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2010年9月11日 (土)

松田磐余「江戸・東京地形学散歩 災害史と防災の視点から」之潮フィールド・スタディ文庫2

 素人向けに、東京近辺を具体例に取りながら、地形学的な土地の見方を紹介した本。関東住まいや東京近辺に勤めている人には、馴染みの土地が頻繁に出てくるため、興味深く読めるだろう。ソフトカバー縦組み1段組で約220頁。「海食崖」とかの専門用語が頻発するけど、漢字だとなんとなく意味が通じるのが嬉しい。

 地形学とは…えー、Wikipedia の地形学の項をご覧下さい…じゃ手抜きなんで、素人が間違いを承知で説明すると。
 どんな地形かは当然、その地形はどのような歴史で形成されたのか、その地下はどのような層が重なっているのか、取水や天然ガス採取などでそのような影響が出ると考えられるのか、大雨・高潮・地震などの災害時にどんな影響が出て、どう対策すれば防げるのか、など多岐に渡る学問…かな。
 プレートや断層の形成・堆積物などによる地形の歴史の推測などの地学、貝塚などの埋蔵物から当時の様子を探る考古学、古い文献や地図から歴史上の出来事や時代背景を求める史学、そして堤防や道路の配置を定める都市計画etc…と、科学と社会学の双方に跨る広範な範囲をカバーする学問、という事にしておこう。間違いがあったら指摘してください。

まえがき
第一章 武蔵野台地と東京低地の形成
当書籍のなかで、最も専門的で歯応えのある部分。ボーリングのデータによる、東京の地底はどんな層からなっているか、という話と、それはどのように形成されたのか、という話。
第二章 地形形成史を訊ねて
この章以降は、第一章から大きく雰囲気を変え、東京の各地を散策しながら、その地形の成り立ちと現在の有様を説明していく。愛宕山や上野の擂鉢山など、高低差の大きい場所の紹介が多い。特に上野近辺は昔よく行ったんで、親しみが湧いて楽しかった。
第三章 災害の跡を訊ねて
主に台風の堤防決壊による浸水地帯の紹介が中心。全般的に東京の下町、江東区や墨田区が多い。
第四章 災害対策を尋ねて
ここでも浸水被害が大きかった荒川・隅田川流域が中心。また、安政の震災と関東大震災の被害も下町が大きかったため、上野以東が中心となっている。ちなみに震災の被害で最も大きいのは火災による被害で、調査者にもよるけど死者の95%以上が火災による被害者だそうで。
あとがき
参考文献
索引

 昔は荒川流域のサイクリング・ロードを自転車で走っていたため、荒川流域が主役の三章と四章が楽しかった。全般的に23区以東が多いため、下町や千葉に住む人には親しみの湧く一冊。ちょっとした坂や階段にも、それなりの曰くがあると思うと、散歩やサイクリングの楽しみが増えます。

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