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2010年7月31日 (土)

柴田錬三郎「岡っ引どぶ」講談社文庫

 大江戸ハードボイルド捕物帖の三中篇。文庫本で580頁超だが、文章は読みやすく、あっさりと読み終えてしまった。

 住所不定でその日暮らし、女好きだが不細工でイマイチモテず、それでもめげずにコナかけまくる。飲む打つ買うの三拍子、裏社会はお手の物で悪投共にも顔が利く。度胸もあれば腕も立つ、地べたはいずり証拠を探す。しかし「どぶ」って名前は酷すぎるだろw
 相方は与力の旗本、町小路左門。盲目の美青年で腕は抜群。頭脳明晰にして性格は怜悧。屋敷に居ながら大江戸の全てを見通す智恵者。
 この二人が組んで、江戸の町を騒がず謎を解き、大名旗本の悪を暴く。

名刀因果
三河譜代の近藤右京亮友資の用人・佐倉より左門に依頼が来た。近藤家に伝わる名刀・大盗正宗を隠れて守って欲しい、と。将軍家斉が職を家慶に譲るにあたり、祝賀の品として大盗正宗を所望されたのだ。近藤家は怨霊屋敷と呼ばれている。当主友資は齢六十を終えているが、二十年前に乱心している。長男の市之助は三十を過ぎているが、いまだ子供並の知能しかない。娘の雪は絶世の美女でだが、あいにくと盲目である。依頼を受けたどぶは近藤家に忍び込み…
どぶ・左門・治郎吉・小夜など、以降でも活躍するレギュラーの紹介も兼ねた登場編。登場していきなり5人のつけ馬相手に大立ち回りを演じるどぶの、いかにも荒んだ、けれど妙にセコくて抜けた雰囲気は愛嬌がある。
白骨御殿
花火見物に出かけたどぶは、奇妙な土左衛門を見つける。比較的新しいが、ところどころ白骨化していて、顔の目や鼻や耳はなくなっている。翌朝、左門の屋敷を訪ねる途中で、どぶは酔ったように夢見心地の女形、中村菊也に出会う。菊也を探るどぶは、将軍のご息女にたどり着き…
ただの岡っ引が、端女の娘とはいえ将軍ご息女が抱える謎に挑む潜入活劇。潜入後、謎を追うに従ってお話と仕掛けがエスカレートしていく急展開はサービス満点。ダイナミックなクライマックスなど、映像化した際に、最も映える一編だろう。
大凶祈願
江戸で流行る犬神様信仰。ただの縁起担ぎならともかく、鬼門云々で引越しまでする輩が続出し始める。元締めらしき「お犬の方さま」をの霊廟を叩き潰したどぶだが、その背景に元若年寄の土井但馬守光貞がいるらしいと示唆される。霊廟の土地を提供したのが光貞なのだ。光貞は利殖に長け、莫大な資産を築き上げた。彼の屋敷へ潜入したどぶは、連続する怪異に巻き込まれる。
綱吉時代の生類憐みの令を揶揄し、返す刀でたたりなどの迷信もバッサリ切り捨てる序盤から心地よい。そのためか、中盤以降に現れる怪異は、ホラーというよりミステリーの味わいが濃くなっている。

 柴田錬三郎を読むのは初めてなんで、とりあえず一冊で完結している作品を選んだんだが、彼が得意とする作風とは違う方向性なのかも。

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