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2007年6月の5件の記事

2007年6月15日 (金)

マイケル・グリフィン「誰がタリバンを育てたか」大月書店

 書名の結論。主役はパキスタンの軍。その狙いは…結局、よくわからん。パイプラインか関係してるらしい。次いでイランとサウジアラビアとアラブ首長国連邦。これも狙いは恐らくパイプライン。カスピ海周辺からアフガニスタンを通るパイプラインが整備されると、石油の供給が増えて産油国に取っちゃ面白くないって事らしい。

 主な内容は1991年のナジブラー大統領失脚から2000年12月のタリバン政権に対する武器禁輸まで。よって悪夢の2001年9月11日の直前までって事になる。この本によればタリバンはビンラディンを匿い、隠れ家と訓練所を用意するなど便宜をはかっていた、とある。
 とにかく文章が凄まじい悪文で読みにくい。元々の内容が情報ぎっしり、情緒的な記述が少なくニュースの羅列に近く中身が濃い上に、訳が酷いから読めたもんじゃない。結局、頑張って読み通しちゃったけど。以下、少し引用。

 アメリカの外交政策は大統領弁護団の単なる手先になってしまったとの見方を否定しなければならなかった国防長官ウイリアム・コーエンとCIA長官ジョージ・テネットは、人間心理を操る計画首謀者ビンラディンの新たなプロフィルに肉付けをほどこす発言で対応した。

 こんな文章が360頁以上も続く。元々、登場人物の利害や立場が複雑に絡み合う上に、状況によって敵味方が入れ替わり、その支援者(アメリカやロシアね)も支援相手を変える。おまけに本の構成が素直な時系列じゃなくて、時間的に行ったりきたりするから、理解しにくい事このうえない。時折、下手なアメリカンジョークが混じるのもタチが悪い。

 アフガニスタンの現代史を知りたいのなら、他の本を選んだ方がいい。じゃあ何がいいの、と聞かれても答えられないけど。ごめんなさい。

 以降はこの本の紹介から離れて私の考えなんで、書評だけを読みたい人は読み飛ばしてほしい。

 米国の開戦当時にビンラディンがアフガニスタンに居たか否かはわからないが、タリバンを放置していたら絶好の隠れ家を提供していただろう。ビンラディンを確保するための手段と割り切れば、あの戦争は有効だったと言える。ただ、賭けたコストに見合った利益が米国にあったかと問われると、うーん。アフガニスタンを通るパイプラインが完成すれば直接的な利益になるし、サウジアラビアやアラブ首長国連邦を牽制する意味もあるだろう。アフガニスタンの主要産業になりつつあった膨大なケシ畑を潰せるのもポイントの一つ。問題は戦後の復興にかかる費用で、それを考えると収支は、今は赤字で将来はトントンかなぁ。

 じゃあアフガニスタン国民にとってどうかって考えると、これは利益の方が大きいと思う。例え合衆国の傀儡国家であろうとも、治安が安定すれば天然ガスがある上にパイプラインの権益で大きな収入が見込める。

 何より、タリバン政権下で迫害されていた女性の地位が向上するのが大きい。タリバン政権下では女性だけの外出もダメ、7歳を超えた女性に読み書きを教える事すら許されなかった。長い戦乱で夫を亡くした人も多いのに、働くことさえ出来す、成人した独身女性が生きていくのは不可能に近い。労働が許されないから女医も居なくなり、産婦人科は廃業する。国民の半分を人間扱いしないなんて、無茶もいい所だと思う。少し前にNHK-TVでアフガニスタンの小学校を取材した映像を見たんだが、面白いコメントがあった。少女達の向学心は旺盛で、将来の希望を聞くと医者や教師など、自立していける職業を挙げる女の子が沢山いる中で、日本なら確実にトップになる答えが皆無で、それは「お嫁さん」だ、と。母親の苦労を見ていたせいで、男に依存してたんじゃ生きていけない、手に職をつけて自分の人生は自分で作るんだという気概に満ち溢れていた、そんなコメントだった。

