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2010年8月22日 (日)

犬村小六「とある飛空士への恋歌 4」小学館ガガガ文庫

「かっこいい男になれ、ってお父さんよくあんたに言ってたよね。お父さん、あんたに、見本示してくれたんだよ。こういうのがかっこいい男だ、って、態度と行動であんたに教えてくれてるんだ。きっとたぶん絶対、お父さん、そういう人だもん」

 運命の恋と空への憧れと若者の成長を爽やかに描く、王道の青春ファンタジー・シリーズ第四弾。今までじっくり書き込んだ舞台の上で、物語と途上人物たちが本格的に動き始める。いやほんと、「やっと本編が始まった」って感じ。

 文庫本で380頁ちょい。文章は若い読者に相応しい読みやすさを備えている。ただし会話には「ツンデレ」など今風の言葉も出てくるため、ライトノベル風の文体にアレルギーがある人は要注意。シリーズ物でもあり、いきなりこれから読み始めるのはさすがに無茶で、興味のある人は、まず同じ世界を舞台にした「とある飛行士への追憶」から入り、シリーズの1~3と順に読み勧めるのが無難。

 今までのうれしはずかしツンデレとセイシュンと初恋な展開から打って変わり、空族の襲撃により明らかになった敵の存在・虚空に散ったライバルと戦友・そしてお互いの秘密に悩むカルエルとクルスなど、暗い暗いシーンから始まる。クルスについてウダウダ悩むカルエルは、実に鬱陶しく、背中が痒くなる。が、ここが我慢のしどころ。

 アリエルが再び登場するところから、物語は俄然走り始める。やっぱね、この物語、アリーが出ないと。過酷な運命にもめげず、カルの尻を蹴っ飛ばし、戦友に活を入れ、住民を励ます。いい子だよなあ。しかしカルは、なんでクルスかね。私なら絶対にアリーを選ぶけどなあ←誰も聞いてねえよ

 そして再び襲い来る空族。イスラ絶体絶命の危機に、立ち向かうのは意外なメンバー。確かにあの役割に最も適した人物たちではあるけど、それにしても巧い見せ場を用意したもんです。前巻のファウストもそうだけど、こういう、意外な人が意外な活躍を見せる場面って、好きだなあ。アクション場面では、空に加え、艦どうしの「海の戦い」も味わえるのが、お得感あり。雰囲気的に二次大戦ごろの技術レベルでもあり、傷だらけになりながら使命を全うする運命は、ドイツ海軍の悲劇の戦艦ティルピッツを彷彿とさせる。

 暗く沈みこむ主人公達の鬱々とした雰囲気が続く序盤、危機また危機の緊張したアクションの中盤、爽やかなカタルシスが訪れる終盤、そしていかにも「次回予告」な雰囲気の引き。ゴタゴタ考えず、素直に娯楽の王道として作者に翻弄されよう。

 でもさ、アリーの出番、少なくね?もっとアリーを活躍させてよ。それが最大の不満←しつこいぞ俺

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