ありがとう、そしてさよなら、ジェイムズ・パトリック・ホーガン
ハードSF作家と呼ばれる人は沢山いるけど、SFを読みなれていない人が興奮できる作品を書くって点では、ダントツの魅力を持っていた。「星を継ぐもの」に始まるガニメアン・シリーズは勿論、「造物主の掟」の出だし、機械生命が誕生するシーンは、私が読んだ全ての小説の中で、最高の導入部だと今でも思っている。思想的には「断絶への航海」で明確に示されるように、徹底した自由主義者だった。この作品で提示される社会は、「技術偏重やデジタル化を危惧する人々」に対し、「モノやエネルギーが充分に行き渡れば、ヒトがヒトであるが故に価値がある社会ができるはず」という、素敵なアンチテーゼを示していた。
彼の物語の読後は、いつだって限りない爽快感に満ちていた。「未来の二つの顔」のエンディングの素晴らしさ、スパルタカスのけなげさ可愛さしたたかさと言ったら。あれ、ハリウッドで映画化すのに最適な作品だと思うんだけど、なんとかなりません、キャメロンさん?
明るい未来を、科学や技術の進歩が切り開く開放的で希望に満ちた世界を、若い頃の私に垣間見せてくれた。ありがとう、ジェイムズ・パトリック・ホーガン。
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