に相応しく、いかにもな悪党顔だもんなあ。「ゴブリンが化けてる」と言われても信じちまいそうな面構え。

 冒頭で、さっそく新しい人物が登場する。雪中の脱走者・香澄ちゃんと、それを追いかける北海道の軍の面々。樺山財閥との強い結びつきも示唆され、どうにも不気味で物騒な感じ。

 カーミラは相変わらずの傍若無人ぶりで、ハンス君をいじめている。全巻の末尾で素敵な法被姿を披露したハンス君、やはり客商売は向いていない模様。そりゃそうだよな、あの目つきで「いらっしゃいませ」とか言われても、客は寛げんわ。温泉旅館の旦那には最も向かないタイプ。つか、カーミラ、わかっててやらせたんじゃないのか?

 滝川、「数学と国語と英語と、理科と社会全般が苦手」って、そりゃ学科は全滅って事だろ。まあ、どうせ誰も滝川に学科なんて期待してないけど、森の手前、そりゃ恥ずかしくないのか。将来は財布を握られ尻にしかれるの確定だな。でも、森の尻って、敷かれ心地よさそう←をい

 尻にしかれるといえば、壬生屋と瀬戸口。こちらも瀬戸口は髪結いの亭主よろしく、忙しく日々を過ごす未央ちゃんの隣で、のんびりやっとります。今作では、なんと彼女の家族も登場。なかなか眼力鋭いお父様だけど、そこは壬生屋家。まあ、婆様の話から察するに、そういう家風なんだろうなあ。

 整備学校に押し込まれた整備班の面々、狩谷は真面目な姿勢と論理的な講義が受け、それなりの人気を博している模様。一方、例のガン細胞共は、というと、やっぱり増殖の機会を狙い、堂々と稼業に励んでいる。のはいいが、それを人間味と言っていいのかどうか。むしろ人間やめますか、ではなかろうか。にしても、新品とは、モテているのかいないのか。

 裏表紙には「もうひとつの撤退戦」以来、久しぶりのカット。今回は坊ちゃまと真紀ちゃん、懐かしの制服姿。そういや、タライって設定もあったなあ。

 前巻に続き、この巻でも「あとがき」はなし。「逆襲の刻」同様、今回も長いシリーズとなりそうな予感もあるが、北海道の沈黙より、榊さんのメッセージがないのが怖いよ、あたしゃ。まあ、このハイスピードな刊行ペースに「あとがき」まで期待するのは贅沢なんだろうけど、ファンってのは、身勝手なモンなんです。

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