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2010年6月10日 (木)

林譲治「進化の設計者」ハヤカワSFシリーズJコレクション

油断ならん人だ。

 「なるほどねぇ。PADSの脚は大事なんだ」
 「そうなんです。飾りじゃありません。技術に暗い偉い人なんかは、そういうことはわかんないですけどね」

 麦茶返せ。表紙見ればボウルみたいだけど、雰囲気的にズゴックを想像してしまう。けど乗るのはセイラさん。クライマックスは「逆襲のシャア」みたいだし、詳しい人がよく読めば細かいネタがもっと見つかるかも。

 「記憶汚染」で扱ったような、ユビキタス・コンピューティングが実現しつつある近未来。えっとつまり、色んなモノにマイコンが埋め込まれてて、自動車が自動運転できたり(未開発でできない道路もあるけど)、指紋認証で買い物できたり、人やモノにICタグ埋め込んでいつどこいにるか把握できたり、そういう世界です、はい。ID論(賢い誰かさんが生物の進化を制御したって暴論)を元に、弱者は死ね的で優生主義的な主張を掲げる世界的な組織「ユーレカ」の陰謀に巻き込まれた人たちの物語。

 ユビキタスな社会は魅力的だけど、ガジェットとしてはいささか地味。活躍するのは冒頭にあるPADS。小型潜水艇に両手をつけて細かい操作を可能にし、姿勢制御に短い脚をつけている。風景としては超大型船(というより都市)のムルデカが魅力。

 書名でわかるとおり進化を扱っているけど、そこはユビキタス林。色々と捻ってある。ええ、当然、猫ですよ猫。猫は重要です。ジェイムズ・P・ホーガンの傑作とシオドア・スタージョンの名作がですねえ…

 しかしこの人、テロリストが好きなんだなあ。いやテロが好きって意味じゃなくて、テロリストとの戦いを書くのが。

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