 働く女性は好きだよ。今の職場でも尊敬する女性が独身既婚ともに複数いる。正直言って、あの人たちみたいなカッコいい女性が増えるといいな、と思う。でもさ、誰も結婚に夢を持たないってのも変だよな。余程過酷な状況で生きてきたんだろうなぁ。

 で、米国とアフガニスタン国民双方の利益になるからと言って、あの戦争が倫理的に許されるのか、と問われると、これが悩むんだ。許しちゃうと強国のやりたい放題になりかねないし、かと言って放置すれば無実の人がどんどん死んでいく。戦争を仕掛けた側には戦後の国家復興を支援する義務があるけど、その費用は戦争費用の数倍はかかるだろうし、イラクの例でわかるように多数の死者も出る。かと言って政治的空白はテロリストや犯罪者の温床になる。

 結局、内政不干渉ってのは、正義とは言い切れないけど妥当な歯止めなのかな、と思う。

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2007年6月 7日 (木)

ジロミ・スミス「空母ミッドウェイ アメリカ海軍下士官の航海記」光人社

 書名どおり、合衆国海軍の下士官による、空母ミッドウェイの搭乗勤務の記録。湾岸戦争に従軍した際の記述もある。

 著者は東京生まれで中学2年まで日本にいたそうで、母語は日本語らしい。文章も翻訳調でなく自然で、あえて言うならユーモアが兵隊上がりの人に独特の調子がある。好きですよ、この手のユーモア。ヘリコプター部隊勤務で、担当は書いてないけど整備らしい。
 艦上の勤務は平時でも原則1日12時間勤務で休日なし。まあ休んでも艦から降りられるわけではないので休暇を取っても無意味とある。そりゃそうだ。部屋は6人部屋で3段ベッド、プライベートな空間はベッドと荷物を入れるロッカーだけ。24時間、常に誰かが起きていて、逆に言えば常に誰かが寝ているわけで、部屋の中では音を出さないように気を使うそうだ。でも、いくら気を使っても航空機の発着があれば爆音で無意味になるみたいだが。

 艦長(大佐)とエア・ボス(フライト・オペレーションの最高責任者)の紹介が笑った。「寝ない」ってどういうことだよ、おい。固定翼機の着陸の様子、フライト・オペレーション・スタッフの組織と役割の解説、食堂の区分と営業時間、入港時の乗組員の上陸の手順と「ずる」の仕方、基地での休暇の過ごし方など、日々の暮らしが生き生きと描かれている。

 軍である以上、物騒な話題もある。日本海の任務は主にソビエト軍との駆け引きで、ソビエトのスパイ船がミッドウェイの後ろをついて回って「ゴミ」を拾うそうだ。バックファイア爆撃機の情報を得るために散々挑発したが、結局はベア(Tu-95)の相手をする羽目になるらしい。そしてクライマックスは湾岸戦争。保守・整備はもちろんパイロットも疲労の極で、他間のバイキングが誤ってミッドウェイに着艦しかける描写もある。そして、「ミッドウェイ艦載機だけが一機も失われることがなかった」と誇らしげに書かれている。仕事に誇りを持つ人ってカッコいいよね。

 物騒な部分は控えめで、生活臭い部分が多い。空母での生活に多少でも興味があれば、楽しく読めるだろう。

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2007年6月 5日 (火)

朝風呂

銭湯の朝風呂に行ってきた。やはり年配の人が多い。男湯と女湯が入れ替わっていたのには驚いた。男女平等ってやつ?湯船のバリエーションも違ってたんで、最初からそういう営業方針だったのかも。朝から風呂桶抱えて住宅街を歩くのはちょっと変な気分。こざっぱりして気分は上々。ただ、暫くすると眠くなったのには困った。結局、気分よく昼寝したけどね。

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2007年6月 4日 (月)

長尾精一「粉屋さんが書いた小麦粉の本」三水社

 読んでるとお腹がすいてくる。あー饅頭怖い。

 麦作と加工の歴史から小麦粉の種類と特徴、流通と製粉の仕組み、小麦を使った食品、小麦粉を使った料理のレシピ、選び方使い方保存方法と、ちょっとしたウンチクから実用的な情報まで揃えたとっても便利な本。著者は日清製粉の研究所所長で著作のプロではないけど、文章は相当に気を使ってる上に、イラストが多くて読みやすい。

