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2007年6月 3日 (日)

SFマガジン2007年7月号

 ワールドコン特集Ⅰとして、ヒューゴー賞候補作が5作載ってる。こういう質の高い海外SF作品を沢山紹介してくれると、いかにもSFマガジンって感じがして嬉しいなぁ。マイク・レズニックとか久しぶりだし。

 冒頭を飾るのは職人マイク・レズニック「きみのすべてを」。宇宙港で暴漢が少女を人質を取る事件が起きた。群集の中から一人の中年男が無謀にも暴漢に突進し、少女は助かったが中年男は瀕死の重傷を負う。中年男は退役軍人で、これまでにも何回か無茶な真似をして重傷を負っている。病院に聞くと、この男以外にも最近無茶をして重傷を負った者が居るという。調べると、いずれも惑星ニキータの激戦で負傷している…
 斬新とは言えないアイデアだけど、それを読ませる話に仕上げるレズニックの職人芸はお見事。

 続いてロバート・リード「八つのエピソード」。人気がなく短命に終わったTVドラマ、「小さな世界の侵略」。演出は退屈で演技は硬い。登場人物も平凡でドラマは盛り上がりに欠ける上に、制作者は誰とも知れない。少しでも利益を上げるためにDVDパッケージが売り出されたが、熱狂したのは意外にも天文学者や古生物学者などの科学者だった。
 なんか、ほとんどオチまで書いてしまったような気がする。

 ブルース・マカリスター「同類」。12歳の少年が、異性人のプロの殺し屋に仕事を依頼する。「ある男を殺して欲しい。奴は僕の妹を殺そうとしている。」
 たった9頁のショート・ストーリーだけど、依頼の動機やその解決法、そして多くのSFファンが持つ心情と盛りだくさんのテーマを押し込んだ濃い(濃ゆいではない)作品。もうちょっと長くして心情を掘り下げて欲しかったけど、それもまた味のひとつかも。

 ティム・プラット「見果てぬ夢」。今月号はこれが一番気に入った。主人公は映画オタクのピート。近所は当然、郡内のビデオ・ショップは全部チェックしてる。ところがある日、近所に見逃していたビデオ・ショップを見つけた。店に入って品揃えを見ると、あるはずのないレア物がいくつも見つかる。店員に突っかかると、彼女も映画に詳しいらしく…
 お約束どおりのベタな展開ではあるけど、私はこういうのが好きなんだ。イラストが小菅久実さんなのも作品の雰囲気に合っていて、編集さんはよくわかってるな、と思う。

 トリはマイクル・F・フリンの「夜明け、夕焼け、大地の色」。ワシントン州営の大型フェーリーが、千人近い乗客を乗せたまま、霧の中で行方不明になった。お話はこの事件の目撃者や救助にあたった沿岸警備隊員、遺族や同僚を失った者たちへのインタビューや独白で構成されている。一応SFではあるけど、むしろ9.11以降のアメリカ社会の断面って感がある。小説として読ませる作品ではある。

 鳴り物入りで紹介されている円城塔「A to Z Theory」は、とにかく人を食った作品。バカさ加減はラファティに似ていると思う。…って、この人、紹介の度に違う作家(レムとかヴォネガットとかダグラス・アダムスとか)を引き合いに出されていて、場外大ファールって気もする。なんか楽しみ。

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