 美味しそうな食べ物が次から次へと出てくるんで、とにかく読んでてお腹がすく。うどん、饅頭、カステラ、クッキー、餃子、ラーメン、ケーキ、ドーナツ、天婦羅。そして食パン、フランスパン、バターロール、あんパンに蒸しパン。忘れちゃいけないお好み焼き。あーたまんねー。

 うどんを打つのはさすがにしんどそうだけど、饅頭は簡単そうなんで、今度挑戦してみようかなぁ。小麦粉100gにベーキングパウダー2gと砂糖80gを35ccの水でこねて、餡を包んで強火で13~14分蒸して終わり。お好み焼きは昼飯代わりによく作るんだけどね。余り物片付けるのにちょうどいいし。

 あー、腰の入ったきしめんが食べたくなってきた。

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2007年6月 3日 (日)

SFマガジン2007年7月号

 ワールドコン特集Ⅰとして、ヒューゴー賞候補作が5作載ってる。こういう質の高い海外SF作品を沢山紹介してくれると、いかにもSFマガジンって感じがして嬉しいなぁ。マイク・レズニックとか久しぶりだし。

 冒頭を飾るのは職人マイク・レズニック「きみのすべてを」。宇宙港で暴漢が少女を人質を取る事件が起きた。群集の中から一人の中年男が無謀にも暴漢に突進し、少女は助かったが中年男は瀕死の重傷を負う。中年男は退役軍人で、これまでにも何回か無茶な真似をして重傷を負っている。病院に聞くと、この男以外にも最近無茶をして重傷を負った者が居るという。調べると、いずれも惑星ニキータの激戦で負傷している…
 斬新とは言えないアイデアだけど、それを読ませる話に仕上げるレズニックの職人芸はお見事。

 続いてロバート・リード「八つのエピソード」。人気がなく短命に終わったTVドラマ、「小さな世界の侵略」。演出は退屈で演技は硬い。登場人物も平凡でドラマは盛り上がりに欠ける上に、制作者は誰とも知れない。少しでも利益を上げるためにDVDパッケージが売り出されたが、熱狂したのは意外にも天文学者や古生物学者などの科学者だった。
 なんか、ほとんどオチまで書いてしまったような気がする。

 ブルース・マカリスター「同類」。12歳の少年が、異性人のプロの殺し屋に仕事を依頼する。「ある男を殺して欲しい。奴は僕の妹を殺そうとしている。」
 たった9頁のショート・ストーリーだけど、依頼の動機やその解決法、そして多くのSFファンが持つ心情と盛りだくさんのテーマを押し込んだ濃い(濃ゆいではない)作品。もうちょっと長くして心情を掘り下げて欲しかったけど、それもまた味のひとつかも。

 ティム・プラット「見果てぬ夢」。今月号はこれが一番気に入った。主人公は映画オタクのピート。近所は当然、郡内のビデオ・ショップは全部チェックしてる。ところがある日、近所に見逃していたビデオ・ショップを見つけた。店に入って品揃えを見ると、あるはずのないレア物がいくつも見つかる。店員に突っかかると、彼女も映画に詳しいらしく…
 お約束どおりのベタな展開ではあるけど、私はこういうのが好きなんだ。イラストが小菅久実さんなのも作品の雰囲気に合っていて、編集さんはよくわかってるな、と思う。

 トリはマイクル・F・フリンの「夜明け、夕焼け、大地の色」。ワシントン州営の大型フェーリーが、千人近い乗客を乗せたまま、霧の中で行方不明になった。お話はこの事件の目撃者や救助にあたった沿岸警備隊員、遺族や同僚を失った者たちへのインタビューや独白で構成されている。一応SFではあるけど、むしろ9.11以降のアメリカ社会の断面って感がある。小説として読ませる作品ではある。

 鳴り物入りで紹介されている円城塔「A to Z Theory」は、とにかく人を食った作品。バカさ加減はラファティに似ていると思う。…って、この人、紹介の度に違う作家(レムとかヴォネガットとかダグラス・アダムスとか)を引き合いに出されていて、場外大ファールって気もする。なんか楽しみ。

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